光造型3Dプリンター ELEGOO Mars 3/4K 覚書
意識的に導入を抑えていた光造型3Dプリンターを手に入れた…。選んだのはELEGOO Mars 3/4K というモノクロLCDスクリーン仕様の製品でプリントサイズは143×89×175mmである。3Dプリンターといえば2018年の春からいわゆるFDM式(熱溶解式)の製品を使い始め、すでに7機種を体験してきた。ともあれ光造型3Dプリンターは初めての体験だが、その第一印象と自分なりに重要だと思われるあれこれを記しておきたい。

※ELEGOO Mars 3/4K 光造型3Dプリンター
3Dプリンターは大別してFDM式と光造型式の二種があるといわれているが、これまで光造型式の製品に手を出さなかったのにはそれなりの理由があった。
一番の理由は造型に使うレジンの問題だった。この紫外線で硬化する光造型式3Dプリンターの材料であるレジンは毒性があり有害な物質でその取扱には手袋とマスクは欠かせない。さらに3Dプリンターで造型後に必須の工程である洗浄にIPA(イソプロピルアルコール)という危険な溶剤を使うことになるわけで、ペットや幼児がいる場所では危険だし、狭い家庭で取り扱うには問題がありすぎると判断したからだった。
しかしここに来て水洗いレジンなる製品が台頭してきた。水洗いレジンとはその名の通り、前記した危険なIPAではなく、いわゆる水道水で洗浄できるレジンのことだ。
この種のレジンとて扱いには手袋やマスクは必要だが水で洗えるということでハードルは大きく下がった。

※ELEGOO Mars 3/4K の同梱附属品
さて二つ目の問題はプリントしたオブジェは乾燥させた後に二次硬化という手間が必要だし、後片付けが面倒なこと…。慣れれば手順も簡略化できるのかも知れないがレジンで汚れたレジンタンクやビルドプラットフォームを綺麗に洗浄し次に備えるのがなかなかに手間だし神経を使う。
FDMがフィラメントを管理すればよいのとは手間が違う。
などなど気になる点は多々あるが、光造型式の3Dプリンターを未経験でやり過ごすということについては抵抗もあり、今般思い切って関連機器も含め一式を手に入れた…。
■光造型3Dプリンターの一大長所
ところで光造型3Dプリンターの特長とは何だろうか…。FDMの3Dプリンターを使ってきたユーザーにとって魅力な点は決して目新しさだけではない。
一番の魅力はその造型の精度がFDMと比べて歴然と高いことだ。その差は当然で、FDMの積層ピッチが通常0.1mm~0.4mmなのに対しMars 3は解像度4098×2560の4Kモノクロ液晶パネルを搭載しXY解像度が35μm…初期設定のままでもレイヤーの高さが0.050mmなのだ。したがって積層痕も目立たず仕上がりも美しい…。

※高さ約7センチほどの像だが仕上がりが非常に美しい
特に同じデータを光造型とFDMとでプリント比較して見ればその差は歴然としている。したがって目的にも関係するが、装飾品やフィギュアなどの造型には光造型が理想といえよう。
■光造型3Dプリンターのプリント手順
光造型3Dプリンターによるプリント手順の概略を述べれば、プリント/洗浄/乾燥/二次硬化といった工程を経る。また面白い…といっては語弊があるが、FDM式3Dプリンターのプリントがプラットフォーム(ホットベッド)の上にノズルから溶解されたフィラメントがシステムコントロールされつつ一層毎に積層されていくのに対し光造型は上部に位置したビルドプラットフォームが逆さまにレジンの入ったレジンタンク内に浸しつつタンク下にあるLCD画面からコントロールされた紫外線が放射され、ビルドプラットフォームに貼り付いた一層目に重なりつつ硬化しながら垂れ下がり造型が進むといった具合だ。ビジュアル的には真反対である。

