小川鼎三監修/大鳥蘭三郎校註「大鳥蘭三郎・解体新書」講談社刊とは
すでに「タートル・アナトミア」「解体新書」「蘭学事始」などなどの復刻版であるレプリカのセット「国公立所蔵史料刊行会編『日本医学の夜明け』」をご紹介した。今回はそれに先立つこと5年前、1973年に出版された講談社刊「大鳥蘭三郎・解体新書」をご紹介してみよう。
近年私のウェブやブログで「解体新書」といった記事が続いたからか、友人知人たちから「今更何で?」といった質問を受けた。実のところ、私が「解体新書」に興味を持ったのはすでに30年ほど前からなのだ。その頃から幾多の書籍や資料を手にして楽しんでいたがちょうどその時期は起業したばかりのときであり、趣味で時間を大きく潰すことは許されない時だったので深く掘り下げることができなかっただけなのだ。
それに是非ともに欲しいと考えていた「解体新書」のレプリカだったが、これまた限られた予算はMacintosh関連に優先せざるを得なかった。
ということで付きつ離れずであっと言う間に30年ほどが経ってしまったというわけだ…。やっとというか、時間だけは十分にあるからと最新の書籍や資料を集め出し、昔欲しかったが高価で買えなかった「解体新書」のレプリカを当然ながら中古で2種手に入れることができた…。

※小川鼎三監修/大鳥蘭三郎校註「大鳥蘭三郎・解体新書」講談社刊
ひとつには執筆した時代小説の時代設定がちょうど「解体新書」刊行の年代でもあり、事実とフィクションを織り交ぜて杉田玄白や前野良沢、あるいは平賀源内といった登場人物にリアリティを与えようと状況を調べたのも火に油を注ぐ結果となった。
今回ご紹介してみるのはこれまでいくつか「解体新書」の復刻版といった企画があったが、「国公立所蔵史料刊行会編『日本医学の夜明け』」の「解体新書」レプリカと双璧をなすものだ。それが小川鼎三監修/大鳥蘭三郎校註「大鳥蘭三郎・解体新書」である。1973年講談社から「解体新書」刊行二百年を記念しての企画だという。
手元に現物と共に当時のパンフレットもあるので詳しい状況も分かっている。
幾多の情報に寄れば、覆刻原本となったのは慶応義塾大学医学部北里記念医学図書館所蔵のもの。ただし所蔵の「解体新書」は一般に流布されたものではなく二巻にまとめられ判型も少し大きいという。校註の大鳥蘭三郎氏によればどうやら刊行に際して将軍家や宮家に献上するため、特別に刷られたものではないかというが、レプリカは一般に流布している五巻本の体裁をとっている。
そして版木を最初期に使ったであろうからかエッジも陰影も同類のものと比較すると格段にクリアなのが特徴だ。

※木版もエッジがクリアだ
さて造本および体裁だが、当時の出版関係者の意欲と執念のようなものを感じると同時に出版不況だとはいえ現在ではなしえない企画に違いない。
造本・用紙・印刷と共に原寸大でオリジナルに忠実に再現しているので観賞用は勿論、研究資料としても最適と謳われている。
まずは桐箱に収められている。その桐箱を開けると袱紗に包まれた帙(ちつ)函があり、その中に「解体新書」五巻がしっかりと収納されているわけだ。
「解体新書」は四つ目綴じと呼ばれる和綴じで表紙は雲母入鳥の子・渋茶、用紙は越前岩野特製和紙が使われている。また補強と装飾を兼ねて背の上下に角布が施されてもいる。そして別途解説書が付属。


※「解体新書」は五巻構成。それぞれ補強と装飾を兼ねて背の上下に角布が施されてもいる
ちなみに監修は東京大学名誉教授・順天堂大学教授の小川鼎三氏、校註が慶應義塾大学教授の大島蘭三郎氏であるが、お二人ともすでに鬼籍に入られている。そして当時の価格は定価39,000円で限定3,000部が販売された。したがって刊行からすでに46年経っているわけだが、幸いというべきか私が手に入れたものは未使用といっても良いほどに綺麗であり、カビやシミといったものも見当たらない。

