Lisa オペレーションの核となる Lisa 7/7 Office Systemについて
Lisaは “Lisa 7/7 Office System (LOS)” によりオペレーションすることになる。それらにはOSはもとよりLisaCalc、LisaTerminal、LisaDraw、LisaGraph、LisaList 、LisaProjectそしてLisaWriteという7つのアプリケーションが含まれている。そしてそのパッケージは実に見事な存在感だ...。
Lisaは他のコンピュータとのデータ互換性がなかったこと、そしてAppleがサードパーティーのGUIソフトウェア開発には時間がかかると考えたため、自社開発した7つのアプリケーションを同梱した。ただしLisa 2になってからはコスト的な配慮から別売になったりしたが、それらはワードプロセッサをはじめドローアプリケーション、表計算ソフトやグラフ作成ソフトなどなどを含み一般的なビジネスで必要とする仕事をこなすためのツールが一通り揃っていたわけだ。
「Office」うんぬんといえば今ではマイクロソフト製品の代名詞みたいだが、文字通り統合アプリケーション環境であった。
私の手元にあるのはLOS 3.0のパッケージである。それは昨今の味気ないパッケージと比較すると圧倒的な存在感があり大変豪華に思える。


※Lisa 7/7 Office System 3.0のパッケージ
それは前記した7つのアプリケーション毎に良質なマニュアルが用意され、それらとは別にOffice Systemのマニュアルが含まれている。そしてそれぞれの3.5インチフロッピーディスケットが別のケースに収納されている様はなかなかに美しい。

※Lisa 7/7 Office System付属のシステムあるいはアプリケーションフロッピーディスク一式
ちなみに1984年のキヤノン販売カタログによれば、バージョン2.0だがLisaTerminalを除いて価格は50万円になっている。そしてそのLisaTerminalは別途8万円だ...。
なおこれはLisa 2用であるが、ちなみにLisa 1のLOSパッケージはこれまた桁違いだった。7つのアプリケーションのマニュアルはそれぞれOwner’s Guideと同じハードで大型のバインダーに納まっていたからだ。
ともかくそれらを一望すれば、昨今のiWorkに含まれているNumbersがApple最初のスプレッドシートでないことはお分かりだろう。
またLisaDrawは後にMacintosh用のドローアプリケーション「MacDraw」に、LisaProjectは「MacProject」として書き直されてリリースされている。
さてLisaを現在のMacユーザーが予備知識無しに使うとすれば、そのかなり違うオペレーションに最初は大いに戸惑うと思う...。
Lisaに関して多少の予備知識ならびにリリースされた1983年以降これまで数回オペレーションする機会があったはずの私でも正直英文のUser’s Guideを見ながら試行錯誤を重ねている。
詳しいレベルの話は私自身まだ理解していない部分も多く、またそれは一冊の書籍ができてしまう事になるので避けるが、今回はLOS 3.0の起動から終了までのほんの“さわり”をご紹介してみたい。細かな点はまた別の機会に紹介する機会が多々あるだろう...。
なお特別断りがない限り、例として取り上げるのは私の手元にあるLisa 2/10ならびにX/ProFile化したProFileの設定に基づくものである。
起動するにはまずProFileの電源を入れ、続いてLisaの電源を入れる。Lisaの電源スイッチは本体正面の右奥下にある。

※Lisaの電源スイッチがONの状態
これでまずハードウェアテストが実行され続いてスタートアップのデバイスすなわちフロッピードライブからか、あるいはX/ProFileからなのかを問い合わせる画面となる。



※Lisa 2の起動直後のハードウェアテスト画面(上)、スタートアップのデバイス指定画面(中)およびLOS 3.0が起動中の画面(下)
これに答えるとX/ProFileのCFカードからLOS 3.0が起動となる。ともかくこれでMacintoshに似たデスクトップの画面が現れる。
ただし最初に起動するときには「The/Lisa clock/calender is not set properly. Open the Clock to set the correct date and time.」というダイアログが出るが、Lisaはそもそも1995年までしかカレンダーを認識しないので1995年に合わせるしかない...。したがってシステム起動後にClockアプリを立ち上げて時刻はもとよりだが1995年の×月××日と設定し、File/Printメニューから「Save & Put Away ”Clock“」を実行の上、設定を保存する。

