素晴らしい!オイゲン・キケロ のラストレコーディング
久しぶりにオイゲン・キケロ (Eugen Cicero) のCDを2枚手に入れた。1枚は1972年に初来日した際に録音した「MY LYRICS」というアルバムだが2枚目は1997年に亡くなったことでもあり最後のレコーディングとなった1996年制作の「Swinging Piano Classics」というアルバムである。
ルーマニアのクラウンゼンブルグ出身で、クラシック音楽とジャズの融合に力を注いだピアニストであるオイゲン・キケロはいまだに幅広い人気を保っている。
ところで同じジャンルのピアニストとして並び称される人にジャック・ルーシェがいる。私は彼の音楽も大好きなのでよく聴くが、同じバッハを弾いてもその違いが明白でどちらが良い悪いではなくその違いを楽しんでいる...。
一言でその違いだが、もし演奏を採譜したとするとオイゲン・キケロの方が音符の数が断然多いに違いない(笑)。
別の言葉で表すならトリルやスケールが多用され「華麗」な演奏というのがオイゲン・キケロなのだ。対してジャック・ルーシェの演奏はあくまで比較すれば...の話しだがシンプルであり「間の芸術」とでも言ったらよいのではないかと思うほど音と音の間に主張が感じられるのだ。
そもそも音楽の喜びのひとつは同じ曲でも演奏家により違った表現となる点だから、その日の気分によってオイゲン・キケロにするかジャック・ルーシェにするかが決まる(笑)。
実はそのオイゲン・キケロのCDとして別途「MY LYRICS」というアルバムも今回一緒に手に入れたがこれは彼が1972年に初来日した際日本コロムビアのスタジオで録音したものなのだ。これは当時LPレコードとしてリリースされたものだったが昨年2010年にCD化になったものである。

私がこの「MY LYRICS」に愛着を示すのには利用がある。それはオイゲン・キケロ・トリオが1972年10月に初来日した際、私はそのコンサートに出向いていたからである。
そのコンサートではピアノの鍵盤から飛び出すようなお茶目なパフォーマンスをしたことを今でも忘れられないがその後彼のレコードやCDは入手可能なものならすべて購入するほど大好きな音楽家となった。
ただし当時はまだまだ一部でクラシックのジャズ化といったことに純粋主義の評論家たちからは下手物といった評価もあっていまひとつぱっとしなかったが、その後の彼の演奏が時代と共に大きく認知され好まれるようになったのはご承知のとおりである。
そのオイゲン・キケロは2007年12月5日に残念ながら鬼籍に入ってしまったが今般「MY LYRICS」と共に入手したCDは日本未発売の「Eugen Cicero~Swinging Piano Classics」であり1996年12月のライブを録音した彼のラストレコーディングとなったアルバムなのだ。

貴重なのはラストレコーディングというだけでなくその演奏だ。収録されている曲は Christianna’s Song、Sonata in C-Major、Fantasy & Prelude、Misty/Tea for two - Medley、Ah! Vous dirais-Je, Maman、Fantasy in D-Minor、Sunny、Autums Leaves、Badinerie、Rumanian Folksongs そして Heidschi Bumbeidschiの全11曲である。
お馴染みの曲も多いが本ライブの演奏はライブならではの即興も含め彼の持ち味が最高に出ている。私はといえば Autums Leaves (枯葉) がとても好きだ...。近年これほど素敵で華麗なジャズ・ピアノによる「枯葉」を聴いたことがない。
なお本アルバムは通例の "トリオ" 編成ではないのも特徴か...。オイゲン・キケロのピアノの他はベースのみでドラムは参加していない。
そういえば英語とドイツ語で書かれているライナーノートにオイゲン・キケロのサービス精神について興味深い記述がある。
例えば前記の曲のうちSunnyはボビー・ヘブの名曲だが、キケロの演奏にはいろいろな音楽の断片がこれでもか...というくらい織り込まれている。それらはメンデルスゾーンの「春の歌」をはじめモーツァルトの「トルコ行進曲」やベートーベンの「月光」そしてショパンの「ポロネーズ」など...。
その演奏中、ライブの場に中国政府の代表団が来ているのを知ったキケロは中国の伝統的な音階を混ぜるというサービスをしているという...。
確かに注意を向けてみると演奏開始から5分44秒あたらりから数秒間だがそれらしいメロディを織り込んでいるのがわかる。
何だか弾きながら笑みを浮かべるキケロの顔が想像できるようだ...。
私のiTunesあるいはiPhone 4は頻繁に新旧入れ替わって様々なジャンルの楽曲がインストールされるが、オイゲン・キケロのアルバムはほぼすべてが常駐している。
オイゲン・キケロは間違いないヴィルトゥオーソと呼ぶに相応しい希有な演奏家だったし長生きしてもっともっとレコーディングを残して欲しかった...。
■マイ・リリックス:オイゲン・キケロ・イン・トーキョー
■SWINGING PIANO CLASSICS
ルーマニアのクラウンゼンブルグ出身で、クラシック音楽とジャズの融合に力を注いだピアニストであるオイゲン・キケロはいまだに幅広い人気を保っている。
ところで同じジャンルのピアニストとして並び称される人にジャック・ルーシェがいる。私は彼の音楽も大好きなのでよく聴くが、同じバッハを弾いてもその違いが明白でどちらが良い悪いではなくその違いを楽しんでいる...。
一言でその違いだが、もし演奏を採譜したとするとオイゲン・キケロの方が音符の数が断然多いに違いない(笑)。
別の言葉で表すならトリルやスケールが多用され「華麗」な演奏というのがオイゲン・キケロなのだ。対してジャック・ルーシェの演奏はあくまで比較すれば...の話しだがシンプルであり「間の芸術」とでも言ったらよいのではないかと思うほど音と音の間に主張が感じられるのだ。
そもそも音楽の喜びのひとつは同じ曲でも演奏家により違った表現となる点だから、その日の気分によってオイゲン・キケロにするかジャック・ルーシェにするかが決まる(笑)。
実はそのオイゲン・キケロのCDとして別途「MY LYRICS」というアルバムも今回一緒に手に入れたがこれは彼が1972年に初来日した際日本コロムビアのスタジオで録音したものなのだ。これは当時LPレコードとしてリリースされたものだったが昨年2010年にCD化になったものである。

