Appleが最初に開発したポータブル機「Apple IIc」を手にして...
私たちの周りではいまiPadの話題で持ちきりだが、Appleが最初に開発したポータブル機は何かご存じだろうか? 無論古参のAppleユーザーなら周知のことだがそれは1984年4月にリリースされた「Apple IIc」なのだ。その「Apple IIc」が縁あって当研究所に鎮座することになった。
Apple (当時はApple Computer)は1977年1月3日に法人化してからすでに創業33年にもなっているが、その長いようであっという間の歴史の中で最初に「ポータブル」とネーミングされたマシンは1989年リリースの「Macintosh Portable」そのものだった。とはいえご承知のようにこのマシンはバッテリーで稼働したもののその6.4キロもの重さはとてもポータプルマシンとは言い難かった。
しかし実はその5年前、1984年4月にリリースされた「Apple IIc」は製品名にポータブルというネーミングこそ付いてはいないものの、その可搬性を重視した小型な設計とハンドルが標準装備されているデザインはパーソナルコンピュータを手軽に持ち運びすることを可能とした製品として知られている。ただし正直言えば大振りで無骨なACアダプタをも持ち運びしなければならなかったのだが...。
今般iPadの入手で慌ただしい毎日を送っている当研究所に縁あってその26年も前のマシン「Apple IIc」が鎮座することになったのである。

※Apple IIc と専用のキャリングケース
そういえば、この「Apple IIc」発表の際にスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックそしてジョン・スカリーが並んで「Apple IIc」を前にしている写真が存在するが、実はこの「Apple IIc」はすでにウォズニアックの考えるマシンではなくなっていた。
当のウォズニアックは「Apple IIc」を「素晴らしいマシンだ」と評価しているが、その頃には有名になりすぎて忙しく開発には直接関われなかったようだ。
事実「Apple IIc」はスティーブ・ジョブズ主導で立案されプロジェクトだった。その “C” は「compact」を意味していたし開発コードネームは「Moby」だった。そしてそのデザインはApple社内デザイナーと外部のフロッグデザインが主導権争いにしのぎを削ることになったものの、結局はフロッグデザイン側の勝利となりスノーホワイトのデザイン言語ともいわれるようになる最初の優れたプロダクトとなった。そして多くの賞を受賞し様々なメディアにも取り上げられたが、例えばいみじくも1984年に制作されたピーター・ハイアムズ監督「2010 : The Year We Make Contact」(2001年宇宙の旅の続編)では砂浜でフロイド博士が液晶モニター付きの「Apple IIc」を使っているシーンが登場する。これなども当時のAppleとしては新しい広告手法の試みだったようだ。
ともかくApple IIのオープンな利点は「Apple IIc」の小型化への代償とはいえ失われ、いわゆる拡張スロットもないクローズドなマシンとなった。またその5インチの薄型フロッピーディスクドライブはコンパチビリティが低くそれまでのApple II用フロッピーメディアも読めないものが多発した。
私はといえば1984年当時、ひとつにはMacintoshに夢中でありすでに8ビットのApple IIには戻れないことを肌で感じていたこと、そしてパーソナルコンピュータにポータビリティを求めてはいなかったこともあり「Apple IIc」には興味を示さず購入には至らなかったのである。
今般、縁あって当研究所の一員となった「Apple IIc」は専用9インチのグリーンディスプレイと共にもともとのオフホワイトカラーが濃いアイボリーに変色し、26年もの長い月日が経過したことを思い知らされる。しかしそのディテールはいまだに抗しがたい魅力を放っていることも確かである。

