WWDC '97で実現したスティーブ・ジョブズ 魅惑の特別セッション
1996年12月20日、AppleがNext Software社を買収し、かつスティーブ・ジョブズを顧問としてAppleに在職させることが発表されたときから瀕死の状態だったAppleに光が差し始めた...。
結果としてスティーブ・ジョブズは自身のApplへの復帰に力を尽くした当時のCEO ギルバート・アメリオまで退任に追い込んだし、NewtonプロジェクトやOpenDocを抹殺したことで非難もされた。しかしその後の歴史が示しているようにAppleはスティーブ・ジョブズの舵取りでその後の進路を得たことは間違いない。
ところで皆さんも先のSpecial Eventに退院復帰後のジョブズが壇上へ現れたとき、会場に居並ぶ多くの人たちのスタンディングオベーションが凄く、しばらくの間彼が「サンキュー」を繰り返すしかなかった完動のシーンを覚えているに違いない。
実は1997年5月のWWDC '97においてこの時と同じようなシーンが見られたことはあまり知られていない。
私の手元に "WWDC '97 - Worldwide Developers Conference Presentations CD Pack" と題する5枚組のパッケージがあるが感動の映像はそれに収録されている。
それはタイトルの通り1997年5月に開催されたWWDCにおけるキーノートの他、幾多のセッションが行われたその映像を記録したもので、後に当時のデベロッパたちに配布されたものだ。

※"WWDC '97 - Worldwide Developers Conference Presentations CD Pack" パッケージ
現在ならDVDで配布されるべきボリュームだが、ここでは大変小さなサイズの動画でそれぞれのセッションを見ることができるものの拡大してしまえば画質はかなり荒れてしまい鑑賞に絶えられるものではない。しかしここには画質うんぬんを超えた魅力...すなわちAppleに復帰直後のスティーブ・ジョブズの姿が見られるのだ。
WWDCのいわゆるキーノートそのものはギルバート・アメリオ CEOが行ったが、いまでは考えられないものの5月16日、Appleに復帰したスティーブ・ジョブズが開発者等の問いに答えるという特別セッションが開催されたのである。
さて、あまり知られていなかったのはそれが一般ユーザー向けではなく開発者たちの集まりであるWWDCの特別セッションだったという位置付けだからに違いないが、まさしくWWDCの場に集まった世界中の開発者らの安堵と期待が伝わってくるようだ。
余談ながらこの興味深いセッションの概要を日本語で知ることができる最新の情報は「MACPOWER 2009 Vol.2 (アスキームック)
」であろうか...。
"モダンOS進化の系譜"と題された特集の中に見開き2ページながら「スティーブ・ジョブズと気軽なおしゃべり」というのがそれだ。ただし本誌は1時間以上にもわたるセッションのすべてが記録されているわけではなくあくまで概要といったものだが他にこのときの情報があまりないので私にとっては目立つ情報源のひとつなのだ...。

※アスキー・メディアワークス刊「MACPOWER」2009 Vol.2
それはともかく、多くの人たちが知っているスティーブ・ジョブズはMACWORLD ExpoやAppleが主催するスペシャルイベントで壇上に立ち見事なプレゼンテーションを行う彼の姿に違いない。
それはすでに伝説にもなろうとするほど見事なプレゼンテーションであるが一方通行の催事である。そしてこれらのイベントではゲストや別の役員がヘルプとして登壇することはあるものの基本的には最初から最後までジョブズの独壇場といったケースが多い。だからこそこのセッションは珍しいのである。
進行は来場者の挙手をジョブズ自身が指名し、質問者の話を聞いたうえでその質問に答えるといった形だ。
たぶん実際にはあらかじめ混乱をさけるため質問者はApple側で選別されていたと思うが冒頭から「OpenDoc開発の中止に関してあなたの意見は?」といったきつい質問が出たのも面白い。
スティーブ・ジョブズは「自身もOpenDocを開発中止に追い込んだ当事者の1人として心が痛むし申し訳ないことだ」と問題を真摯に受け止めながら、優先順位の高いものへフォーカスせざるを得ないことを説明している。
以下画質はよくないが、いくつかのシーンをご紹介しよう。


その他、「アップルに対してのネガティブな報道をどう思うか?」「Appleが今後進むべき方向性は?」「デベロッパに残された開発チャンスは何か?」「Newtonはどうなる?」「今後Appleの経営に深く関与していくのか?」といった当時のユーザー、デベロッパあるいはディストリビュータたちすべてが危惧し知りたいと思っていることが取り上げられている。そしてジョブズの答えもときに考え込みながら真面目に対応している姿は好感が持てるものだ。