※Lisa 7/7 Office System 3.0起動後のデスクトップ画面。上にはメニューバーがあり、下にはいくつかのアイコンが
問題はここからだ...。
LOSのデスクトップはMacintoshのFinderに似てはいるが前記したようにその使い方や仕様はかなり違う。ざっとLOSが起動した画面を眺めるとメニューバーがあるがその表記は当然のことながらまったく違うし一番左にアップルロゴもない。
メニューバーの表示はMac OSと同様アクティブな対象により変化するが、例えば基本のデスクトップの場合はメニューバーの左から「Desk」「File/Print」「Edit」そして「Housekeeping」となる。
ちなみに「Housekeeping」メニューはいわゆるデスク回りを管理整頓するためのコマンドがあるが、”Housekeeper“ とはまったく素敵な命名ではないか...。
「Desk」のプルダウンメニューは「Calculator」「Clipboard」「Disk」といったデスクトップに置いてある対象のランチャーならびに起動確認メニューの働きをするし「Edit」には「Undo」もありオペレーションのイメージは十分理解できる。しかし戸惑うのは「File/Print」のプルダウンメニューだろうか...。

※メニューバーにあるDeskのプルダウンメニューを開けるとこんな感じだ
ちなみに例えばデスクトップに置いた「Disk」アイコンをダブルクリックすればそのウィンドウが開いてインストールされている対象が表示する。そしてウインドウサイズの変更やウィンドウの位置変更などもMacintoshと同様だが、ウインドウを閉じるクローズボックスがない。
ウィンドウを簡単に閉じるにはMac OSでいうところのタイトルバー左にアイコンがあるので、それをダブルクリックすればよい。
またウィンドウや文書などを閉じるには例えば「File/Print」メニューにあるSet Aside “アクティブな対象名” を実行すれば当該ウインドウあるいはドキュメントが閉じられるし、Set Aside Everything を実行するなら現在オープンしているすべてのアプリが終了となりウインドウも閉じられる。

※File/Print のプルダウンメニューもMac OSとは雰囲気が違う
なおウインドウ内の表示はMac OSと同じようにアイコン表示だけでなく名称によるリスト表示も可能だ。
重要なのはアプリケーションの使い方もMac OSとは違うことだ。
Mac OSでは一般的には、例えばワープロのアプリを立ち上げ、新規書類を用意してから文書を入力し、ファイル名を決めて保存するという手順を踏む。しかしLisaは例えばLisaDraw Paperといういわばルーズリーフから白紙の一枚を引きはがして書式を用意しタイトルを付ける。その後にその白紙を開いて文書を入力するという手順を取る。
勿論LisaDraw Paperといういわばルーズリーフから白紙の一枚を引きはがす(準備する)にはLisaDraw Paperアイコンをダブルクリックするわけだが、そうすると新規の文書ファイルが新たに作られるというわけだ。


※LisaDraw Paperアイコンをダブルクリックして新規ファイルを作成(上)、それをダブルクリックするとLisaDrawが起動し新規ページが開く
Lisa一番の特徴はそのアーキテクチャにある。MacがMac OS Xの登場まで待たなければならなかったプリエンプティブ・マルチタスク環境をLisaは1983年に実現していたのだ。したがってMac OSのように爆弾マークが出てシステムがフリーズするということは基本的には回避されている。
そして最もユニークなのはシャットダウン...すなわちLisaを終了させる方法だ。
Mac OSに慣れているというか、その概念が染みこんでいる我々はマウスでメニューバーやそのプルダウンメニューから終了あるいはシャットダウンというコマンドを探してしまうがLisaにはその種のコマンドはない。
ではどのようにしてマシンを終了するかだが、使用中に電源ボタンを押せば良いのである。
この方法はMac OSに慣れている我々には無謀としか思われないがLisaはマシン起動中に電源ボタンが押されると、数秒かかるもののファイルは保存され起動しているアプリケーションが自動で終了した後に電源が切れるというシステムになっている。


