アップルビジネス昔話し〜ベストプロダクト賞副賞は中古マック
私はMacintoshが好きだ。だからそれを仕事にしてきた。またアップルコンピュータという会社も大変魅力的な会社だからこそ長いお付き合いをさせていただいているが正直「なんだかなぁ...?!」という面を多分に持っている不思議な企業でもある(笑)。
私が営んでいた会社は小さいながらも様々な賞をいただいた。出版社からいただいたこともあるしApple本社から表彰されたこともある。
今回はアップルから初めて賞をいただいたときの思い出を紹介するが、時は1992年4月のことだった。すでに14年も前のことだし関係者もすでに在籍していないから、時効としてお話ししよう(笑)。
「アップルのTさんからお電話です」の声で私は受話器を取った。電話の向こうでアップルのマーケティング部担当者は「松田さん、おめでとうございます。実は今年の『アップルベストプロダクト賞』は御社の『たまづさ』と『グランミュゼ』に決まりました」と矢継ぎ早にまくし立てた。
一瞬何のことかと分からなかったが、聞けばその一昨年あたりから、その年にアップルの市場に大きく貢献したサードパーティー各社の製品を「アップルベストプロダクト賞」として選定し、表彰することになったという。私は知らなかったが...(笑)。
ともかく実質会社が活動を始めてから2年あまり、いうまでもなく賞というものに縁があるとは考えもしなかったので、それは正直嬉しかった。何しろ業界の総本山から賞をいただけるというのだからその喜びは察していただけるものと思う...。
電話口の声は続き...「近々、認定書と副賞をお持ちしますのでご都合を聞かせてください」とのこと。なんと副賞はMacintosh本体だという。それもいままで無かった一企業二製品がダブル受賞したということなので、2台のMacintoshをいただけるという話しに私は舞い上がった。
さて4月28日の当日、その約束の日時にアップルコンピュータのマーケティング部から顔なじみのお二人がなんとMacintoshを抱えて来社された(^_^)。抱えて...である...。
私は「賞をいただいたこと」は喜びながらも、アップルって私たちより大きな会社だったよなぁ...と思わず心の中で問いただすほど、その場は違和感のある雰囲気となった。正直目が点となった。
何故か。
まず副賞のMacintoshは「Macintosh Classic」二台だったが、それは良い。ありがたいことだ。しかし、担当者が持ち込んでくれたそのMacintoshは新品ではなかった(^_^;)。化粧箱に入っているのではなく、キャリングバックに収納されたそれは数カ所、あきらかに汚れがある...。
いただいて文句をいうのも何だが...賞品に中古品をそれと分かるような形で持ってくる企業って他にあるだろうか?
そして私の不信感は賞を讃えるはず...アップル曰くの"認定書"を見て頂点に達した!
それはアップルのレターヘッドにLaserWriterで印刷された単なる手紙だったからだ(爆)。

※これがいただいた本物のベストプロダクト賞認定書(笑)。実物は用紙セットが甘かったのかちょっと右上がりに曲がっているが補正してある(爆)
日本法人とはいえ、アップルコンピュータという世界的パーソナルコンピュータのメーカーから正式にいただく賞であり、特に我々はアップルというかMacintoshのソフトウェアを専門に開発するために設立した組織であるからしてそれは名誉である。ともかくその認定書は日本語であっても英語であっても、もっと証書・賞状らしいものであることを期待した私がおかしいのだろうか(笑)。
別に金箔で飾られたものを欲しいとは思わないが、せっかくだから額に入れ、応接室に飾っておけるほどのものを期待していた私は間違っていないと思うのだが...。
何故このような事が起きるのか? 想像するに、当時のアップルはそんな規模の会社だったのだ。
当時のアップルコンピュータは我々がイメージしているよりはるかに零細企業的発想しかできない組織だったのである。予算的にも権限的にも。そして私の持論だがAppleという企業は現在も「偉大なる中小企業」なのだ。そうした見地から物事を見なければAppleのやることなすことがなかなか理解できないと思う...。
だから、当時の担当者たちは疑いもせずに精一杯のことをしてくれたのだろうが、一般的なビジネス社会の常識(これが問題なのだが)からいわせれば、それはまさしく非常識きわまりない行動となった。その上にユーザーは勿論のこと、デベロッパーの期待は大きいときているからますますギャップが大きくなる。
したがっていただいたアップルベストプロダクト賞の認定書は額に入らなかったし、小さな応接室にも飾られることはなかったが、結果論として他の賞以上の思い出が残った。いや、これは皮肉ではない(^_^)。
今となっては6色のアップルロゴが印刷されているレターヘッドの方が貴重かも知れない(笑)。
今年(2006年)...4月1日、Apple Computer社は創立30周年を迎えた。30年を節目としてさまざまな歴史的考察が発信されている。そしてAppleという「企業文化」云々などという話題もあるが、人ごとならいざ知らずこうした不条理を多々体験した当事者から見ればきれい事ばかりも言ってはいられまい...。
それらは「企業文化」などどいった話ではなく、悪い意味での「企業体質」が露見しただけの話なのだ...。しかしまあ、多くの欠点を埋め合わせてもなお魅力が上回る企業がAppleなのだ!だから...私は相変わらずMacintosh関連の仕事から足抜け出来ず、MacやiPodを買い続けている。困った会社である(笑)。
