ビル・アトキンソン作「PaintMover」を知っていますか?
ビル・アトキンソンと会った興奮がまだ収まらない日が続いているが、連想なのだろう...ふと大昔の事を思い出した。彼はMacPaintとかHyperCardの開発者として有名だが、実は当初小さなグラフィックユーティリティなども公開していたのだ。
まあ、Macintoshの初期ユーザーでも「PaintMover」の存在を知っている人は少ないと思う。何故なら現在のようにインターネットで即世界中に情報が行き渡る時代ではなかったし、ましてや正式な形で販売されたソフトウェアではないからだ。

※PaintMoverのアイコン(拡大)
なにしろ、あらためてそのアバウトを確認するとバージョンは0.03(笑)、 1985年製となっているが「Written by Bill Atkinson」そしてきちんと「Copyright 1985, Apple Computer Inc.」と表記されている。

※PaintMoverのアバウト。そのバージョンと年号に注目
ではなぜ、こんなものが存在するのか。それは当時PDS(Public Domain Software)、すなわち直訳すれば公共財産のソフトウェアといった意味づけで配布と使用が自由なソフトウェアがユーザーグループなどを中心に出回っていた。
私がどのような手段で「PaintMover」を手に入れたのかはすでに記憶にないが、目につくグラフィックソフトをすべて集めようと意気込んでいた時代であり、現在以上に出来うる限りの情報網にアクセスしていたその成果だと思う。
さて、いまさらなぜ「PaintMover」なるものを持ち出したのか。それはビル・アトキンソンは決してMacPaintやHyperCardなどだけの作者ではなく、実は自身の生産性のためにこうした小さなユーティリティなども作っていたという事実を知っていただきたいと思ったからだ。
では行きがかり上、この「PaintMover」のことを少し解説してみたい。
1985年といえば、最初のMacintosh 128Kが登場した翌年である。当時はまだメモリも大変少なく、フロッピーディスクドライブも外部ドライブを接続しているユーザー自体が少なかった。無論ハードディスクを装備したMacintoshなどはほとんど存在しなかった。そうした環境下で、クリップアートの書類をオープンし、それらを組み合わせるなりして別のページにレイアウトの上で二次利用する事を考えると、その手順は面倒にならざるを得なかった。なにしろMacPaint自体、ウィンドウはひとつしか使えなかったし、モニタは9インチでA4ページのドキュメントも縮小しなければ一望できなかったのである。
「PaintMover」はそうした環境において目的をシンプルに遂行するために作り出されたアイデアツールである。
アプリケーションを起動すると、まずはファイルダイアログが開き、対象となるグラフィックデータ(Paintフォーマット)のオープンを促す。
例えばクリップアートを開くとそのイメージが縮小で画面左側に表示され、別途右には白紙のページが用意される。ユーザーは左側のクリップアートから必要なイメージを矩形で囲み、そのままドラッグ&ドロップで右側の任意の位置に配置でき、そのまま印刷ならびに別途保存ができるというだけのツールなのである。

※PaintMoverでクリップアートを開き、コピーのためのスケールを選択しているところ
ただし、ドラッグ&ドロップで右側にコピーする際にはそのグラフィックの倍率である "Scale "や左右回転、スムージングなどの "Options "、そしてパターンの合成具合を指定する "Mode" といった機能が指定できた。

※PaintMovierのオプションメニュー

※PaintMoverのモードメニュー
縮小イメージながら...というか、だからこそ9インチの小さなモニタに閉じた環境下で、こうした作業を効率よく進めることを意図したこのツールはしばらくの間、私の愛用ソフトウェアであった。
今回、私の所蔵しているソフトウェアライブラリからたまたま探し出すことができた「PaintMover」だが、Macintosh Classic IIを使ってイメージのハードコピーなどを撮ったが、驚いたことに「PaintMover」自体をMac OS X 10.3.3にコピーし思わずダブルクリックしてしまった時のことだ。
正直「しまった!」と思ったのだが、「PaintMover」は難なくClassic環境で起動してしまったのである!!

