1969年製作映画「放浪の画家ピロスマニ」デジタルリマスター版の勧め
加藤登紀子のヒット曲「百万本のバラ」はご存じだろうか。貧しい画家が女優に恋をし、彼女が好きだという赤いバラを自分の家は勿論キャンバスや絵の具までをも売り払い街中で買い集め、彼女の宿泊している建物の庭を埋め尽くした。しかしそれを見た女優はどこかの金持ちがふざけたのだと思い、気にも留めず別の街へと去って行った…。
という意味の歌詞だが、その貧しい画家がグルジア(現:ジョージア)の画家ニコ・ピロスマニだという話しがあるという。しかしもともとの原曲はラトビア語の歌謡曲で歌詞がまったく違い大国にその運命を翻弄されてきたラトビアの苦難を暗示するものだったという。
それが後年ソビエト連邦時代にグルジア(現:ジョージア)の画家ニコ・ピロスマニがマルガリータという名の女優に恋したという逸話に基づき、ラトビアの作曲家が書いた曲にロシアの詩人が画家のロマンスを脚色して詞をつけ、モスクワ生まれの美人歌手が歌うということで人気を博した…。

※ニコ・ピロスマニ(1916年)
我々が知る加藤登紀子の日本語訳詞および歌唱は1987年にシングル盤として発表されたものだが、近年の研究ではピロスマニにマルガリータという名の恋人がいたことは確からしいものの、彼女がバラの花を愛したとか画家が大量の赤いバラを贈ったといったエピソードは残念ながら創作のようだ。
さて、前置きが長くなったがそのピロスマニという画家と作品のいくつかについてはヘタウマの画家として(笑)知ってはいたが、先日YouTube「山田五郎 オトナの教養講座【ジョージアのアンリ・ルソー】泣ける!放浪の画家ピロスマニの悲劇【加藤登紀子・百万本のバラ】」を見て俄然興味を持った。

※「女優マルガリータ」ピロスマニ作。グルジア国立美術館蔵
「山田五郎 オトナの教養講座」によればジョージアでは紙幣にもピロスマニの肖像が使われるほど国民的な画家だそうで、あのパブロ・ピカソが「私の絵はグルジアには必要ない。なぜならピロスマニがいるからだ」と言わしめたほどの画家だという。その画風は前記山田五郎氏のご指摘の通りどこかアンリ・ルソーに通ずるものを感じるがお国柄や文化も全く違う…。
そもそも情報が少ない画家ではあるが、1969年にギオルギ・シェンゲラヤ監督による映画「PIROSMANI (邦題:放浪の画家ピロスマニ)」が存在し現在そのデジタルリマスター版がDVDなどで手に入る事を知り早速Amazonから購入した。

※「放浪の画家ピロスマニ」デジタルリマスター版DVD
この「放浪の画家ピロスマニ」はグルジア(ジョージア)の名匠ギオルギ・シェンゲラヤ監督が独学の天才画家ニコ・ピロスマニ(1862〜1918)の半生を描いた作品で、グルジアの風土や民族の心を見事に映像化したとして1973年英国映画協会サザーランド杯、1974年シカゴ国際映画祭ゴールデン・ヒューゴ賞、イタリア・アーゾロ国際映画祭最優秀伝記映画賞、そして1978年には文化庁芸術祭優秀賞/文部省特別選定優秀映画鑑賞会特別推薦を受けている。
ストーリーの概略だが、幼くして両親を亡くしたピロスマニは鉄道会社の車掌をやったり、友人と商売を始めたこともあったが身に入らず、貧しい人々に無償でミルクやパン、初蜜などを振るまい…商売は失敗。その後店の看板や壁に飾る絵を描きながら放浪の日々を送るようになる…。次第に人々に一目置かれるようになり誇り高い男として「伯爵」と呼ばれるようになるピロスマニだったが、酒場で見初めた踊り子マルガリータへの報われない愛が、画家を孤独な生活へと追い込んでいく…。しかし作品は悪戯にピロスマニの恋を劇的に扱わずに簡素に描いているしバラを送るシーンも無い。
一杯の酒、一日の食を得るため画材をかかえて街を渡り歩く生活を送っていたピロスマニだったが、1912年に作品がとある芸術家の眼にとまり中央の画壇に注目されるようになる。そして翌年3月モスクワの前衛美術展で4つの作品が展示され熱狂的な支持を受けた。
1916年グルジア芸術家協会が設立され、ピロスマニへの支援が決定され脚光を浴びるも地元新聞にピロスマニを揶揄する戯画が掲載され周囲から笑いものとなった彼は深く傷つき、再び孤独な生活に戻っていく。そして1918年の復活祭の日、階段裏の暗く狭い一郭に蹲っていたピロスマニを二頭立て馬車で乗り付けた使者らしい男が見つけ「何をしている」と問うとピロスマニは「死ぬところだと」と弱々しく答える…。
史実では隣に住んでいた靴職人の男が重病のピロスマニを見つけ、知人が病院へ運んだもののその一日半後に息を引き取ったといわれている。
しかし映画では直前に示される「昇天」と題された作品からして、馬車の男は天使の使いではないか…を暗示して終わる。
全編に渡る各シーンは決して豊かでは無い時代ではあるものの、どこを切りとっても一幅のピロスマニの絵と見間違うほどの美しさだ。
大変地味な作品だが、お勧めしたい作品である。
という意味の歌詞だが、その貧しい画家がグルジア(現:ジョージア)の画家ニコ・ピロスマニだという話しがあるという。しかしもともとの原曲はラトビア語の歌謡曲で歌詞がまったく違い大国にその運命を翻弄されてきたラトビアの苦難を暗示するものだったという。
それが後年ソビエト連邦時代にグルジア(現:ジョージア)の画家ニコ・ピロスマニがマルガリータという名の女優に恋したという逸話に基づき、ラトビアの作曲家が書いた曲にロシアの詩人が画家のロマンスを脚色して詞をつけ、モスクワ生まれの美人歌手が歌うということで人気を博した…。

