これぞ事典の醍醐味「江戸時代役職事典」
江戸時代を背景にした小説を書いていると普段見聞きしない言葉が多々登場する。そうした中でも馴染みがないだけに分かりづらいのが登場人物たちの役職だ。武家社会は縦割りの社会でその地位や役職は基本世襲だったが、ドラマに出てくる老中/若年寄/勘定奉行などがどんな役目だったのか、そしてその上下関係や禄高が分からないと物語が進まない。
まあウィキペディアでも調べれば大概のことは分かるが、執筆した人や編集加筆した人が誰だか分からないのではそれらの内容を鵜呑みにするわけにもいかない。またより詳細なことを知りたいとしてもネット検索では思うように成果が出ないときもある。
さて、江戸時代を背景にした時代小説を書いていると当然のことながら武家社会のあれこれを描くことになるが、様々な役職を持つ人物の登場を余儀なくされる。
現代では○○会社の東京支店長とか、財務省○○課と記せば現実の詳しいことは分からないまでもその社会的な地位がどの程度のものでどのような仕事をしているかはおぼろげに想像できる。
しかし例えば、町奉行などは想像ができようが、大目付、徒目付、小納戸、奏者番と聞いても大方の方はその役職がどういう意味を持つのかはなかなかイメージできないに違いない。
こうした役職のあれこれを総括的に知り得るものはないかと探している中で川口讓二、池田孝、池田政弘著「江戸時代役職事典」東京美術刊を見つけた。といっても新刊書ではなく昭和56年(1981年)初版発行の書籍であった。
なお1992年に同名の改訂新版が出ているが、共に古書としてしか入手できないようだ。

※川口讓二、池田孝、池田政弘著「江戸時代役職事典」東京美術刊
さて本書の凡例に筆者が記していることだが、本事典は江戸幕府とその機構を知るために、代表的な役職とその関連項目を選んで解説したものであること、役職の内容や禄高などは時代や地方によって異なる場合があることなどが書かれているが一口に江戸時代といっても260年の間には様々な機構改革もあったに違いない。したがって本書であっても代表的な例として見なければならないが、小説を書くには十分な内容だ。
例えば「奏者番(そうじゃばん)」を見てみよう。そこには、
一万石以上の譜代大名が任命された職で、年始、節供など旗本や大名が将軍に謁見するとき、取次をし、その姓名、進物を披露するとともに、殿中の礼式を掌った重要な職であった。寺社奉行が兼務することが多く、有識故実に精通し、かつ披露のための記憶力がよいことが条件であった。
なお、八代将軍吉宗のとき、江戸町奉行として大いに江戸市政に腕を振るった大岡忠相も寺社奉行のとき奏者番を兼務していた。
とあり、参考にした資料が紹介されてする。
各項目は五十音順に配列されていて使いやすいし本書は役職だけでなく、役職編と制度編とに大別編集されており後者は江戸時代社会に固有の制度・身分他が収録されている。そして最後に「ひとと役職」として例えば井伊直弼、大岡忠相、近藤勇、桂昌院などなどといった人物紹介からその役割を分かりやすく解説されてもいる。
さらに最後に付録として「江戸幕府役職要覧」の稿があり、主な役職の度次、詰部屋、官位、職禄、家禄、定員、昇進経路、配下の吏員数、支配が一覧となっている。
本書はそれこそ一般受けする書籍ではないかも知れないが、時代劇をより本格的に楽しむためにも目を通しておくと興味が深まると思う。
ともあれ個人的にはこんなに便利な事典はないと思うくらいの1冊であった。
まあウィキペディアでも調べれば大概のことは分かるが、執筆した人や編集加筆した人が誰だか分からないのではそれらの内容を鵜呑みにするわけにもいかない。またより詳細なことを知りたいとしてもネット検索では思うように成果が出ないときもある。
さて、江戸時代を背景にした時代小説を書いていると当然のことながら武家社会のあれこれを描くことになるが、様々な役職を持つ人物の登場を余儀なくされる。
現代では○○会社の東京支店長とか、財務省○○課と記せば現実の詳しいことは分からないまでもその社会的な地位がどの程度のものでどのような仕事をしているかはおぼろげに想像できる。
しかし例えば、町奉行などは想像ができようが、大目付、徒目付、小納戸、奏者番と聞いても大方の方はその役職がどういう意味を持つのかはなかなかイメージできないに違いない。
こうした役職のあれこれを総括的に知り得るものはないかと探している中で川口讓二、池田孝、池田政弘著「江戸時代役職事典」東京美術刊を見つけた。といっても新刊書ではなく昭和56年(1981年)初版発行の書籍であった。
なお1992年に同名の改訂新版が出ているが、共に古書としてしか入手できないようだ。

※川口讓二、池田孝、池田政弘著「江戸時代役職事典」東京美術刊
さて本書の凡例に筆者が記していることだが、本事典は江戸幕府とその機構を知るために、代表的な役職とその関連項目を選んで解説したものであること、役職の内容や禄高などは時代や地方によって異なる場合があることなどが書かれているが一口に江戸時代といっても260年の間には様々な機構改革もあったに違いない。したがって本書であっても代表的な例として見なければならないが、小説を書くには十分な内容だ。
例えば「奏者番(そうじゃばん)」を見てみよう。そこには、
一万石以上の譜代大名が任命された職で、年始、節供など旗本や大名が将軍に謁見するとき、取次をし、その姓名、進物を披露するとともに、殿中の礼式を掌った重要な職であった。寺社奉行が兼務することが多く、有識故実に精通し、かつ披露のための記憶力がよいことが条件であった。
なお、八代将軍吉宗のとき、江戸町奉行として大いに江戸市政に腕を振るった大岡忠相も寺社奉行のとき奏者番を兼務していた。
とあり、参考にした資料が紹介されてする。
各項目は五十音順に配列されていて使いやすいし本書は役職だけでなく、役職編と制度編とに大別編集されており後者は江戸時代社会に固有の制度・身分他が収録されている。そして最後に「ひとと役職」として例えば井伊直弼、大岡忠相、近藤勇、桂昌院などなどといった人物紹介からその役割を分かりやすく解説されてもいる。
さらに最後に付録として「江戸幕府役職要覧」の稿があり、主な役職の度次、詰部屋、官位、職禄、家禄、定員、昇進経路、配下の吏員数、支配が一覧となっている。
本書はそれこそ一般受けする書籍ではないかも知れないが、時代劇をより本格的に楽しむためにも目を通しておくと興味が深まると思う。
ともあれ個人的にはこんなに便利な事典はないと思うくらいの1冊であった。
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