アップルジャパン(株)が解散消滅するというニュースに接して
先月あたりから断片的な情報を小耳にしていたが「Macお宝鑑定団」のブログなどを見てあらためて8月18日付け第5621号の官報を確認した。それはアップルジャパン(株)がApple Japan合同会社に合併され解散し消滅するというちょっとショッキングなニュースである。
正直、現在の個人的な立場からの感想は「遅すぎたのでは...」といった思いが強い。
ともかく1983年6月21日にAppleの日本法人としてアップルコンピュータジャパン(株)が設立されてからすでに28年ほどの年月が過ぎた。その間、社長が1年ごとに代わった時期もあったし本社社屋の移転や社名の変更などもあったが同社は一貫してAppleの日本法人として製品の輸入と市場への流通を主としそれに必要な多義に渡る業務を遂行してきた。ただし近年はApple Japan合同会社が輸入業務を行っていたようだからアップルジャパンはもっぱら市場に対する販売業務に徹していたと聞く。
私自身は1989年に起業する前から縁あって当時の社長、武内重親氏とのミーティングに参加する機会を得たが、起業してから2003年まで、ありがたいことにアップルジャパン…特にデベロッパ・リレーションの部署にお世話になったし、自身の会社だけにのみならずMOSAの立ち上げなど、デベロッパや開発側への支援といった面で様々な接触を図らせていただいた経緯がある。

※この部署、この方には大変お世話になりました
そのアップルジャパンが消滅するというのだから無関心ではいられない。無論官報に「権利義務全部を承継して存続し」と明記されているようにアップルジャパンの業務と責任はApple Japan合同会社が引き継ぐ理屈になるわけだが、この種の常として履行日である平成23年10月30日以降、いささか仕組みや機構も変わるだろうし、それに伴いいわゆる方針転換があるに違いない。
さて先に「遅すぎたのでは」と記したが、その理由を記してみる...。
まずはそもそもアップルジャパンという組織の存在意義がどこにあるのかといった、いわば「AJ不要論」という論議が勝手ながら我々の間でしばしば酒の肴として語られてきた事実が上げられる。
どのみち物事の決定権は本社にあり、トップダウンで事が運ぶわけだから、アップルジャパンととやかく交渉すること自体が無駄だし意味が無い...といった雰囲気もあった。

※アップルジャパン(株)のオフィスがある東京オペラシティ・タワーとある日のアップルジャパンの受付風景
とはいえいまさら重箱の隅を突いたようなあれこれをご紹介するつもりはないが、デベロッパーの一部では対応が悪いアップルジャパンに対して不満が鬱積していたこともある。
Appleのソフトウェアコンポーネントを自社製品に同梱するといった契約はアップルジャパンでは出来ず、本社とやらなければならないし、開発に必要な新製品は最初期のiMacを除いてその入手のタイミングはユーザーと変わらなかった。したがって場合によってはユーザーから「新機種では動かない」と連絡を受けても肝心のマシンが来ないというケースもあった。
そうした事実を差し置いて「アップルジャパンは皆様デベロッパーの方々の開発支援に最善を尽くす」などと言われても正直馬鹿らしいと考えても責められまい。
口の悪い我々はそれやこれやで「結局アップルジャパンって…広告代理店ジャン」。「それなら昔みたいに例えばキヤノンなどに委託した方がよほどサービスが良くなるのではないか…」などと文句を言い愚痴をこぼしたものである。
特に2004年に前刀禎明氏および山元賢治氏が代表として就任し脚光を浴びたものの結局お二人とも退社した後は日本人社長は在籍せず、米国本社のVice Presidentが日本法人の代表となったが、アップルジャパンという企業の日本におけるポジションはどこかステルス機のように見えなくなっていた。
それに現時点でApple Japan合同会社とアップルジャパン(株)は同じ東京オペラシティタワーにあるし代表者は両社共に同じダグラス・ベック氏だというのだから別々の会社である必要性はなくなっていたのかも知れない。
当然企業がこうした合併という行動を取るにはビジネス面からの利を考えてのことである。いわゆる合理化、そして意志決定のより迅速化といったことなどが頭に浮かぶが、まあ一般ユーザーの目からは今回の組織改革はほとんど影響を感じないと思うものの、ディーラーやデベロッパーそしてアップルジャパンとある種の契約づくで続けてきたビジネスやサービスに関しては良くも悪くも大きな影響が懸念される。そして些か知り合いもいるので1,000名前後だという従業員の処遇も気がかりだ。
これまでにも社長が代わった途端にそれまで積み重ねてきた信頼関係や約束事は一瞬で消え去ってきたのがアップルだから何があっても驚きはしない。そしてまさか日本市場の窓口が無くなるわけではないだろうし基本的な対応に変化はないと思うが、繰り返すが施行の10月30日以降は立場によっては一喜一憂する場面も出てくるかも知れない。
それにしても「Apple Japan合同会社」って、ますます個の顔が見えなくなる感じを受けるしApple Japan合同会社自体が計算書類の公告義務はない組織だからして一層のブラックボックス化のイメージは拭えない。
まあユーザーとして一番重要なのはこの機会に製品価格への良い影響とユーザーへのサービスがより向上することを願いたいと思うが、期待はしない方が良いのかも知れない(笑)。
スティーブ・ジョブズがAppleのCEOを辞任し、これまたアップルジャパン(株)が無くなる。急激に進化・進歩するこの業界だからして変化には柔軟に対応しなければならないのは分かっているが、今夜は足かけ14年間のビジネスで数百枚にもなったアップルジャパンの名刺を眺めて整理しながら、久しぶりに小振りのワインでも開けようか…。
無論Appleと日本市場の前途によかれと祈ってのことである。しかし、寂しい。
正直、現在の個人的な立場からの感想は「遅すぎたのでは...」といった思いが強い。
ともかく1983年6月21日にAppleの日本法人としてアップルコンピュータジャパン(株)が設立されてからすでに28年ほどの年月が過ぎた。その間、社長が1年ごとに代わった時期もあったし本社社屋の移転や社名の変更などもあったが同社は一貫してAppleの日本法人として製品の輸入と市場への流通を主としそれに必要な多義に渡る業務を遂行してきた。ただし近年はApple Japan合同会社が輸入業務を行っていたようだからアップルジャパンはもっぱら市場に対する販売業務に徹していたと聞く。
私自身は1989年に起業する前から縁あって当時の社長、武内重親氏とのミーティングに参加する機会を得たが、起業してから2003年まで、ありがたいことにアップルジャパン…特にデベロッパ・リレーションの部署にお世話になったし、自身の会社だけにのみならずMOSAの立ち上げなど、デベロッパや開発側への支援といった面で様々な接触を図らせていただいた経緯がある。

