何故CalculatorはMac OS 9までそのまま使われたのか?
Mac OS Xに至ってウィジェットによる電卓はやっと近代的なデザインに変更されたが、Macintosh 128KからMac OS 9まで長い間使われたデスクアクセサリの電卓(Calculator)はほとんど変わらずに続いた。何故なのか?
先日知人とMacintoshまわりのデザインの話しで楽しいひとときを過ごした。Macintosh本体デザインの変遷から、スーザン・ケアがデザインした多くのビットマップアイコンたちの話し等々...。 そんな中でデスクアクセサリの「計算機」すなわちCalculatorの話題になった。
面白いというよりおかしなことに、Mac OS 9まで使われたこの「計算機」の機能ならびにそのデザインは、1984年に登場したMacintosh 128Kに付属していたものと基本的に変わってはいない。
Macintoshが登場してからすでに久しい。その間にはハードウェアの進歩は目まぐるしく変わったし無論OS環境も大きく変わってきた。しかしこの「計算機」のデスクアクセサリは変わっていない…。
実際にこの「計算機」が現実にどれだけ実用になるのかはともかく、無くならないばかりか、そのデザインもそのままに綿々と存在し続けてきたところを見るとそれなりの存在意義があるのだろうとも思う。しかし、何故もっと使いよく実用的な電卓に進歩しないのかを不思議に思っていた...いや不思議というより不自然な感じを受けていた。

※図は漢字Talk 7.1の「計算機」
そんなことを漠然と考え続けていたわけだが、先日本棚に置いてあるオイラリー・ジャパン刊「レボリューション・イン・ザ・バレー」のページを何気に捲っていて「これだ!」と思う記述を見つけた。
本書はMacintosh 128Kの開発に深くたずさわったプログラマのアンディ・ハーツフェルドが書いたもので、Macintoshに関わる多くの開発秘話が語られている一冊である。

※オイラリー・ジャパン刊「レボリューション・イン・ザ・バレー」(Andy Hertzfeld著)表紙
問題の計算機だが、要約すると事は1982年2月、Apple社最初期からの最も若い社員であったクリス・エスピノザ(Chris Espinosa)〜【社員番号8番】が、今で言うところのデスクアクセサリの計算機(電卓)を作った。自分ではとても見た目がよいと考えたが、承諾を得るためスティーブ・ジョブズに見せ、息を殺して彼の反応を待ったという。
「...初めはこんなものだろう」と言いつつ、ジョブズはあれこれ欠点をあげつらう...。クリスはジョブズのOKが出るまで改良すると言ったが、その後も見せる度にジョブズは新たな欠点を指摘する。
そうした連続の中でついにクリスは名案を思いついた。
それは新しい電卓を作り続けるのではなく「Steve Jobsの自分でできる電卓組み立てセット」というのを作って提示したいという(笑)。
それはプルダウンメニューを使い、計算機のグラフィカルな属性を選ぶことができ、線の太さ、ボタンの大きさ、背景パターンといった様々なものをカスタマイズできるものだった。まあ、それは「Calculator Constraction Set」のビジュアル編集機能だけを取り出したようなものなのかも知れない。
スティーブ・ジョブズはそれを見て早速新しい電卓をデザインし始め、ようやく自分で気に入るものを完成させる。
中身の演算処理は別のプログラマが担当したが、結局アンディ・ハーツフェルドはジョブズが作ったその計算機を実装することにした。
ジョブズがAppleに在籍していなかった時代はともかく、デスクアクセサリの計算機がMac OS Xに至るMac OS 9の時代まで面々と変わらずに続いた最大の原因は、それがスティーブ・ジョブズの作ったものであり、彼自身気に入ったものだったからなのだ(笑)。きっとそうに違いない。
さらに勘繰れば、Macintosh 128KからPlusに至るまで、筐体内部に自分たちのサインを残したジョブズであり、Macintoshは自身の分身だと考えていたジョブズだ。だとすれば本体もOSもすべて進化・進歩し、ジョブズ自身がAppleに復帰してリリースしたiMacにしても、さすがにMacintosh 128Kの面影は薄れたわけだが、デスクアクセサリーの計算機に自身の刻印を託していたということなのではないだろうか...。
そんな勝手な想像を展開していたとき、近所から「ホーホケキョ」というウグイスの声で現実に引き戻された...。春の日差しの中、そんなことを語りながら知人と数時間を過ごした。
先日知人とMacintoshまわりのデザインの話しで楽しいひとときを過ごした。Macintosh本体デザインの変遷から、スーザン・ケアがデザインした多くのビットマップアイコンたちの話し等々...。 そんな中でデスクアクセサリの「計算機」すなわちCalculatorの話題になった。
面白いというよりおかしなことに、Mac OS 9まで使われたこの「計算機」の機能ならびにそのデザインは、1984年に登場したMacintosh 128Kに付属していたものと基本的に変わってはいない。
Macintoshが登場してからすでに久しい。その間にはハードウェアの進歩は目まぐるしく変わったし無論OS環境も大きく変わってきた。しかしこの「計算機」のデスクアクセサリは変わっていない…。
実際にこの「計算機」が現実にどれだけ実用になるのかはともかく、無くならないばかりか、そのデザインもそのままに綿々と存在し続けてきたところを見るとそれなりの存在意義があるのだろうとも思う。しかし、何故もっと使いよく実用的な電卓に進歩しないのかを不思議に思っていた...いや不思議というより不自然な感じを受けていた。

