ATOKディープコアエンジンを新搭載した「ATOK 2017」を手にして
日本語入力システム ATOK 2017を購入した。製品名に年号が付くようになってからほぼ毎年アップデートを続けてきた。しかし例えばATOK 2014, 2015, 2016の変化を見ても新機能や変換効率が向上していると謳われている割にはその恩恵を意識できないことが続いていた。さてそれではATOK 2017は買うべきか、迷った。
いまさらではあるが、ATOK(エイトック)とは “Advanced Technology Of Kana-Kanji transfer” の頭文字をという日本語入力・変換を実現する日本語入力システムである。
マッキントッシュに日本語入力機能が搭載される前から私はNEC PC-9801で一太郎に搭載されていた日本語漢字変換システムを使っていた。1985年のことだ。
その後ATOK 7からだと思ったが、日本語変換エンジンが一太郎から分離し単体販売となりマッキントッシュ用バージョンが登場してからこの方ずっとATOKを愛用してきた。

※ATOK 2017 プレミアムのパッケージ
ATOKを選んだのは確かに日本語変換効率が良かったからだが近年はアップル標準の「ことえり」の性能がアップされたこともありATOK離れも耳にするようになった。
個人的に毎年ATOKの新バージョンを購入するのは、日々大量の文章を入力する身として慣れた環境を壊したくないという単純な思いとマック版日本語漢字変換システムとして長くサポートしてきたジャストシステムの熱意に敬意を表したいと思うからでもある。
しかし正直、例えばATOK 2014, ATOK 2015, ATOK 2016の3年間を振り返っても確かにスペック的に変換効率が向上し新機能が搭載されてはいるものの、その恩恵を感じられないでいた。
今年もATOK 2017がアナウンスされたとき、またまたアップデートすべきか、あるいは「ことえり」はともかくとしてもATOK 2016のままでもよいかも知れないとも考えたが、ATOK 2107のアナウンスによれば「10年ぶりに変換エンジンを刷新」とあり、ATOKディープコアエンジンを新搭載とも記されていた。
これが文字通りなら「今年こそアップデートの恩恵を感じることができるかも」と結局ポチッとしてしまった。

※現在パッケージはATOK 2015とATOK 2016しか残っていないが、ATOKはマック版登場以前からのユーザーである
新・変換エンジン「ATOKディープコアエンジン」は話題の人工知能(AI)技術「ディープラーニング」を採用したもので、より日本語の特徴をとらえた変換結果を提示とある。そして新変換エンジンの採用でATOK 2016と比べ誤変換を30%削減できるとされる。
勿論誤解があってはまずいが、ATOK 2017の日本語変換システムがディープラーニング、すなわち多層構造のニューラルネットワークを用いた機械学習機能を利用者側に公開しているわけではない。あくまで新しい変換エンジンを構築するのにディープラーニング技術を用いたということだ。
ジャストシステムのサイトにも「従来のATOKかな漢字変換のアルゴリズムに加え、『新たに抽出した日本語の特徴』を変換エンジンに組み込み、性能をアップしました。」とあり、ATOKの変換エンジンそのものがディープラーニングによりリアルタイムに進化していくわけではない。
とはいえディープラーニングとはどういうことなのかは概念的に理解しているつもりでも、こと具体的にATOK 2017がいわゆるどの程度の、どのような大量の日本語テキスト(ビッグデータ)を活用したのかについては公開されておらず、ATOK 2016と比べ誤変換を30%削減できるといってもそれはユーザーそれぞれの使用環境下でどう感じるかはまったく不明だ。
そもそも日本語は同音異義語が複雑に絡み大変一発で変換精度を上げるのは難しい。それに日本語は話し言葉だけでなく文語もある。
