ルイス・ミランの譜本 ' El maestro ' ファクシミリ版入手
先般、ルイス・ミラン(Luis de Milán)など歴史的な7人が16 世紀に出版した譜本を一枚のCD-ROMに収めた「LIBROS DE MVSICA PARA Vihuela 1536-1576」を手に入れて楽しんできたが、実用レベルな点では問題ないものの好奇心は増すばかりで本物の譜本を見てみたい願望がわき起こる。しかしこればかりはどうにもならないわけで、それならばとオリジナルサイズのファクシミリ版があると知り、早速スペイン/マドリッドのショップへ注文した…。
発送から6日目にその品物は無事に届き一安心したが、ここでも電子書籍類に馴染めない自分の気質を自覚することになる…(笑)。やはり自分にとってお気に入りのアイテムは手に取り、なるべくバーチャルでないあるべき姿を目にすることがいかに大切かを思い知らされる。
このビウエラのための譜本' El maestro ' はポルトガル国王ジョアン3世に献呈されたもので正式には ‘Libro de música de vihuela de mano intitulado El maestro’ というが、ルイス・ミランが1536年に出版した史上初めてのビウエラ譜本なのである。

※ルイス・ミランが1536年に出版した‘Libro de música de vihuela de mano intitulado El maestro’ ファクシミリ版
ルイス・デ・ミランの生涯はあまり明らかにはなっていないが、1500年頃に誕生したスペインルネサンス期の宮廷人であり、作曲家兼ビウエラ奏者として知られている人物だ。
西川和子著「ギター前史・ビウエラ七人衆~スペイン宮廷士物語」によれば、何といってもこのミランが重要なのだという。何故ならこのバレンシア人のミランこそがスペインで最初のビウエラ譜本を出版した人物であり、歴史を追うならミランからビウエラの歴史は始まることになるからだという。それに16世紀の音楽は現在のそれとは全く違う価値観のもとにあったとはいえ、7人のビウエリスタたちの中でミランだけが作品全てがオリジナル曲だというのも驚きだった。
機会があればビウエラ七人衆の他の人たちの譜本も手に入れたいものだが、やはりミランの譜本を抜かすわけにはいかないわけだ(笑)。

※冒頭にはスペイン語による解説もある
さてマドリッドから届いたばかりのファクシミリ版 (以後 R/14752コピー と記す) を手にしてパラパラとページをめくっていたとき気がついたことがある…。ただしこれからご紹介することはスペイン語も読めず、そしてこのミランの譜本そのもののについても学術的に勉強したわけではない素人の弁だということを念頭に入れていただきたい。したがって大いなる勘違いや致命的な間違いもあるかも知れないのでその点はお許しいただきたいと同時に間違いはご教授いただきたい…。
話を戻すが、R/14752コピーはさすがにリアリティがある。滲みや書き込みといったものは勿論、裏ページの映り込みといったものまで各ページに繁栄されているからだ。そしてCD-ROM版から高画質でプリントしたものより格段に見やすいことも事実だ。
私が「おやっ?」と思ったのは先だってCD-ROM版を眺め、その一部を印刷したりして楽しんでいたからに他ならない。しかしそのCD-ROM版の解説にしてもスペイン語が分からないことからほとんど眼を通さず、ただひたすらCD-ROMに収録されている譜本の各ページを追っているだけなのだからその構成や注意事項などに関しても理解しているとはいえない。
それを承知の上ではあるが、今般入手できたR/14752コピーを見ていたときCD-ROM版ページ構成がモノクロの部分とカラーの部分があるのか…についてあらためて理解できたのである(笑)。

