別次元のジョブズ本、脇英世氏の新刊「スティーブ・ジョブズ」II と III に寄せて
2017年4月10日、「スティーブ・ジョブズ」と題する2冊の書籍が出版された。「スティーブ・ジョブズ II 〜 アップルIIIとリサの蹉跌」と「スティーブ・ジョブズ III 〜 マッキントッシュの栄光と悲惨」である。ちなみに本シリーズの I にあたる「スティーブ・ジョブズ 〜 青春の光と影」は2014年10月10日に出版されているからその続編という位置づけの新刊書である。
これらの著者、脇英世氏にはこの3冊とは別に「スティーブ・ジョブズの揺りかご 〜 シリコンバレー」という著書もあるが、私にとって近年スティーブ・ジョブズのあれこれを書くとき一番信頼に値する資料なのだ。
今回はこれら脇英世氏著「スティーブ・ジョブズ」シリーズ本の特徴をご紹介したいと思う。

ご承知のようにスティーブ・ジョブズに関する書籍は数多い。公式伝記と称されるウォルター・アイザックソン著「スティーブ・ジョブズ」はもとより、彼とアップルの歴史を語るもの、スティーブの名言を綴ったもの、そのプレゼンテーションの妙を紹介しあやかろうとするもの、スティーブ流ビジネスといった視点のものなどなど多彩である。
それだけスティーブ・ジョブズという男がさまざまな意味で注目され、良くも悪くも不世出の天才経営者、ビジョナリーとして評価されていることを意味する。
我々はそうした伝記や関連本を読むことで特異な能力を持つスティーブ・ジョブズという男を理解しようと試みる。アップルコンピュータというガレージカンパニーからスタートし、最も成功したパーソナルコンピュータメーカーの歴史を辿るストーリーに接し心躍る。そもそも我々読者はサクセスストーリーが好きだ。それもとびきりユニークで面白いストーリーが…。
しかしそれぞれの本は視点というかコンセプトが定まっているから、アップルやスティーブ・ジョブズの一端を紹介しているに過ぎないことはまず理解しておくべきだろう。それにこの種の本は多くの関係者に取材するのが定石だとしても間違いが多々存在する。また意図的に事実を曲げてある本もある。
例えばスティーブ・ジョブズが最初に付き合い、後にリサと名付けた娘を産んだ女性の名はプライバシーを考慮してか長い間こうした書籍では伏せられていた。
ジェフリー・S・ヤングとウィリアム・L・サイモンの共著「スティーブ・ジョブズ 偶像復活」によれば彼女の名はクリス・アンとされたし、マイケル・モーリッツ著「スティーブ・ジョブズの王国」ではナンシー・ロジャースと書かれている。こうした例はデリケートで特異なケースだが、書籍に書かれていることを100%真実だと鵜呑みにしては間違いだと言うことの好例だ。ちなみに彼女の本名はクリスアン・ブレナンである。
ともあれ伝記にしてもノンフィクションにしても複数の著作の内容を付き合わせてみると違っていたり重要な出来事だと思うことが抜けていたりすることが多いのもこの種の本の宿命である。
しかしこうした本と比べると脇英世氏の一連の著作はかなり異質であることがわかるだろう。
本書のスタンスは「スティーブ・ジョブズ ~ 青春の光と影」のまえがきに「スティーブ・ジョブズの個別のエピソードをあまり克明に追求することよりも、スティーブ・ジョブズが生まれ育った時代はどんな時代であり、スティーブ・ジョブズは、そこにどう位置づけられるかに重点を置いた」とある点に集約されている。
時代背景や生まれ育った環境を無視して人の人生を語るなど無意味でもあるし読む私たちにとっても役に立たないと思う。
また私が脇英世氏の著作に信頼を感じるのは可能な限り一次資料に当たっていることにある。そしてスティーブ・ジョブズがなにをしたかだけでなく、どんなことに関心を示し何を考えていたかを浮き彫りにしてくれるし、それまで膨大な関連書や資料を読んできたつもりだった私などにも知らない事が多々あることをあらためて気づかせてくれる本であった。
要は誤解を恐れず申し上げれば、脇英世氏の著作は良い意味で「売れることをあまり意識されていない」と感じるのだ。要は出版側や読者に媚びず、物事をありのままに追っていくその姿勢はやはりジャーナリストのそれではなく学者の姿勢であると感じる。
したがって「スティーブ・ジョブズ II ~ アップルIIIとリサの蹉跌」と「スティーブ・ジョブズ III ~ マッキントッシュの栄光と悲惨」および「スティーブ・ジョブズ ~ 青春の光と影」はスティーブ・ジョブズやアップルの伝記というより資料の塊なのである。
そのボリュームも尋常ではない。1980年代あたりから1985年のスティーブ・ジョブズがアップルを追放されるまでの6年間にフォーカスした2冊合計で800ページもの詳細な内容である。
さらに近年の著作の多くは索引が省略されているものも多い。しかし本書はさすがにきちんと索引が用意されているし、引用・参考文献のリストも充実し良質の資料たる所以でもある。
なお僭越ではあるが、「スティーブ・ジョブズ III ~ マッキントッシュの栄光と悲惨」の引用・参考文献のリストの中に脇英世氏が推奨するホームページとして私の名が、あのスティーブ・ウォズニアック氏とアンディ・ハーツフェルド氏と共にご紹介いただいている。大変光栄であり、ありがたく励みになる。
最後に脇英世氏はご承知の方も多いと思うが工学博士で、2008年より東京電機大学工学部長、工学部第一部長、工学部第二部長を2期勤め、現東京電機大学工学部情報通信工学科教授である。先月まで同大学の出版局長でもあったが出版局長を3月31日を持って退任されたという。