ATOK 2017は変換の際に話し言葉(方言を含む)なのか文語なのかを指定できる「表現モード」の切替ができるし、環境設定ファイルを利用しアプリケーションごとに入力・変換の設定が自動的に切り替わるキーワードチャージ機能もあるものの、それはあくまで学習の重み付けであり本当の意味でユーザーが入力したカナあるいはローマ字入力の意味をエンジンが理解し間違いない日本語変換ができるまでにはまだまだ長い時間が必要だと思われる。
例えばATOK 2017で「いしゃがかんしをてにしゅじゅつだいにちかづいた」を変換すると「医者が監視を手に手術代に近づいた」と変換してしまう。
現在のレベルでは「監視を手に」という言葉が不自然であることを変換エンジンが理解しているわけではないのだから仕方がない。したがってまだまだ本当の意味で前後の脈絡、すなわち単語や文章の意味をすべて理解して変換しているわけではないこともわかる。未来のAI 変換なら「医者が手にするのは監視ではなく鉗子に違いない」という推測ができるようになるのだろうか。
無論ATOKでも一度「医者が鉗子を手に...」と手動で同音異義語を示せば次からは正確に変換するが、それは理解したのではなく同音異義語の学習により重み付けが変わっただけだ。
ではATOK 2017はATOK 2016と違わないのかといえば、個人的な感想だが「買っただけのことはある」と考えている。
ひとつにはブログやウェブサイト向けの原稿を書くにも、最近力を入れている時代小説を書くにもそれなりに柔軟な日本語変換ができていることを実感できたこと、そしてこれはたまたまなのかも知れないがATOK 2016はエディターはもとよりだがテキスト入力していると時にレインボーマークが回り始めることがあったが(OS X Yosemite 10.10.5)ATOK 2017にしてからその症状が出なくなった。
様々なアプリケーション上でテキスト入力時に発生するのでATOK 2016のバグではないかと疑っていたが、いまのところそうした厄介な現象から解放されているので嬉しい。
今年35周年を迎えるというATOK 2017だが、これからも進化を続けるなら使い続けていきたい。しかしAIとかディープラーニングといった言葉だけで未来を先取りしているようなイメージを与えたり受けたりしては間違いの元だ。とはいえできることなら、私の目が黒いうちに、真の意味においてAI の凄さを実感できるような日本語変換エンジンを体験してみたいものだ。
いまさらではあるが、ATOK(エイトック)とは “Advanced Technology Of Kana-Kanji transfer” の頭文字をという日本語入力・変換を実現する日本語入力システムである。
マッキントッシュに日本語入力機能が搭載される前から私はNEC PC-9801で一太郎に搭載されていた日本語漢字変換システムを使っていた。1985年のことだ。
その後ATOK 7からだと思ったが、日本語変換エンジンが一太郎から分離し単体販売となりマッキントッシュ用バージョンが登場してからこの方ずっとATOKを愛用してきた。

※ATOK 2017 プレミアムのパッケージ
ATOKを選んだのは確かに日本語変換効率が良かったからだが近年はアップル標準の「ことえり」の性能がアップされたこともありATOK離れも耳にするようになった。
個人的に毎年ATOKの新バージョンを購入するのは、日々大量の文章を入力する身として慣れた環境を壊したくないという単純な思いとマック版日本語漢字変換システムとして長くサポートしてきたジャストシステムの熱意に敬意を表したいと思うからでもある。
しかし正直、例えばATOK 2014, ATOK 2015, ATOK 2016の3年間を振り返っても確かにスペック的に変換効率が向上し新機能が搭載されてはいるものの、その恩恵を感じられないでいた。
今年もATOK 2017がアナウンスされたとき、またまたアップデートすべきか、あるいは「ことえり」はともかくとしてもATOK 2016のままでもよいかも知れないとも考えたが、ATOK 2107のアナウンスによれば「10年ぶりに変換エンジンを刷新」とあり、ATOKディープコアエンジンを新搭載とも記されていた。
これが文字通りなら「今年こそアップデートの恩恵を感じることができるかも」と結局ポチッとしてしまった。

