シャーロッキアンの独り言〜今更ながらの電子書籍の楽しみ方
この時代になっても本好きの一人としてはやはり、本は紙のページをめくりながら読むのが良く、パソコンのモニタ上やタブレットでは読んだ気がしない。しかし今更ではあるが、電子書籍類もその利点を生かした使い方をすれば一般書籍では味わえない面白いことに出会える。私が電子書籍を使う(読むのではなく)のはもっぱら検索目的なのだ...。
いきなりだが、私は自称シャーロッキアンであり、日本シャーロック・ホームズクラブ会員の末席を汚している。シャーロッキアンとは「イギリスのヴィクトリア朝に活躍した名探偵シャーロック・ホームズとその相棒ワトソンは実在の人物であり、コナン・ドイルが発表した事件は実際に起こったこととして一連の時代と人物、そして各事件を研究し楽しむひとたちをいう。
したがって、様々な関連著作はもとより、かつてNHKで放映されたジェレミー・ブレット主演「シャーロック・ホームズの冒険」のDVD全集などを時間があるときには常に楽しんでいる。
そんな私だから、先般 Kindleを手に入れた時、一番最初に揃えた電子書籍はシャーロック・ホームズ物語の全巻だった。さらに随分昔の話しになるが、新潮社版ハイブリッドCD-ROM「シャーロック・ホームズ全集」が出たときは即手に入れたものだが、そこには一枚のCD-ROMに全60編の事件がすべて網羅されていた。

※新潮社版ハイブリッドCD-ROM「シャーロック・ホームズ全集」
さてこのCD-ROM版「シャーロック・ホームズ全集」は初版の挿絵600枚と3,000項目の索引を備えたものだけに当時は大変喜んだものだが、パソコンで内容を読んだことはほとんどない。主に通常の本では出来得ない検索をあれこれと試して楽しむのが主な使い方となっていた。Mac OS Xになってからは使えなくなったのが何とも残念なのだが…。

※新潮社版ハイブリッドCD-ROM「シャーロック・ホームズ全集」をMac OS9.1で起動したスタート画面
ともあれ例えば、マシュー・バンソン編著の「シャーロック・ホームズ百科事典」という書籍に「…ベイカー街にもガソジンがあり、2度登場している…」と記されている一文があった。ふと閃いて「シャーロック・ホームズ全集」のCD-ROMを取りだして確認することにした。

※マシュー・バンソン編著/日暮雅通監訳「シャーロック・ホームズ百科事典」原書房刊
"ガソジン(GASOGENE)" とは当時の炭酸水製造器、すなわちソーダサイフォンのことなのだが、ホームズ物語にとってはパイプとかディアストーカー、拡大鏡などに次いでシンボル的な存在であり、ニューヨークのシャーロッキアン団体、ベイカー・ストリート・イレギュラーズの会合シンボルにもなっている。何しろ団体の会長の役職名を “GASOGENE” にしているほどだ。

※ベイカー・ストリート・ジャーナル(1946年1月号掲載)、前記「シャーロック・ホームズ百科事典」から転載
ちなみにベイカー・ストリート・イレギュラーズは世界最古の歴史を持つ本格的なシャーロキアン団体で、フランクリン・ルーズベルト、ハリー・トルーマン、アイザック・アシモフやホームズ俳優で知られているウィリアム・ジレットなどの著名人たちがこぞって会員だったことでも知られている。
そう... “ガソジン” だが「シャーロック・ホームズ百科事典」によると正典中2度登場したとあるが、私が子供の頃から百回以上も本編を読んだ記憶だと、もっと多いという印象があった…。それこそ良い機会だからこのCD-ROMで調べてみようと早速「ソーダ」という単語で全文を検索してみた。

※「ソーダ」で全文検索を実行
その結果…当然のことながら、ソーダ水のあるところにガソジンがある理屈からいえば、「四つの署名」「ボヘミアの醜聞」「赤髪組合」「花嫁失踪事件」「ウィステリア荘」と計5作品に登場することが判明した。