※桐箱に貼られている奥付
ただしカタログと比較して初めて分かったことは入手した際に袱紗がなかったことだった。こればかりは中古なので仕方がないが、雰囲気だけは再現しておきたいと似たようなものを手に入れ組み合わせている。
個人的にはお宝のひとつなのである。
近年私のウェブやブログで「解体新書」といった記事が続いたからか、友人知人たちから「今更何で?」といった質問を受けた。実のところ、私が「解体新書」に興味を持ったのはすでに30年ほど前からなのだ。その頃から幾多の書籍や資料を手にして楽しんでいたがちょうどその時期は起業したばかりのときであり、趣味で時間を大きく潰すことは許されない時だったので深く掘り下げることができなかっただけなのだ。
それに是非ともに欲しいと考えていた「解体新書」のレプリカだったが、これまた限られた予算はMacintosh関連に優先せざるを得なかった。
ということで付きつ離れずであっと言う間に30年ほどが経ってしまったというわけだ…。やっとというか、時間だけは十分にあるからと最新の書籍や資料を集め出し、昔欲しかったが高価で買えなかった「解体新書」のレプリカを当然ながら中古で2種手に入れることができた…。

※小川鼎三監修/大鳥蘭三郎校註「大鳥蘭三郎・解体新書」講談社刊
ひとつには執筆した時代小説の時代設定がちょうど「解体新書」刊行の年代でもあり、事実とフィクションを織り交ぜて杉田玄白や前野良沢、あるいは平賀源内といった登場人物にリアリティを与えようと状況を調べたのも火に油を注ぐ結果となった。
今回ご紹介してみるのはこれまでいくつか「解体新書」の復刻版といった企画があったが、「国公立所蔵史料刊行会編『日本医学の夜明け』」の「解体新書」レプリカと双璧をなすものだ。それが小川鼎三監修/大鳥蘭三郎校註「大鳥蘭三郎・解体新書」である。1973年講談社から「解体新書」刊行二百年を記念しての企画だという。
手元に現物と共に当時のパンフレットもあるので詳しい状況も分かっている。
幾多の情報に寄れば、覆刻原本となったのは慶応義塾大学医学部北里記念医学図書館所蔵のもの。ただし所蔵の「解体新書」は一般に流布されたものではなく二巻にまとめられ判型も少し大きいという。校註の大鳥蘭三郎氏によればどうやら刊行に際して将軍家や宮家に献上するため、特別に刷られたものではないかというが、レプリカは一般に流布している五巻本の体裁をとっている。
そして版木を最初期に使ったであろうからかエッジも陰影も同類のものと比較すると格段にクリアなのが特徴だ。

※木版もエッジがクリアだ
さて造本および体裁だが、当時の出版関係者の意欲と執念のようなものを感じると同時に出版不況だとはいえ現在ではなしえない企画に違いない。
造本・用紙・印刷と共に原寸大でオリジナルに忠実に再現しているので観賞用は勿論、研究資料としても最適と謳われている。
まずは桐箱に収められている。その桐箱を開けると袱紗に包まれた帙(ちつ)函があり、その中に「解体新書」五巻がしっかりと収納されているわけだ。
「解体新書」は四つ目綴じと呼ばれる和綴じで表紙は雲母入鳥の子・渋茶、用紙は越前岩野特製和紙が使われている。また補強と装飾を兼ねて背の上下に角布が施されてもいる。そして別途解説書が付属。


※「解体新書」は五巻構成。それぞれ補強と装飾を兼ねて背の上下に角布が施されてもいる
ちなみに監修は東京大学名誉教授・順天堂大学教授の小川鼎三氏、校註が慶應義塾大学教授の大島蘭三郎氏であるが、お二人ともすでに鬼籍に入られている。そして当時の価格は定価39,000円で限定3,000部が販売された。したがって刊行からすでに46年経っているわけだが、幸いというべきか私が手に入れたものは未使用といっても良いほどに綺麗であり、カビやシミといったものも見当たらない。

※桐箱に貼られている奥付
ただしカタログと比較して初めて分かったことは入手した際に袱紗がなかったことだった。こればかりは中古なので仕方がないが、雰囲気だけは再現しておきたいと似たようなものを手に入れ組み合わせている。
個人的にはお宝のひとつなのである。
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