カラー3Dプリンター、ダヴィンチColor miniで「造型サンプル出力サービス」を体験

現在愛用している3Dプリンターは4台目で一年前に手に入れたJ&T 3Dプリンター JT-28-004-Ⅱだ。最大造型サイズ 310 × 310 × 410mmの本製品はFDM方式の3Dプリンターとしては構造もシンプルでメンテも楽だし大変使いやすく気に入っている。しかしここのところ考えていることはなるべく早い時期にXYZ Printing社のダヴィンチColor miniを手に入れたいということだった…が、届いてしまった(笑)。


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※届いたばかりのXYZ Printing社のダヴィンチColor mini雄姿


カラーの3Dプリンターとして個人でなんとか手に入る製品はいまのところこのXYZ PrintingのColor miniでしかない。とはいっても気楽に買える価格でも無いが新しいMac購入を後回しにしても手に入れたいと考えていた…。時期としては来年の早い時期にと漠然と思っていたが、先日Amazonを覗いたのが運の尽き。なんとクリスマスセールとCyber Mondayそしてタイムセールの合わせ技で約21%ほどの大幅割引になっていたので思わずポチッてしまった ^^;

しかしそのダヴィンチColor miniはこれまで実機を手にしたことも無く情報はメーカーサイトか僅かなネット情報でしかない。とはいえこれまで少ない情報をかき集め、メーカーにも問い合わせてきたので概要は掴んでいるつもりである。
私がやりたい主なことは3Dスキャナーでスキャニングしたオブジェクトをカラー情報を持ったまま編集し、カラー3Dプリンターで出力することだ。したがってというか、一番確認したいことは色合いの問題である。
無論プリンターの仕様に従い、各種パラメーターのあれこれで変わってくるとは思うが、基本的なプリントで自分が創った3Dデーターがどのような色味でプリントされるのかを確認しないと闇雲に製品を買うわけにはいかない。

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※専用アプリ「XYZprint」で自作の3Dスキャニングデータを読み込んだ例。これをプリンターに出力した際の色味を確認したかった


しかしXYZ Printing社のサイトで「造型サンプル出力サービス」があることを知り、ポチるとは考えもしなかった先月のこと、お願いすることにした。ただし制約もあり、サイズが一辺50mmまで、そして積層ピッチが0.2mmでの出力となる。
ともかくiPhone XRとSandy Proでスキャニングしたデータを送った。

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※高さ約5cmのカラープリントサンプル(右)


ピッチも0.2mmと粗めだし非常に小さな胸像なので期待はしていなかったが、仕上がりの結果は概略考えていたとおりだった。このダヴィンチColor miniの最大プリントサイズは13cm立方なのでサイズを大きくすればデティールも良くなるように思うがそもそもデータの解像度が高くないので納得の範囲だった。ただし実用を考えると個人的には大きな問題が浮かび上がってきた。

その一番の問題はプリント…造型時間である。なぜなら「造型サンプル出力サービス」に使ったデータは手元の一般的な3Dプリンターなら1時間ほどでプリントができるものだが、ダヴィンチColor miniではなんと8.5時間かかるという。ちなみに親分格のダヴィンチColorなら2.5時間だという…。無論この造型の時間差はデータとプリント時のパラメーターによってかなりの幅で変わるはずだが…。

この辺はもっと情報を出してほしいものだが、時間がかかるのはダヴィンチColor miniの仕様だから仕方がない。カラーの3Dプリンターとして我々の手に入る範囲の製品をリリースしてくれたことには敬意を表するが、動作の基本が「積層→塗色」を繰り返す仕様なためであり、かつインクが三色一体なのでプリンタヘッドのクリーニングを頻繁にやらないと色が混じってしまうのだ。

二つ目はランニングコストの問題。ダヴィンチColor miniの使うフィラメント(PLA)は専用チップが乗った専用製品であり割高である。しかし問題はそこではない…。
ダヴィンチColor miniは前記したように3色一体型インク仕様のため、例えばシアン・マゼンタ・イエローのうちどれかひとつでも無くなればカートリッジ自体を交換しなければならない。そして今回サンプル出力していただいた作例でインク使用料はCMYそれぞれ約9.5%だという。

ということはこの作例程度のカラープリントを10回でカートリッジ交換となる計算だ。そしてメーカーサイトによればインクカートリッジの価格は10,780円(税込)というから一度のプリントでインク代が1,000円ほどかかるわけだ。
となればおいそれと闇雲に試行錯誤するわけにもいかない(笑)。ちなみにダヴィンチColor miniはCMYのインクがそれぞれ4.5ml(合計13.5ml)入っている。
このインクの4.5mlという量はいまいちピンとこないが、私が使っている目薬の新品容量が5mlだったので見当がついたが、プリンタメーカーの中にはカートリッジ内のインク量を非公開にしているケースも多いので正確には不明なものの4.5ml程度のものもあるようなので特に少ないというわけではないようだ。

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※ 各色4.5mlという量の感覚を掴みたいと医者から処方されている目薬と比べてみた。こちらは赤線部位まで5ml入っている


さて繰り返すができるだけ早い時期に何とか手に入れたいと考えてきたわけだが、こうしたあれこれを踏まえて考えるに個人の持ち物として十分に使い切ることが出来るのか…と正直一抹の不安が生じてきたのも事実。しかし結局手に入れてしまった(笑)。
プリント時間や稼働時の騒音(㏈)といった情報は時に販売にブレーキをかけることになる可能性もあるが、ダヴィンチColor miniに限らずメーカーは積極的に情報を提供すべきではないか。事実メーカーサイトはもとより製品紹介に関わるウェブサイトを検索してもダヴィンチColor miniのプリント時間が大幅にかかるという情報はほとんど見つからないのだ。この種のことは納得して購入するのと手にして初めて知るのとの間には大きな違いがある。

ともあれダヴィンチColor miniはカラーインクを使わない一般的な3Dプリンターとしても活用できるしオプションでレーザーモジュールも揃っている。
ということでカラーの3Dプリンター、それも何とか個人でも手の届く製品と考えれば今のところColor miniは他に選択肢がないユニークで魅力ある製品なのだ。
これから少しずつダヴィンチColor miniの実機を使いつつ、知り得たことをレポートしていきたい。




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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員