※全文検索の結果、上記5作品に「ソーダ」という箇所があることが判明
いまだに電子書籍より実際の本の方が好きな1人だとしても、こうした検索は電子書籍ならではの楽しみ方であり、かつ調べ物に強力な武器となる。
作品に対してこの種の検索を意識すると、作品への視点が変わることもあって面白い。これまた「青空文庫」による夏目漱石「坊ちゃん」に "マドンナ" という文字が29回登場する…といったことは、書籍のページをめくって数えるのではなかなか辛いものがある(笑)。
ただし当然のことながら日本語の検索は翻訳の如何によって、そして検索するワードで大きく変わってしまうし、検索という機能が文字通り正確に働かない媒体もあるのでなかなかに面倒ではある。事実Kindleの日本語検索はまだ未熟のようで、端末にダウンロードしたものについては横断しての検索も可能な筈が取りこぼしが多いという現実がある。

※愛用のKindleにも全ホームズ物語がダウンロード済みだが検索は難が多い
そうした意味においては全文検索が可能な新潮社版ハイブリッドCD-ROM「シャーロック・ホームズ全集」はMac OS9.1までしか使えないのが厳しいがまだまだ貴重な資料なのである。
最後に余談だが、シャーロック・ホームズ関連の事典といえば日本シャーロック・ホームズ・クラブの主催者、小林司/東山あかね編で東京堂書店から出版されている「シャーロック・ホームズ大事典」という分厚い1冊がある。しかし本事典には「ガソジン」も「ソーダ」も「炭酸水」も記載がない。これはかなり問題だとシャーロッキアンの1人として考える。日本のシャーロック・ホームズ・クラブ総本山に一会員が喧嘩を売る訳ではないが、大変困ったことなのだ…。

※小林司/東山あかね編「シャーロック・ホームズ大事典」東京堂書店刊
ともかく、シャーロック・ホームズとワトソンが住んでいたベーカー街の部屋には間違いなくソーダサイフォンは存在した。そして「…ワトスン君、ソーダ水で割ったブランデーを飲んでもらったがいいだろう…」(ホームズ最後の挨拶~ウイステリア荘)とホームズはソーダ割のブランデーを人に勧めるシーンは幾多あるものの、どうもホームズ自身はウィスキー・ソーダよりワインやクラレットの方が好きだったようである。
ということで、個人的によく検索機能を使う本といえば、このシャーロック・ホームズ物語の他には松本侑子訳「赤毛のアン」と「聖書」がある。これらの豊かな物語性をより理解するためには詳細な点の解釈や理解が不可欠だと信じている。そのためには時に原著(聖書はそうもいかないが)にあたることは勿論、検索機能を十分活用することが大切だと考えているのだが...。
いきなりだが、私は自称シャーロッキアンであり、日本シャーロック・ホームズクラブ会員の末席を汚している。シャーロッキアンとは「イギリスのヴィクトリア朝に活躍した名探偵シャーロック・ホームズとその相棒ワトソンは実在の人物であり、コナン・ドイルが発表した事件は実際に起こったこととして一連の時代と人物、そして各事件を研究し楽しむひとたちをいう。
したがって、様々な関連著作はもとより、かつてNHKで放映されたジェレミー・ブレット主演「シャーロック・ホームズの冒険」のDVD全集などを時間があるときには常に楽しんでいる。
そんな私だから、先般 Kindleを手に入れた時、一番最初に揃えた電子書籍はシャーロック・ホームズ物語の全巻だった。さらに随分昔の話しになるが、新潮社版ハイブリッドCD-ROM「シャーロック・ホームズ全集」が出たときは即手に入れたものだが、そこには一枚のCD-ROMに全60編の事件がすべて網羅されていた。

※新潮社版ハイブリッドCD-ROM「シャーロック・ホームズ全集」
さてこのCD-ROM版「シャーロック・ホームズ全集」は初版の挿絵600枚と3,000項目の索引を備えたものだけに当時は大変喜んだものだが、パソコンで内容を読んだことはほとんどない。主に通常の本では出来得ない検索をあれこれと試して楽しむのが主な使い方となっていた。Mac OS Xになってからは使えなくなったのが何とも残念なのだが…。

※新潮社版ハイブリッドCD-ROM「シャーロック・ホームズ全集」をMac OS9.1で起動したスタート画面
ともあれ例えば、マシュー・バンソン編著の「シャーロック・ホームズ百科事典」という書籍に「…ベイカー街にもガソジンがあり、2度登場している…」と記されている一文があった。ふと閃いて「シャーロック・ホームズ全集」のCD-ROMを取りだして確認することにした。

