フィラメント防湿ボックス「PolyBox」Edition II ファーストインプレッション
3Dプリンター関連製品を久しぶりに買った。それがフィラメント防湿ボックス「PolyBox」Edition II である。同類の製品としてはすでにeSUNの「eBOX」を所有しているのでそれと比較しながら「PolyBox」の概要をご紹介していきたい。
■「PolyBox」って何だ?
「PolyBox」はその名の通りFDM方式の3Dプリンターで使うフィラメントを湿気から守ろうと専用にデザインされたプロダクトだ。特長としては1Kgのフィラメントなら2巻、300Kgなら1巻をボックス内に収納でき、かつそのまま3Dプリンターに供給できるという代物である。

※1Kgのフィラメントリールを2巻セット可能な「PolyBox」
この「PolyBox」だが「吸湿防止機能付きのフィラメント保管ボックス」と謳っているとおり、ボックス内に乾燥剤(附属している)を収納するスペースがあり、それにより庫内の湿度を15%程度に保ち、フィラメントの吸湿を防ぐ製品である。
したがって「防湿」は可能だがすでに湿気を含んだフィラメントを乾燥させることにどれほど効果的かは検証してみないことには分からないものの、その効率は乾燥剤の性能に100%依存することになる。

※本体以外の同梱品
そもそもこれまで1度湿気を含んでしまったフィラメントは熱を加えて乾燥させないと元に戻らないと言われてきた。しかし最近FLASHFORGEブランドで超速攻を謳う「エクストリームZERO」という乾燥剤が発表され、モニター評価では高い評価を得ているようだが、これは使い捨てのようだしコストパフォーマンスも気になるものの是非試してみたい。
一方「eBOX」は「防湿」はもとよりだが「除湿」を目的に設計されたプロダクトだ。「eBOX」は内部にヒーターを持っており、温度とタイマー機能の併用で収納したフィラメントに温風を与えて除湿する仕組みだ。またフィラメントホルダーとして邪魔にならないスペースに乾燥剤を入れておけば当然防湿効果も望める。
ともあれ私のところではさらにフィラメント乾燥機「PrintDry」もあるので万一乾燥不足の場合は少々面倒だがこれを使えばなんとかなる…。しかしフィラメントはなるべく湿気を吸わないような環境を作るのがベターであり、そう言った意味でこの「PolyBox」に期待をしているわけだ。
■「PolyBox」の必要性は除湿だけではない
ところで3Dプリンター用のフィラメントだがこれは思ったより嵩張るし、かといって一種類のフィラメントを完全に使い切るというケースは私の場合はほとんどない。用途や目的により例え同じPLAであってもカラーを変えたり、時にTPUなど他の材質に変えたりもする。問題はその場合、半分使ったフィラメントリール自体が小さくなるわけではないので収納に必要なスペースは使用前とまったく変わらない(笑)。それに比較的湿気に強いとされるPLAにしてもやはり放置していれば湿気を含んでしまいプリント結果が汚くなったり糸引き、ヘッドの目詰まり、途中でフイラメントが折れたりとトラブルの元となるから防湿を考えた保管は重要なのだ。