※光造型3Dプリンターの造型はビルドプラットフォームに垂れ下がって仕上がる
なお、スライサーのソフトウェアはChituBox Basicという製品に同梱されていたUSBメモリに入っていたものを使うがこれは無料だ。ただしこれまた同梱のカードには有料のPro版を1年間無料で使えるシリアルナンバーが隠されていたので私はこちらの方を使い始めている。

※スライサーソフトウェア、ChituBox Proの画面例
そういえば造型そのものの仕組みや考え方もFDMとは違った認識が必要なこともある。FDMの場合、プリント時間は造型物のサイズに直接関わってくるが光造型の場合はX軸とY軸のサイズとプリント時間は関係がない。何故ならLCD画面の範囲内に一層ずつ紫外線が照射されるわけで、例えば2センチ角のオブジェと7センチ角のオブジェも硬化にかかる時間は基本同じだからだ。無論Z軸である高さは直接造型時間に正比例する。
■洗浄と二次硬化専用マシンも購入
前記したように光造型3Dプリンターはプリントしただけでは実用にならない。IPAにしろ水洗いにしろまずは洗浄が必要である。
個人的には水洗いレジンのみを使うつもりだが、小さなサイズや加えて複雑な形状のオブジェの洗浄は超音波洗浄機が適切のようだ。また超音波洗浄機に入らないオブジェやレジンで汚れたレジンタンク、ビルドプラットフォームまでをも確実に洗浄可能なマシンを手に入れた。それがELEGOO MERCURY X WASHだ。これはタイマーも備わっており中に注いだ水をスクリューで攪拌してくれる優れものだ。

※ELEGOO MERCURY X WASH
さらに二次硬化は紫外線を照射するわけだが、小型のものであればネイルライトなどが使えるものの、これまたサイズが大きめのオブジェはELEGOO MERCURY X CUREといった専用機器があると便利だ。これまたタイマーが装備されており、オブジェを置く丸いテーブルがゆっくりと回転し紫外線を満遍なく照射してくれるし専用の黄色いカバーは紫外線からユーザーを保護するプロテクトカバーである。

※ELEGOO MERCURY X CURE
このMERCURY X WASHやMERCURY X CUREといった専用機器を揃え活用するのは実にエキサイティングだがそれぞれ光造型3Dプリンターと同等の設置スペースを必要とするのでまずは配置するスペース確保が大変かも…。
■レジンの選択
FDMの3Dプリンターで使うフィラメントと同様光造型3Dプリンターで必須のレジンにも多種多様なものがある。一見同じようでもメーカーが違えば価格も違うし、レジンのカラーもフィラメントほどではないにしろ数十色ある。特に透明色はFDMではなかなか難しいだけに魅力的だ。
私も含めて経験が浅いと自分の所有する光造型3Dプリンターと適合…相性がよいレジンを探すのは難しいが、こればかりはなるべく有益な情報を集めつつ実際に試行錯誤するしかない。
■光造型3Dプリンター活用で必要なアイテム
光造型3Dプリンターを購入するといわゆるツールキットと称したいくつかのアイテムが同梱されているが、その内容を踏まえてあらかじめ揃えておきたいアイテムがある。
手袋とマスクは必須だが、有害なレジンを扱うため細々としたアイテムたちの一時置き場としてステンレスのトレー、キムワイプ(キッチンペーパーでも可)、などが必要になる。要は一連の作業および片付けの際にどのようにしたら回りを汚さず安全に事が行えるかを考えて順次必要最低限のアイテムを揃えておくことが大切となる。

※筆者が造型時に用意するアイテムたち
■総評
光造型3Dプリンターを手にしてまだ僅かな日数しか経っていないから偉そうなことは言えないが、造型方式はFDMとまるで違うものの、気をつける点や心構えみたいなことはどこか共通のように思えFDMで培った幾多のノウハウをもって事に当たれば理解が早くて済むように思える…。

