初代ボンダイブルーのiMacを再考する
Apple30年史の中で、いくつかのエポックメーキングな出来事があったが、1998年5月6日、WWDCの場で突然発表された初代iMacほど印象的な製品はなかった。まさしくAppleの経営状態を救い、そのデザインコンセプトはカルチャーとなった。
いま、久しぶりに初代ボンダイブルーのiMacを手元に置き、いくつか確認事をしているが、早いものでそのiMacが登場してから今年で9年になる。したがってMacintoshユーザーの中にも、その初代iMacの姿を知らない人たちがかなり増えてきた事も仕方のないことかも知れない。しかし私自身はその日のことをはっきりと覚えている。

※久しぶりに顔見せした当研究所所有の初代iMac
1998年5月、私の会社のプログラマたちは恒例のWWDC(世界開発者会議)出席のために米国のサンノゼにいた。iMacはその場でいきなり発表されたが、これは事情通であるはずの我々が勉強不足だったのではなく、Appleの社員自体がその事実をまったく知らされていなかったほど、情報がコントロールされていた結果だった。
発表後、サンノゼのコンベンションセンターに展示されたiMacも最初は撮影許可が下りなかったというが、現地にいるスタッフからデジカメで撮影した複数枚の映像がネットワークで送られてきた。


※1998年5月、WWDCで突然発表されたiMac(上)。下は発表後会場に展示された実機だが、しばらくは撮影が禁じられていた
その曲線が目立つデザインとフロントのモニター回りにある印象的な縦縞模様などを見たとき、私は斬新なデザインという前に、60〜70年代のレトロ感を感じたことを昨日のことのように覚えている。
次々と入ってくる情報によればそれは一体型のMacintoshであり、空冷ファンがないことなど、そのコンセプトは1984年に登場したMacintosh 128Kの再来だいうこと...。それにしても、何とフロッピーディスクドライブが廃されているということを知り、思いきったことをするものだと驚いた...(笑)。
そしてオーストラリアのシドニー近郊にあるビーチの名から取ったという "ボンダイブルー" のトランスルーセント(半透明)の本体カバーは不思議な魅力を醸し出していた。
クロックは233MHzのPowerPC G3、そして標準で32MBのRAM、15インチディスプレイ、4GBハードディスク、24倍速CD-ROMドライブを搭載し、さらにV.90対応モデムと10/100ベース・イーサーネットが搭載されていた。
フロントには左右にステレオスピーカーが配置され、定番のワンボタン・マウスもiMacに合わせて設計された円形のものが採用されていた。また向かって右のスピーカー端にはヘッドフォンポートが2つ装備されていたが、これはソニーの初代ウォークマンを思い出させた...。
さらにモニター正面から見て右側サイドにはポート類がまとめられ、そこには丁寧にもカバーが付いていた。
そしてまだ記憶が新しいが、そのiMacは空前の売上を記録し、Appleの経営状態は奇跡的な回復を見せることになる。


※初代iMacのフロントCD-ROMドライブ部(上)とスピーカー部にある2個のヘッドフォンポート(下)
このiMacからトレンドが生まれた。ひとつは"インターネット時代の..."を意味した命名だったという"i"が、iMacの魅力にあやかろうと様々なものに付けられた。この傾向はそれから9年も経った現在も効力を発揮しているようだ。
余談だが、先日買ったワンコの服のブランドは"i-Dog"だった(笑)。
もうひとつのトレンドは、iMacのボンダイブルーを真似たトランスルーセントカラーの家電や文房具が続々と登場したことだ。

※1999年のMacworld Expoで出展されたトランスルーセントのワイヤレス電話機。iMacの魅力にあやかろうとする製品が続々と登場した
さてさて、おさらいはこの程度にしておくが、いまそのボンダイブルーのiMacを眼前にして感じたことを記しておきたい。
iMacはその大ヒットを受け、ご承知のようにその後は豊富なカラーリング戦略を推進したが、個人的にはこのボンダイブルーの色合いが一番好きだ。飽きないし、どこに置いてもしっくりする大変静かなパーソナルコンピュータである。そしてバックを含めてどこから眺めても美しい。そういえば、今更ではあるがアップルロゴが筐体の上部に付いたのはこのiMacが最初だったはずだ...。

※写真は筐体の上部にあるアップルロゴ
私は目的があるので、あえてOSをMac OS 8.xに留めているが、ファームウェアのアップデートをすることでMac OS Xも走るから、現役でお使いのユーザーも多いと思う。
やはり多くの歴代Macintoshシリーズの中にあって、名機といってよいだろう。ただひとつの汚点...その円形マウスを除いて...(笑)。

※円形のため操作方向が捉えにくく大変使いづらいマウスだった。即サードパーティから上に被せて使うマウスカバーが発売された(笑)
このiMacを眺めていたら、急に初台の東京オペラシティタワーにあるアップル社ブリーフィングルームでの出来事をその場にいるように思い出した。無論1998年のiMacリリース直前のことである...。
そこには十数社のVIPが集まっていたが、アップル側は当時の代表取締役であった原田社長と福田部長らが同席していた。
いきなり福田部長は「iMacは皆様方デベロッパ向けに豊富に在庫を確保しています。何台必要か申し出てください」と言い出した。
私らは目を合わせて訝しく思った。なぜなら長いアップルとのビジネスの中であれほど願い申し出ていた、「新製品は一般市場に投入する前にデベロッパに販売してくれ」という依頼はそれまで実現されたことがなかったからだ。
このボンダイブルーのiMacは最初で最後、正式な販売の数日前に我々デベロッパに届いた意味でも記念すべき製品となった(笑)。私はその場で3台予約したことを鮮明に覚えている。
いま、久しぶりに初代ボンダイブルーのiMacを手元に置き、いくつか確認事をしているが、早いものでそのiMacが登場してから今年で9年になる。したがってMacintoshユーザーの中にも、その初代iMacの姿を知らない人たちがかなり増えてきた事も仕方のないことかも知れない。しかし私自身はその日のことをはっきりと覚えている。