※「PolyBox」ベース内部。前後に乾燥剤を入れるスペースがありフィラメントを乗せるベアリング付ロッドを設置できる
私のフィラメント保管だが、ひとつは湿度計がついたドライボックス(二つ)に乾燥剤を入れ、そこに使用途中のフィラメントを保管している。無論湿度計を見ながら乾燥剤は適宜取り替える必要があるが…。
一方、特に重要だと思われるフィラメント数巻はカメラ機材用の防湿庫に空きスペースがあったので活用している。これはカメラなどの機材を湿気から守る専用の防湿庫なので信頼性が高いからだ。
それでもいくつかのフィラメントは収納しきれずジップロックといった簡易密閉袋に入れたりしているが、面倒なのは3Dプリンターのフィラメント交換である。いや、交換そのものはしゅくしゅくとやるだけだから苦にならないが、防湿庫にせよドライボックスにせよそこから目的のフィラメントを取り出し、いままで使っていたフィラメントの残りをまた保管するのが面倒なのだ。
本来なら3Dプリンターのスプールホルダーにセットしたままにしておきたいが、それでは湿気に長時間曝すことになってしまう。
その点、「eBOX」は乾燥剤を入れておくのは当然としても電源を入れ乾燥モードにしておけば防湿・除湿はもとより、フィラメントスプールとしてそのままフィラメントを引き出して3Dプリンターに供給できる。
と言うわけで「eBOX」をもうひとつ揃えれば常時湿気にあまり気を使わずにフィラメントを二種類常駐させておけると考えたが、そんなとき「PolyBox」の存在を知った…。
「PolyBox」は熱風で乾燥させることはできないが性能のよい、例えば前記した「エクストリームZERO」などの乾燥剤をセットしておけば使用頻度の高いフィラメントを1Kgのフィラメントなら2巻セットしたままでいちいち防湿庫などからの出し入れをしなくても交換作業ができると考えた。
■「PolyBox」の実際
それに新し物好きなので同じものよりはと結局「PolyBox」に手を出した…。
「PolyBox」のサイズは315 × 190 × 310mm 、重量は1.15Kgほどだが、実際に机上に置いて見ると大きく感じる。
同梱品だが、ボックスのボディ(下部分)と上のケース部分は勿論、温度・湿度計、ボタン電池、ルーバープラグ6個、乾燥剤100g×2個、フィラメントガイドチューブ、ベアリング8個、ロッド4本そして前後の乾燥剤スペースのカバーである。なお私の場合、ルーバープラグは本体にセット済みだった。
無論ロッドとベアリングはフィラメントリールを3Dプリンターのエクストルーダーの引きに抵抗なくスムーズに回転させるためのものだ。そしてルーバープラグは本体ベースの背面およびカバー上面からフィラメントを引き出す穴に埋め込み、そこにフィラメントガイドチューブを適当な長さに切って差し、内側からフィラメントを差し込んで3Dプリンターに供給することになる。なお使わないときはルーバープラグの穴は密閉できる仕組みを持っている。
また組み込み式の温度・湿度計はデジタルで見やすいが、計測可能な温度範囲は-50℃~70℃、湿度は10%から99%だ。

※ベースのフロントに温度/湿度計がある
さて実際にこの「PolyBox」を3Dプリンターの脇に設置してみると「eBOX」より上背もあるし大きく感じられるが、常に二種のフィラメントを湿気に曝すこと無く常設しておけるフィラメントスタンドとして重宝しそうだ。また「eBOX」にも言えることだが、メインの3Dプリンター上部にフィラメントをセットするスプールホルダーがあるもののフィラメントリールによってはスプール径やデザインがこのスプールホルダーに入らないものもある。そうした際には何らかの外部のスプールホルダーを必要するので「PolyBox」はなかなかに便利なのだ。
肝心の除湿だが、前記したように電気的な機構を持っているわけではないので繰り返すがその効果は庫内に入れる乾燥剤の能力に依存する。附属の乾燥剤二つをセットして試してみたが6時間ほどの後に17%まで下がり、翌日には12%まで下がった。その後は10%から17%あたりを行き来している…。
ちなみにこの湿度計は最低10%までしか計測できないのでそれ以下になっても表示は10%だ…。
なお別途オーダーした超即効を謳うシリカゲルでは無く塩化マグネシウム/酸化マグネシウムが主成分の強力乾燥剤が届いたら比較してみたい。

※附属の乾燥剤で内蔵の湿度計の計測限界値である10%まで下がった
ただし乾燥剤が100%効果を上げるためには「PolyBox」が密閉状態にあることが理想だが、本体カバーとベースの間に隙間がないかどうかには気を付ける必要があるし、長時間使わない時にはフィラメントチューブを抜き、ルーバープラグを閉じておくとよいだろう。

※ケース上面にある三つのルーバープラグ
ルーバープラグといえば「PolyBox」活用時、小さなことだが注意する点がある。それはフィラメントリールが3Dプリンター側で引かれた際に抵抗なくスムーズに回転してフィラメントを供給できなければならないということ…。一応回っているから大丈夫だろうと思っていると、フィラメントの供給不足で造型物がスカスカに…などということもあり得る。
まず「PolyBox」はルーバープラグはケース上部とベース側側面の2箇所にある。「PolyBox」と3Dプリンターのフィラメントフィーダー部位の距離や向き、そして設置位置の高さの違いなどを考慮し上下どちらのルーバー穴を通した方がフィラメントリールがスムーズか、事前に検証しておくとよい。
さらに「PolyBox」内のフィラメントリールの向きも引出しが上側からがスムーズか、あるいは下側から引きだした方がよいかを前記のルーバー位置との関係で確認することをお勧めする。
ということで一週間ばかり使い続けているが防湿およびフィラメントホルダーとして十分信頼できる製品だと思っている。ひとつ問題としては乾燥剤が実際にどれほど持つのか…今後はコストパフォーマンスに関して注視していきたい。
■「PolyBox」って何だ?
「PolyBox」はその名の通りFDM方式の3Dプリンターで使うフィラメントを湿気から守ろうと専用にデザインされたプロダクトだ。特長としては1Kgのフィラメントなら2巻、300Kgなら1巻をボックス内に収納でき、かつそのまま3Dプリンターに供給できるという代物である。