※オペレーションは言語を日本語に設定可能
ともかく私は水洗いレジンのみで色々とやってみようと考えているが、それでもレジンの臭気や造型手順の煩雑さなど越えなければならないことは多々あるように思え、自分なりに工夫を重ねていきたい。
ELEGOO Mars 3/4Kはそうした意味でも初心者は勿論、買い換えユーザーをも満足させてくれる製品だと考えている。

※ELEGOO Mars 3/4K 光造型3Dプリンター
3Dプリンターは大別してFDM式と光造型式の二種があるといわれているが、これまで光造型式の製品に手を出さなかったのにはそれなりの理由があった。
一番の理由は造型に使うレジンの問題だった。この紫外線で硬化する光造型式3Dプリンターの材料であるレジンは毒性があり有害な物質でその取扱には手袋とマスクは欠かせない。さらに3Dプリンターで造型後に必須の工程である洗浄にIPA(イソプロピルアルコール)という危険な溶剤を使うことになるわけで、ペットや幼児がいる場所では危険だし、狭い家庭で取り扱うには問題がありすぎると判断したからだった。
しかしここに来て水洗いレジンなる製品が台頭してきた。水洗いレジンとはその名の通り、前記した危険なIPAではなく、いわゆる水道水で洗浄できるレジンのことだ。
この種のレジンとて扱いには手袋やマスクは必要だが水で洗えるということでハードルは大きく下がった。

※ELEGOO Mars 3/4K の同梱附属品
さて二つ目の問題はプリントしたオブジェは乾燥させた後に二次硬化という手間が必要だし、後片付けが面倒なこと…。慣れれば手順も簡略化できるのかも知れないがレジンで汚れたレジンタンクやビルドプラットフォームを綺麗に洗浄し次に備えるのがなかなかに手間だし神経を使う。
FDMがフィラメントを管理すればよいのとは手間が違う。
などなど気になる点は多々あるが、光造型式の3Dプリンターを未経験でやり過ごすということについては抵抗もあり、今般思い切って関連機器も含め一式を手に入れた…。
■光造型3Dプリンターの一大長所
ところで光造型3Dプリンターの特長とは何だろうか…。FDMの3Dプリンターを使ってきたユーザーにとって魅力な点は決して目新しさだけではない。
一番の魅力はその造型の精度がFDMと比べて歴然と高いことだ。その差は当然で、FDMの積層ピッチが通常0.1mm~0.4mmなのに対しMars 3は解像度4098×2560の4Kモノクロ液晶パネルを搭載しXY解像度が35μm…初期設定のままでもレイヤーの高さが0.050mmなのだ。したがって積層痕も目立たず仕上がりも美しい…。

※高さ約7センチほどの像だが仕上がりが非常に美しい
特に同じデータを光造型とFDMとでプリント比較して見ればその差は歴然としている。したがって目的にも関係するが、装飾品やフィギュアなどの造型には光造型が理想といえよう。
■光造型3Dプリンターのプリント手順
光造型3Dプリンターによるプリント手順の概略を述べれば、プリント/洗浄/乾燥/二次硬化といった工程を経る。また面白い…といっては語弊があるが、FDM式3Dプリンターのプリントがプラットフォーム(ホットベッド)の上にノズルから溶解されたフィラメントがシステムコントロールされつつ一層毎に積層されていくのに対し光造型は上部に位置したビルドプラットフォームが逆さまにレジンの入ったレジンタンク内に浸しつつタンク下にあるLCD画面からコントロールされた紫外線が放射され、ビルドプラットフォームに貼り付いた一層目に重なりつつ硬化しながら垂れ下がり造型が進むといった具合だ。ビジュアル的には真反対である。

※光造型3Dプリンターの造型はビルドプラットフォームに垂れ下がって仕上がる
なお、スライサーのソフトウェアはChituBox Basicという製品に同梱されていたUSBメモリに入っていたものを使うがこれは無料だ。ただしこれまた同梱のカードには有料のPro版を1年間無料で使えるシリアルナンバーが隠されていたので私はこちらの方を使い始めている。

