CREALITY 3Dスキャンによるカラーモデル作成手順覚書

CREALITY 3Dスキャン、CR-Scan Lizardはこのクラス最良の製品ではないかと思う。ただしクラウドファンディングで登場したこの製品は深圳にあるメーカーCREALITY(Creality 3D Technology Co, Ltd)のHPを見てもその情報は少ない…。


CREALITYは3Dプリンターを使う者にとってはよく知られているメーカーだ。私自身はいまだ同社の3Dプリンターを使った事はないがそのブランドは様々な場で見聞きする。またその3Dプリンターという製品自体、組立式のものも多く活用に至るまでにはユーザーの経験やスキルが必要な製品だということは間違いない。

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※三脚に据えたCR-Scan Lizard。但し撮影の為電源ケーブルは外してある


今回手に入れたCREALITY 3Dスキャン、CR-Scan LizardはそのCREALITYブランドであるからこそ購入(支援)に至ったわけだが、3Dプリンターに関してはまずまず知識を得たと自負している私にとってもある意味未知の製品である。
無論これまでにもXYZプリンティング社のハンドスキャナをはじめiPhoneを3Dスキャナとするソフトウェアなどを使い、3Dスキャンを体験してきたがハードウェアの仕様はもとよりその専用アプリケーションであるCRStudio2 に至っては初めての体験となる。

しかし実際にパッケージを手にして大げさのようだが呆然としたのは活用に至る情報が至って少ないということだ。近年はCREALITYに限らず、製品に同梱されている取扱説明書あるいはそれに類するドキュメンテーションに記されている内容は基本中の基本のことでしかないことが多い。
無論製品が比較的ベーシックで操作も単純であるならそれで事足りるかも知れないが、多くのユーザーが未知数の製品であろう3D スキャナのような製品は手順を追った詳細な説明とオペレーションの実際を提供しない限りユーザーは使いこなすことはできないだろうし、できたとしても多くの時間を要するに違いない。

いや…CR-Scan Lizardにもきちんとした日本語マニュアルが同梱されているが正直簡素すぎるだけでなく図入りで説明するその内容が実際のアプリケーションと違っているので(アプリのUIがアップデートしているから)なかなか見当がつきにくい。
またYouTubeにもいくつか製品説明の動画が上がっているが、多くは開封紹介といったものやスキャニングができた…といった程度のもので製品のスペックをきちんと引き出す内容ではない。そして繰り返すがCREALITY自らが提供している動画でさえ、肝心と思われるところをスルーしたり、その解説画面はWindowsのそれだったりでMacユーザーには苦痛でしかないのだ。

特にCR-Scan Lizardは3Dスキャンが可能なだけでなくカラーのテクスチャマッピングをもサポートしている秀悦な製品である(カラーキットが必要)。しかし現実問題としてCR-Scan Lizardのユーザーがテクスチャマッピングを活用しようとしても十分な情報がない。どこか「勝手に工夫してね」といった突き放された感じがする…。

さてさて、愚痴はこの程度にするが、ここではそのカラーテクスチャマッピングを実践するための情報を可能な限り順を追って説明していきたい。
ただし筆者とてやっとその入り口に到達した思いであり、勘違いや間違い、説明不足があるやも知れぬがご容赦いただければ幸いである。

■テクスチャマッピングには3Dスキャナとは別にカメラが必要
カメラはスキャニングとは別にオブジェクトの写真を撮影しそのデータをマッピングのデータとするための機器となる。
CR-Scan Lizardは大別して2種類のカメラをサポートしている。第一はいわゆる一眼レフ級のカメラであり、それらをカラーキットに同梱のカメラコントローラー(USB機器)経由でこれまたカメラ側のインターフェースに合わせた8種の接続ケーブルのうち適合するケーブルでパソコンと接続することになる。

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※カラーキットに同梱のカメラコントローラー


ふたつめはスマホを使うケースだ。現実問題としてMacユーザーならiPhoneを使うのが一番簡便で手慣れている分だけ使いやすいに違いない。
ここではiPhoneを使っての解説となる。

