あなたは童謡「風」という歌を知ってますか?
50数年も前の小学校低学年のときの記憶だなんてそうそう覚えているはずもない…。それも身近な兄妹や父母との思い出ならともかく学校であったほんのささやかなシーンをなぜか鮮明に記憶している。それは音楽の授業のとき若い女の先生は「皆の好きな歌を一曲ずつ歌ってください」ということになった…。
ひとりずつ歌を歌い、先生がオルガンで伴奏をしてくれた。しかし同級生たちがどのような歌を歌ったのかについてはまったく記憶が無い(笑)。
私の番がきた。幼少の頃、私は声変わりまでボーイズソプラノで歌は上手だと言われていた。無論子供だから童謡とかラジオドラマの主題歌といったものがほとんどだったはずだ。しかし「かけちゃいけない 他人の花に 情かけたが 身のさだめ〜」と春日八郎が歌う歌謡曲「お富さん」の一節を歌い、母に「そんな歌は子供が歌ってはいけません」と叱られたこともあった。
本題は「お富さん」が流行った昭和29年より数年先のことだった…。
さて私の番になったとき「風」という母に教わった歌を得意のボーイズソプラノで歌ったが、どうしたことか先生は私の歌だけオルガンの伴奏をしてくれなかった。
後で考えれば先生は知らなかったのだろうが、子供心にとても寂しく不信感で一杯だった。「なぜ先生は僕の歌に伴奏してくれなかったのか」と。だから今でもその時のことを覚えている訳で…不思議なものだ。
大人になり、社会に出たときに何かのきっかけで同僚たちとそんな話になった…。酒の席だったと思うが皆が「どんな歌?」というので私はその一節を歌ってみた。
誰が風を見たでしょう?
ぼくもあなたも見やしない、
けれど木の葉をふるわせて
風はとおりぬけてゆく。
誰が風を見たでしょう?
あなたもぼくも見やしない、
けれど樹立(こだち)が頭をさげて
風は通りすぎてゆく
不思議なもので普段口ずさんでいるわけではないが、幼少の頃にすり込まれた歌は歌詞を含めて忘れないのである。
しかしそこにいた十数人の同僚たちは一人もその歌を知らなかった。
もしかしたらこの歌は母の創作ではないか?と疑ったこともあった。なぜなら母には私にそう思わせる前科があったのだ(笑)。
実はクリスマスの時期に「サンタクロース」という歌を母に教わった。これは未就学時代だったと思われる…。
サンタクロースのお爺さん
良い子に お土産 あげましょう
良い子はどこどこだ どこにいる
良い子に お土産 どっさりどっさり あげよう
こんな歌だったが、これは知ってる人などいるはずはない。なぜならこれこそ母の100% 口から出任せの歌だったからだ。しかし子供にとって母親は絶対である。母は私を幼稚園に行かせない代わりに少しでも何かを教えようと努力したのかも知れないが、近所の女の子とままごとして遊べば「ままごとの歌」といったいい加減な歌を歌いながら遊んでくれた母だったことでもあり子供はすぐにそれを覚えてしまう。
この歌もやはりクリスマスの時期に友達とその親たちの前で得意げに歌ったとき、誰もこの歌を知らないという子供心に寂しい瞬間に遭遇したことがあった。
家に帰り母に「サンタクロースの歌を歌ったけど誰も知らなかった」と愚痴ったら、母は「やだねぇこの子は…そんな歌...人前で歌うモンじゃあないよ」と大笑いしていたことがあったのだ。
しかし「風」という歌の歌詞やメロディの美しさは「サンタクロース」とはまったくレベルが違うし母の創作であるとも思えなかった。
その後、さすがに忘れてしまっていたが先日になってその歌は実在すること、そして詩はあの西條八十の手になるもので大正10年に草川信が曲を付けた作品だったことが分かった。さらにその歌詞は西條八十の訳詞であり、そもそもはイギリス、ヴィクトリア朝女流詩人 Christina Rossetti (クリスティーナ・ロセッティ)1830~1894 の詩であったことも判明した。ちなみに兄は19世紀のイギリスの画家・詩人として知られるダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti,)。
譜はここで見つけたが、別途YouTubeに紹介されていることを教えていただいたのでご存じなかった方は是非聴いてみていただきたい。
