ハンドヘルドレーザー彫刻機 LaserPecker 2 ファーストインプレッション

今年4月のことだったがクラウドファンディングのCAMPFIREで大変魅力的なアイテムを見つけた。それがLaserPecker 2というハンドヘルドレーザー彫刻機だった。安い買い物ではなかったので数日あれこれと悩んだ末に結局フルオプション仕様を支援(購入)することにした。4月16日のことだった。


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※ハンドヘルドレーザー彫刻機 LaserPecker 2 の基本ユニット


ことの顛末を詳しく書きたいところだが今回はそれがテーマではないので端折るが、とにかく酷い対応で一時は詐欺に合ったかと消費者センターに相談したほどの出荷の遅れだった。ともあれ当初6月とか7月納品と告知していたのが結果としては10月7日にやっと届いたという次第…。

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※専用のケースはなかなか立派なものだった


そしてこの記事を書いている現在もまだ製品が届いていない方もいらっしゃるという。私は今回の一連のトラブルでクラウドファンディングの仕組みおよびCAMPFIRE社に大きな不信感を持ったのでCAMPFIREへの登録を止めると共に今後はクラウドファンディングには手を出さないことを決心した…。

ともあれ現時点で全てのことを知り尽くしたわけではないが、製品そのものは期待通りでとてもよく出来ている。基本構成はレーザーユニット本体、電動昇降スタンドの組合せと、換気ファン付きレーザーシールドおよび接続関連のケーブルおよび電源コード類だ。

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※換気ファン付きレーザーシールドとレーザー保護ゴーグル


ただしオプションとして後述する多機能電動台座と専用バッテリーがあるし、クラウドファンディング募集時には専用ケースやテスト資材といった附属品の有無によって価格のクラスが違っていた。

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※専用バッテリー(20000 mAh)


その本体や電動昇降スタンドは金属製のしっかりした作りで高級感もあるしセットアップや片付けも手間はかからないし設置場所も省スペースで済む。

■利用に際しての注意
ただし初めに申し上げておくが、レーザー彫刻機は本来かなり危険な製品である。本製品はクラス4の強力なレーザー光を照射するため直視は勿論、反射光だとしても浴びれば失明や皮膚疾患に直接繋がる…。無論LaserPecker 2には排気ファン付きレーザーシールド及び保護ゴーグルが附属しているが、その取扱をも含めLaserPecker 2の利用には十分な注意が必要である。

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※筆者はより安全対策としてレーザーシールドが使えない場合にとLaaserPecker Pro用の屏風型シールドを入手して使っている


最初期にYouTubeなどに紹介動画がいくつかアップされたが、それらのほとんどはこうした安全確保について発言していないのも気になったし、レーザー光の危険性とは別にレーザー刻印やカッターは高熱を発するため木材や紙類ならずとも焦げで煙りと臭気を発する。それがプラスチック類とか革製品であれば物によって悪臭というだけでなく有害な臭気が充満し人体に悪影響を与える可能性があるため、十分な換気設備がある場所での使用をお勧めする。

■刻印する材質をスタンドに設置
さて、材質の形状やサイズにもよるが、安全のためできるだけ附属のレーザーシールドを本体に取り付け、保護ゴーグルを使用することをお勧めする。また正確な刻印の結果を得るには本体のレーザー照射口すなわち本体の下部から素材の表面までの距離を110mmに設定しなければならない。

これには電動昇降スタンドにあるL字型治具で計ると共に昇降・上昇ボタンを押しながら合わせる。またこの方法で合わせにくい場合は附属の定規を使うのもよい。
なお素材を置く位置はこの段階では適当でよい。なぜなら後述するように以後のオペレーションの過程で刻印するエリアをきちんとレーザー光で示してくれるので、その際に素材との位置を正確に合わせることになる。

■オペレーションはスマホから
操作はまずApp StoreおよびGoogle Playから専用アプリをダウンロードしインストールが必要。無論無料である。
筆者の場合はiPhoneで使うが、このアプリも一部不安定な部分もあるもののなかなかよく出来ている。
まずはBluetoothで本体と接続した後、アプリを立ち上げるとホームページと呼ばれている「写真」「撮影」「作成」そして「素材」という4つのアイコン表示となる。

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※ホームページ


それぞれその名のとおり、写真ライブラリから刻印するデザインを選ぶ、リアルタイムに撮影する、テキスト入力や手書きを実行する、そしてグラフィックライブラリに収録されている素材から選ぶ…ことになる。なお素材によってはトリミングが必要の場合もある。
刻印するデータを入力・選択したらデータの幅と高さをmm単位で入力し「プレビュー」ボタンをタップすれば機器設定に間違いがなければ本体スタンド内に置いた素材に指定したサイズが矩形で示されるはずだ。要は図形のトリミングサイズがこの位置、このサイズで刻印がなされる訳だから素材を移動し刻印する位置に合わすことになる。
このプレビュー機能はとても実用的であり、これが使い勝手を大幅によくしている。

