写真を絵画作品に仕上げるMac用アプリケーション「Topaz Impression」レポート

写真を油絵風やスケッチ風に...といえば多くのパソコンユーザーは「Photoshopで出来る」と思うに違いない。確かにPhotoshopならフィルターを利用するだけで油彩にも点描にもできる理屈だが、ご承知のようにフィルターにかけただけではエフェクトは均一で、あくまで "らしく" という範囲だ。したがってこれらをより油彩画らしく、あるいは印象派風な作品に仕上げるとすればPhotoshopに精通することは勿論、短時間でクオリティの高いものを作り上げるのは難しいだけでなく相応のテクニックが必要となる。


さて今回ご紹介する「Topaz Impression」というアプリケーションはApp Storeから購入できるが、その価格は今風の感覚からすれば決して安いものではないかも知れない。しかしその効果は絶大でモニターに展開する様々な画風の変化を見ていると絵が好きな1人として思わず笑みがこぼれてくる。

勿論これまでにも写真や動画にこうした効果を加えるツールはあったが、「Topaz Impression」は多機能というより油彩や水彩あるいはスケッチといった絵画に仕上げるための専門ツールであり、その完成度と操作性のわかりやすさは抜群で、その一例を見れば「Topaz Impression」の魅力はお分かりいただけるのではないか...。

何よりも「Topaz Impression」のUI は英語だがとてもシンプルで分かりやすい。アプリケーションを起動し、その描写エリアに目的の写真をドラッグ&ドロップすることから始めるが、それだけで右サイドには様々な効果名のサムネイルが表示する。

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※TopazImpressionのアプリケーションアイコン(上)と作例として使う元写真(下)


最初に起動した際には "Featured" すなわち「おすすめ」のプリセット一覧のサムネイルが表示される。そのサムネイルからひとつをクリックすれば描写エリアの写真にその効果が反映されるので細部まで確認しながら思い通りのプリセットを選択することになる。なおサムネイルのサイズでは実際の効果を判断しにくいのも事実だから、是非一通りクリックしてその変化を確認する必要がある。

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※TopazImpression_03 Chiaroscuro、すなわち明暗手法のプリセットを選択した例【クリックで拡大】


なおこのプリセットは前記した "Featured" だけでなくポップアップメニーにあるとおり古い画風調の "Ancient"、印象派風の "Impressionistic"。あるいはペン画風の "Pencil" といったカテゴリー別のプリセットが用意されている。

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※カテゴリー別のプリセットが選択できる


そしてそれらの中にはエドガー・ドガ、レンブラント・ファン・レイン、クロード・モネ、ポール・セザンヌ、フィンセント・ファン・ゴッホ、レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ20世紀アメリカの具象絵画を代表するエドワード・ホッパーといった芸術家たちのタッチが含まれている。

それらの効果は絶大ではあるが、それぞれのプリセットが目的の写真に思い通りの効果を生むかどうかは正直元写真に依存する部分も多い。例えば沢山の人物達が一緒に映り込んでいるスナップ写真といった絵画的でない写真などではまずこうした絵画的効果を加えても良い結果になるとは思わない。
極論をいえば、セザンヌがさも描きそうな風景や静物写真であればいわゆるセザンヌ効果は目を見張るものになるだろうし、レンブラントやモネ風効果もしかりである...。

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※セザンヌ風のプリセット【クリックで拡大】


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※ルノアール風のプリセット【クリックで拡大】


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※ターナー風のプリセット【クリックで拡大】


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※水性ペン風のプリセット【クリックで拡大】


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※ダ・ヴィンチのスケッチ風のプリセット【クリックで拡大】


さらに「Topaz Impression」は単にプリセットを選んで終わり...というツールではない。それぞれのサムネイル中央にマウスカーソルを置けばパラメータアイコンが表示する。それをクリックすることで多義に渡るパラメータを操作して筆のタッチはもとより筆のサイズやストローク、ライティング、背景となるペーパーの材質やテクスチャ、カラーリングなどなどを調整することができる。

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※各プリセットは含まれるパラメータを自在に調節可能【クリックで拡大】


こうして最初はプリセットを借用しつつもユーザーなりのタッチを作り上げたらそれは前記したカテゴリーに任意の名をつけて登録でき、他のカテゴリーと同様繰り返しその効果を活用できる。
またいつでもオリジナルの写真と比較確認できるだけでなく、左右や上下にオリジナルとプリセット効果を加えた結果をリアルタイムに比較できるのも嬉しい。そして完成したデータは画面右下の 「Save as…」から保存する。

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※このモードでは中央の赤い縦線を左右に移動することで元写真と現在のプリセット効果を比較できる【クリックで拡大】


なお描写画面の拡大・縮小や位置合わせ、各プリセット効果の強弱やブレンドモードなどの機能も合わせて1枚の写真を思い通りの絵画作品に仕上げる楽しさは格別のものだ。

TopazImpression_13_B.png

※プリセット効果の強弱やブレンドモードも選択できる


そして申し上げるまでもなく元写真を活かした油彩画やペン画の出来は総じて素晴らしいものだといえよう。ただしセザンヌとかルノワールといったプリセットをそのまま100%信用してもいけない(笑)。あくまで「○○風」であり、すべてのプリセットが著名な画家のタッチを文字通り正確に再現しているわけではないことも知っておくべきか...。

レオナルド・ダ・ヴィンチ風のペン描写のプリセットを例にしてみると、レオナルドはよく知られているように左利きだった。ために彼の素描など陰影を表現するストロークのほとんどは左上から右下に向かっている。

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※自画像と伝えられているレオナルド・ダ・ヴィンチ作のスケッチ【クリックで拡大】


しかし「Topaz Impression」のそれにはそうした拘りはないようだ。したがって厳密な意味においてのプリセットではないし、前記したようにパラメータも細かくコントロールできることも含めて、ユーザーとしてはお仕着せのプリセットで終わらない作品作りを心がけたいものだ。

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※ダ・ヴィンチ風プリセットの一例だが、陰影のストロークはダ・ヴィンチの画法ではない【クリックで拡大】


なお必要なシステム環境だが、 App Storeの記述によれば “OS X 10.6.6 or later, 64-bit processor” と記されているもののメーカーサイトには “Mac OSX 10.8以上、64bit CPU、4 GB RAM minimum” となっている。

ちなみに私が「Topaz Impression」をインストールしているのは iMac 27インチ (Late 2012)だが、プロセッサは3.4 GHz の Intel Core i7 そしてグラフィックスはNVIDIA GeForce GTX 680MX 2048 MB、メモリは32GBとフル実装したマシンだ。それでもサムネイルがずらりと表示する際には少々タイムラグを感じるからかなりマシンパワーは必要に違いない。

最後にそれぞれ別の写真を使った「Topaz Impression」による作例をいくつかご紹介しておきたい。それぞれの図はクリックで拡大表示するのでサイズを大きくしてタッチやストロークをご覧いただきたいと思う。なお本例は「Topaz Impression」のプリセットを操作した結果であり、保存後に加筆修正などは一切やっていない。

以下メーカーサイトでは30日間無料で使えるトライアルバージョンをダウンロードできるので興味のある方はまずは試していただくことをお勧めしたい。

TopazImpression_Example_02.jpg

TopazImpression_Example_03.jpg

TopazImpression_Example_10.jpg

TopazImpression_Example_04.jpg

TopazImpression_Example_06.jpg

TopazImpression_Example_08.jpg

TopazImpression_Example_09.jpg

Topaz Labs, LLC




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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員