イダ・プレスティ初期録音集「THE ART OF IDA PRESTI」入手
クラシックギター愛好家でイダ・プレスティを知らない人は...まさかいないだろう。結婚後夫のアレクサンドル・ラゴヤとの二重奏で一世を風靡したギター演奏家である。若い頃のプレスティは大変な美人だっただけでなく超絶技巧とその高い音楽性で人気を博した。今般その神童と謳われた彼女の少女時代の録音が手に入ったのである。
近年の演奏家の中には美しい女性ギタリストやそれこそ超絶技巧を売り物にする演奏家もいるが、イダ・プレスティは私にとって群を抜いたクラシックギターの女神であった。
イダ・プレスティ(Ida Presti)は1924年、フランス人のピアノ教師だった父とインド生まれの母との間にフランス北部シュレンヌで生まれる。6歳でギターを始めたが神童として少女時代を過ごし8歳の時には早くも最初の独奏会を開いたという。女性云々といった事を別にしても20世紀屈指のギタリストと評価が高くまさしく天才のひとりだった。
とはいえ彼女のソロ演奏の動画はなかなか見る機会がないものの以下ヴィラロボスのプレリュードを演奏する姿は大変画質が悪いが屈指の名手であったことを垣間見せてくれる。
※ヴィラロボスのプレリュードを演奏する若きイダ・プレスティの姿!使用ギターは画質が悪くて判明しないがロベール・ブーシェのように思える
1955年にエジプト出身のギタリスト、アレクサンドル・ラゴヤと結婚してからは「プレスティ&ラゴヤ」としてデュオで活躍したが大きな衝撃と喝采を持って受け入れられ最も成功したギターデュオとなり2000回ものコンサートを行ったと言う。しかし残念なことにプレスティは43歳になる直前の1967年、肺癌の合併症が元でアメリカのロチェスターで客死した…。
今回手に入れたCDはイタリアでプレスされたものだが販売されていたのを知りオーダーした次第。最近は特に情報が少なくなったプレスティだが、特にソロ演奏を集めた一枚だというので興味を持って聴き入った。
なにしろ冒頭の10曲は、プレスティが14~15歳の頃に録音されたもので、録音状態は決してよくないものの間違いなく天才の輝きが眩い。
さらに1950年代のテレビ放送用に録音されたらしいヴィラ・ロボス。そして風格が漂う30代の演奏5曲が収録されている。

※イダ・プレスティ初期録音集「THE ART OF IDA PRESTI」
曲目をリストアップしてみると、1938年の録音でド・ヴィゼー:組曲ニ短調よりメヌエット、ブーレ、メヌエット、ガヴォット/バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009よりクーラント/パガニーニ:ロマンス・イ短調/アルベニス:入江のざわめき/マラッツ:スペイン風セレナータ/フォルテア:アンダルーサ/M=トローバ:ソナティナ・イ長調よりアレグロ。1950年代録音でヴィラ=ロボス:前奏曲第1番ホ短調。そして1956年の録音としてソル:アンダンテ・ラルゴOp.5-5/プジョール:グアヒラ/ラゴヤ:夢、カプリス/バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第2番BWV1003よりアンダンテが収録。
1938年代の録音はかなり状態が悪いが「バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009よりクーラント」ひとつをとっても少女の演奏とは思えない安定感というか風格を感じさせる。また「パガニーニ:ロマンス・イ短調」は難曲なはずだが少女らしいロマンティックな香りが漂う演奏に思える一方、スペイン物である「アルベニス:入江のざわめき」や「マラッツ:スペイン風セレナータ」は正統的な演奏だ。特にマラッツの譜はアンドレス・セゴヴィア編を使っているのか今風の演奏ではないが非常にダイナミックである。さらに1956年の録音には前年に結婚した夫、アレクサンドラ・ラゴヤの曲が2曲演奏されているのも興味深い。
クラシックギターおよびフラメンコギターを愛する1人としてこれまで多くの演奏家に接してきたしアンドレス・セゴヴィアやナルシソ・イエペスなどの演奏を生で聴く機会を得た。そしてギター関係だけでも百数十枚のCDを持ってはいるが、その中でも「IDA PRESTI & ALEXANDRE LAGOYA」CD三枚組は私のささやかな宝物のひとつである。