私が営んでいた会社は小さいながらも様々な賞をいただいた。出版社からいただいたこともあるしApple本社から表彰されたこともある。
今回はアップルから初めて賞をいただいたときの思い出を紹介するが、時は1992年4月のことだった。すでに14年も前のことだし関係者もすでに在籍していないから、時効としてお話ししよう(笑)。
「アップルのTさんからお電話です」の声で私は受話器を取った。電話の向こうでアップルのマーケティング部担当者は「松田さん、おめでとうございます。実は今年の『アップルベストプロダクト賞』は御社の『たまづさ』と『グランミュゼ』に決まりました」と矢継ぎ早にまくし立てた。
一瞬何のことかと分からなかったが、聞けばその一昨年あたりから、その年にアップルの市場に大きく貢献したサードパーティー各社の製品を「アップルベストプロダクト賞」として選定し、表彰することになったという。私は知らなかったが...(笑)。
ともかく実質会社が活動を始めてから2年あまり、いうまでもなく賞というものに縁があるとは考えもしなかったので、それは正直嬉しかった。何しろ業界の総本山から賞をいただけるというのだからその喜びは察していただけるものと思う...。
電話口の声は続き...「近々、認定書と副賞をお持ちしますのでご都合を聞かせてください」とのこと。なんと副賞はMacintosh本体だという。それもいままで無かった一企業二製品がダブル受賞したということなので、2台のMacintoshをいただけるという話しに私は舞い上がった。
さて4月28日の当日、その約束の日時にアップルコンピュータのマーケティング部から顔なじみのお二人がなんとMacintoshを抱えて来社された(^_^)。抱えて...である...。
私は「賞をいただいたこと」は喜びながらも、アップルって私たちより大きな会社だったよなぁ...と思わず心の中で問いただすほど、その場は違和感のある雰囲気となった。正直目が点となった。
何故か。
まず副賞のMacintoshは「Macintosh Classic」二台だったが、それは良い。ありがたいことだ。しかし、担当者が持ち込んでくれたそのMacintoshは新品ではなかった(^_^;)。化粧箱に入っているのではなく、キャリングバックに収納されたそれは数カ所、あきらかに汚れがある...。
いただいて文句をいうのも何だが...賞品に中古品をそれと分かるような形で持ってくる企業って他にあるだろうか?
そして私の不信感は賞を讃えるはず...アップル曰くの"認定書"を見て頂点に達した!
それはアップルのレターヘッドにLaserWriterで印刷された単なる手紙だったからだ(爆)。

※これがいただいた本物のベストプロダクト賞認定書(笑)。実物は用紙セットが甘かったのかちょっと右上がりに曲がっているが補正してある(爆)
日本法人とはいえ、アップルコンピュータという世界的パーソナルコンピュータのメーカーから正式にいただく賞であり、特に我々はアップルというかMacintoshのソフトウェアを専門に開発するために設立した組織であるからしてそれは名誉である。ともかくその認定書は日本語であっても英語であっても、もっと証書・賞状らしいものであることを期待した私がおかしいのだろうか(笑)。
別に金箔で飾られたものを欲しいとは思わないが、せっかくだから額に入れ、応接室に飾っておけるほどのものを期待していた私は間違っていないと思うのだが...。
何故このような事が起きるのか? 想像するに、当時のアップルはそんな規模の会社だったのだ。
当時のアップルコンピュータは我々がイメージしているよりはるかに零細企業的発想しかできない組織だったのである。予算的にも権限的にも。そして私の持論だがAppleという企業は現在も「偉大なる中小企業」なのだ。そうした見地から物事を見なければAppleのやることなすことがなかなか理解できないと思う...。
だから、当時の担当者たちは疑いもせずに精一杯のことをしてくれたのだろうが、一般的なビジネス社会の常識(これが問題なのだが)からいわせれば、それはまさしく非常識きわまりない行動となった。その上にユーザーは勿論のこと、デベロッパーの期待は大きいときているからますますギャップが大きくなる。
したがっていただいたアップルベストプロダクト賞の認定書は額に入らなかったし、小さな応接室にも飾られることはなかったが、結果論として他の賞以上の思い出が残った。いや、これは皮肉ではない(^_^)。
今となっては6色のアップルロゴが印刷されているレターヘッドの方が貴重かも知れない(笑)。
今年(2006年)...4月1日、Apple Computer社は創立30周年を迎えた。30年を節目としてさまざまな歴史的考察が発信されている。そしてAppleという「企業文化」云々などという話題もあるが、人ごとならいざ知らずこうした不条理を多々体験した当事者から見ればきれい事ばかりも言ってはいられまい...。
それらは「企業文化」などどいった話ではなく、悪い意味での「企業体質」が露見しただけの話なのだ...。しかしまあ、多くの欠点を埋め合わせてもなお魅力が上回る企業がAppleなのだ!だから...私は相変わらずMacintosh関連の仕事から足抜け出来ず、MacやiPodを買い続けている。困った会社である(笑)。
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