■テクスチャマッピング時の撮影環境
撮影環境などと記すと大げさに聞こえるが、CR-Scan Lizardのオプション機器であるカラーキットには組立式の簡易スタジオボックスが附属している。

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※カラーキットに同梱のスタジオボックス。ケーブルをモバイルバッテリーなどへ繋ぐことで天板のLEDが点灯する


本来、テーブルスキャン…すなわち回転テーブルに乗る程度のオブジェクトならテクスチャモードでなくジオメトリモードの場合でもこのスタジオボックス内に回転テーブルを置いてスキャンするのが理想に違いない。
なぜなら照明も装備され明るくそして周囲・背景には雑多なものは入らないからオブジェクトに特化した理想的な撮影が可能なはずだ。ただし、現時点で筆者は調光が可能な別途サイズがいま少し大きな撮影ボックスを所持しているのでそちらを使っている。

しかしいくつかのテスト結果では背景がオブジェクトに極端に近い場合ではない限り、あるがままの背景のままにスキャニングあるいは写真撮影してもCR-Scan Lizardのシステム側はオブジェクト領域をきちんと認識してくれることが分かったので特別な場合を除きあまり神経質にならなくても良いと思う。

■iPhoneによるマッピング写真撮影の準備
くどいようだが、このCR-Scan Lizardによるテクスチャマッピングの実現はスキャナ本体だけでは出来ず、カラーキットなるオプションパッケージが不可欠となる。
iPhoneをテクスチャマッピング用のカメラとするにはまずカラーキットに同梱されているカメラコントローラーなる代物をMacのUSBポートへ繋ぐことだ。とはいえマニュアルにもこの機器が何の為のものかといった説明がないのだから困ったものだ。

① ともかくまずはCR-Scan LizardをMacと接続後に電源を入れこのカメラコントローラーなる代物をMacのUSBポートへ接続するとiPhoneのBluetooth接続リストに “CR-Scan_Lizard” のデバイス名称が表示されペアリンクが可能になる。したがってiPhoneとは物理的になにかのケーブル接続は必要ない。

② テーブルスキャンモードを選択
CRStudio2を起動し、テーブルスキャンモードにする。現在の所、カラーテクスチャマッピングが可能のはテーブルスキャンモードのみのようだ。

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※カラーテクスチャマッピングが可能のは現在の所テーブルスキャンモードのみのようだ


③ テクスチャモードおよびVia BluetoothをONにする
CRStudio2画面の右サイドの調整下をテクスチャモードにし、その下の Use External Texture Mapping をクリックし、続けてVia BluetoothをONにする。

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するとメインウインドウ下に「Shoot」ボタンが追加される。

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■CR-Scan Lizardによる3Dスキャンを実行
① 常通りCR-Scan Lizardでテーブル上のモデルをスキャンしプロセスの実行を済ますが、その際右サイドバーのプロセスリストの内、テクスチャマッピングだけはOFFにしておく。

② スキャンを始めるとジオメトリモードと違いCR-Scan_Lizard中央LEDがスキャン中にフラッシュする。

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③ この時の注意だが、オプションのカラーキット附属のアイテムや一部のYouTubeの動画を見るとiPhoneとCR-Scan Lizardは並べて一緒の三脚上に設置するような解説がある。したがって当初オブジェのスキャンと連動して同時にiPhoneのシャッターが切れる…と思い込んでいたが実際は違う。

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※通常このような窮屈なセッティングはしなくても大丈夫…


オブジェのスキャンを終えてから別途テクスチャ用の写真を撮る手筈となるのでスキャナとiPhoneを同時にターンテーブル前に据え置く必要はなく、スキャンが終わりプロセス化も終わったらスキャナと交換といった形でiPhoneを設置すればよい。

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※プロセスを実行


④ ただしiPhoneのカメラアプリを起動後なるべくスキャナのプレビューで捕らえた同一フレーミング位置に置く。

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■iPhoneによる撮影
① ターンテーブルが回っていることを確認しShootボタンクリック。そしてFliming Preparationsダイアログが表示されたらOKボタンをクリック。