私がこの「MY LYRICS」に愛着を示すのには利用がある。それはオイゲン・キケロ・トリオが1972年10月に初来日した際、私はそのコンサートに出向いていたからである。
そのコンサートではピアノの鍵盤から飛び出すようなお茶目なパフォーマンスをしたことを今でも忘れられないがその後彼のレコードやCDは入手可能なものならすべて購入するほど大好きな音楽家となった。
ただし当時はまだまだ一部でクラシックのジャズ化といったことに純粋主義の評論家たちからは下手物といった評価もあっていまひとつぱっとしなかったが、その後の彼の演奏が時代と共に大きく認知され好まれるようになったのはご承知のとおりである。
そのオイゲン・キケロは2007年12月5日に残念ながら鬼籍に入ってしまったが今般「MY LYRICS」と共に入手したCDは日本未発売の「Eugen Cicero~Swinging Piano Classics」であり1996年12月のライブを録音した彼のラストレコーディングとなったアルバムなのだ。

貴重なのはラストレコーディングというだけでなくその演奏だ。収録されている曲は Christianna’s Song、Sonata in C-Major、Fantasy & Prelude、Misty/Tea for two - Medley、Ah! Vous dirais-Je, Maman、Fantasy in D-Minor、Sunny、Autums Leaves、Badinerie、Rumanian Folksongs そして Heidschi Bumbeidschiの全11曲である。
お馴染みの曲も多いが本ライブの演奏はライブならではの即興も含め彼の持ち味が最高に出ている。私はといえば Autums Leaves (枯葉) がとても好きだ...。近年これほど素敵で華麗なジャズ・ピアノによる「枯葉」を聴いたことがない。
なお本アルバムは通例の "トリオ" 編成ではないのも特徴か...。オイゲン・キケロのピアノの他はベースのみでドラムは参加していない。
そういえば英語とドイツ語で書かれているライナーノートにオイゲン・キケロのサービス精神について興味深い記述がある。
例えば前記の曲のうちSunnyはボビー・ヘブの名曲だが、キケロの演奏にはいろいろな音楽の断片がこれでもか...というくらい織り込まれている。それらはメンデルスゾーンの「春の歌」をはじめモーツァルトの「トルコ行進曲」やベートーベンの「月光」そしてショパンの「ポロネーズ」など...。
その演奏中、ライブの場に中国政府の代表団が来ているのを知ったキケロは中国の伝統的な音階を混ぜるというサービスをしているという...。
確かに注意を向けてみると演奏開始から5分44秒あたらりから数秒間だがそれらしいメロディを織り込んでいるのがわかる。
何だか弾きながら笑みを浮かべるキケロの顔が想像できるようだ...。
私のiTunesあるいはiPhone 4は頻繁に新旧入れ替わって様々なジャンルの楽曲がインストールされるが、オイゲン・キケロのアルバムはほぼすべてが常駐している。
オイゲン・キケロは間違いないヴィルトゥオーソと呼ぶに相応しい希有な演奏家だったし長生きしてもっともっとレコーディングを残して欲しかった...。
■マイ・リリックス:オイゲン・キケロ・イン・トーキョー
■SWINGING PIANO CLASSICS
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