私のイライザよ!ガラテアよ!造形プロジェクト第2弾〜準備編
お気に入りのヘッドマネキンを顔だけではなくバストアップ程度のビジュアルが撮れるようにと紙粘土や発泡スチロールなどを使い、初めての経験ながらボディの造形を試みたことを過日ご紹介した。まずまずそれらしくはできたと思っているが不満も多いので再び別のやり方を考えてみた。題して「私のイライザよ!ガラテアよ!造形プロジェクト第2弾」だが今回はその準備編をお届けする(笑)。
まず「イライザ」と聞いてコンピュータに興味のある方ならMITのジョセフ・ワイゼンバウムが1964年から1966年にかけて書き上げた自然言語処理プログラム ELIZA を思い出す人が多いかも知れない。
ただしワイゼンバウムが付けたこの名はジョージ・バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」の登場人物イライザ・ドゥーリトルにちなんだものだ。
この戯曲「ピグマリオン」はミュージカルやその映画化作品「マイ・フェア・レディ」の原作にもなったことはご存じだと思う。そのヒロインである花売り娘の名も勿論イライザだ。

※1964年制作「マイ・フェア・レディ」。主演はオードリー・ヘプバーン、レックス・ハリスン
そもそもの「ピグマリオン(ピュグマリオーン)」とはギリシア神話に登場するキプロス島の王の名だった。様々な解釈や伝説のバリエーションがあるものの、その1つをご紹介すれば、彼は現実の女性に失望し自らの理想…女神アプロディーテーの姿に似せて象牙の塊からその姿を掘り出すことに熱中する。ガラテアと名付けた像を掘り進むうちにピグマリオンは自らの彫刻に恋をしてしまう。彫像に接しているうちに彼の思いはさらに強くなっていき食事も喉に通らなくなってしまい次第に衰弱していく。その姿を見るに見かねた美の女神アプロディーテーがピグマリオンの願いを叶え彫像に生命を与えてくれる。ピグマリオンは生身の人間となったガラテアを妻に迎えたという物語である。

※ジャン=レオン・ジェローム作「ピグマリオンとガラテア」 (1890)。彫像が生身の人間になる瞬間を描いている。メトロポリタン美術館蔵(ウィキベディアより転載)
このギリシャ神話は芸術家たちに大きな刺激とインスピレーションを与えたしバーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」もその後の舞台、映画、文学に多大な影響を与えたことは周知のとおりである。ために "像=人形" に恋をするという行為を「ピグマリオンコンプレックス」と呼ぶようになった…。さらに「男が自分の好みに合わせて女性を教育する」といった意味も含まれるというから確かに危ない種を持っているし「マイ・フェア・レディ」もそうした典型的なストーリーだ…。
だから、友人たちがきっかけは仕事だったとはいえ、マネキンに関しての情報を集めるだけならまだしも実際にマネキンを手元に置き、さらに頭しかないヘッドマネキンにボディを造作しようとする私に「お前...大丈夫か?」と心配してくれたのはこうした背景もあるわけだ。ただし明言しておくが、私は生身の女性に失望したわけでもなし、人形やマネキンより人間の方が絶対に好みなので念のため(笑)。
さて私のことはさておいて、今回の造形について自身の覚書的意味も含め、その準備段階を簡単に記しておきたい...。
まずなぜこんな面倒なことをやろうとするのか、マネキンなどいくらでも売ってるではないか...と思われるかも知れない。しかし初めて仕事絡みでマネキンの調達をやってみたが予算の問題もあるし今回のコンセプトに合い、かつ私の好みの顔のマネキンをと海外のメーカーは勿論、AmazonやeBayなども探してみたがフルボディのマネキンで納得のいく "顔" はなかったのである。
ただし面白いもので同時にマネキンの材質やその取扱方法などを学んでみようとたまたまウェブで見つけた安価なヘッドマネキンを手にしたが、その表情に...まあ惚れてしまったわけだ(笑)。できるならこの顔を持つ、すくなくとも半身のマネキンがあれば撮影の小道具として仕事に活用できると考えたのがそもそもの発端だった...。
ともかく前回は腰から下は下着のディスプレイ用の樹脂製ユニットを使ったが、ウエストから肩まではすべて芯材として発砲スチロールと一部針金を使い、その上を紙粘土で固めるという方法をとった。何しろ彫刻といったものに興味はあるにしろ実際にそれらしいことをやったのはすでに40年ほども前の事だから...言い訳めくが容易に思うような造形ができるはずもない。
ただし「ピグマリオン」とは違い、これは服を着せるための造形だ。したがって多少デコボコしてようが一部に穴が空いていようが見えない部分には注視しないことにしたが、そもそも人の形...それも実寸大で造形することの難しさをあらためて知った。したがって2度目は同じ方法はとらないことにした。
今回最大のミッションは造形的により完璧であることを目指したいと考え、ゼロから原型制作みたいに自分で作り上げるのではなく出来合いのトルソーを加工しようと発案した。そこでeBayでいろいろと探してみると首から腰下までの樹脂製トルソーマネキンが多々あることを知った。無論それらにも様々なポーズというかバリエーションがあるが、このトルソーにヘッドマネキンの首を繋げることができればベストではないか...。