※スライサーソフトウェア、ChituBox Proの画面例
そういえば造型そのものの仕組みや考え方もFDMとは違った認識が必要なこともある。FDMの場合、プリント時間は造型物のサイズに直接関わってくるが光造型の場合はX軸とY軸のサイズとプリント時間は関係がない。何故ならLCD画面の範囲内に一層ずつ紫外線が照射されるわけで、例えば2センチ角のオブジェと7センチ角のオブジェも硬化にかかる時間は基本同じだからだ。無論Z軸である高さは直接造型時間に正比例する。
■洗浄と二次硬化専用マシンも購入
前記したように光造型3Dプリンターはプリントしただけでは実用にならない。IPAにしろ水洗いにしろまずは洗浄が必要である。
個人的には水洗いレジンのみを使うつもりだが、小さなサイズや加えて複雑な形状のオブジェの洗浄は超音波洗浄機が適切のようだ。また超音波洗浄機に入らないオブジェやレジンで汚れたレジンタンク、ビルドプラットフォームまでをも確実に洗浄可能なマシンを手に入れた。それがELEGOO MERCURY X WASHだ。これはタイマーも備わっており中に注いだ水をスクリューで攪拌してくれる優れものだ。

※ELEGOO MERCURY X WASH
さらに二次硬化は紫外線を照射するわけだが、小型のものであればネイルライトなどが使えるものの、これまたサイズが大きめのオブジェはELEGOO MERCURY X CUREといった専用機器があると便利だ。これまたタイマーが装備されており、オブジェを置く丸いテーブルがゆっくりと回転し紫外線を満遍なく照射してくれるし専用の黄色いカバーは紫外線からユーザーを保護するプロテクトカバーである。

※ELEGOO MERCURY X CURE
このMERCURY X WASHやMERCURY X CUREといった専用機器を揃え活用するのは実にエキサイティングだがそれぞれ光造型3Dプリンターと同等の設置スペースを必要とするのでまずは配置するスペース確保が大変かも…。
■レジンの選択
FDMの3Dプリンターで使うフィラメントと同様光造型3Dプリンターで必須のレジンにも多種多様なものがある。一見同じようでもメーカーが違えば価格も違うし、レジンのカラーもフィラメントほどではないにしろ数十色ある。特に透明色はFDMではなかなか難しいだけに魅力的だ。
私も含めて経験が浅いと自分の所有する光造型3Dプリンターと適合…相性がよいレジンを探すのは難しいが、こればかりはなるべく有益な情報を集めつつ実際に試行錯誤するしかない。
■光造型3Dプリンター活用で必要なアイテム
光造型3Dプリンターを購入するといわゆるツールキットと称したいくつかのアイテムが同梱されているが、その内容を踏まえてあらかじめ揃えておきたいアイテムがある。
手袋とマスクは必須だが、有害なレジンを扱うため細々としたアイテムたちの一時置き場としてステンレスのトレー、キムワイプ(キッチンペーパーでも可)、などが必要になる。要は一連の作業および片付けの際にどのようにしたら回りを汚さず安全に事が行えるかを考えて順次必要最低限のアイテムを揃えておくことが大切となる。

※筆者が造型時に用意するアイテムたち
■総評
光造型3Dプリンターを手にしてまだ僅かな日数しか経っていないから偉そうなことは言えないが、造型方式はFDMとまるで違うものの、気をつける点や心構えみたいなことはどこか共通のように思えFDMで培った幾多のノウハウをもって事に当たれば理解が早くて済むように思える…。

※オペレーションは言語を日本語に設定可能
ともかく私は水洗いレジンのみで色々とやってみようと考えているが、それでもレジンの臭気や造型手順の煩雑さなど越えなければならないことは多々あるように思え、自分なりに工夫を重ねていきたい。
ELEGOO Mars 3/4Kはそうした意味でも初心者は勿論、買い換えユーザーをも満足させてくれる製品だと考えている。
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