※この部署、この方には大変お世話になりました
そのアップルジャパンが消滅するというのだから無関心ではいられない。無論官報に「権利義務全部を承継して存続し」と明記されているようにアップルジャパンの業務と責任はApple Japan合同会社が引き継ぐ理屈になるわけだが、この種の常として履行日である平成23年10月30日以降、いささか仕組みや機構も変わるだろうし、それに伴いいわゆる方針転換があるに違いない。
さて先に「遅すぎたのでは」と記したが、その理由を記してみる...。
まずはそもそもアップルジャパンという組織の存在意義がどこにあるのかといった、いわば「AJ不要論」という論議が勝手ながら我々の間でしばしば酒の肴として語られてきた事実が上げられる。
どのみち物事の決定権は本社にあり、トップダウンで事が運ぶわけだから、アップルジャパンととやかく交渉すること自体が無駄だし意味が無い...といった雰囲気もあった。

※アップルジャパン(株)のオフィスがある東京オペラシティ・タワーとある日のアップルジャパンの受付風景
とはいえいまさら重箱の隅を突いたようなあれこれをご紹介するつもりはないが、デベロッパーの一部では対応が悪いアップルジャパンに対して不満が鬱積していたこともある。
Appleのソフトウェアコンポーネントを自社製品に同梱するといった契約はアップルジャパンでは出来ず、本社とやらなければならないし、開発に必要な新製品は最初期のiMacを除いてその入手のタイミングはユーザーと変わらなかった。したがって場合によってはユーザーから「新機種では動かない」と連絡を受けても肝心のマシンが来ないというケースもあった。
そうした事実を差し置いて「アップルジャパンは皆様デベロッパーの方々の開発支援に最善を尽くす」などと言われても正直馬鹿らしいと考えても責められまい。
口の悪い我々はそれやこれやで「結局アップルジャパンって…広告代理店ジャン」。「それなら昔みたいに例えばキヤノンなどに委託した方がよほどサービスが良くなるのではないか…」などと文句を言い愚痴をこぼしたものである。
特に2004年に前刀禎明氏および山元賢治氏が代表として就任し脚光を浴びたものの結局お二人とも退社した後は日本人社長は在籍せず、米国本社のVice Presidentが日本法人の代表となったが、アップルジャパンという企業の日本におけるポジションはどこかステルス機のように見えなくなっていた。
それに現時点でApple Japan合同会社とアップルジャパン(株)は同じ東京オペラシティタワーにあるし代表者は両社共に同じダグラス・ベック氏だというのだから別々の会社である必要性はなくなっていたのかも知れない。
当然企業がこうした合併という行動を取るにはビジネス面からの利を考えてのことである。いわゆる合理化、そして意志決定のより迅速化といったことなどが頭に浮かぶが、まあ一般ユーザーの目からは今回の組織改革はほとんど影響を感じないと思うものの、ディーラーやデベロッパーそしてアップルジャパンとある種の契約づくで続けてきたビジネスやサービスに関しては良くも悪くも大きな影響が懸念される。そして些か知り合いもいるので1,000名前後だという従業員の処遇も気がかりだ。
これまでにも社長が代わった途端にそれまで積み重ねてきた信頼関係や約束事は一瞬で消え去ってきたのがアップルだから何があっても驚きはしない。そしてまさか日本市場の窓口が無くなるわけではないだろうし基本的な対応に変化はないと思うが、繰り返すが施行の10月30日以降は立場によっては一喜一憂する場面も出てくるかも知れない。
それにしても「Apple Japan合同会社」って、ますます個の顔が見えなくなる感じを受けるしApple Japan合同会社自体が計算書類の公告義務はない組織だからして一層のブラックボックス化のイメージは拭えない。
まあユーザーとして一番重要なのはこの機会に製品価格への良い影響とユーザーへのサービスがより向上することを願いたいと思うが、期待はしない方が良いのかも知れない(笑)。
スティーブ・ジョブズがAppleのCEOを辞任し、これまたアップルジャパン(株)が無くなる。急激に進化・進歩するこの業界だからして変化には柔軟に対応しなければならないのは分かっているが、今夜は足かけ14年間のビジネスで数百枚にもなったアップルジャパンの名刺を眺めて整理しながら、久しぶりに小振りのワインでも開けようか…。
無論Appleと日本市場の前途によかれと祈ってのことである。しかし、寂しい。
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