※図は漢字Talk 7.1の「計算機」
そんなことを漠然と考え続けていたわけだが、先日本棚に置いてあるオイラリー・ジャパン刊「レボリューション・イン・ザ・バレー」のページを何気に捲っていて「これだ!」と思う記述を見つけた。
本書はMacintosh 128Kの開発に深くたずさわったプログラマのアンディ・ハーツフェルドが書いたもので、Macintoshに関わる多くの開発秘話が語られている一冊である。

※オイラリー・ジャパン刊「レボリューション・イン・ザ・バレー」(Andy Hertzfeld著)表紙
問題の計算機だが、要約すると事は1982年2月、Apple社最初期からの最も若い社員であったクリス・エスピノザ(Chris Espinosa)〜【社員番号8番】が、今で言うところのデスクアクセサリの計算機(電卓)を作った。自分ではとても見た目がよいと考えたが、承諾を得るためスティーブ・ジョブズに見せ、息を殺して彼の反応を待ったという。
「...初めはこんなものだろう」と言いつつ、ジョブズはあれこれ欠点をあげつらう...。クリスはジョブズのOKが出るまで改良すると言ったが、その後も見せる度にジョブズは新たな欠点を指摘する。
そうした連続の中でついにクリスは名案を思いついた。
それは新しい電卓を作り続けるのではなく「Steve Jobsの自分でできる電卓組み立てセット」というのを作って提示したいという(笑)。
それはプルダウンメニューを使い、計算機のグラフィカルな属性を選ぶことができ、線の太さ、ボタンの大きさ、背景パターンといった様々なものをカスタマイズできるものだった。まあ、それは「Calculator Constraction Set」のビジュアル編集機能だけを取り出したようなものなのかも知れない。
スティーブ・ジョブズはそれを見て早速新しい電卓をデザインし始め、ようやく自分で気に入るものを完成させる。
中身の演算処理は別のプログラマが担当したが、結局アンディ・ハーツフェルドはジョブズが作ったその計算機を実装することにした。
ジョブズがAppleに在籍していなかった時代はともかく、デスクアクセサリの計算機がMac OS Xに至るMac OS 9の時代まで面々と変わらずに続いた最大の原因は、それがスティーブ・ジョブズの作ったものであり、彼自身気に入ったものだったからなのだ(笑)。きっとそうに違いない。
さらに勘繰れば、Macintosh 128KからPlusに至るまで、筐体内部に自分たちのサインを残したジョブズであり、Macintoshは自身の分身だと考えていたジョブズだ。だとすれば本体もOSもすべて進化・進歩し、ジョブズ自身がAppleに復帰してリリースしたiMacにしても、さすがにMacintosh 128Kの面影は薄れたわけだが、デスクアクセサリーの計算機に自身の刻印を託していたということなのではないだろうか...。
そんな勝手な想像を展開していたとき、近所から「ホーホケキョ」というウグイスの声で現実に引き戻された...。春の日差しの中、そんなことを語りながら知人と数時間を過ごした。
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