※1Kgのフィラメントリールを2巻セット可能な「PolyBox」
この「PolyBox」だが「吸湿防止機能付きのフィラメント保管ボックス」と謳っているとおり、ボックス内に乾燥剤(附属している)を収納するスペースがあり、それにより庫内の湿度を15%程度に保ち、フィラメントの吸湿を防ぐ製品である。
したがって「防湿」は可能だがすでに湿気を含んだフィラメントを乾燥させることにどれほど効果的かは検証してみないことには分からないものの、その効率は乾燥剤の性能に100%依存することになる。

※本体以外の同梱品
そもそもこれまで1度湿気を含んでしまったフィラメントは熱を加えて乾燥させないと元に戻らないと言われてきた。しかし最近FLASHFORGEブランドで超速攻を謳う「エクストリームZERO」という乾燥剤が発表され、モニター評価では高い評価を得ているようだが、これは使い捨てのようだしコストパフォーマンスも気になるものの是非試してみたい。
一方「eBOX」は「防湿」はもとよりだが「除湿」を目的に設計されたプロダクトだ。「eBOX」は内部にヒーターを持っており、温度とタイマー機能の併用で収納したフィラメントに温風を与えて除湿する仕組みだ。またフィラメントホルダーとして邪魔にならないスペースに乾燥剤を入れておけば当然防湿効果も望める。
ともあれ私のところではさらにフィラメント乾燥機「PrintDry」もあるので万一乾燥不足の場合は少々面倒だがこれを使えばなんとかなる…。しかしフィラメントはなるべく湿気を吸わないような環境を作るのがベターであり、そう言った意味でこの「PolyBox」に期待をしているわけだ。
■「PolyBox」の必要性は除湿だけではない
ところで3Dプリンター用のフィラメントだがこれは思ったより嵩張るし、かといって一種類のフィラメントを完全に使い切るというケースは私の場合はほとんどない。用途や目的により例え同じPLAであってもカラーを変えたり、時にTPUなど他の材質に変えたりもする。問題はその場合、半分使ったフィラメントリール自体が小さくなるわけではないので収納に必要なスペースは使用前とまったく変わらない(笑)。それに比較的湿気に強いとされるPLAにしてもやはり放置していれば湿気を含んでしまいプリント結果が汚くなったり糸引き、ヘッドの目詰まり、途中でフイラメントが折れたりとトラブルの元となるから防湿を考えた保管は重要なのだ。

