専属モデル造形計画第3弾始まる

当Macテクノロジー研究所の専属モデルの造形昨年の春からスタートし、試行錯誤の上でかなり強引な作りではあったがなんとか服とWigを着ければ撮影に使えるだろう「造形プロジェクト第2弾」を最後に一応の決着を迎えた。しかし考えてみるまでもなくあれこれと不満と反省も多く、機会があれば第3弾をスタートしたいと考えてきた。


なぜそんなに自作に拘るのか、市販のマネキンを手に入れればそれで済むのではないかと考える人もいるかも知れない。しかし大仰な物言いになるが、コマーシャルでもなんでもモデルを使おうとするとき "誰でも良い" ということなどあり得ない。その一番はやはり容姿だ。
マネキンに限ってもメーカーにより、型番によりその容姿は千差万別だが、これはと思う物は市販されていないかったり入手が可能だとしてもかなり高価なものだ。
そしてリアルな造形であることは勿論、演出上の効果をだすため、両腕もかなり自由に動かせるものが欲しかった。
そうしたあれこれを考えるといわゆる既製品では無理だったが、たまたま手にした首から上のヘッドマネキンの顔が気に入ったこともあり、これを使ってイージーオーダー的なオリジナルの造形をやってみようと考えたのが事の始まりだった。

ということで一年三ヶ月ほどのブランクがあったが、撮影モデル用マネキン造形第3弾に取りかかった。それは材料および最低限必要と思われる工具が揃ったこと、そしてひとつの決心というか決断したことがあったからだ。ともかく今回は電動ノコギリなども用意することになり、かなり大がかりとなった(笑)。

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※今回の造形計画を実行し調整のために仮に組立た例【クリックで拡大】


造形は最初からやり直すことにした。明確なビジョンもなく手を染めたモデル1号は途中で挫折。2号はいちおうの形はでき、実際にウェブサイトの表紙のための撮影をしたり、知人からの依頼で企画書の一端を飾ったりもしたが満足できるものではなかった。

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※専属モデル造形を背と前から。ちなみにスリーサイズだが、B=86.5 W=60.0 H=85.0cmだ


その第一は当時お気に入りのヘッドマネキンと組み合わせようとしてマネキンのボディとなるトルソーをeBayまで探しに探したが、適当なのはホワイトカラーの樹脂製しか見つからなかった。それでも何らかの服を着せるのだからそれで良いと考えて手に入れた。
しかしヘッドマネキンをそのままトルソーのボディに押し込もうとあれこれ画策した結果、トルソーを前後に切り離して胸から肩にかけてスペースを作り、何とか位置的に妥協できるところに固定した。

ために、トルソーとヘッドマネキンの隙間を粘土で埋めることになったが、それはそれで上手く行った。しかし現実にクライアントなどからの要求に合わせた服を着せようとすると女性物は胸と肩部分を解放したデザインが多く、襟付きのシャツならともかく接合部分が見えてしまってモデルの役割を果たせないことも出てきた。
さらにトルソーのボディはホワイトだったこともあり、これまた肩までオープンになっているドレスを着せることは諦めざるを得なかった…。

その問題が解決できなかった最大の原因はヘッドマネキンのヘッド、文字通り頭部分を切断する決心が付かなかったことにある。
ひとつには技術的なこと、すなわち硝子繊維樹脂(FRP)で出来ているというヘッドマネキンを上手く頭の部分だけ切断すること…に自信がなかったからだ。そして人形とはいえ首を切断するといったことへの抵抗感も否めなかった。

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※ヘッドマネキンの頭部位だけを切断(上)。電動鋸での切断面(下)


さて、それから早くも一年と三ヶ月が過ぎた。その間も適当な材料があれば手に入れておこうと定期的にネットを探していたが、ここにきて安価なスキンカラーの樹脂製トルソーやこれまた左右両手のアイテムが見つかった…。
共に一年三ヶ月前に探したときには見つからなかった代物である。ただしスキンカラーのトルソーであってもラッカー塗装処理されているような艶があるのはダメ。照明を当てると白く反射してしまうからだ。
これで機は熟したと考えたが最後の難関は前記したようにFRP製のヘッドマネキンの首を切断する勇気(笑)とその方法だったが、これも目処がついた。