※Mac OS X 10.3.3のClassicで起動し、無事にペイントファイルも読み込めた画面。また機能は問題なく働いているようだ
いまやOSバージョンが少しでも変われば役に立たない製品は数多いが、19年も前の、それもモノクロの時代のソフトウェアが最新のマシン上で動作する様を見るにつけ、あらためてビル・アトキンソンの端正なプログラミング技量が見て取れるような気がしたものである。
その後、この「PaintMover」がバージョンアップしたかどうかはまったく記憶にないが、よくもまあver.0.0.3を使い続けていたものである(笑)。
まあ、Macintoshの初期ユーザーでも「PaintMover」の存在を知っている人は少ないと思う。何故なら現在のようにインターネットで即世界中に情報が行き渡る時代ではなかったし、ましてや正式な形で販売されたソフトウェアではないからだ。

※PaintMoverのアイコン(拡大)
なにしろ、あらためてそのアバウトを確認するとバージョンは0.03(笑)、 1985年製となっているが「Written by Bill Atkinson」そしてきちんと「Copyright 1985, Apple Computer Inc.」と表記されている。

※PaintMoverのアバウト。そのバージョンと年号に注目
ではなぜ、こんなものが存在するのか。それは当時PDS(Public Domain Software)、すなわち直訳すれば公共財産のソフトウェアといった意味づけで配布と使用が自由なソフトウェアがユーザーグループなどを中心に出回っていた。
私がどのような手段で「PaintMover」を手に入れたのかはすでに記憶にないが、目につくグラフィックソフトをすべて集めようと意気込んでいた時代であり、現在以上に出来うる限りの情報網にアクセスしていたその成果だと思う。
さて、いまさらなぜ「PaintMover」なるものを持ち出したのか。それはビル・アトキンソンは決してMacPaintやHyperCardなどだけの作者ではなく、実は自身の生産性のためにこうした小さなユーティリティなども作っていたという事実を知っていただきたいと思ったからだ。
では行きがかり上、この「PaintMover」のことを少し解説してみたい。
1985年といえば、最初のMacintosh 128Kが登場した翌年である。当時はまだメモリも大変少なく、フロッピーディスクドライブも外部ドライブを接続しているユーザー自体が少なかった。無論ハードディスクを装備したMacintoshなどはほとんど存在しなかった。そうした環境下で、クリップアートの書類をオープンし、それらを組み合わせるなりして別のページにレイアウトの上で二次利用する事を考えると、その手順は面倒にならざるを得なかった。なにしろMacPaint自体、ウィンドウはひとつしか使えなかったし、モニタは9インチでA4ページのドキュメントも縮小しなければ一望できなかったのである。
「PaintMover」はそうした環境において目的をシンプルに遂行するために作り出されたアイデアツールである。
アプリケーションを起動すると、まずはファイルダイアログが開き、対象となるグラフィックデータ(Paintフォーマット)のオープンを促す。
例えばクリップアートを開くとそのイメージが縮小で画面左側に表示され、別途右には白紙のページが用意される。ユーザーは左側のクリップアートから必要なイメージを矩形で囲み、そのままドラッグ&ドロップで右側の任意の位置に配置でき、そのまま印刷ならびに別途保存ができるというだけのツールなのである。

※PaintMoverでクリップアートを開き、コピーのためのスケールを選択しているところ
ただし、ドラッグ&ドロップで右側にコピーする際にはそのグラフィックの倍率である "Scale "や左右回転、スムージングなどの "Options "、そしてパターンの合成具合を指定する "Mode" といった機能が指定できた。

※PaintMovierのオプションメニュー

※PaintMoverのモードメニュー
縮小イメージながら...というか、だからこそ9インチの小さなモニタに閉じた環境下で、こうした作業を効率よく進めることを意図したこのツールはしばらくの間、私の愛用ソフトウェアであった。
今回、私の所蔵しているソフトウェアライブラリからたまたま探し出すことができた「PaintMover」だが、Macintosh Classic IIを使ってイメージのハードコピーなどを撮ったが、驚いたことに「PaintMover」自体をMac OS X 10.3.3にコピーし思わずダブルクリックしてしまった時のことだ。
正直「しまった!」と思ったのだが、「PaintMover」は難なくClassic環境で起動してしまったのである!!

※Mac OS X 10.3.3のClassicで起動し、無事にペイントファイルも読み込めた画面。また機能は問題なく働いているようだ
いまやOSバージョンが少しでも変われば役に立たない製品は数多いが、19年も前の、それもモノクロの時代のソフトウェアが最新のマシン上で動作する様を見るにつけ、あらためてビル・アトキンソンの端正なプログラミング技量が見て取れるような気がしたものである。
その後、この「PaintMover」がバージョンアップしたかどうかはまったく記憶にないが、よくもまあver.0.0.3を使い続けていたものである(笑)。
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