カラー3Dプリンタ「ダヴィンチColor mini」の長所と短所〜私的考察

極一部を除きこの世界のあらゆる事物には何らかの色が付いている。まあ、ここでは赤に見えるのは我々が赤と認識できる光の反射があるから…といった理屈はともかくとしてそれらは自然の色もあるし我々が意図的に付けた色もある。そうした事物…現実として存在するしないにかかわらず…を3Dプリンターで再現しようとするなら色があった方が自然だしリアルということになる。


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※待望のXYZ printing社カラー3Dプリンタ「ダヴィンチColor mini」


とはいえこれまでの3Dプリンターはご承知のように単色のフィラメントで造型する仕組みだった。無論、何とか多色を実現したいとヘッドを二つ持つ機種やプリントの途中で色の違うフィラメントに取り替える…といったことで多色表現を試みることもあり得たが、それらは例えば花瓶といったオブジェクトならデザインの一環として良いものの、人の顔をリアルに…といった造型には向かない。

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※こうした造型がプリント後の彩色を必要とせず一発で出来るのは素晴らしい


どうしてもフィギュア作りなどで自然な多色表現が必要なら造型後に別途彩色するしかなかった。勿論業務用の超高価なシステムならカラーの3Dプリンターは存在するが、これまで一般ユーザーが手元に置いて活用するのは夢の又夢の世界だった。
それがXYZプリンティング社の「ダヴィンチColor」の登場でデザイナーといった仕事をなさる方など小規模なビジネスの現場でもフルカラー3Dプリンター活用が実現することになったしそのコンパクト版/安価版の「ダヴィンチColor mini」ならなんとか個人でも手が届く価格になった。
私が手にしたのはその「ダヴィンチColor mini」だが、一ヶ月半ほど使ってみて個人的に感じた長所と短所を記してみたい。

ただし始めにお断りしておくが、実利用としての「ダヴィンチColor mini」の不満点は明らかに違いない。それは造型サイズが縦横高さ共に130mmと小さいし、なによりもフルカラー造型の仕組上、プリントに大変時間がかかる。
それも一般的な3Dプリンターの倍程度というのではなく、十数倍の時間がかかる場合もあるから場合によっては取り組んでいられないケースもあるだろう。

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※左の一般的な単色プリントなら1時間もかからないところだが、右のフルカラーでは8.5時間ほどかかる


さらにシアン・マゼンタ・イエローの三色一体型インクカートリッジの発色は良いものの、ベースとなる専用フィラメントには艶があり、造型後に艶消しスプレーなどの後処理が必要となる場合もある。そして専用フィラメントおよびインクカートリッジはランニングコストがかかる…。

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※「ダヴィンチColor mini」の一体型カラーインクジェットカートリッジ部


勿論「ダヴィンチColor mini」はカラーの造型だけでなく単色の造型もできるしオプションでレーザーモジュールも用意されているが、申し上げるまでもなくその存在意義はカラー造型にあるわけだ。
とはいえ前記した不満点はここではあえて短所としては捉えないことにする。なぜならカラー3Dプリンターとしての「ダヴィンチColor mini」は個人が手にすることが出来る製品としては現時点で精一杯のスペックだからと考えるからだ。違う物言いをするなら「ダヴィンチColor mini」は良い意味で時代の最先端を見せてくれる製品だが、そのスペックはまだまだ発展途上にあるともいえる。

余談ながら「ダヴィンチColor mini」を使っているとすでに40年近く前に手に入れたApple II を思い出す。Apple II は往時としてカラーが簡単に扱える唯一といってもよいパーソナルコンピュータであり、高価だったが拡張性も高く優れた周辺機器とソフトウェアを多々排出してきた。
それらの最先端のツール、例えばカラーのライトペンやイメージデジタイザを活用し私はモジリアニの絵などを模写していたが、パソコンに詳しくない友人に見せたところ「きったねえな」と言下に切り捨てられた(笑)。
当人としてはコンピュータで絵を、それもカラーの絵を描くことが出来たことに感激していたものの冷静に眺めるならカラーモニターに表示されたそれは色が滲み、細部ははみ出したりしてとてもとても現代のコンピュータアートとは比較にならない出来だったのだ。