※専用の9インチ・グリーンディスプレイとApple IIcのフォルムはなかなかに美しい
ともかく手元に届いた「Apple IIc」は一部かび臭が強い箇所がありキーボードの一部に埃が詰まっていたりしたため、まずは風通しの良い場所に1日放置した上で簡単に掃除をした。同時にキーボードをひとつひとつ押してみたが一部に堅いキーやガクガクするキーもあり、もしかするとそのままでは使えないキーもあるかも知れないと心配になってくる...。
ともあれ一番の問題はモニターを含めて「Apple IIc」本体が基本的に動作するのか、起動するのか、そしてフロッピーディスクが読めるのか...といったことだ。特に前記したように「Apple IIc」の内蔵フロッピーディスクドライブはもともと不安要素があるからして確認を要する重要部分である。
万一「Apple IIc」が起動しない...ということなら、そして分かる範囲でのリカバリーも意味がないのであれば残念ながらただのオブジェに過ぎなくなってしまうからとまずは起動のテストをすることに...。
ただし残念ながら「Apple IIc」オリジナルのシステムデスクは手元になくApple IIeで使っていた DOS 3.3 のSystemMasterディスクや同じく “An Introduction to the Apple IIe Computer” というディスクを起動させてみた。
幸いこれらのフロッピーディスクは無事読むことができ、専用のグリーンモニタも微調整を必要としないほど問題はなかった。したがって今のところ致命的なトラブルは抱えていないように思える。
とはいえやはり一部のキー入力がスムースでなかったり、たまたま入力できない事もあるが、これらは後日可能な範囲で時間をかけリカバリーしてみたいと思っている。

※一番心配だった内蔵フロッピーディスクドライブも問題ないようなので一安心だ
「Apple IIc」で忘れかけているBASICコマンドをたどたどしく打っているとApple IIに夢中になっていた1980年代前半のあれこれを思い出す。
今から思えば滲んだ画面だったもののカラーグラフィックスをはじめ、アニメーション、3D、シンセサイザー、ワードプロセッサ、BASICをはじめPascalなどの高級言語、音声認識、音声合成、ビデオ画像入力等々は皆Apple IIで体験し基本的知識を得たのだった。
私はそれ以前にワンボード・マイコンやPET 2001といった機器を使っていたが真のパーソナルコンピュータと呼べるものはApple II以外には考えられなかった。そのApple IIへの信頼があったればこそ1984年にリリースされたMacintoshへ何の不安もなく移行できたのだと思っている。
いまテストのため机上に乗っている「Apple IIc」を眺めているとこれまた自身のパソコンライフにとって欠けていたパズルのピースがまたひとつ埋まった感がして思わず頬が緩んでくる...。
Apple (当時はApple Computer)は1977年1月3日に法人化してからすでに創業33年にもなっているが、その長いようであっという間の歴史の中で最初に「ポータブル」とネーミングされたマシンは1989年リリースの「Macintosh Portable」そのものだった。とはいえご承知のようにこのマシンはバッテリーで稼働したもののその6.4キロもの重さはとてもポータプルマシンとは言い難かった。
しかし実はその5年前、1984年4月にリリースされた「Apple IIc」は製品名にポータブルというネーミングこそ付いてはいないものの、その可搬性を重視した小型な設計とハンドルが標準装備されているデザインはパーソナルコンピュータを手軽に持ち運びすることを可能とした製品として知られている。ただし正直言えば大振りで無骨なACアダプタをも持ち運びしなければならなかったのだが...。
今般iPadの入手で慌ただしい毎日を送っている当研究所に縁あってその26年も前のマシン「Apple IIc」が鎮座することになったのである。

