ハンドヘルドパーティクルカウンターHT9600によるマスクフィルター透過性能の測定

どうにも困った性格で、思い立ったら突きつめてみなければ気が済まない…。とはいっても無論できることとできないことがあるわけだが、未知のことに手足を突っ込む好奇心の強さは若い時と少しも変わっていない(笑)。今般大気質モニター「HT-9600」を手にしたのもそうした一環である。

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※ハンドヘルドパーティクルカウンターHT9600。上はサイズ比較のためにマウスを置いた


■概論
屋内にしろ屋外にせよ大気環境の良し悪しは健康に直結するわけだから、いま自分が多くの時間を過ごしている場所の環境がどのようなものであるかを知るのも決して無駄ではないだろう。しかし今般私がハンドヘルドパーティクルカウンター「HT-9600」を入手したのはそうした目的ではない。
目的は市販の不織布マスクは勿論のこと、3Dマスクに使うマスクフィルター類がそれなりの効果があるものなのかを検証したいということに尽きる…。

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※今回フィルター透過性能測定に使ったアイテム。左から不織布マスク、三層マスクフィルター、ティッシュペーパー、二層マスクフィルター、エアコンフィルターそしてキッチンペーパー


ところで4月14日のYahooニュースに寄れば「静岡県内で84店舗を展開する杏林堂薬局(浜松市中区)は13日までに、3Dプリンターを使ったマスク製作を始めた。洗って再利用できるマスクとして従業員が使用する。従業員に配布していた使い捨ての紙マスクを一般販売に回し、新型コロナウイルス感染症の影響で品不足が続く店舗での供給量を増やす。」とのこと。

要は「3Dプリンターでプラスチック製の型を作って布で覆い、耳用のゴムひもを付ける。」とあるが、一番の問題はこうして着用する3Dマスクが本当の意味で普及している不織布マスクと同等の性能があるかどうかではないか。無論3Dマスク自体は単なる樹脂製で呼吸穴が空いているだけだからウイルスはもとより花粉もダストの予防もできない。
3Dマスクがマスクとして効果を生むのはそこに着ける何らかのフィルターと口元への密着度の問題だといえる。ひとつでも店頭販売数を増やしたいとする企業の意志は立派だが、従業員の健康も守らなければならない。薬局だから何らかの効果の検証をしているのだろうが、闇雲に3Dマスクだから良しとするのは危ない…。
くどいようだが、肝心なのはフィルターなのだから。

HT9600_06.jpg

※筆者が3Dプリンターでプリントした3Dマスク(PITATT公開データによる


しかし、別に研究者でもなく、専門家でもない者がフィルターの検証に手を出したところで信憑性の高い意味のある正確なデータは取れないとは思うが、それでもこうした情報は極端に少ないばかりか、情報が交錯して素人には何が本当なのかということすらぼやけているのが現実だ。

それなら自分でできる範囲のことでも良いから実験し、納得してみようということがそもそもの発端であった。
ただし、大気というか空気中のパーティクル(粒子)を測るのは目視というわけにはいかず(笑)それなりの計測機器を必要とするが、研究者らが使うであろう専門の計測機器など素人が手を出せるものではなく、手に入れたところで使いこなせるはずもない。
しかしどのような製品においてもある種、コンシューマー向けというべき比較的安価な製品もあるはずだと色々と調べた結果、精度は落ちるだろうが操作が簡単そうな製品があったのでダメ元で手に入れた次第。

とはいえはじめに私のスタンスをお話ししておきたい。そもそもマスクって必要なのか…という話もあるではないか。しかしこれまたよく言われているように、新型コロナウイルス「COVID-19」はまず飛沫感染で移るといわれているが、飛沫そのものはマスクでブロックできるとしてもそれに含まれているウイルス自体は容易にマスクの繊維を通り抜けてしまうほど極小なので、受け身としての感染防止にはならないと言われている。
確かに医療関係者が使う医療用マスク(N95)はすごく息苦しいそうだが、これでさえ100%完全にウイルスから守れる保証はないという…。

ちなみに粒子のサイズを確認すると飛沫が3.0〜5.0μm/PM2.5が2.5μm以下/細菌が1.0μmそしてインフルエンザウイルスが0.1μmだという。なおμmは0.001 ミリメートルだ。
したがって理屈は市販のマスクなどでは花粉やPM2.5は防げてもインフルエンザウイルスは易々と通ってしまうことになる。

こうしたことからマスクは不要という話も出てくる。ただし今回の「COVID-19」に関してマスクは予防というよりすでに保菌者かも知れない自分の飛沫をまき散らさない為という大切な目的もある。
また感染はウイルスに触れた手指で口や鼻などに触れることからも起こるという。したがってマスクをしていればその間、口や鼻に触れないわけで、これまた消極的な話しだが、感染防止に役立つとも言える。
さらにそのマスクだが、装着の仕方が悪ければ意味が無く、隙間から空気の出入りが起こるから装着の方法も正しく顔に密着するようにしなければならない。

ということで、今回の主旨はマスクがコロナウイルス感染防止にどれほど役立つか…どうしたら効果的な使い方が出来るか…といったお話しではない。
例えマスクはウイルスを通してしまう不完全なアイテムだとしても肝心なのはマスクやマスクフィルターが飛沫飛散を防ぐ効果があるのかないのかにかかってくる。
また市販のマスクにしてもマスク不足の影響もあってどこで作られたのかも分からない正体不明のマスクを使わざるを得ない場合も出てくる。そうした場合、果たしてマスクとしての効果を期待できるのかどうかも我々には分からない。マスクの恰好をしてれば信用するしかないのである…。