というわけで内容的にも時代背景を考える上でも興味深いものだが、何と言っても近年体調を壊し痩せこけたスティーブ・ジョブズしか知らない人たちにこのときの生き生きとした彼の姿を見ていただきたいとも思う。
頭髪はすでに薄くなっていたものの少々太り気味と思えるほど生き生きとしたジョブズが大きな身振り手振りでスピーチするその姿は現在の彼とはいささか違った側面を見せてくれるものとして興味深い。
Appleの歴史を学ぶ1人としてこのCDパッケージはお宝のひとつなのである。
結果としてスティーブ・ジョブズは自身のApplへの復帰に力を尽くした当時のCEO ギルバート・アメリオまで退任に追い込んだし、NewtonプロジェクトやOpenDocを抹殺したことで非難もされた。しかしその後の歴史が示しているようにAppleはスティーブ・ジョブズの舵取りでその後の進路を得たことは間違いない。
ところで皆さんも先のSpecial Eventに退院復帰後のジョブズが壇上へ現れたとき、会場に居並ぶ多くの人たちのスタンディングオベーションが凄く、しばらくの間彼が「サンキュー」を繰り返すしかなかった完動のシーンを覚えているに違いない。
実は1997年5月のWWDC '97においてこの時と同じようなシーンが見られたことはあまり知られていない。
私の手元に "WWDC '97 - Worldwide Developers Conference Presentations CD Pack" と題する5枚組のパッケージがあるが感動の映像はそれに収録されている。
それはタイトルの通り1997年5月に開催されたWWDCにおけるキーノートの他、幾多のセッションが行われたその映像を記録したもので、後に当時のデベロッパたちに配布されたものだ。

※"WWDC '97 - Worldwide Developers Conference Presentations CD Pack" パッケージ
現在ならDVDで配布されるべきボリュームだが、ここでは大変小さなサイズの動画でそれぞれのセッションを見ることができるものの拡大してしまえば画質はかなり荒れてしまい鑑賞に絶えられるものではない。しかしここには画質うんぬんを超えた魅力...すなわちAppleに復帰直後のスティーブ・ジョブズの姿が見られるのだ。
WWDCのいわゆるキーノートそのものはギルバート・アメリオ CEOが行ったが、いまでは考えられないものの5月16日、Appleに復帰したスティーブ・ジョブズが開発者等の問いに答えるという特別セッションが開催されたのである。
さて、あまり知られていなかったのはそれが一般ユーザー向けではなく開発者たちの集まりであるWWDCの特別セッションだったという位置付けだからに違いないが、まさしくWWDCの場に集まった世界中の開発者らの安堵と期待が伝わってくるようだ。
余談ながらこの興味深いセッションの概要を日本語で知ることができる最新の情報は「MACPOWER 2009 Vol.2 (アスキームック)
"モダンOS進化の系譜"と題された特集の中に見開き2ページながら「スティーブ・ジョブズと気軽なおしゃべり」というのがそれだ。ただし本誌は1時間以上にもわたるセッションのすべてが記録されているわけではなくあくまで概要といったものだが他にこのときの情報があまりないので私にとっては目立つ情報源のひとつなのだ...。

※アスキー・メディアワークス刊「MACPOWER」2009 Vol.2
それはともかく、多くの人たちが知っているスティーブ・ジョブズはMACWORLD ExpoやAppleが主催するスペシャルイベントで壇上に立ち見事なプレゼンテーションを行う彼の姿に違いない。
それはすでに伝説にもなろうとするほど見事なプレゼンテーションであるが一方通行の催事である。そしてこれらのイベントではゲストや別の役員がヘルプとして登壇することはあるものの基本的には最初から最後までジョブズの独壇場といったケースが多い。だからこそこのセッションは珍しいのである。
進行は来場者の挙手をジョブズ自身が指名し、質問者の話を聞いたうえでその質問に答えるといった形だ。
たぶん実際にはあらかじめ混乱をさけるため質問者はApple側で選別されていたと思うが冒頭から「OpenDoc開発の中止に関してあなたの意見は?」といったきつい質問が出たのも面白い。
スティーブ・ジョブズは「自身もOpenDocを開発中止に追い込んだ当事者の1人として心が痛むし申し訳ないことだ」と問題を真摯に受け止めながら、優先順位の高いものへフォーカスせざるを得ないことを説明している。
以下画質はよくないが、いくつかのシーンをご紹介しよう。


その他、「アップルに対してのネガティブな報道をどう思うか?」「Appleが今後進むべき方向性は?」「デベロッパに残された開発チャンスは何か?」「Newtonはどうなる?」「今後Appleの経営に深く関与していくのか?」といった当時のユーザー、デベロッパあるいはディストリビュータたちすべてが危惧し知りたいと思っていることが取り上げられている。そしてジョブズの答えもときに考え込みながら真面目に対応している姿は好感が持てるものだ。



というわけで内容的にも時代背景を考える上でも興味深いものだが、何と言っても近年体調を壊し痩せこけたスティーブ・ジョブズしか知らない人たちにこのときの生き生きとした彼の姿を見ていただきたいとも思う。
頭髪はすでに薄くなっていたものの少々太り気味と思えるほど生き生きとしたジョブズが大きな身振り手振りでスピーチするその姿は現在の彼とはいささか違った側面を見せてくれるものとして興味深い。
Appleの歴史を学ぶ1人としてこのCDパッケージはお宝のひとつなのである。
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