新刊書「江戸の瓦版 庶民を熱狂させたメディアの正体」紹介
ここの所、時代小説の執筆に凝っている。書くのが面白くて仕方がないが、可能な限り時代考証も正確でありたいと考えているから執筆の途中途中で調べる時間がかなり必要になる。ということで先般ストーリーに瓦版や読売を絡ませたいと考察したがこれまた知らない事が多すぎた…。
ということで調べた結果、森田健司著「江戸の瓦版 庶民を熱狂させたメディアの正体」(洋泉社刊)が出版されることを知り早速予約をした次第。本書の魅力というか特徴は帯にもあるとおり、実物の瓦版を材料に、庶民の好奇心に応えた "非合法出版物" の魅力に迫るということに尽きる。
要はいかに我々が瓦版というものを知っていたつもりでもそれは史実とは大きくかけ離れたものであるかを痛感せざるを得ない。
なにしろ瓦版が "非合法出版物" だったとは本書で初めて知った。
これは貞享元年(1684年)に出された「読売禁止令」によるものだ。

※森田健司著「江戸の瓦版 庶民を熱狂させたメディアの正体」洋泉社刊
瓦版といえばテレビや映画の時代劇で左手に多くの瓦版を抱え、細くて長い棒を振り回しながら集まった人たちと軽妙な掛け合いと共に瓦版を売るシーン程度しか記憶にないのではないだろうか。
また私が愛読している時代小説にも瓦版やその作り手が多々登場するが、邪慳にされながらも岡っ引きたちとの交流が描かれていたりしてとても非合法の商売だとは感じられない。
とはいえ、瓦版屋など誰でもできる商売ではないし人の集まる場所でなければ売れなかったに違いない。したがって非合法はそれとして役人たちも目くじら立てて追い立てたり捕縛したりはしなかったようだ。とはいえそれは「心中の話題」と「幕政批判」を別にしての話しだという。
まあ「幕政批判」は分かるが、「心中」事件を取り上げるのがなぜ禁止だったのか。それは本書をお読みいただきたいが、心中に大きな注目が集まったのは近松門左衛門によって書かれた人形浄瑠璃「曾根崎心中」だったが、その出版を機会に八代将軍吉宗は退廃的風潮を是正することを名目に心中を相対死として禁令を出したことは私の時代小説「首巻き春貞 小石川養生所始末」にも紹介した。
例えば不義で相対死をした者は死骸を取り捨てて弔わせず、もし双方存命ならば三日晒のうえ非人に落とされた。そして心中事件を瓦版で報じた場合は販売中止は勿論のことだが、摺物だけでなく版木まで抹殺されたという。
したがってというべきか、本書筆者に寄れば心中事件を報じた瓦版の本物はほとんど現存しないという。
ともかく非合法出版物だからして売り子、読売は普通二人一組で、それも顔が分からないように網笠を被って商売をしていたという。やはりドラマや時代小説から受けてきた印象は史実とは遠いものだったことになる。
そういえば瓦版の売り手を "読売" というが、これは文字通り読みながら売ることからついた名のようだ。
本書は瓦版の実体を知ることは勿論だが、瓦版を通して江戸という時代の臭いまで彷彿とさせてくれる貴重な1冊だと思う。
ということで調べた結果、森田健司著「江戸の瓦版 庶民を熱狂させたメディアの正体」(洋泉社刊)が出版されることを知り早速予約をした次第。本書の魅力というか特徴は帯にもあるとおり、実物の瓦版を材料に、庶民の好奇心に応えた "非合法出版物" の魅力に迫るということに尽きる。
要はいかに我々が瓦版というものを知っていたつもりでもそれは史実とは大きくかけ離れたものであるかを痛感せざるを得ない。
なにしろ瓦版が "非合法出版物" だったとは本書で初めて知った。
これは貞享元年(1684年)に出された「読売禁止令」によるものだ。

※森田健司著「江戸の瓦版 庶民を熱狂させたメディアの正体」洋泉社刊
瓦版といえばテレビや映画の時代劇で左手に多くの瓦版を抱え、細くて長い棒を振り回しながら集まった人たちと軽妙な掛け合いと共に瓦版を売るシーン程度しか記憶にないのではないだろうか。
また私が愛読している時代小説にも瓦版やその作り手が多々登場するが、邪慳にされながらも岡っ引きたちとの交流が描かれていたりしてとても非合法の商売だとは感じられない。
とはいえ、瓦版屋など誰でもできる商売ではないし人の集まる場所でなければ売れなかったに違いない。したがって非合法はそれとして役人たちも目くじら立てて追い立てたり捕縛したりはしなかったようだ。とはいえそれは「心中の話題」と「幕政批判」を別にしての話しだという。
まあ「幕政批判」は分かるが、「心中」事件を取り上げるのがなぜ禁止だったのか。それは本書をお読みいただきたいが、心中に大きな注目が集まったのは近松門左衛門によって書かれた人形浄瑠璃「曾根崎心中」だったが、その出版を機会に八代将軍吉宗は退廃的風潮を是正することを名目に心中を相対死として禁令を出したことは私の時代小説「首巻き春貞 小石川養生所始末」にも紹介した。
例えば不義で相対死をした者は死骸を取り捨てて弔わせず、もし双方存命ならば三日晒のうえ非人に落とされた。そして心中事件を瓦版で報じた場合は販売中止は勿論のことだが、摺物だけでなく版木まで抹殺されたという。
したがってというべきか、本書筆者に寄れば心中事件を報じた瓦版の本物はほとんど現存しないという。
ともかく非合法出版物だからして売り子、読売は普通二人一組で、それも顔が分からないように網笠を被って商売をしていたという。やはりドラマや時代小説から受けてきた印象は史実とは遠いものだったことになる。
そういえば瓦版の売り手を "読売" というが、これは文字通り読みながら売ることからついた名のようだ。
本書は瓦版の実体を知ることは勿論だが、瓦版を通して江戸という時代の臭いまで彷彿とさせてくれる貴重な1冊だと思う。
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