またマスク不足の折、ありがたいことに3Dプリンターで作ることが可能な3Dマスク(マスクカバー)データが公開されているが、それを使うにしても重要なのはそこに使用するフィルターだ。
手軽なのはティッシュで代用可能という話しもあるし、キッチンペーパーも使えるという情報もある。そして私も試しているが高性能のエアコンフィルターを代用するというアイデアも捨てがたいが、それもこれも肝心なのはどれほどの効果が期待できるのかを我々は知らずに使っているのが問題ではないか。

しかし大げさで無くことは命に関わることだが、こうした情報は極めて少ない。であれば精度は期待できないが効果の傾向程度は知ることが出来るだろうと今般エアアナライザー「HT-9600」を手に入れて計測を始めたのが今回のレポートである。
そのスペックは0.3μm/2.5μm/10μmの粒子サイズを計測できるとされるが、機器の精度は±20%程度の誤差があることはともかく、テスト環境のいい加減さ、計測方法のアバウトさなどからどれほど機器の能力を活かした計測ができたかは心許ない。
とはいえくどいようだがフィルターとして計測してみたアイテムの効果の傾向はわかるのではないかと自負しているのだが…。

■計測の実
エアアナライザー「HT-9600」の計測は簡単だ。本体の電源を入れ、濃度単位を "Piece/L" にし「RUN」のボタンを押すだけだ。なお "Piece/L" とは計測時間中に計測されたパーティクルカウント数を換算し、カウント結果を1リットルあたりの個数に換算するものだ。
計測に必要な時間は50秒で、時間が経つと0.3μm/2.5μm/10μmの各パーティクル数を2.8インチのカラー液晶画面に表示してくれる。
なおバッテリーは同梱のMicro USBケーブルで内蔵バッテリーを充電して使う。

さて、まずは私が日々座している部屋の机上にエアアナライザー「HT-9600」を置く。その際に本体は背面に排気スリットがあるので塞がないように注意をする。そして本体上部のサンプリング空気入口部位を計測したいフィルターで覆って…ということになる。前記したように「RUN」を実行するとポンピングタイプすなわち吸引のサンプリングが始まる…。

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※サンプリング空気入口を目的のフィルターで塞いで計測する


勿論フィルターとして扱うアイテムは未使用のものだ。
まあまあ覆い方も輪ゴムで止める程度なので結果も知れたものだが、興味津々ではある。

まずはエアアナライザー「HT-9600」で当該場所の環境をフィルター無しで計測してみた。その結果だが…

            0.3μm     2.5μm   10μm 

室内 フィルター無装備  233000     410     5

という結果が出た。なお数値は三度計測した平均値である。この値はまずまずクリーンだというぎりぎりの範囲内に入っているが、計測したのが早朝でもあり、就寝時には室内の換気をしていなかったための値と考えられる。
ちなみに3時間後に同じ場所で計測してみると0.3μmは106000、2.5μmは150、10μmが1に下がっていた。

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※計測結果はこんな感じで表示される。ただし記事中と表示の値は関係ありません


次に市販のマスクをはじめ、3Dマスクのフィルターとなり得るのではないかと思われるアイテムをエアアナライザー「HT-9600」のサンプリング空気入口部位になるべく一重に巻き計測してみたのが以下の結果である。無論エアアナライザー「HT-9600」の置き場所は同じ場所だ。

HT9600_05.jpg

※各アイテムの透過性能結果


■結果の評価について
効果は数値をご覧いただければ説明の必要もないかも知れないが、フィルター無しの計測値よりパーティクル数が少ないほどフィルターとしての効果が優秀だということになる。しかし意外と言っては叱られようが市販の不織布マスクの優秀さには驚いた。
これは「立体型不織布マスク BFE PFE VFE 花粉99%カット」を謳ういわゆるメーカー品だが0.3μmの粒子もほぼ防御できている。

また買い置きしたマスクフィルターのうち、三層構造でPM2.5をブロックすると謳っている製品もかなり優秀なことが判明した。
対して期待した市販のティッシュペーパー(二つ折り)は少々期待外れだったが、飛沫が3.0〜5.0μmのサイズなら少なくとも飛沫は防げる理屈であり、頼り切るのはまずいがフィルターとしてはまずまずか…。で、試しに4重にしてみると0.3μmが9424、2.5μmが30、そして10μmが0という結果にはなったものの、これではマスクフィルターとしては呼吸が苦しくなるので実用的ではなくなる。

そしてこれまた期待していたエアコンフィルターはどういうわけかキッチンペーパーに負けている(笑)。この結果を見る限り、3Dマスクのフィルターとして適切なものは良質のマスクフィルターかキッチンペーパーということになる。勿論キッチンペーパーやティッシュもメーカーや製品によって製造過程や原材料も違うかも知れないことは留意しなければならないが…。

ということでメーカーの肩を持つわけではないが、きちんとしたメーカーの不織布マスクは相応の効果があることがわかった。まあ今回の結果が文字通りフィルターとしての性能としてそのまま評価できるかについては心許ないものの、こうした結果を踏まえ、呼吸が楽で効果があるものを探すことにしたい。ひとつ心残りは布マスクが手元にないので計測できなかったことだ。手に入ったらまた再度確認してみたい。




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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。
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