オリジナル時代小説「首巻き春貞」第11巻「長幼之序」公開覚書
プロの小説家が作品を世に問う場合は当然ながらそれを読む読者という存在をどこかで意識しなければならない…というか意識するものだろう。しかし私が昨年6月に「首巻き春貞 小石川養生所始末」を公開したとき、不遜な物言いかも知れないが想定した読者の第一は自分であった。
そもそも小説で身を立てようとか金儲けをしようという気はあるはずもなく第一無料公開したところでどれほどの方が目を通してくださるかは大変心許ないものがあった。それに執筆動機のひとつとして自身のボケ防止も含まれている。したがってまずは1冊無事に書き終えることが第一のミッションだったし、自身が面白いと思うものでなければならなかった。
その第一巻を書き終えようとするとき私の頭の中にはすでに第二巻目のストーリーが浮かんできた。しかしその時点ではまずまず二巻やせいぜい三巻目で息切れするのではないかと考えていたことも事実だった。
何しろ1冊分を考えた場合、400字詰め原稿用紙で換算するなら330枚以上にもなる。無論全部の升目を埋めるという意味ではない。
ともかく原稿用紙を埋めていくにはアイデアとか熱意といったものが不可欠だが、それらは気力と体力にも大きく影響を受ける。
齢70歳にもなる自分にそれだけの意欲が持続できるものなのかは自分でもやってみなければ分からなかった。

※オリジナル時代小説「首巻き春貞」第11巻「長幼之序」近日公開予定
若い時には歳のせいにするのは格好も良くないしどこか逃げ腰のニュアンスも感じられて好きではなかったが、実際に自分が歳を取ってみると加齢の残酷さは身にしみてくる。
いくら若いつもりでいても体が動かない。足腰は椅子から立ち上がろうとするだけで出来の悪いロボットみたいにギシギシと音を立てるし膝はかなり痛むときがある。そして根底には約20年ほど付き合っている糖尿病も抱えている。
足だけではない。手もそうだ。
肩こりはともかくとしても腱鞘炎の上に左右の指のいくつかはいわゆるバネ指状態となり曲がらなくなっている。無理に曲げようとすれば激痛が走る。したがって十代のころから親しんできたクラシックギターや近年好んでいたリュートといった弦楽器はまず弾けなくなってしまった。ただし幸いなことにキーボードはこうして打てるので原稿を書くことができている。
それから眼が見えない(笑)。ド近眼と歳相応の老眼はともかくとしても乱視と飛蚊症が加わり,その上に近年白内障と緑内障に悩まされている。一昨年は左目を白内障手術したが近々今度は右目の手術を覚悟しなければならない。
こうした状況下で時代考証の確認はもとより多くの書籍や資料を読まなければならない現状は決して楽ではあり得ない。
なんだか愚痴のオンパレードに聞こえるかも知れないが、愚痴ではなくこれが歳を取るという現実だとして甘んじて受けるしかない。
そんな自分が1年4ヶ月ほどの間に第11巻を書き上げることができたのだから「自分を褒めてあげたい」と思う。
若い時からマイコンやパソコンの世界に足を突っ込み、いわゆるライターとして多くの原稿を書いてきたし書籍も共著を含めれば18冊ほどにもなり文章を書く(入力)ことは体に染み込んでいると思っているが、前記したようにその効率はと考えれば申し上げるまでもなく体力やら気力といったものに左右されがちであり正直若い時と同じというわけには行かない。
しかし先日ふと考えたことがある。若さがこうした新しいものを生み出す原動力だとしても私にとって30代のときに「首巻き春貞」は絶対に書けなかったであろうことを…。
この年齢になったからこその妙というものもあるに違いないし年齢を重ね、読書体験も含めて良くも悪くも多くの経験をしたからこその結果とも言えるのだと思う。
だとすれば歳を重ねていくことはマイナス面ばかりではないことになる。
皆、誰でもが歳を取りいつかは消えて行く。しかしその過程というかポイント、ポイントでしかなし得ないこともあることをあらためて教えてくれたのがオリジナル時代小説「首巻き春貞」の執筆だった。
歳といえば「首巻き春貞」の主人公である松平春貞が第1巻で登場したときから今回公開する第11巻までの間に21年の歳月が過ぎたことになっている。
ということは小説の中でも世代交代は不可欠で年寄りは亡くなり、新しいキャラクタを登場せざるを得ない。
しかしいま一番悩ましいのは主人公の廻りの人たちの死を描くことだ。それらは実在の人物もいれば私の創作した人物もいるが、小説の中とは言え何だか知人が亡くなるような気がしてしばし筆が止まってしまう(笑)。
