オリジナル時代小説「首巻き春貞(外伝)天一坊事件異聞」公開
本編は原稿用紙に換算して七十枚ほどの短編である。実はご承知の方も多いと思うが「松平藤九郎始末(三)首巻き春貞外伝」で一連の時代小説は完結と宣言し、すべてを見直し、一部の表紙を改変して「決定版」として整えたものの、おかしなことに心にぽっかりと穴が空いたような気持ちになった。

そもそもがこの時代小説「首巻き春貞」は筆者自身のボケ防止を目的に執筆を開始したのであった。したがって一冊書けば気が済むだろうと考えていたものの次から次へとアイデアが湧き出て結局全部で二十巻にもなってしまった。
そしてありがたいことに少なからず読者もおいでだが、書き手がこれほど楽しいと思ったことはないほど充実した日々であり、心の一旦は常に江戸中期の松平春貞の屋敷にあったともいえるほどだ。
さて、というわけで空虚な心の穴を埋めるためにオムニバス編ともいえる短編を書いてみようと思い立った。
「首巻き春貞」の時代背景は小石川養生所が開設された享保七年(一七二二年)十二月初旬からスタートし、主人公松平春貞は勿論、八代将軍吉宗と江戸南町奉行大岡越前守忠相が重要な役割を果たす時代小説である。
であるなら本来、享保十三年から十四年にかけて起きたといういわゆる「天一坊事件」は書かずにいられない大きなテーマであるはずだが、その時代を描いた「首巻き春貞(五 誕生」執筆当時、筆者の力量では小説としてどのように描くかがはっきりできず、結局事件を意図的に無視した経緯があった。
そんなわけで今回短編のオムニバスを書くにあたり、この「天一坊事件」にスポットを当て、特に江戸南町奉行大岡忠相の裁く苦悩を描いてみようと思い立った。
とはいえこれは小説だからして歴史としての事実は事実としてもストーリーは無論フィクションである。
いや、実はこの「天一坊事件」は「大岡政談」に収録され、大岡忠相の名裁きの一つとされていることでもあり、これまでにも小説や芝居あるいは映画など様々な作品が知られている。
しかし史実を言えば、このとき南町奉行大岡忠相はことが町奉行支配地外での事件のため、当該事件に実際には全く関与していないのだ。
実際には天一坊は勘定奉行、稲生下野守の裁きを受けて死罪となり、鈴ヶ森刑場で獄門になっている。
さて、奇遇といえば奇遇な話しだが、最初は漠然と天一坊事件を調べ始めたわけだが、天一坊が処刑されたのは小説の中にあるとおり享保十四年(一七二九年)四月二一日だがこれは無論旧暦で、新暦に換算すると本日公開初日の五月十八日となる。
ということで、書き始めたときに気がついたわけだが、偶然とは言えまさしく天一坊の命日目前に執筆を思い立ったわけで我ながら感慨深い思いに浸っている。
ともあれ、例えお一人でも楽しんでいただけるのであれば嬉しい…。
■オリジナル時代小説「首巻き春貞」&「外伝」掲載リスト

そもそもがこの時代小説「首巻き春貞」は筆者自身のボケ防止を目的に執筆を開始したのであった。したがって一冊書けば気が済むだろうと考えていたものの次から次へとアイデアが湧き出て結局全部で二十巻にもなってしまった。
そしてありがたいことに少なからず読者もおいでだが、書き手がこれほど楽しいと思ったことはないほど充実した日々であり、心の一旦は常に江戸中期の松平春貞の屋敷にあったともいえるほどだ。
さて、というわけで空虚な心の穴を埋めるためにオムニバス編ともいえる短編を書いてみようと思い立った。
「首巻き春貞」の時代背景は小石川養生所が開設された享保七年(一七二二年)十二月初旬からスタートし、主人公松平春貞は勿論、八代将軍吉宗と江戸南町奉行大岡越前守忠相が重要な役割を果たす時代小説である。
であるなら本来、享保十三年から十四年にかけて起きたといういわゆる「天一坊事件」は書かずにいられない大きなテーマであるはずだが、その時代を描いた「首巻き春貞(五 誕生」執筆当時、筆者の力量では小説としてどのように描くかがはっきりできず、結局事件を意図的に無視した経緯があった。
そんなわけで今回短編のオムニバスを書くにあたり、この「天一坊事件」にスポットを当て、特に江戸南町奉行大岡忠相の裁く苦悩を描いてみようと思い立った。
とはいえこれは小説だからして歴史としての事実は事実としてもストーリーは無論フィクションである。
いや、実はこの「天一坊事件」は「大岡政談」に収録され、大岡忠相の名裁きの一つとされていることでもあり、これまでにも小説や芝居あるいは映画など様々な作品が知られている。
しかし史実を言えば、このとき南町奉行大岡忠相はことが町奉行支配地外での事件のため、当該事件に実際には全く関与していないのだ。
実際には天一坊は勘定奉行、稲生下野守の裁きを受けて死罪となり、鈴ヶ森刑場で獄門になっている。
さて、奇遇といえば奇遇な話しだが、最初は漠然と天一坊事件を調べ始めたわけだが、天一坊が処刑されたのは小説の中にあるとおり享保十四年(一七二九年)四月二一日だがこれは無論旧暦で、新暦に換算すると本日公開初日の五月十八日となる。
ということで、書き始めたときに気がついたわけだが、偶然とは言えまさしく天一坊の命日目前に執筆を思い立ったわけで我ながら感慨深い思いに浸っている。
ともあれ、例えお一人でも楽しんでいただけるのであれば嬉しい…。
■オリジナル時代小説「首巻き春貞」&「外伝」掲載リスト
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