※久しぶりに顔見せした当研究所所有の初代iMac
1998年5月、私の会社のプログラマたちは恒例のWWDC(世界開発者会議)出席のために米国のサンノゼにいた。iMacはその場でいきなり発表されたが、これは事情通であるはずの我々が勉強不足だったのではなく、Appleの社員自体がその事実をまったく知らされていなかったほど、情報がコントロールされていた結果だった。
発表後、サンノゼのコンベンションセンターに展示されたiMacも最初は撮影許可が下りなかったというが、現地にいるスタッフからデジカメで撮影した複数枚の映像がネットワークで送られてきた。


※1998年5月、WWDCで突然発表されたiMac(上)。下は発表後会場に展示された実機だが、しばらくは撮影が禁じられていた
その曲線が目立つデザインとフロントのモニター回りにある印象的な縦縞模様などを見たとき、私は斬新なデザインという前に、60〜70年代のレトロ感を感じたことを昨日のことのように覚えている。
次々と入ってくる情報によればそれは一体型のMacintoshであり、空冷ファンがないことなど、そのコンセプトは1984年に登場したMacintosh 128Kの再来だいうこと...。それにしても、何とフロッピーディスクドライブが廃されているということを知り、思いきったことをするものだと驚いた...(笑)。
そしてオーストラリアのシドニー近郊にあるビーチの名から取ったという "ボンダイブルー" のトランスルーセント(半透明)の本体カバーは不思議な魅力を醸し出していた。
クロックは233MHzのPowerPC G3、そして標準で32MBのRAM、15インチディスプレイ、4GBハードディスク、24倍速CD-ROMドライブを搭載し、さらにV.90対応モデムと10/100ベース・イーサーネットが搭載されていた。
フロントには左右にステレオスピーカーが配置され、定番のワンボタン・マウスもiMacに合わせて設計された円形のものが採用されていた。また向かって右のスピーカー端にはヘッドフォンポートが2つ装備されていたが、これはソニーの初代ウォークマンを思い出させた...。
さらにモニター正面から見て右側サイドにはポート類がまとめられ、そこには丁寧にもカバーが付いていた。
そしてまだ記憶が新しいが、そのiMacは空前の売上を記録し、Appleの経営状態は奇跡的な回復を見せることになる。


※初代iMacのフロントCD-ROMドライブ部(上)とスピーカー部にある2個のヘッドフォンポート(下)
このiMacからトレンドが生まれた。ひとつは"インターネット時代の..."を意味した命名だったという"i"が、iMacの魅力にあやかろうと様々なものに付けられた。この傾向はそれから9年も経った現在も効力を発揮しているようだ。
余談だが、先日買ったワンコの服のブランドは"i-Dog"だった(笑)。
もうひとつのトレンドは、iMacのボンダイブルーを真似たトランスルーセントカラーの家電や文房具が続々と登場したことだ。

※1999年のMacworld Expoで出展されたトランスルーセントのワイヤレス電話機。iMacの魅力にあやかろうとする製品が続々と登場した
さてさて、おさらいはこの程度にしておくが、いまそのボンダイブルーのiMacを眼前にして感じたことを記しておきたい。
iMacはその大ヒットを受け、ご承知のようにその後は豊富なカラーリング戦略を推進したが、個人的にはこのボンダイブルーの色合いが一番好きだ。飽きないし、どこに置いてもしっくりする大変静かなパーソナルコンピュータである。そしてバックを含めてどこから眺めても美しい。そういえば、今更ではあるがアップルロゴが筐体の上部に付いたのはこのiMacが最初だったはずだ...。

※写真は筐体の上部にあるアップルロゴ
私は目的があるので、あえてOSをMac OS 8.xに留めているが、ファームウェアのアップデートをすることでMac OS Xも走るから、現役でお使いのユーザーも多いと思う。
やはり多くの歴代Macintoshシリーズの中にあって、名機といってよいだろう。ただひとつの汚点...その円形マウスを除いて...(笑)。

※円形のため操作方向が捉えにくく大変使いづらいマウスだった。即サードパーティから上に被せて使うマウスカバーが発売された(笑)
このiMacを眺めていたら、急に初台の東京オペラシティタワーにあるアップル社ブリーフィングルームでの出来事をその場にいるように思い出した。無論1998年のiMacリリース直前のことである...。
そこには十数社のVIPが集まっていたが、アップル側は当時の代表取締役であった原田社長と福田部長らが同席していた。
いきなり福田部長は「iMacは皆様方デベロッパ向けに豊富に在庫を確保しています。何台必要か申し出てください」と言い出した。
私らは目を合わせて訝しく思った。なぜなら長いアップルとのビジネスの中であれほど願い申し出ていた、「新製品は一般市場に投入する前にデベロッパに販売してくれ」という依頼はそれまで実現されたことがなかったからだ。
このボンダイブルーのiMacは最初で最後、正式な販売の数日前に我々デベロッパに届いた意味でも記念すべき製品となった(笑)。私はその場で3台予約したことを鮮明に覚えている。
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