無責任な一読者としては是非是非「スティーブ・ジョブズ IV」登場にも期待したい。
これらの著者、脇英世氏にはこの3冊とは別に「スティーブ・ジョブズの揺りかご 〜 シリコンバレー」という著書もあるが、私にとって近年スティーブ・ジョブズのあれこれを書くとき一番信頼に値する資料なのだ。
今回はこれら脇英世氏著「スティーブ・ジョブズ」シリーズ本の特徴をご紹介したいと思う。

ご承知のようにスティーブ・ジョブズに関する書籍は数多い。公式伝記と称されるウォルター・アイザックソン著「スティーブ・ジョブズ」はもとより、彼とアップルの歴史を語るもの、スティーブの名言を綴ったもの、そのプレゼンテーションの妙を紹介しあやかろうとするもの、スティーブ流ビジネスといった視点のものなどなど多彩である。
それだけスティーブ・ジョブズという男がさまざまな意味で注目され、良くも悪くも不世出の天才経営者、ビジョナリーとして評価されていることを意味する。
我々はそうした伝記や関連本を読むことで特異な能力を持つスティーブ・ジョブズという男を理解しようと試みる。アップルコンピュータというガレージカンパニーからスタートし、最も成功したパーソナルコンピュータメーカーの歴史を辿るストーリーに接し心躍る。そもそも我々読者はサクセスストーリーが好きだ。それもとびきりユニークで面白いストーリーが…。
しかしそれぞれの本は視点というかコンセプトが定まっているから、アップルやスティーブ・ジョブズの一端を紹介しているに過ぎないことはまず理解しておくべきだろう。それにこの種の本は多くの関係者に取材するのが定石だとしても間違いが多々存在する。また意図的に事実を曲げてある本もある。
例えばスティーブ・ジョブズが最初に付き合い、後にリサと名付けた娘を産んだ女性の名はプライバシーを考慮してか長い間こうした書籍では伏せられていた。
ジェフリー・S・ヤングとウィリアム・L・サイモンの共著「スティーブ・ジョブズ 偶像復活」によれば彼女の名はクリス・アンとされたし、マイケル・モーリッツ著「スティーブ・ジョブズの王国」ではナンシー・ロジャースと書かれている。こうした例はデリケートで特異なケースだが、書籍に書かれていることを100%真実だと鵜呑みにしては間違いだと言うことの好例だ。ちなみに彼女の本名はクリスアン・ブレナンである。
ともあれ伝記にしてもノンフィクションにしても複数の著作の内容を付き合わせてみると違っていたり重要な出来事だと思うことが抜けていたりすることが多いのもこの種の本の宿命である。
しかしこうした本と比べると脇英世氏の一連の著作はかなり異質であることがわかるだろう。
本書のスタンスは「スティーブ・ジョブズ ~ 青春の光と影」のまえがきに「スティーブ・ジョブズの個別のエピソードをあまり克明に追求することよりも、スティーブ・ジョブズが生まれ育った時代はどんな時代であり、スティーブ・ジョブズは、そこにどう位置づけられるかに重点を置いた」とある点に集約されている。
時代背景や生まれ育った環境を無視して人の人生を語るなど無意味でもあるし読む私たちにとっても役に立たないと思う。
また私が脇英世氏の著作に信頼を感じるのは可能な限り一次資料に当たっていることにある。そしてスティーブ・ジョブズがなにをしたかだけでなく、どんなことに関心を示し何を考えていたかを浮き彫りにしてくれるし、それまで膨大な関連書や資料を読んできたつもりだった私などにも知らない事が多々あることをあらためて気づかせてくれる本であった。
要は誤解を恐れず申し上げれば、脇英世氏の著作は良い意味で「売れることをあまり意識されていない」と感じるのだ。要は出版側や読者に媚びず、物事をありのままに追っていくその姿勢はやはりジャーナリストのそれではなく学者の姿勢であると感じる。
したがって「スティーブ・ジョブズ II ~ アップルIIIとリサの蹉跌」と「スティーブ・ジョブズ III ~ マッキントッシュの栄光と悲惨」および「スティーブ・ジョブズ ~ 青春の光と影」はスティーブ・ジョブズやアップルの伝記というより資料の塊なのである。
そのボリュームも尋常ではない。1980年代あたりから1985年のスティーブ・ジョブズがアップルを追放されるまでの6年間にフォーカスした2冊合計で800ページもの詳細な内容である。
さらに近年の著作の多くは索引が省略されているものも多い。しかし本書はさすがにきちんと索引が用意されているし、引用・参考文献のリストも充実し良質の資料たる所以でもある。
なお僭越ではあるが、「スティーブ・ジョブズ III ~ マッキントッシュの栄光と悲惨」の引用・参考文献のリストの中に脇英世氏が推奨するホームページとして私の名が、あのスティーブ・ウォズニアック氏とアンディ・ハーツフェルド氏と共にご紹介いただいている。大変光栄であり、ありがたく励みになる。
最後に脇英世氏はご承知の方も多いと思うが工学博士で、2008年より東京電機大学工学部長、工学部第一部長、工学部第二部長を2期勤め、現東京電機大学工学部情報通信工学科教授である。先月まで同大学の出版局長でもあったが出版局長を3月31日を持って退任されたという。
無責任な一読者としては是非是非「スティーブ・ジョブズ IV」登場にも期待したい。
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