※eBayで探した樹脂製トルソーが届いた
決断した私はまずそのトルソーを手に入れたが、確認するとこの成型は中空とはいえ厚みは3mmほどもある硬質樹脂でできている。これを思うように切断するには最低限の道具がいることは明白だ。ということで樹脂切断用の糸鋸や鋸、ドリルの刃、耐水性紙やすり、そして紙粘土などを揃えてみた。とはいえ「言うは易く行うは難し」だ。こんな柔な道具で巧く行くのか...。


※トルソーとヘッドマネキンを合体させて私なりのイライザ、ガラテアを作ろうという計画だが...(上)。最低限の道具を呪えた(下)
スティーブ・ジョブズは自分の事を「私は製品指向の人間だ」と言っているが、私はといえば「造形指向の人間」なのかも知れない。
長い間パーソナルコンピュータを使い込み、デジタル云々を追い続けてきたがそれ以前に絵を描き、クラシックギターやリュートもどきの楽器まで製作したし、いままたマネキンのボディ制作を彫刻でもやるかのような情熱をもってことにあたっている...。実体のあるモノ作りが好きなのだ。
さて続きは「私のイライザよ!ガラテアよ!造形プロジェクト第2弾」の結末をお楽しみに。といっても…まあ、楽しみにする方などほとんどいらっしゃらないとは思うが(笑)。
まず「イライザ」と聞いてコンピュータに興味のある方ならMITのジョセフ・ワイゼンバウムが1964年から1966年にかけて書き上げた自然言語処理プログラム ELIZA を思い出す人が多いかも知れない。
ただしワイゼンバウムが付けたこの名はジョージ・バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」の登場人物イライザ・ドゥーリトルにちなんだものだ。
この戯曲「ピグマリオン」はミュージカルやその映画化作品「マイ・フェア・レディ」の原作にもなったことはご存じだと思う。そのヒロインである花売り娘の名も勿論イライザだ。

※1964年制作「マイ・フェア・レディ」。主演はオードリー・ヘプバーン、レックス・ハリスン
そもそもの「ピグマリオン(ピュグマリオーン)」とはギリシア神話に登場するキプロス島の王の名だった。様々な解釈や伝説のバリエーションがあるものの、その1つをご紹介すれば、彼は現実の女性に失望し自らの理想…女神アプロディーテーの姿に似せて象牙の塊からその姿を掘り出すことに熱中する。ガラテアと名付けた像を掘り進むうちにピグマリオンは自らの彫刻に恋をしてしまう。彫像に接しているうちに彼の思いはさらに強くなっていき食事も喉に通らなくなってしまい次第に衰弱していく。その姿を見るに見かねた美の女神アプロディーテーがピグマリオンの願いを叶え彫像に生命を与えてくれる。ピグマリオンは生身の人間となったガラテアを妻に迎えたという物語である。