※カラーはやはり見やすいし説得力がある
それは譜本の中に墨一色ではなく赤色で印刷された部位を持つページがある。それは歌とビウエラのために書かれた譜で赤の記述は歌のメロディラインを示すものらしいが、これを単色で処理すればビウエラの運指と区別がしづらくなる。したがってそれを明確にするため赤色の部位があるページはカラーでデジタル化し、墨一色のページはモノクロでデジタル化したということに気がついた。無論これはデータ容量を軽減するための処置と思われる。
またCD-ROM版の各ページとR/14752コピーを参照してみた結果、ソース…すなわち原本が違うことにも気がついた。
考えれば貴重なミランの譜本原本とはいえ現存しているのものが一冊とは限らないわけで、CD-ROMで使われたものとオールカラーの原寸でR/14752コピーとして手に入れたものは書き込みや汚れの位置、あるいはスタンプの有無などに違いがあるのだ。
この原寸大サイズ(290×200mm)のR/14752コピーはマドリッド国立図書館が所蔵しているものの複製だというが、CD-ROMで使われたものとは明らかに違うようだ。

※譜本' El maestro 'の有名な扉絵
一番驚いたのはCD-ROM版はすべてのページが収録されているものと考えていたが、比較して見ると今回手に入れたR/14752コピーと比較してかなりページが少ないことに気がづいた…。

※この解説ページから始まる5ページは前記CD-ROM版には見つからない
例えばR/14752コピーを基本に比較して見ると、まず扉絵などイントロダクションの後に続く5から9ページのビウエラの基本的解説部がCD-ROM版の “Obra complete (総てを含むはず)” のリストにないのだ。そればかりでなくR/14752コピーの12ページからタブ譜が始まるが、その Fantasia I の譜後半の13ページ…43小節目からがCD-ROM版にはないのである…。こうした違いが随所にあるのだが、どのような秘密があるのだろうか(笑)。

※最初のタブ譜 ファンタジア I の右ページがやはりCD-ROM版にはない
CD-ROM版はもともとそうしたコンセプトだったのか、なぜそうなのかについて私は知識がないので分からないが単に一部をはしょったとするなら楽譜としても資料としても致命的な問題だと思うのだが…。当初私が求めたCD-ROMだけが何らかのエラーで一部が表示できていないということなのかと思ったが、どうもそうではないらしいし私のオペレーションミスでもないはずだ。それともこのことは周知の問題なのだろうか。
ともあれ理由はともかくこの問題一点を考えても今回R/14752コピーを手に入れた甲斐があったというものだ。そしてプロのビウエラ演奏を聴きながら、R/14752コピーを開き、対応するタブラチュア譜を追っている一時はまさしく至福のひとときなのである。
■Sociedad de la Vihuela, el Laúd y la Guitarra
発送から6日目にその品物は無事に届き一安心したが、ここでも電子書籍類に馴染めない自分の気質を自覚することになる…(笑)。やはり自分にとってお気に入りのアイテムは手に取り、なるべくバーチャルでないあるべき姿を目にすることがいかに大切かを思い知らされる。
このビウエラのための譜本' El maestro ' はポルトガル国王ジョアン3世に献呈されたもので正式には ‘Libro de música de vihuela de mano intitulado El maestro’ というが、ルイス・ミランが1536年に出版した史上初めてのビウエラ譜本なのである。

※ルイス・ミランが1536年に出版した‘Libro de música de vihuela de mano intitulado El maestro’ ファクシミリ版
ルイス・デ・ミランの生涯はあまり明らかにはなっていないが、1500年頃に誕生したスペインルネサンス期の宮廷人であり、作曲家兼ビウエラ奏者として知られている人物だ。
西川和子著「ギター前史・ビウエラ七人衆~スペイン宮廷士物語」によれば、何といってもこのミランが重要なのだという。何故ならこのバレンシア人のミランこそがスペインで最初のビウエラ譜本を出版した人物であり、歴史を追うならミランからビウエラの歴史は始まることになるからだという。それに16世紀の音楽は現在のそれとは全く違う価値観のもとにあったとはいえ、7人のビウエリスタたちの中でミランだけが作品全てがオリジナル曲だというのも驚きだった。
機会があればビウエラ七人衆の他の人たちの譜本も手に入れたいものだが、やはりミランの譜本を抜かすわけにはいかないわけだ(笑)。