やはり切断には鋸が必要だが、手作業ではいかんせん大変過ぎるからとハンディタイプの電動鋸を手に入れた。これに鉄切断用の刃を装着すればFRPも切れるという。
後はFRPの粉塵は吸うと害があるからと保護マスクとゴーグルを持出し、怪我を未然に防ぐために耐切創性手袋まで購入してことに挑んだ。

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※今回使った主な道具たち


要はこのトルソーを選んだのは価格だけではない。肌の色が些か暗い感じだったがそれは許せる範囲だと思ったしなによりも首が長く出来ていることが決め手だった。この形であれば切断した首(嫌な言い方だが)を乗せるだけで形になると考えたからだ。
例えばトルソーでも首が短いものもある。そうなるとヘッドマネキン側もある程度の長さまで首を残して切断しないと様にならない。しかしその場合にはトルソーとヘッドマネキンの合わせ目がどうしようもないことになるだろう。
事実太さも形状も差の大小はともかく違うはずだから、撮影位置によってはおのずと接合部は映り込んでしまう。

ただし、ヘッドマネキン側を顎の奥、首の喉元から頸椎の一番上あたりまでを切断できればトルソーと合わせても正面からでは不自然ではないし、実際には鬘を被せるわけでヘアスタイルにもよるものの両脇の合わせ目は隠すことが容易に違いない。
ということで基本的な材料と道具を揃えたとある日曜日、ベランダでお気に入りのヘッドマネキンを電動鋸で切断することにした。

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※ボディと組み合わせてみたが、正面からでは結合部分は判らない


電動鋸を事前に試してみるとその振動はなかなかのもので理想的には切断アイテムを万力などで押さえておかないと刃がブレることがわかった。しかしヘッドマネキンを壊さず傷つけずに固定できるような設備はなく、仕方がないのでクッションを床に置き、大切な顔部位を傷が付かないようにと大きなビニール袋で縛り付け、頭をクッションに押しつけるようにしてやってみた。
初めての経験なのでベストといったわけにはいかないが、まずまず予定通りのカーブで頭部を切断できたので、斬り口をヤスリで磨いた。そしてこの際だからと同じヘッドマネキンをもうひとつ続けて切断…。これで交換用のヘッドができた。

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※まだアイデア段階だが、こうしたエッジを作り、これに頭を被せることになる


次の問題としてトルソー側の首とヘッドマネキンから切り落とした頭部をどのようにしたらそれらしく固定できるかだが、これは写真に写らなければかなりアバウトでも良いと思ったし、完全に固定しなければ顔の向きもある程度変えられる理屈だから演出がしやすくなるに違いない。

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※頭は左右に動かすことができる


一通り仮組立をした上で簡単な衣裳を着せて鬘を被せてみたが、一体感もあるしこれまでにないよい出来だ。何よりも首の長さが思っていた通りになったので満足。そしてカメラテストもやってみた結果、後は可動型の両腕を作れば完成だ。
両腕も前回でより理想に近い物をと感触を得ているし軽量の左右両手が手に入ったので俄然やる気が出てきた。理想といえば、当モデルのスリーサイズだが、B=86.5 W=60.0 H=85.0cm である。

ともあれひとしきりの作業を終え、一休みしようと珈琲を手にし、あらためて廻りを見ると我が仕事部屋はまるで映画「EX_MACHINA」状態。首というか顔が棚に並び、あちらこちらに腕や手が置き去りにされている(笑)。いやはや知らない人がこの仕事場を見たら仰天するに違いない(笑)。

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※これはお遊びで映画「EX_MACHINA」の1シーンを思い出してそんなイメージを撮ってみた


造形は続く…。



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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員