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② iPhoneのカメラが自動的に連続的にシャッターを切り始めるので終わるのを待つ。

■iPhoneによる撮影データを整える
① iPhoneの写真アプリに保存された複数のテクスチャー写真をMacに転送する。その際適当な名を付けたフォルダーにまとめて保存。

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② iPhoneでの撮影フォーマットが .HEICの場合は.jpgに変換しておく。その際はApowersoft HEIC Converterなどの一括変換ソフトを使うと便利。

■テクスチャマッピング開始
① CRStudio2 左サイドバーのテクスチャアイコンをクリック

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② External texture mappingのウィンドウ表示。その Please select a folder to store texture photos …の部位をクリックし、先にiPhoneで撮影し写真をまとめたフォルダーを指定し開く。

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③ 左側に写真のjpgファイルがずらりとならび、一番上の写真が右に表示される。

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④ 多少の背景が写っていてもそのままオブジェ全体をカバーするようにマウスで矩形を描いてトリミング指定する。ただし現時点ではこのトリミングエリアの形は横型の矩形であり縦横比は変えられない。

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したがって横サイズを写真枠一杯にマウスでトリミングしようとしても上下のサイズは固定なので自由なトリミング枠は望めないので注意が必要。またトリミング中にマウスボタンを離すとその後にトリミング枠の拡大縮小はできなくなるので注意のこと。

⑤ Cut ボタンをクリック
Cut ボタンを押しテクスチャマッピング確認ダイアログが出たらOKを押す。このマッピングはM1 Macでもかなり時間がかかるが、問題なくプロセスが終わるとメインウィンドウ内の表示がマッピングを施されたカラー表示になる。

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ちなみにマッピング用写真があるフォルダ内を確認してみると Cut で新たにトリミングされた写真が “Cut” という名のフォルダ名に集約されていることがわかる。マッピングにはこちらの写真が使われているに違いない。

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※マッピングが完了した例


⑥ マッピングされたデータを .OBJ ファイルとして保存するとカラーデータを持った3Dデータとなり、例えばXYZプリンティングのカラー3Dプリンターなどでプリントすれば文字通りのカラー造型が可能となるし別の3Dアプリで読み込むことができればカラー3Dオブジェクトとして二次利用できる。

■総括
CR-Scan Lizardを評価するとなれば個人的には最大級の賛美を送りたい…。ただしこの製品が3DプリンターメーカーのCREALITYにとってどのようなコンセプトで製品化となったのかは知る由もないがどこか継子扱いのような印象を受けてしまう。
それは冒頭にも記したが情報の少なさでもありかつソフトウェア CRStudio2 の出来だけでなく製品全体がどこかアンバランスに思えて仕方がないからだ。

例えばMac版のアプリにWindows用マウスにある中央ボタンが不可欠なオペレーションをそのまま搭載したりと洒落にならないチョンボもあるし、Macのソフトウェア開発を生業にしていた一人として中途半端な部分が目立つのは残念でならない。

またそのソフトウェアにしても正規版のリリース以前に印刷物の取説を作ったり、幾多のYouTuberに評価依頼のために配布した結果作られた動画類もソフトウェアのインターフェースが正式版と大幅に違うため具体的な参考にならなかったりする…。
本当にこの製品をマジで世界に売り込むのだ…という気概がどうにも見えない(笑)。

まあクラウドファンディングでお披露目したこと自体、CREALITYの他製品とは一線を記すものであるわけだが、今少しマジで多くの人たちにその魅力を知らしめる努力をすべき製品だと思う。
3Dプリンターと比較してもこのCR-Scan Lizardは決して安価な製品ではないが個人的にはこのクラスで最良の3Dスキャナであると感じているし事実そのスペックや造型結果にも満足している。したがって是非是非、クラウドファンディングで成功し収支も上々…といっただけで製品の進化が尻つぼみにならぬよう努力して欲しいと願っている。



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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員