※ジャン=レオン・ジェローム作「ピグマリオンとガラテア」 (1890)。彫像が生身の人間になる瞬間を描いている。メトロポリタン美術館蔵(ウィキベディアより転載)
このギリシャ神話は芸術家たちに大きな刺激とインスピレーションを与えたしバーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」もその後の舞台、映画、文学に多大な影響を与えたことは周知のとおりである。ために "像=人形" に恋をするという行為を「ピグマリオンコンプレックス」と呼ぶようになった…。さらに「男が自分の好みに合わせて女性を教育する」といった意味も含まれるというから確かに危ない種を持っているし「マイ・フェア・レディ」もそうした典型的なストーリーだ…。
だから、友人たちがきっかけは仕事だったとはいえ、マネキンに関しての情報を集めるだけならまだしも実際にマネキンを手元に置き、さらに頭しかないヘッドマネキンにボディを造作しようとする私に「お前...大丈夫か?」と心配してくれたのはこうした背景もあるわけだ。ただし明言しておくが、私は生身の女性に失望したわけでもなし、人形やマネキンより人間の方が絶対に好みなので念のため(笑)。
さて私のことはさておいて、今回の造形について自身の覚書的意味も含め、その準備段階を簡単に記しておきたい...。
まずなぜこんな面倒なことをやろうとするのか、マネキンなどいくらでも売ってるではないか...と思われるかも知れない。しかし初めて仕事絡みでマネキンの調達をやってみたが予算の問題もあるし今回のコンセプトに合い、かつ私の好みの顔のマネキンをと海外のメーカーは勿論、AmazonやeBayなども探してみたがフルボディのマネキンで納得のいく "顔" はなかったのである。
ただし面白いもので同時にマネキンの材質やその取扱方法などを学んでみようとたまたまウェブで見つけた安価なヘッドマネキンを手にしたが、その表情に...まあ惚れてしまったわけだ(笑)。できるならこの顔を持つ、すくなくとも半身のマネキンがあれば撮影の小道具として仕事に活用できると考えたのがそもそもの発端だった...。
ともかく前回は腰から下は下着のディスプレイ用の樹脂製ユニットを使ったが、ウエストから肩まではすべて芯材として発砲スチロールと一部針金を使い、その上を紙粘土で固めるという方法をとった。何しろ彫刻といったものに興味はあるにしろ実際にそれらしいことをやったのはすでに40年ほども前の事だから...言い訳めくが容易に思うような造形ができるはずもない。
ただし「ピグマリオン」とは違い、これは服を着せるための造形だ。したがって多少デコボコしてようが一部に穴が空いていようが見えない部分には注視しないことにしたが、そもそも人の形...それも実寸大で造形することの難しさをあらためて知った。したがって2度目は同じ方法はとらないことにした。
今回最大のミッションは造形的により完璧であることを目指したいと考え、ゼロから原型制作みたいに自分で作り上げるのではなく出来合いのトルソーを加工しようと発案した。そこでeBayでいろいろと探してみると首から腰下までの樹脂製トルソーマネキンが多々あることを知った。無論それらにも様々なポーズというかバリエーションがあるが、このトルソーにヘッドマネキンの首を繋げることができればベストではないか...。

※eBayで探した樹脂製トルソーが届いた
決断した私はまずそのトルソーを手に入れたが、確認するとこの成型は中空とはいえ厚みは3mmほどもある硬質樹脂でできている。これを思うように切断するには最低限の道具がいることは明白だ。ということで樹脂切断用の糸鋸や鋸、ドリルの刃、耐水性紙やすり、そして紙粘土などを揃えてみた。とはいえ「言うは易く行うは難し」だ。こんな柔な道具で巧く行くのか...。


※トルソーとヘッドマネキンを合体させて私なりのイライザ、ガラテアを作ろうという計画だが...(上)。最低限の道具を呪えた(下)
スティーブ・ジョブズは自分の事を「私は製品指向の人間だ」と言っているが、私はといえば「造形指向の人間」なのかも知れない。
長い間パーソナルコンピュータを使い込み、デジタル云々を追い続けてきたがそれ以前に絵を描き、クラシックギターやリュートもどきの楽器まで製作したし、いままたマネキンのボディ制作を彫刻でもやるかのような情熱をもってことにあたっている...。実体のあるモノ作りが好きなのだ。
さて続きは「私のイライザよ!ガラテアよ!造形プロジェクト第2弾」の結末をお楽しみに。といっても…まあ、楽しみにする方などほとんどいらっしゃらないとは思うが(笑)。
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