※Apple IIc と専用のキャリングケース
そういえば、この「Apple IIc」発表の際にスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックそしてジョン・スカリーが並んで「Apple IIc」を前にしている写真が存在するが、実はこの「Apple IIc」はすでにウォズニアックの考えるマシンではなくなっていた。
当のウォズニアックは「Apple IIc」を「素晴らしいマシンだ」と評価しているが、その頃には有名になりすぎて忙しく開発には直接関われなかったようだ。
事実「Apple IIc」はスティーブ・ジョブズ主導で立案されプロジェクトだった。その “C” は「compact」を意味していたし開発コードネームは「Moby」だった。そしてそのデザインはApple社内デザイナーと外部のフロッグデザインが主導権争いにしのぎを削ることになったものの、結局はフロッグデザイン側の勝利となりスノーホワイトのデザイン言語ともいわれるようになる最初の優れたプロダクトとなった。そして多くの賞を受賞し様々なメディアにも取り上げられたが、例えばいみじくも1984年に制作されたピーター・ハイアムズ監督「2010 : The Year We Make Contact」(2001年宇宙の旅の続編)では砂浜でフロイド博士が液晶モニター付きの「Apple IIc」を使っているシーンが登場する。これなども当時のAppleとしては新しい広告手法の試みだったようだ。
ともかくApple IIのオープンな利点は「Apple IIc」の小型化への代償とはいえ失われ、いわゆる拡張スロットもないクローズドなマシンとなった。またその5インチの薄型フロッピーディスクドライブはコンパチビリティが低くそれまでのApple II用フロッピーメディアも読めないものが多発した。
私はといえば1984年当時、ひとつにはMacintoshに夢中でありすでに8ビットのApple IIには戻れないことを肌で感じていたこと、そしてパーソナルコンピュータにポータビリティを求めてはいなかったこともあり「Apple IIc」には興味を示さず購入には至らなかったのである。
今般、縁あって当研究所の一員となった「Apple IIc」は専用9インチのグリーンディスプレイと共にもともとのオフホワイトカラーが濃いアイボリーに変色し、26年もの長い月日が経過したことを思い知らされる。しかしそのディテールはいまだに抗しがたい魅力を放っていることも確かである。

※専用の9インチ・グリーンディスプレイとApple IIcのフォルムはなかなかに美しい
ともかく手元に届いた「Apple IIc」は一部かび臭が強い箇所がありキーボードの一部に埃が詰まっていたりしたため、まずは風通しの良い場所に1日放置した上で簡単に掃除をした。同時にキーボードをひとつひとつ押してみたが一部に堅いキーやガクガクするキーもあり、もしかするとそのままでは使えないキーもあるかも知れないと心配になってくる...。
ともあれ一番の問題はモニターを含めて「Apple IIc」本体が基本的に動作するのか、起動するのか、そしてフロッピーディスクが読めるのか...といったことだ。特に前記したように「Apple IIc」の内蔵フロッピーディスクドライブはもともと不安要素があるからして確認を要する重要部分である。
万一「Apple IIc」が起動しない...ということなら、そして分かる範囲でのリカバリーも意味がないのであれば残念ながらただのオブジェに過ぎなくなってしまうからとまずは起動のテストをすることに...。
ただし残念ながら「Apple IIc」オリジナルのシステムデスクは手元になくApple IIeで使っていた DOS 3.3 のSystemMasterディスクや同じく “An Introduction to the Apple IIe Computer” というディスクを起動させてみた。
幸いこれらのフロッピーディスクは無事読むことができ、専用のグリーンモニタも微調整を必要としないほど問題はなかった。したがって今のところ致命的なトラブルは抱えていないように思える。
とはいえやはり一部のキー入力がスムースでなかったり、たまたま入力できない事もあるが、これらは後日可能な範囲で時間をかけリカバリーしてみたいと思っている。

※一番心配だった内蔵フロッピーディスクドライブも問題ないようなので一安心だ
「Apple IIc」で忘れかけているBASICコマンドをたどたどしく打っているとApple IIに夢中になっていた1980年代前半のあれこれを思い出す。
今から思えば滲んだ画面だったもののカラーグラフィックスをはじめ、アニメーション、3D、シンセサイザー、ワードプロセッサ、BASICをはじめPascalなどの高級言語、音声認識、音声合成、ビデオ画像入力等々は皆Apple IIで体験し基本的知識を得たのだった。
私はそれ以前にワンボード・マイコンやPET 2001といった機器を使っていたが真のパーソナルコンピュータと呼べるものはApple II以外には考えられなかった。そのApple IIへの信頼があったればこそ1984年にリリースされたMacintoshへ何の不安もなく移行できたのだと思っている。
いまテストのため机上に乗っている「Apple IIc」を眺めているとこれまた自身のパソコンライフにとって欠けていたパズルのピースがまたひとつ埋まった感がして思わず頬が緩んでくる...。
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