パーソナルなカラー3Dプリンター「ダヴィンチColor mini」もある意味そうした過渡期にある製品ではないかと評価している。あと5年とか10年経てば価格はもとより3Dプリンターといえばカラーであることが当然という時代がくるに違いないしその造型も飛躍的に進歩しているに違いない。
だから、造型サイズの問題やプリント時間が膨大にかかること、あるいはその細密さといった点について欠点とは捉えないことにしよう。現時点では詳細なスペックを論ずるより、カラー造型が可能な3Dプリンターが存在するという事実に拍手をすべきなのだと思う。
ということで早速「ダヴィンチColor mini」の長所短所についてである。無論個人の感想であり万人が頷いてくれるとは限らないが…。

【長所】

・デザインがよい
 好みはあると思うが基本ブラックと一部にレッドが使われたキューブ直方体のボディは引き締まった印象を受けるし好ましい。間違っても安っぽさは感じられない。

・筐体は頑強な作り
 基本は金属フレームで支えられた頑強な作りである。したがって動作中の筐体の歪みも心配は無い。また私の手元にある製品に関しては雑な作りの部分はなくとても素敵である。

・ファームウェア/ソフトウェアの簡便さ
 その操作は前面にあるカラー液晶画面で行うが、ファームウェアの出来も日本語表示ができることも含めて分かりやすく使いやすい。またスライサーは無料でダウンロードできる「XYZprint」という専用ソフトウェア(Macにも対応)だが、シンプルで割り切りのよい簡便な仕様になっている。

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※全面のカラー液晶パネルは使い勝手がよい


例えばピッチのパラメーターだが、オープンなスライサー「Cura」ではプロファイルとしていくつか推奨の設定もあるものの、0.06mmとか0.15mmといった自由度の高い指定が可能だが、「XYZprint」では0.1mm、0.2mm、0.3mmに限られているといった具合。

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※専用スライサー「XYZprint」は思い切りのよい仕様になっている


・自動レベリング機能搭載
 個人的にこの「ダヴィンチColor mini」で3Dプリンターは5台目になるが、本格的な自動レベリング機能が搭載されている製品は初めてだ。別途Z軸、すなわちノズルとプリントベッドの距離は名刺などの紙を挟んで調節する必要があるが、ベッドの水平調整はこの自動レベリング機能に任せておけばOKなようだ。

・停電復帰機能搭載
 停電などのアクシデントでプリント中に電源が落ちても再度電源を入れると直前の位置から正確にプリントを再開できるので万一の場合も安心できる。ということは長時間かかるプリント時に夜間騒音が問題を起こすなら一旦電源を切り、翌朝又再開することができる理屈になる…が、まだやっていない。

・印刷中のフィラメント補充可能
 これも最近の機種には搭載されていることが多い機能だが、プリント途中でフィラメントを交換できることで使用中のフィラメントが切れかかった際は勿論、単色プリントの際にフィラメントの色変えも可能になる。

【短所】

・一部稼働部位の無償サポートが90日間
 FLASHFORGE JAPAN社がきっちりと1年間無償保証を謳っているしその新製品Adventurer3Xでは2年の保証を謳っているのに対して(無論消耗品部位は別)XYZ prontint社の「ダヴィンチColor mini」はその部位により細かく保証期間を分けており、 1年保証適用箇所部位はメインボード、基盤類、ワイヤレスモジュール、タッチパネルだけであり印刷モジュールは勿論、ヒーター、温度センサーなど印刷プラットフォーム関連部分、モーター、モーターケーブル、軸、軸固定部品、センサー、センサーケーブル、ベルト、プーリーなどモーターモジュール関連部分、そしてインクホルダー、インクステーション、インクステーションモーター、ケーブルなどモーターモジュール関連部分…いわゆる稼働部分の無償保証は90日間である。
ユニット化されているエクストルーダー本体などは当然としてもヒーター、温度センサーやモーターモジュール関連部分の90日間はいかにも短すぎる。