※現在パッケージはATOK 2015とATOK 2016しか残っていないが、ATOKはマック版登場以前からのユーザーである
新・変換エンジン「ATOKディープコアエンジン」は話題の人工知能(AI)技術「ディープラーニング」を採用したもので、より日本語の特徴をとらえた変換結果を提示とある。そして新変換エンジンの採用でATOK 2016と比べ誤変換を30%削減できるとされる。
勿論誤解があってはまずいが、ATOK 2017の日本語変換システムがディープラーニング、すなわち多層構造のニューラルネットワークを用いた機械学習機能を利用者側に公開しているわけではない。あくまで新しい変換エンジンを構築するのにディープラーニング技術を用いたということだ。
ジャストシステムのサイトにも「従来のATOKかな漢字変換のアルゴリズムに加え、『新たに抽出した日本語の特徴』を変換エンジンに組み込み、性能をアップしました。」とあり、ATOKの変換エンジンそのものがディープラーニングによりリアルタイムに進化していくわけではない。
とはいえディープラーニングとはどういうことなのかは概念的に理解しているつもりでも、こと具体的にATOK 2017がいわゆるどの程度の、どのような大量の日本語テキスト(ビッグデータ)を活用したのかについては公開されておらず、ATOK 2016と比べ誤変換を30%削減できるといってもそれはユーザーそれぞれの使用環境下でどう感じるかはまったく不明だ。
そもそも日本語は同音異義語が複雑に絡み大変一発で変換精度を上げるのは難しい。それに日本語は話し言葉だけでなく文語もある。
ATOK 2017は変換の際に話し言葉(方言を含む)なのか文語なのかを指定できる「表現モード」の切替ができるし、環境設定ファイルを利用しアプリケーションごとに入力・変換の設定が自動的に切り替わるキーワードチャージ機能もあるものの、それはあくまで学習の重み付けであり本当の意味でユーザーが入力したカナあるいはローマ字入力の意味をエンジンが理解し間違いない日本語変換ができるまでにはまだまだ長い時間が必要だと思われる。
例えばATOK 2017で「いしゃがかんしをてにしゅじゅつだいにちかづいた」を変換すると「医者が監視を手に手術代に近づいた」と変換してしまう。
現在のレベルでは「監視を手に」という言葉が不自然であることを変換エンジンが理解しているわけではないのだから仕方がない。したがってまだまだ本当の意味で前後の脈絡、すなわち単語や文章の意味をすべて理解して変換しているわけではないこともわかる。未来のAI 変換なら「医者が手にするのは監視ではなく鉗子に違いない」という推測ができるようになるのだろうか。
無論ATOKでも一度「医者が鉗子を手に...」と手動で同音異義語を示せば次からは正確に変換するが、それは理解したのではなく同音異義語の学習により重み付けが変わっただけだ。
ではATOK 2017はATOK 2016と違わないのかといえば、個人的な感想だが「買っただけのことはある」と考えている。
ひとつにはブログやウェブサイト向けの原稿を書くにも、最近力を入れている時代小説を書くにもそれなりに柔軟な日本語変換ができていることを実感できたこと、そしてこれはたまたまなのかも知れないがATOK 2016はエディターはもとよりだがテキスト入力していると時にレインボーマークが回り始めることがあったが(OS X Yosemite 10.10.5)ATOK 2017にしてからその症状が出なくなった。
様々なアプリケーション上でテキスト入力時に発生するのでATOK 2016のバグではないかと疑っていたが、いまのところそうした厄介な現象から解放されているので嬉しい。
今年35周年を迎えるというATOK 2017だが、これからも進化を続けるなら使い続けていきたい。しかしAIとかディープラーニングといった言葉だけで未来を先取りしているようなイメージを与えたり受けたりしては間違いの元だ。とはいえできることなら、私の目が黒いうちに、真の意味においてAI の凄さを実感できるような日本語変換エンジンを体験してみたいものだ。
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