その「首巻き春貞」第11巻「長幼之序」も後一週間ほどで公開できるよう目処が立った。
ご一読願えれば幸せである。
そもそも小説で身を立てようとか金儲けをしようという気はあるはずもなく第一無料公開したところでどれほどの方が目を通してくださるかは大変心許ないものがあった。それに執筆動機のひとつとして自身のボケ防止も含まれている。したがってまずは1冊無事に書き終えることが第一のミッションだったし、自身が面白いと思うものでなければならなかった。
その第一巻を書き終えようとするとき私の頭の中にはすでに第二巻目のストーリーが浮かんできた。しかしその時点ではまずまず二巻やせいぜい三巻目で息切れするのではないかと考えていたことも事実だった。
何しろ1冊分を考えた場合、400字詰め原稿用紙で換算するなら330枚以上にもなる。無論全部の升目を埋めるという意味ではない。
ともかく原稿用紙を埋めていくにはアイデアとか熱意といったものが不可欠だが、それらは気力と体力にも大きく影響を受ける。
齢70歳にもなる自分にそれだけの意欲が持続できるものなのかは自分でもやってみなければ分からなかった。

※オリジナル時代小説「首巻き春貞」第11巻「長幼之序」近日公開予定
若い時には歳のせいにするのは格好も良くないしどこか逃げ腰のニュアンスも感じられて好きではなかったが、実際に自分が歳を取ってみると加齢の残酷さは身にしみてくる。
いくら若いつもりでいても体が動かない。足腰は椅子から立ち上がろうとするだけで出来の悪いロボットみたいにギシギシと音を立てるし膝はかなり痛むときがある。そして根底には約20年ほど付き合っている糖尿病も抱えている。
足だけではない。手もそうだ。
肩こりはともかくとしても腱鞘炎の上に左右の指のいくつかはいわゆるバネ指状態となり曲がらなくなっている。無理に曲げようとすれば激痛が走る。したがって十代のころから親しんできたクラシックギターや近年好んでいたリュートといった弦楽器はまず弾けなくなってしまった。ただし幸いなことにキーボードはこうして打てるので原稿を書くことができている。
それから眼が見えない(笑)。ド近眼と歳相応の老眼はともかくとしても乱視と飛蚊症が加わり,その上に近年白内障と緑内障に悩まされている。一昨年は左目を白内障手術したが近々今度は右目の手術を覚悟しなければならない。
こうした状況下で時代考証の確認はもとより多くの書籍や資料を読まなければならない現状は決して楽ではあり得ない。
なんだか愚痴のオンパレードに聞こえるかも知れないが、愚痴ではなくこれが歳を取るという現実だとして甘んじて受けるしかない。
そんな自分が1年4ヶ月ほどの間に第11巻を書き上げることができたのだから「自分を褒めてあげたい」と思う。
若い時からマイコンやパソコンの世界に足を突っ込み、いわゆるライターとして多くの原稿を書いてきたし書籍も共著を含めれば18冊ほどにもなり文章を書く(入力)ことは体に染み込んでいると思っているが、前記したようにその効率はと考えれば申し上げるまでもなく体力やら気力といったものに左右されがちであり正直若い時と同じというわけには行かない。
しかし先日ふと考えたことがある。若さがこうした新しいものを生み出す原動力だとしても私にとって30代のときに「首巻き春貞」は絶対に書けなかったであろうことを…。
この年齢になったからこその妙というものもあるに違いないし年齢を重ね、読書体験も含めて良くも悪くも多くの経験をしたからこその結果とも言えるのだと思う。
だとすれば歳を重ねていくことはマイナス面ばかりではないことになる。
皆、誰でもが歳を取りいつかは消えて行く。しかしその過程というかポイント、ポイントでしかなし得ないこともあることをあらためて教えてくれたのがオリジナル時代小説「首巻き春貞」の執筆だった。
歳といえば「首巻き春貞」の主人公である松平春貞が第1巻で登場したときから今回公開する第11巻までの間に21年の歳月が過ぎたことになっている。
ということは小説の中でも世代交代は不可欠で年寄りは亡くなり、新しいキャラクタを登場せざるを得ない。
しかしいま一番悩ましいのは主人公の廻りの人たちの死を描くことだ。それらは実在の人物もいれば私の創作した人物もいるが、小説の中とは言え何だか知人が亡くなるような気がしてしばし筆が止まってしまう(笑)。
その「首巻き春貞」第11巻「長幼之序」も後一週間ほどで公開できるよう目処が立った。
ご一読願えれば幸せである。
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