※使用中に電源をOFFにした例(上)、ウィンドウは片付けられた後、モニターは徐々に暗くなって電源が切れる(下)
そういえば、あらためて気がついたことがある。Windowsが登場した際、マイクロソフトは処理待ちを示すアイコンはMac OSに似せることを避け現在も使われている砂時計にした。しかしLisaのそれはまさしく砂時計なのである...。結局Windowsはその点Lisaを真似たことになる(笑)。
大げさに言うと...というよりあくまで個人的な感覚だがLOSによるオペレーションをMac OSになぞらえてひとつひとつ確認し解釈していく様はなんだか、古文書を現代語に解読していくようなそんな面白さを感じる。そしてLisa解読はまだまだ続く!
Lisaは他のコンピュータとのデータ互換性がなかったこと、そしてAppleがサードパーティーのGUIソフトウェア開発には時間がかかると考えたため、自社開発した7つのアプリケーションを同梱した。ただしLisa 2になってからはコスト的な配慮から別売になったりしたが、それらはワードプロセッサをはじめドローアプリケーション、表計算ソフトやグラフ作成ソフトなどなどを含み一般的なビジネスで必要とする仕事をこなすためのツールが一通り揃っていたわけだ。
「Office」うんぬんといえば今ではマイクロソフト製品の代名詞みたいだが、文字通り統合アプリケーション環境であった。
私の手元にあるのはLOS 3.0のパッケージである。それは昨今の味気ないパッケージと比較すると圧倒的な存在感があり大変豪華に思える。


※Lisa 7/7 Office System 3.0のパッケージ
それは前記した7つのアプリケーション毎に良質なマニュアルが用意され、それらとは別にOffice Systemのマニュアルが含まれている。そしてそれぞれの3.5インチフロッピーディスケットが別のケースに収納されている様はなかなかに美しい。

※Lisa 7/7 Office System付属のシステムあるいはアプリケーションフロッピーディスク一式
ちなみに1984年のキヤノン販売カタログによれば、バージョン2.0だがLisaTerminalを除いて価格は50万円になっている。そしてそのLisaTerminalは別途8万円だ...。
なおこれはLisa 2用であるが、ちなみにLisa 1のLOSパッケージはこれまた桁違いだった。7つのアプリケーションのマニュアルはそれぞれOwner’s Guideと同じハードで大型のバインダーに納まっていたからだ。
ともかくそれらを一望すれば、昨今のiWorkに含まれているNumbersがApple最初のスプレッドシートでないことはお分かりだろう。
またLisaDrawは後にMacintosh用のドローアプリケーション「MacDraw」に、LisaProjectは「MacProject」として書き直されてリリースされている。
さてLisaを現在のMacユーザーが予備知識無しに使うとすれば、そのかなり違うオペレーションに最初は大いに戸惑うと思う...。
Lisaに関して多少の予備知識ならびにリリースされた1983年以降これまで数回オペレーションする機会があったはずの私でも正直英文のUser’s Guideを見ながら試行錯誤を重ねている。
詳しいレベルの話は私自身まだ理解していない部分も多く、またそれは一冊の書籍ができてしまう事になるので避けるが、今回はLOS 3.0の起動から終了までのほんの“さわり”をご紹介してみたい。細かな点はまた別の機会に紹介する機会が多々あるだろう...。
なお特別断りがない限り、例として取り上げるのは私の手元にあるLisa 2/10ならびにX/ProFile化したProFileの設定に基づくものである。
起動するにはまずProFileの電源を入れ、続いてLisaの電源を入れる。Lisaの電源スイッチは本体正面の右奥下にある。

※Lisaの電源スイッチがONの状態
これでまずハードウェアテストが実行され続いてスタートアップのデバイスすなわちフロッピードライブからか、あるいはX/ProFileからなのかを問い合わせる画面となる。



※Lisa 2の起動直後のハードウェアテスト画面(上)、スタートアップのデバイス指定画面(中)およびLOS 3.0が起動中の画面(下)
これに答えるとX/ProFileのCFカードからLOS 3.0が起動となる。ともかくこれでMacintoshに似たデスクトップの画面が現れる。
ただし最初に起動するときには「The/Lisa clock/calender is not set properly. Open the Clock to set the correct date and time.」というダイアログが出るが、Lisaはそもそも1995年までしかカレンダーを認識しないので1995年に合わせるしかない...。したがってシステム起動後にClockアプリを立ち上げて時刻はもとよりだが1995年の×月××日と設定し、File/Printメニューから「Save & Put Away ”Clock“」を実行の上、設定を保存する。