・天井に蓋がない
 「ダヴィンチColor mini」はフロントのドアを閉めればすべての面が閉じられると思うかも知れない。しかし意外なことに上面は開いており蓋もカバーもないのだ。ここだけでも開いていれば室温に直接影響も受けるし、上面でもあり埃なども気になる。オプションでカバーが欲しいところだが、取り急ぎ使わないとき限定として他の3Dプリンターでオリジナルの蓋を作っておいた。

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※天井の空きを塞ぐ(未使用時)カバーを自作した


・電源スイッチが背面にある
 置き場所というか設置の環境にもよるが、私の場合は部屋の角に設置したので筐体のサイズも大きいし、電源スイッチに手を回し触れるのが些か大変なのだ。無論不用意に電源を切ってしまうような位置は避けたいが、両サイドのどこかの方が使い易い。

・インクカートリッジの扱いが面倒
 マニュアルやメーカーのウェブサイトなどによれば、インクは揮発性なので乾きやすく、例えば丸一日使わないときがあればカートリッジを取り外し、アルコールでインクヘッドをクリーニングしてから購入時のカバーを付けて保管せよとある。それは良いとしても再度カートリッジを取り付けた際にはカートリッジのインクヘッドをレンズ拭き布やレンズ紙に押しつけ正常に転写されているかを確認してから取り付けろとある。
これらは面倒だが、それ以上にカートリッジを取付直す度にインク位置のチェックのため校正作業を行わなくてはならないという。システム構成上仕方がないと言われればそれこそ仕方がないが…。

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※インク位置のチェックのためのプリント校正作業

 
・電話によるサポートに不満
 設置後のフィラメントロード時にトラブルが生じた。幸い購入後すぐに製品登録を行ったからだろう「この度は、3FCM1 をご購入いただき、誠にありがとうございました。」というメッセージメールが届いていた。そしてそのCustomer Serviceの項に「ご質問がございましたら、弊社サポートセンターへご連絡をお願いいたします。050-55XX-XXXX(日、祝祭日を除く 9:00-18:00)」と明記があった。局番の050が怪しいと思ったがとにかく電話をしてみたら「現在使われておりません」とのこと(笑)。
詳しい経緯は省くが、別途購入前に多々営業部署の担当者にメールや電話を含めてお世話になったがとても真摯に対応していただいた。しかしサポートの電話口に出た担当がたまたま外れだったのか近年例の無い気分の悪い対応だった。
そういえば、FLASHLOGEはホームページでサポートの電話番号が公開されているし、J&T Technologyも製品購入後に一度メールをしたらサポートの電話番号を教えてくれたし何度も利用させていただいている。
しかし、XYZ printingのホームページにはユーザー登録してログインしてもメールによる問い合わせはできるが探した範囲では返金受付の専用電話番号しか記述がない。結局他の部署経由でサポートの番号を教えていただき電話したのだが…。
現状の3Dプリンターはメーカー側がどれほど完成度の高さを謳ったとしてもある意味で一般家電とは違い未成熟の製品であり、メーカーのサポートは不可能だと考える。
サポートの良し悪しは企業の存続を左右する重大事だと考えるが改善を望みたい…。

ということで「ダヴィンチColor mini」は他に類を見ない魅力ある製品だが、価格はともあれいまの時点で3Dプリンターを手にしたいすべての方にお勧めできるものではないとも思う。
それは闇雲に使い始めたとしてもやはり前記したような制約が現実問題として足枷となるかも知れず、専用フィラメントはともかくインクカートリッジのランニングコストも馬鹿にならないからだ。
ただし目的と対効果などをきちんと考えた上で活用すれば大きな戦力となるに違いない。そして個人的には前記したようにApple II によるカラーグラフィックスをいち早く体験したのと同様、時代とテクノロジーの転換点に己がいるということに興奮を覚えている。



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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。
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