しかしこの歳になり50数年も経って解決することがいまだにあることに私自身が驚いている(笑)。
ひとりずつ歌を歌い、先生がオルガンで伴奏をしてくれた。しかし同級生たちがどのような歌を歌ったのかについてはまったく記憶が無い(笑)。
私の番がきた。幼少の頃、私は声変わりまでボーイズソプラノで歌は上手だと言われていた。無論子供だから童謡とかラジオドラマの主題歌といったものがほとんどだったはずだ。しかし「かけちゃいけない 他人の花に 情かけたが 身のさだめ〜」と春日八郎が歌う歌謡曲「お富さん」の一節を歌い、母に「そんな歌は子供が歌ってはいけません」と叱られたこともあった。
本題は「お富さん」が流行った昭和29年より数年先のことだった…。
さて私の番になったとき「風」という母に教わった歌を得意のボーイズソプラノで歌ったが、どうしたことか先生は私の歌だけオルガンの伴奏をしてくれなかった。
後で考えれば先生は知らなかったのだろうが、子供心にとても寂しく不信感で一杯だった。「なぜ先生は僕の歌に伴奏してくれなかったのか」と。だから今でもその時のことを覚えている訳で…不思議なものだ。
大人になり、社会に出たときに何かのきっかけで同僚たちとそんな話になった…。酒の席だったと思うが皆が「どんな歌?」というので私はその一節を歌ってみた。
誰が風を見たでしょう?
ぼくもあなたも見やしない、
けれど木の葉をふるわせて
風はとおりぬけてゆく。
誰が風を見たでしょう?
あなたもぼくも見やしない、
けれど樹立(こだち)が頭をさげて
風は通りすぎてゆく
不思議なもので普段口ずさんでいるわけではないが、幼少の頃にすり込まれた歌は歌詞を含めて忘れないのである。
しかしそこにいた十数人の同僚たちは一人もその歌を知らなかった。
もしかしたらこの歌は母の創作ではないか?と疑ったこともあった。なぜなら母には私にそう思わせる前科があったのだ(笑)。
実はクリスマスの時期に「サンタクロース」という歌を母に教わった。これは未就学時代だったと思われる…。
サンタクロースのお爺さん
良い子に お土産 あげましょう
良い子はどこどこだ どこにいる
良い子に お土産 どっさりどっさり あげよう
こんな歌だったが、これは知ってる人などいるはずはない。なぜならこれこそ母の100% 口から出任せの歌だったからだ。しかし子供にとって母親は絶対である。母は私を幼稚園に行かせない代わりに少しでも何かを教えようと努力したのかも知れないが、近所の女の子とままごとして遊べば「ままごとの歌」といったいい加減な歌を歌いながら遊んでくれた母だったことでもあり子供はすぐにそれを覚えてしまう。
この歌もやはりクリスマスの時期に友達とその親たちの前で得意げに歌ったとき、誰もこの歌を知らないという子供心に寂しい瞬間に遭遇したことがあった。
家に帰り母に「サンタクロースの歌を歌ったけど誰も知らなかった」と愚痴ったら、母は「やだねぇこの子は…そんな歌...人前で歌うモンじゃあないよ」と大笑いしていたことがあったのだ。
しかし「風」という歌の歌詞やメロディの美しさは「サンタクロース」とはまったくレベルが違うし母の創作であるとも思えなかった。
その後、さすがに忘れてしまっていたが先日になってその歌は実在すること、そして詩はあの西條八十の手になるもので大正10年に草川信が曲を付けた作品だったことが分かった。さらにその歌詞は西條八十の訳詞であり、そもそもはイギリス、ヴィクトリア朝女流詩人 Christina Rossetti (クリスティーナ・ロセッティ)1830~1894 の詩であったことも判明した。ちなみに兄は19世紀のイギリスの画家・詩人として知られるダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti,)。
譜はここで見つけたが、別途YouTubeに紹介されていることを教えていただいたのでご存じなかった方は是非聴いてみていただきたい。
しかしこの歳になり50数年も経って解決することがいまだにあることに私自身が驚いている(笑)。
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