※冒頭にはスペイン語による解説もある
さてマドリッドから届いたばかりのファクシミリ版 (以後 R/14752コピー と記す) を手にしてパラパラとページをめくっていたとき気がついたことがある…。ただしこれからご紹介することはスペイン語も読めず、そしてこのミランの譜本そのもののについても学術的に勉強したわけではない素人の弁だということを念頭に入れていただきたい。したがって大いなる勘違いや致命的な間違いもあるかも知れないのでその点はお許しいただきたいと同時に間違いはご教授いただきたい…。
話を戻すが、R/14752コピーはさすがにリアリティがある。滲みや書き込みといったものは勿論、裏ページの映り込みといったものまで各ページに繁栄されているからだ。そしてCD-ROM版から高画質でプリントしたものより格段に見やすいことも事実だ。
私が「おやっ?」と思ったのは先だってCD-ROM版を眺め、その一部を印刷したりして楽しんでいたからに他ならない。しかしそのCD-ROM版の解説にしてもスペイン語が分からないことからほとんど眼を通さず、ただひたすらCD-ROMに収録されている譜本の各ページを追っているだけなのだからその構成や注意事項などに関しても理解しているとはいえない。
それを承知の上ではあるが、今般入手できたR/14752コピーを見ていたときCD-ROM版ページ構成がモノクロの部分とカラーの部分があるのか…についてあらためて理解できたのである(笑)。

※カラーはやはり見やすいし説得力がある
それは譜本の中に墨一色ではなく赤色で印刷された部位を持つページがある。それは歌とビウエラのために書かれた譜で赤の記述は歌のメロディラインを示すものらしいが、これを単色で処理すればビウエラの運指と区別がしづらくなる。したがってそれを明確にするため赤色の部位があるページはカラーでデジタル化し、墨一色のページはモノクロでデジタル化したということに気がついた。無論これはデータ容量を軽減するための処置と思われる。
またCD-ROM版の各ページとR/14752コピーを参照してみた結果、ソース…すなわち原本が違うことにも気がついた。
考えれば貴重なミランの譜本原本とはいえ現存しているのものが一冊とは限らないわけで、CD-ROMで使われたものとオールカラーの原寸でR/14752コピーとして手に入れたものは書き込みや汚れの位置、あるいはスタンプの有無などに違いがあるのだ。
この原寸大サイズ(290×200mm)のR/14752コピーはマドリッド国立図書館が所蔵しているものの複製だというが、CD-ROMで使われたものとは明らかに違うようだ。

※譜本' El maestro 'の有名な扉絵
一番驚いたのはCD-ROM版はすべてのページが収録されているものと考えていたが、比較して見ると今回手に入れたR/14752コピーと比較してかなりページが少ないことに気がづいた…。

※この解説ページから始まる5ページは前記CD-ROM版には見つからない
例えばR/14752コピーを基本に比較して見ると、まず扉絵などイントロダクションの後に続く5から9ページのビウエラの基本的解説部がCD-ROM版の “Obra complete (総てを含むはず)” のリストにないのだ。そればかりでなくR/14752コピーの12ページからタブ譜が始まるが、その Fantasia I の譜後半の13ページ…43小節目からがCD-ROM版にはないのである…。こうした違いが随所にあるのだが、どのような秘密があるのだろうか(笑)。

※最初のタブ譜 ファンタジア I の右ページがやはりCD-ROM版にはない
CD-ROM版はもともとそうしたコンセプトだったのか、なぜそうなのかについて私は知識がないので分からないが単に一部をはしょったとするなら楽譜としても資料としても致命的な問題だと思うのだが…。当初私が求めたCD-ROMだけが何らかのエラーで一部が表示できていないということなのかと思ったが、どうもそうではないらしいし私のオペレーションミスでもないはずだ。それともこのことは周知の問題なのだろうか。
ともあれ理由はともかくこの問題一点を考えても今回R/14752コピーを手に入れた甲斐があったというものだ。そしてプロのビウエラ演奏を聴きながら、R/14752コピーを開き、対応するタブラチュア譜を追っている一時はまさしく至福のひとときなのである。
■Sociedad de la Vihuela, el Laúd y la Guitarra
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