※ニコ・ピロスマニ(1916年)
我々が知る加藤登紀子の日本語訳詞および歌唱は1987年にシングル盤として発表されたものだが、近年の研究ではピロスマニにマルガリータという名の恋人がいたことは確からしいものの、彼女がバラの花を愛したとか画家が大量の赤いバラを贈ったといったエピソードは残念ながら創作のようだ。
さて、前置きが長くなったがそのピロスマニという画家と作品のいくつかについてはヘタウマの画家として(笑)知ってはいたが、先日YouTube「山田五郎 オトナの教養講座【ジョージアのアンリ・ルソー】泣ける!放浪の画家ピロスマニの悲劇【加藤登紀子・百万本のバラ】」を見て俄然興味を持った。

※「女優マルガリータ」ピロスマニ作。グルジア国立美術館蔵
「山田五郎 オトナの教養講座」によればジョージアでは紙幣にもピロスマニの肖像が使われるほど国民的な画家だそうで、あのパブロ・ピカソが「私の絵はグルジアには必要ない。なぜならピロスマニがいるからだ」と言わしめたほどの画家だという。その画風は前記山田五郎氏のご指摘の通りどこかアンリ・ルソーに通ずるものを感じるがお国柄や文化も全く違う…。
そもそも情報が少ない画家ではあるが、1969年にギオルギ・シェンゲラヤ監督による映画「PIROSMANI (邦題:放浪の画家ピロスマニ)」が存在し現在そのデジタルリマスター版がDVDなどで手に入る事を知り早速Amazonから購入した。

※「放浪の画家ピロスマニ」デジタルリマスター版DVD
この「放浪の画家ピロスマニ」はグルジア(ジョージア)の名匠ギオルギ・シェンゲラヤ監督が独学の天才画家ニコ・ピロスマニ(1862〜1918)の半生を描いた作品で、グルジアの風土や民族の心を見事に映像化したとして1973年英国映画協会サザーランド杯、1974年シカゴ国際映画祭ゴールデン・ヒューゴ賞、イタリア・アーゾロ国際映画祭最優秀伝記映画賞、そして1978年には文化庁芸術祭優秀賞/文部省特別選定優秀映画鑑賞会特別推薦を受けている。
ストーリーの概略だが、幼くして両親を亡くしたピロスマニは鉄道会社の車掌をやったり、友人と商売を始めたこともあったが身に入らず、貧しい人々に無償でミルクやパン、初蜜などを振るまい…商売は失敗。その後店の看板や壁に飾る絵を描きながら放浪の日々を送るようになる…。次第に人々に一目置かれるようになり誇り高い男として「伯爵」と呼ばれるようになるピロスマニだったが、酒場で見初めた踊り子マルガリータへの報われない愛が、画家を孤独な生活へと追い込んでいく…。しかし作品は悪戯にピロスマニの恋を劇的に扱わずに簡素に描いているしバラを送るシーンも無い。
一杯の酒、一日の食を得るため画材をかかえて街を渡り歩く生活を送っていたピロスマニだったが、1912年に作品がとある芸術家の眼にとまり中央の画壇に注目されるようになる。そして翌年3月モスクワの前衛美術展で4つの作品が展示され熱狂的な支持を受けた。
1916年グルジア芸術家協会が設立され、ピロスマニへの支援が決定され脚光を浴びるも地元新聞にピロスマニを揶揄する戯画が掲載され周囲から笑いものとなった彼は深く傷つき、再び孤独な生活に戻っていく。そして1918年の復活祭の日、階段裏の暗く狭い一郭に蹲っていたピロスマニを二頭立て馬車で乗り付けた使者らしい男が見つけ「何をしている」と問うとピロスマニは「死ぬところだと」と弱々しく答える…。
史実では隣に住んでいた靴職人の男が重病のピロスマニを見つけ、知人が病院へ運んだもののその一日半後に息を引き取ったといわれている。
しかし映画では直前に示される「昇天」と題された作品からして、馬車の男は天使の使いではないか…を暗示して終わる。
全編に渡る各シーンは決して豊かでは無い時代ではあるものの、どこを切りとっても一幅のピロスマニの絵と見間違うほどの美しさだ。
大変地味な作品だが、お勧めしたい作品である。
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