※「PolyBox」ベース内部。前後に乾燥剤を入れるスペースがありフィラメントを乗せるベアリング付ロッドを設置できる
私のフィラメント保管だが、ひとつは湿度計がついたドライボックス(二つ)に乾燥剤を入れ、そこに使用途中のフィラメントを保管している。無論湿度計を見ながら乾燥剤は適宜取り替える必要があるが…。
一方、特に重要だと思われるフィラメント数巻はカメラ機材用の防湿庫に空きスペースがあったので活用している。これはカメラなどの機材を湿気から守る専用の防湿庫なので信頼性が高いからだ。
それでもいくつかのフィラメントは収納しきれずジップロックといった簡易密閉袋に入れたりしているが、面倒なのは3Dプリンターのフィラメント交換である。いや、交換そのものはしゅくしゅくとやるだけだから苦にならないが、防湿庫にせよドライボックスにせよそこから目的のフィラメントを取り出し、いままで使っていたフィラメントの残りをまた保管するのが面倒なのだ。
本来なら3Dプリンターのスプールホルダーにセットしたままにしておきたいが、それでは湿気に長時間曝すことになってしまう。
その点、「eBOX」は乾燥剤を入れておくのは当然としても電源を入れ乾燥モードにしておけば防湿・除湿はもとより、フィラメントスプールとしてそのままフィラメントを引き出して3Dプリンターに供給できる。
と言うわけで「eBOX」をもうひとつ揃えれば常時湿気にあまり気を使わずにフィラメントを二種類常駐させておけると考えたが、そんなとき「PolyBox」の存在を知った…。
「PolyBox」は熱風で乾燥させることはできないが性能のよい、例えば前記した「エクストリームZERO」などの乾燥剤をセットしておけば使用頻度の高いフィラメントを1Kgのフィラメントなら2巻セットしたままでいちいち防湿庫などからの出し入れをしなくても交換作業ができると考えた。
■「PolyBox」の実際
それに新し物好きなので同じものよりはと結局「PolyBox」に手を出した…。
「PolyBox」のサイズは315 × 190 × 310mm 、重量は1.15Kgほどだが、実際に机上に置いて見ると大きく感じる。
同梱品だが、ボックスのボディ(下部分)と上のケース部分は勿論、温度・湿度計、ボタン電池、ルーバープラグ6個、乾燥剤100g×2個、フィラメントガイドチューブ、ベアリング8個、ロッド4本そして前後の乾燥剤スペースのカバーである。なお私の場合、ルーバープラグは本体にセット済みだった。
無論ロッドとベアリングはフィラメントリールを3Dプリンターのエクストルーダーの引きに抵抗なくスムーズに回転させるためのものだ。そしてルーバープラグは本体ベースの背面およびカバー上面からフィラメントを引き出す穴に埋め込み、そこにフィラメントガイドチューブを適当な長さに切って差し、内側からフィラメントを差し込んで3Dプリンターに供給することになる。なお使わないときはルーバープラグの穴は密閉できる仕組みを持っている。
また組み込み式の温度・湿度計はデジタルで見やすいが、計測可能な温度範囲は-50℃~70℃、湿度は10%から99%だ。

※ベースのフロントに温度/湿度計がある
さて実際にこの「PolyBox」を3Dプリンターの脇に設置してみると「eBOX」より上背もあるし大きく感じられるが、常に二種のフィラメントを湿気に曝すこと無く常設しておけるフィラメントスタンドとして重宝しそうだ。また「eBOX」にも言えることだが、メインの3Dプリンター上部にフィラメントをセットするスプールホルダーがあるもののフィラメントリールによってはスプール径やデザインがこのスプールホルダーに入らないものもある。そうした際には何らかの外部のスプールホルダーを必要するので「PolyBox」はなかなかに便利なのだ。
肝心の除湿だが、前記したように電気的な機構を持っているわけではないので繰り返すがその効果は庫内に入れる乾燥剤の能力に依存する。附属の乾燥剤二つをセットして試してみたが6時間ほどの後に17%まで下がり、翌日には12%まで下がった。その後は10%から17%あたりを行き来している…。
ちなみにこの湿度計は最低10%までしか計測できないのでそれ以下になっても表示は10%だ…。
なお別途オーダーした超即効を謳うシリカゲルでは無く塩化マグネシウム/酸化マグネシウムが主成分の強力乾燥剤が届いたら比較してみたい。

※附属の乾燥剤で内蔵の湿度計の計測限界値である10%まで下がった
ただし乾燥剤が100%効果を上げるためには「PolyBox」が密閉状態にあることが理想だが、本体カバーとベースの間に隙間がないかどうかには気を付ける必要があるし、長時間使わない時にはフィラメントチューブを抜き、ルーバープラグを閉じておくとよいだろう。

※ケース上面にある三つのルーバープラグ
ルーバープラグといえば「PolyBox」活用時、小さなことだが注意する点がある。それはフィラメントリールが3Dプリンター側で引かれた際に抵抗なくスムーズに回転してフィラメントを供給できなければならないということ…。一応回っているから大丈夫だろうと思っていると、フィラメントの供給不足で造型物がスカスカに…などということもあり得る。
まず「PolyBox」はルーバープラグはケース上部とベース側側面の2箇所にある。「PolyBox」と3Dプリンターのフィラメントフィーダー部位の距離や向き、そして設置位置の高さの違いなどを考慮し上下どちらのルーバー穴を通した方がフィラメントリールがスムーズか、事前に検証しておくとよい。
さらに「PolyBox」内のフィラメントリールの向きも引出しが上側からがスムーズか、あるいは下側から引きだした方がよいかを前記のルーバー位置との関係で確認することをお勧めする。
ということで一週間ばかり使い続けているが防湿およびフィラメントホルダーとして十分信頼できる製品だと思っている。ひとつ問題としては乾燥剤が実際にどれほど持つのか…今後はコストパフォーマンスに関して注視していきたい。
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