キリストの心理分析〜「人間イエスを科学する」を読む
私はキリスト教信者ではないが、イエス・キリストその人には大変興味がある。ここのところキリスト教関連の本を数冊読んだが、中でも無神論者であり精神科医の著者が書いた本書は新鮮で面白かった。
ことが宗教の分野...例えばキリストの奇跡とか復活の話になると科学の領域では何ともしがたい。また、無論否定や無視することはできても、それでは一歩も前に進まないし問題や疑問の解決にはならない。
しかし本書は神の子と称されたイエスではなく、肉体を持ってこの世に出現したイエスという"人間"を対象にし、その心理を探求し、生身のイエスを理解してみようという試みの本である。

本書の訳者がいうように、一般的にキリストに関する本は「信者の立場からキリストを描く」ものと「キリストや宗教を批判する立場でキリストを描く」という2種類しかない。そうした中にあって本書は無神論者であり精神科医を職業とする科学者が試みたものであり、新しいタイプのイエス像を考える一冊である。
筆者は言う。「仮にイエスが奇跡をまったく起こさなかったとしても、イエスの行動と思想はきわめて意味深く驚異的であり、人類史に新しい扉を開いたはず」と...。
ただし、根本的な文化の違いもあり、例えば私たちにイエスのいう"愛"がどのようなものなのかは正直捉えにくい部分もある。
実際、私にしても聖書を何度手にしたことか...。ただし必ず途中で挫折する。それは字面を追うことはできても、その訳文からは心に伝わってくるものがないからだ。「なぜそうなのか」と分からないことだらけなのだから飽きてしまうのも無理はない(笑)。
しかし聖書はもとよりだが、多くの資料を見ていると、イエスの実像は決して眉間に皺を寄せてばかりいる孤独で暗い人物ではないことがわかる。よく笑い、人付き合いも良く、そしてよく食べた...。ために「大食らいの大酒飲み」と反対派から悪評をいわれたほどである。さらに何処にでも出向き、貧しい人たちや病人、世間から疎んじられ軽蔑されている人、不道徳と見なされた人たちと敢えて知り合い、話し、慰めた。さらに自身の敵をも愛し、自分を裏切った者まで愛することができた人物は歴史上イエスただ一人ではないだろうか...。
しかし、そのイエスを神の子と担ぎ上げた教会や一部の信者は、イエスの意に反し、宗教の名の下に、あるいは神の名の下に殺し合いを続けてきたことは大変皮肉なことである。
ともかく「ダ・ヴィンチ・コード」などにより、これまでの伝統的なキリスト教とは異なる見方がなされてきたことは決して悪いことではないと思うが、無論「ダ・ヴィンチ・コード」というフィクションより、実際にこの世を生きたというイエス・キリストの人物像に迫る方がよっぽどスリリングで興味深い。
本書はイエスの生涯を検証し、まずはその実在を論じ、語り上手で最高の教育者でもあったと思われるイエスの思考と、話術ならびに人との接し方の技術に迫るものだ。そして筆者は「イエスは精神医学と心理学のアプローチを知っていた」と断言する。
事実本書は南米で45万部を突破するベストセラーとなった一冊だという。そしてまた多くの学校が推薦図書にしているという。
まあ、偏見を承知でいうなら、サンマーク出版の本は好きではないので(笑)、あまり読んだことはなかったが、本書は新鮮で面白かった。
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人間イエスを科学する〜キリストの心理分析
2006年5月25日 初版発行
著者:アウグスト・クリ
訳者:エハン・デラヴィ&愛知ソニア
発行:(株)サンマーク出版
書籍コード:ISBN4-7631-9646-4
定価:本体1,600円
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ことが宗教の分野...例えばキリストの奇跡とか復活の話になると科学の領域では何ともしがたい。また、無論否定や無視することはできても、それでは一歩も前に進まないし問題や疑問の解決にはならない。
しかし本書は神の子と称されたイエスではなく、肉体を持ってこの世に出現したイエスという"人間"を対象にし、その心理を探求し、生身のイエスを理解してみようという試みの本である。

本書の訳者がいうように、一般的にキリストに関する本は「信者の立場からキリストを描く」ものと「キリストや宗教を批判する立場でキリストを描く」という2種類しかない。そうした中にあって本書は無神論者であり精神科医を職業とする科学者が試みたものであり、新しいタイプのイエス像を考える一冊である。
筆者は言う。「仮にイエスが奇跡をまったく起こさなかったとしても、イエスの行動と思想はきわめて意味深く驚異的であり、人類史に新しい扉を開いたはず」と...。
ただし、根本的な文化の違いもあり、例えば私たちにイエスのいう"愛"がどのようなものなのかは正直捉えにくい部分もある。
実際、私にしても聖書を何度手にしたことか...。ただし必ず途中で挫折する。それは字面を追うことはできても、その訳文からは心に伝わってくるものがないからだ。「なぜそうなのか」と分からないことだらけなのだから飽きてしまうのも無理はない(笑)。
しかし聖書はもとよりだが、多くの資料を見ていると、イエスの実像は決して眉間に皺を寄せてばかりいる孤独で暗い人物ではないことがわかる。よく笑い、人付き合いも良く、そしてよく食べた...。ために「大食らいの大酒飲み」と反対派から悪評をいわれたほどである。さらに何処にでも出向き、貧しい人たちや病人、世間から疎んじられ軽蔑されている人、不道徳と見なされた人たちと敢えて知り合い、話し、慰めた。さらに自身の敵をも愛し、自分を裏切った者まで愛することができた人物は歴史上イエスただ一人ではないだろうか...。
しかし、そのイエスを神の子と担ぎ上げた教会や一部の信者は、イエスの意に反し、宗教の名の下に、あるいは神の名の下に殺し合いを続けてきたことは大変皮肉なことである。
ともかく「ダ・ヴィンチ・コード」などにより、これまでの伝統的なキリスト教とは異なる見方がなされてきたことは決して悪いことではないと思うが、無論「ダ・ヴィンチ・コード」というフィクションより、実際にこの世を生きたというイエス・キリストの人物像に迫る方がよっぽどスリリングで興味深い。
本書はイエスの生涯を検証し、まずはその実在を論じ、語り上手で最高の教育者でもあったと思われるイエスの思考と、話術ならびに人との接し方の技術に迫るものだ。そして筆者は「イエスは精神医学と心理学のアプローチを知っていた」と断言する。
事実本書は南米で45万部を突破するベストセラーとなった一冊だという。そしてまた多くの学校が推薦図書にしているという。
まあ、偏見を承知でいうなら、サンマーク出版の本は好きではないので(笑)、あまり読んだことはなかったが、本書は新鮮で面白かった。
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人間イエスを科学する〜キリストの心理分析
2006年5月25日 初版発行
著者:アウグスト・クリ
訳者:エハン・デラヴィ&愛知ソニア
発行:(株)サンマーク出版
書籍コード:ISBN4-7631-9646-4
定価:本体1,600円
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