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※刻印エリアを矩形で示してくれるプレビュー機


「プレビュー」が確認出来たら終了し次に移ると、データはスマホからLaserPecker 2に送られ、素材別にレーザー刻印の強さなどのパラメータ設定を行うことになる。
ここではパラメータの詳しいあれこれは省略するが、素材によりかなりシビアに設定する必要があり、理想に近い結果を出すには一二度テスト刻印する必要もあるだろう。

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※刻印パターン入力(選択)から刻印パラメーター入力までの主な画面


そして刻印を開始する訳だが、セッティングした初回はレーザーシールドやゴーグルを使っているかという警告やあらかじめ登録したパスワード入力を促されるなどのセキュリティ機能もある。

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※シールドやゴーグルを装置するように促す画面や暗号入力を求められる画面など安全面での配慮もある


設定条件などが良好なら刻印の結果もとても綺麗に仕上がるし、これまで筆者は木材・ダンボール、紙類、レザー、フエルト、各種プラスチック、透明アクリルやガラスなどの素材にレーザー刻印を試みた…。

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※木材への刻印例


勿論透明アクリルやガラスなどへはそのままでは刻印できないのだが、一工夫することでなかなか良い結果を得ることが出来ている。そしてひとつひとつの実例についてはTwitterで逐次ご報告しているので興味のある方はご参照いただければ嬉しい。

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※透明なアクリル板への刻印例


■多機能電動台座(別売品)とは
LaserPecker 2 の刻印は基本最大100mm×100mmの平坦な刻印エリアが限界だ。しかし時にその制限を拡張した利用を考えたくなる。
一つは円筒形的な物体への刻印だ。正確・綺麗に刻印するには素材との距離を正確に保つ必要があるが通常のやり方ではピントが合わなければ巧く行かない…。そこで円筒形の物体を綺麗に刻印するためにオプションの多機能電動台がある。

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※オプションの多機能電動台座


この多多機能電動台座のローラーの間に素材を置くと素材が正確に回転して緻密な刻印ができる。これは円筒形の物体だけでなく、例えば少々長い板状の素材ならローラー上を移動しながら幅100mmは変わらないものの、長さが200mmとか300mmといった刻印を可能とする。

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※多機能電動台座を使い、円筒形の木材に刻印した例


さらに現時点で試してはいないが、ローラー部位を下にセッティングし、例えば大きな板の上に置けば LaserPecker 2 自体がローラーの回転で移動し、最大2000mmまでの刻印を可能にするという機能を持っている。
ただしこの場合は附属のACアダプターを付けたままでは巧く行かないだろうから、これまたオプションの専用バッテリーを用いるのが現実的だ。

■終わりに
二週間ほど毎日様々な素材に向かいテストを重ねてきたが、まだまだLaserPecker 2 の全容を把握できた訳ではないものの、限界と可能性をほぼ把握できたと考えている。
製品にはきちんとした日本語の取扱説明書が附属しているが、素材別のレーザーパラメータなどについては紹介されていないし、実用上の有用な情報などを含め、そううした点はユーザー自身の経験を積み重ねるしかない。

なおLaserPecker 2 は「ハンドヘルドレーザー彫刻機」と称しているが、素材への刻印だけでなく木材やプラスチックなど厚さ5mmまでの素材を切断できるスペックを持っている。
刻印とは別に、バルサ材やダンボールなどにデザインやテキストを抜くというのも場合によってはデザイン上や実用上にとって興味深い結果をもたらすに違いない。
無論これまたよき結果を得るためには、例えばフォントひとつをとっても Stencil 系を用いてカットと後にもフォントデザインが保たれるようにする工夫も必要だろう。

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※ダンボールにテキストを抜いた例


ということでハンドヘルドレーザー彫刻機 LaserPecker 2 はDIY派の人たちにとって大変魅力あるツールだし単なるスペック云々を超えた可能性をも感じる。
ただ一抹の不安は中国深圳にあるというメーカーの対応だ。冒頭に記したようにそもそも遅れに遅れた発送に関して幾度となく問い合わせをしたものの誠意を感じられる回答はなかったし、製品に関して取扱説明書に明記されているサポートのメルアドへ質問のメールを出したものの一週間経っても返事がない。これでは万一製品が故障した場合などを考えると…不安は払拭できない。
なお、本製品はすでにここで販売されているが、Amazonなどで国内販売されてから手を出された方が安全だという気がするが(笑)。

ともかく個人的にはこのレーザー彫刻機と3Dプリンターは今となっては無くてはならないツールとなっている。




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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員