※CD三枚組「IDA PRESTI & ALEXANDRE LAGOYA」
とにかくギター二重奏はソロより多くはないものの例えばジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスのようにそれぞれが優れたソリストであるにも関わらず、二重奏の録音を残しているケースもあるし確かにその演奏も凄いが、私にはプレスティ&ラゴヤ以上のギター二重奏はあり得ないのである。
「ギターのソロは美しい。しかし2つのギター演奏はさらに美しい」というのはショパンの言葉だそうだが、まさしくプレスティ&ラゴヤの演奏は類を見ない気品と高い音楽性を感じさせ、何度聞いても飽きさせない。
本アーティクルを書くため久しぶりに「IDA PRESTI & ALEXANDRE LAGOYA」を聴いてみたが、プレスティ&ラゴヤの「English Suite 3 G min. BWV 808」ほど格調が高くワクワクするギターによるバッハのイギリス組曲は知らないし、プレスティ&ラゴヤ以上に美しいギター二重奏によるグラナドス「Danza Espanola opus 37 No.2 (オリエンタル)」は聴いたことがない。
すでに数え切れないほど聴いているはずのanza Espanola opus 37 No.2 (オリエンタル)」ですら目を閉じて聴き入れば何故か目頭が熱くなるほど感動ものである。
なおアレクサンドル・ラゴヤも1999年に没している。
■Art of Ida Presti
近年の演奏家の中には美しい女性ギタリストやそれこそ超絶技巧を売り物にする演奏家もいるが、イダ・プレスティは私にとって群を抜いたクラシックギターの女神であった。
イダ・プレスティ(Ida Presti)は1924年、フランス人のピアノ教師だった父とインド生まれの母との間にフランス北部シュレンヌで生まれる。6歳でギターを始めたが神童として少女時代を過ごし8歳の時には早くも最初の独奏会を開いたという。女性云々といった事を別にしても20世紀屈指のギタリストと評価が高くまさしく天才のひとりだった。
とはいえ彼女のソロ演奏の動画はなかなか見る機会がないものの以下ヴィラロボスのプレリュードを演奏する姿は大変画質が悪いが屈指の名手であったことを垣間見せてくれる。
※ヴィラロボスのプレリュードを演奏する若きイダ・プレスティの姿!使用ギターは画質が悪くて判明しないがロベール・ブーシェのように思える
1955年にエジプト出身のギタリスト、アレクサンドル・ラゴヤと結婚してからは「プレスティ&ラゴヤ」としてデュオで活躍したが大きな衝撃と喝采を持って受け入れられ最も成功したギターデュオとなり2000回ものコンサートを行ったと言う。しかし残念なことにプレスティは43歳になる直前の1967年、肺癌の合併症が元でアメリカのロチェスターで客死した…。
今回手に入れたCDはイタリアでプレスされたものだが販売されていたのを知りオーダーした次第。最近は特に情報が少なくなったプレスティだが、特にソロ演奏を集めた一枚だというので興味を持って聴き入った。
なにしろ冒頭の10曲は、プレスティが14~15歳の頃に録音されたもので、録音状態は決してよくないものの間違いなく天才の輝きが眩い。
さらに1950年代のテレビ放送用に録音されたらしいヴィラ・ロボス。そして風格が漂う30代の演奏5曲が収録されている。

※イダ・プレスティ初期録音集「THE ART OF IDA PRESTI」
曲目をリストアップしてみると、1938年の録音でド・ヴィゼー:組曲ニ短調よりメヌエット、ブーレ、メヌエット、ガヴォット/バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009よりクーラント/パガニーニ:ロマンス・イ短調/アルベニス:入江のざわめき/マラッツ:スペイン風セレナータ/フォルテア:アンダルーサ/M=トローバ:ソナティナ・イ長調よりアレグロ。1950年代録音でヴィラ=ロボス:前奏曲第1番ホ短調。そして1956年の録音としてソル:アンダンテ・ラルゴOp.5-5/プジョール:グアヒラ/ラゴヤ:夢、カプリス/バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第2番BWV1003よりアンダンテが収録。
1938年代の録音はかなり状態が悪いが「バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009よりクーラント」ひとつをとっても少女の演奏とは思えない安定感というか風格を感じさせる。また「パガニーニ:ロマンス・イ短調」は難曲なはずだが少女らしいロマンティックな香りが漂う演奏に思える一方、スペイン物である「アルベニス:入江のざわめき」や「マラッツ:スペイン風セレナータ」は正統的な演奏だ。特にマラッツの譜はアンドレス・セゴヴィア編を使っているのか今風の演奏ではないが非常にダイナミックである。さらに1956年の録音には前年に結婚した夫、アレクサンドラ・ラゴヤの曲が2曲演奏されているのも興味深い。
クラシックギターおよびフラメンコギターを愛する1人としてこれまで多くの演奏家に接してきたしアンドレス・セゴヴィアやナルシソ・イエペスなどの演奏を生で聴く機会を得た。そしてギター関係だけでも百数十枚のCDを持ってはいるが、その中でも「IDA PRESTI & ALEXANDRE LAGOYA」CD三枚組は私のささやかな宝物のひとつである。

※CD三枚組「IDA PRESTI & ALEXANDRE LAGOYA」
とにかくギター二重奏はソロより多くはないものの例えばジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスのようにそれぞれが優れたソリストであるにも関わらず、二重奏の録音を残しているケースもあるし確かにその演奏も凄いが、私にはプレスティ&ラゴヤ以上のギター二重奏はあり得ないのである。
「ギターのソロは美しい。しかし2つのギター演奏はさらに美しい」というのはショパンの言葉だそうだが、まさしくプレスティ&ラゴヤの演奏は類を見ない気品と高い音楽性を感じさせ、何度聞いても飽きさせない。
本アーティクルを書くため久しぶりに「IDA PRESTI & ALEXANDRE LAGOYA」を聴いてみたが、プレスティ&ラゴヤの「English Suite 3 G min. BWV 808」ほど格調が高くワクワクするギターによるバッハのイギリス組曲は知らないし、プレスティ&ラゴヤ以上に美しいギター二重奏によるグラナドス「Danza Espanola opus 37 No.2 (オリエンタル)」は聴いたことがない。
すでに数え切れないほど聴いているはずのanza Espanola opus 37 No.2 (オリエンタル)」ですら目を閉じて聴き入れば何故か目頭が熱くなるほど感動ものである。
なおアレクサンドル・ラゴヤも1999年に没している。
■Art of Ida Presti
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