※マシュー・バンソン編著/日暮雅通監訳「シャーロック・ホームズ百科事典」原書房刊
"ガソジン(GASOGENE)" とは当時の炭酸水製造器、すなわちソーダサイフォンのことなのだが、ホームズ物語にとってはパイプとかディアストーカー、拡大鏡などに次いでシンボル的な存在であり、ニューヨークのシャーロッキアン団体、ベイカー・ストリート・イレギュラーズの会合シンボルにもなっている。何しろ団体の会長の役職名を “GASOGENE” にしているほどだ。

※ベイカー・ストリート・ジャーナル(1946年1月号掲載)、前記「シャーロック・ホームズ百科事典」から転載
ちなみにベイカー・ストリート・イレギュラーズは世界最古の歴史を持つ本格的なシャーロキアン団体で、フランクリン・ルーズベルト、ハリー・トルーマン、アイザック・アシモフやホームズ俳優で知られているウィリアム・ジレットなどの著名人たちがこぞって会員だったことでも知られている。
そう... “ガソジン” だが「シャーロック・ホームズ百科事典」によると正典中2度登場したとあるが、私が子供の頃から百回以上も本編を読んだ記憶だと、もっと多いという印象があった…。それこそ良い機会だからこのCD-ROMで調べてみようと早速「ソーダ」という単語で全文を検索してみた。

※「ソーダ」で全文検索を実行
その結果…当然のことながら、ソーダ水のあるところにガソジンがある理屈からいえば、「四つの署名」「ボヘミアの醜聞」「赤髪組合」「花嫁失踪事件」「ウィステリア荘」と計5作品に登場することが判明した。





※全文検索の結果、上記5作品に「ソーダ」という箇所があることが判明
いまだに電子書籍より実際の本の方が好きな1人だとしても、こうした検索は電子書籍ならではの楽しみ方であり、かつ調べ物に強力な武器となる。
作品に対してこの種の検索を意識すると、作品への視点が変わることもあって面白い。これまた「青空文庫」による夏目漱石「坊ちゃん」に "マドンナ" という文字が29回登場する…といったことは、書籍のページをめくって数えるのではなかなか辛いものがある(笑)。
ただし当然のことながら日本語の検索は翻訳の如何によって、そして検索するワードで大きく変わってしまうし、検索という機能が文字通り正確に働かない媒体もあるのでなかなかに面倒ではある。事実Kindleの日本語検索はまだ未熟のようで、端末にダウンロードしたものについては横断しての検索も可能な筈が取りこぼしが多いという現実がある。

※愛用のKindleにも全ホームズ物語がダウンロード済みだが検索は難が多い
そうした意味においては全文検索が可能な新潮社版ハイブリッドCD-ROM「シャーロック・ホームズ全集」はMac OS9.1までしか使えないのが厳しいがまだまだ貴重な資料なのである。
最後に余談だが、シャーロック・ホームズ関連の事典といえば日本シャーロック・ホームズ・クラブの主催者、小林司/東山あかね編で東京堂書店から出版されている「シャーロック・ホームズ大事典」という分厚い1冊がある。しかし本事典には「ガソジン」も「ソーダ」も「炭酸水」も記載がない。これはかなり問題だとシャーロッキアンの1人として考える。日本のシャーロック・ホームズ・クラブ総本山に一会員が喧嘩を売る訳ではないが、大変困ったことなのだ…。

※小林司/東山あかね編「シャーロック・ホームズ大事典」東京堂書店刊
ともかく、シャーロック・ホームズとワトソンが住んでいたベーカー街の部屋には間違いなくソーダサイフォンは存在した。そして「…ワトスン君、ソーダ水で割ったブランデーを飲んでもらったがいいだろう…」(ホームズ最後の挨拶~ウイステリア荘)とホームズはソーダ割のブランデーを人に勧めるシーンは幾多あるものの、どうもホームズ自身はウィスキー・ソーダよりワインやクラレットの方が好きだったようである。
ということで、個人的によく検索機能を使う本といえば、このシャーロック・ホームズ物語の他には松本侑子訳「赤毛のアン」と「聖書」がある。これらの豊かな物語性をより理解するためには詳細な点の解釈や理解が不可欠だと信じている。そのためには時に原著(聖書はそうもいかないが)にあたることは勿論、検索機能を十分活用することが大切だと考えているのだが...。
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