※Lisa 7/7 Office System 3.0起動後のデスクトップ画面。上にはメニューバーがあり、下にはいくつかのアイコンが
問題はここからだ...。
LOSのデスクトップはMacintoshのFinderに似てはいるが前記したようにその使い方や仕様はかなり違う。ざっとLOSが起動した画面を眺めるとメニューバーがあるがその表記は当然のことながらまったく違うし一番左にアップルロゴもない。
メニューバーの表示はMac OSと同様アクティブな対象により変化するが、例えば基本のデスクトップの場合はメニューバーの左から「Desk」「File/Print」「Edit」そして「Housekeeping」となる。
ちなみに「Housekeeping」メニューはいわゆるデスク回りを管理整頓するためのコマンドがあるが、”Housekeeper“ とはまったく素敵な命名ではないか...。
「Desk」のプルダウンメニューは「Calculator」「Clipboard」「Disk」といったデスクトップに置いてある対象のランチャーならびに起動確認メニューの働きをするし「Edit」には「Undo」もありオペレーションのイメージは十分理解できる。しかし戸惑うのは「File/Print」のプルダウンメニューだろうか...。

※メニューバーにあるDeskのプルダウンメニューを開けるとこんな感じだ
ちなみに例えばデスクトップに置いた「Disk」アイコンをダブルクリックすればそのウィンドウが開いてインストールされている対象が表示する。そしてウインドウサイズの変更やウィンドウの位置変更などもMacintoshと同様だが、ウインドウを閉じるクローズボックスがない。
ウィンドウを簡単に閉じるにはMac OSでいうところのタイトルバー左にアイコンがあるので、それをダブルクリックすればよい。
またウィンドウや文書などを閉じるには例えば「File/Print」メニューにあるSet Aside “アクティブな対象名” を実行すれば当該ウインドウあるいはドキュメントが閉じられるし、Set Aside Everything を実行するなら現在オープンしているすべてのアプリが終了となりウインドウも閉じられる。

※File/Print のプルダウンメニューもMac OSとは雰囲気が違う
なおウインドウ内の表示はMac OSと同じようにアイコン表示だけでなく名称によるリスト表示も可能だ。
重要なのはアプリケーションの使い方もMac OSとは違うことだ。
Mac OSでは一般的には、例えばワープロのアプリを立ち上げ、新規書類を用意してから文書を入力し、ファイル名を決めて保存するという手順を踏む。しかしLisaは例えばLisaDraw Paperといういわばルーズリーフから白紙の一枚を引きはがして書式を用意しタイトルを付ける。その後にその白紙を開いて文書を入力するという手順を取る。
勿論LisaDraw Paperといういわばルーズリーフから白紙の一枚を引きはがす(準備する)にはLisaDraw Paperアイコンをダブルクリックするわけだが、そうすると新規の文書ファイルが新たに作られるというわけだ。


※LisaDraw Paperアイコンをダブルクリックして新規ファイルを作成(上)、それをダブルクリックするとLisaDrawが起動し新規ページが開く
Lisa一番の特徴はそのアーキテクチャにある。MacがMac OS Xの登場まで待たなければならなかったプリエンプティブ・マルチタスク環境をLisaは1983年に実現していたのだ。したがってMac OSのように爆弾マークが出てシステムがフリーズするということは基本的には回避されている。
そして最もユニークなのはシャットダウン...すなわちLisaを終了させる方法だ。
Mac OSに慣れているというか、その概念が染みこんでいる我々はマウスでメニューバーやそのプルダウンメニューから終了あるいはシャットダウンというコマンドを探してしまうがLisaにはその種のコマンドはない。
ではどのようにしてマシンを終了するかだが、使用中に電源ボタンを押せば良いのである。
この方法はMac OSに慣れている我々には無謀としか思われないがLisaはマシン起動中に電源ボタンが押されると、数秒かかるもののファイルは保存され起動しているアプリケーションが自動で終了した後に電源が切れるというシステムになっている。


※使用中に電源をOFFにした例(上)、ウィンドウは片付けられた後、モニターは徐々に暗くなって電源が切れる(下)
そういえば、あらためて気がついたことがある。Windowsが登場した際、マイクロソフトは処理待ちを示すアイコンはMac OSに似せることを避け現在も使われている砂時計にした。しかしLisaのそれはまさしく砂時計なのである...。結局Windowsはその点Lisaを真似たことになる(笑)。
大げさに言うと...というよりあくまで個人的な感覚だがLOSによるオペレーションをMac OSになぞらえてひとつひとつ確認し解釈していく様はなんだか、古文書を現代語に解読していくようなそんな面白さを感じる。そしてLisa解読はまだまだ続く!
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