スティーブ・ジョブズ氏に手紙を出したらどうなるか?
最近のニュースに、9歳の女の子がスティーブ・ジョブズ氏宛てにiPodに関する提案の手紙を書いたもののその返事は法務部からのもので「余計なおせっかい」と決めつける文面だったという。実は私も以前ジョブズ氏に親展で手紙を出したことがある!
Appleならずとも企業には毎日多くの郵便物が届く。無論電子メールも...。そしてその多くは正直いって企業にとってはあまり意味のない、まともに対峙するのは単に時間の浪費としか考えられないものも多いのである。
私の経営していたマイクロ企業でもそうなのだからAppleおよびその最高責任者であるスティーブ・ジョブズ氏個人に当てた手紙やメールが膨大なものであることは想像できるしその処理が大変なことは理解できる。ましてやそのひとつひとつにジョブズ氏が目を通しているとは思えないし物理的に不可能だろう。
今回のニュースは手紙を出した相手が9歳の女の子であったことをAppleが認識できなかったことから生じた不幸な一例だ。無論Appleのやり口は相手が子供でなくても気を悪くする受け答えであり企業イメージを失いかけない失態だが、コーポレートポリシーとしては一種の自動返信的な定型句の反応をしただけと思われる。
問題はこうだ...。
ある人から新機能などの提案があったとする。その事実を認識しつつ別の選択肢からであってもその機能を新製品に実装した場合、提案者側が特許申請をしているかどうかはともかくアイデアの盗用と訴えられる場合があり得る。だから企業側としては慎重にならざるを得ない。
とはいえ、今回の提案者がもし私だったら当然のこととしてニュースにもならないだろう(笑)。
実は数年前、私もスティーブ・ジョブズ氏に直接手紙を出したことがあるのだ!
僭越ながら長い間のAppleユーザーとしてだけでなくアップルのデベロッパーとして活動していたその中で多くの矛盾点に行き当たった。約束事もあっという間に人が代わり後任者にはまったく引き継ぎがなかったり、米国本社から来る責任者たちにしても皆日本市場を大変重要だとリップサービスばかり繰り返すだけで実際の仕組みを作れないことに大きなフラストレーションを感じていた。
無論それまでにも当時のアップルには機会があるごとに多くの提言もしてきたし苦情も申し上げたが一向に具体的な成果として見える形にはならなかった。
ある時ある人に言われた。「外資系企業は本社に直訴しないとダメだよ」と...。
それならダメもとで最高責任者であるスティーブ・ジョブズ氏に直訴してみようと決心したのである(^_^;)。無論現役のデベロッパーの社長としては勇気のいることだ。誰も好んで嫌われるようなことは言いたくないが、また何か行動を起こさなければ何も変わらない。ただただ愚痴を言っているだけでは進歩もない...。
ともかく文面を考えるのに一週間もかかったが、日本の市場性やデベロッパーの実情、そして問題点や提案ならびに苦情を簡素に表現するのは簡単ではなかったからだ。そしてその和文を顧問弁護士事務所に持ち込み、きちんと英訳していただいた。
ただし郵送に際して途中で紛失などもあり得るし、確実な方法をと考えて郵便物の経過を確認できる配達証明付きとした。したがってAppleには間違いなくこの郵便物は届くはずだ...。
無論ジョブズ氏から直接返事が来るなどと言うことは期待していなかった私はあらかじめ以下3つの展開を予測していた(笑)。
1.なしのつぶて
2.内容はともかく何らかの返事が届く
3.アップルコンピュータに内容が回る
数日後に郵便物の追跡をやって苦笑した。インターネット上で確認ができるわけだがどうした理由か、その封書はAppleに受理されずに配達場所に持ち帰られたとある...。
ちょっと心配になったが翌日再度確認してみると今度は間違いなくApple Computer社に配送済みという結果になった。ともかく届いたのだ。
さてその後、どれほどの日数が経過したのか記憶にないが前記した3つの展開のうち、やはりというべきか...私の予測が当たった...。なぜならアップルのデベロッパーリレーションズから電話が入ったのである(笑)。「本社に手紙を出された件でお話しをしたい」と。 私は苦笑いしながら東京オペラシティタワーにあったアップルジャパンを訪ねた…。
その可能性が高いことを予知していたからこそ、本来はもう少し日本市場を牛耳るアップルコンピュータ社に対して厳しい指摘をすべき点も少々言い方に工夫したつもりなのだ(笑)。
当時は社長が原田さんでそのワールドワイドデベロッパー直属の部長がHさんであった時代だが口には出さないもののアップルにとっては大変迷惑なことだったに違いない。たぶん本社側から「日本市場に関しての苦情はおまえ達で処理しろ」あるいは「こんな苦情を本社にまで出させるな」といったクレームがあったに違いないと私は睨んでいる...(笑)。
>

※東京オペラシティタワーにあったアップルジャパンのオフィス
結局その部長と2時間以上も話し合いをしたが、そもそも彼らの裁量で結論が出る問題ではない。「お互い頑張りましょう」で終わらざるを得ないではないか...。
そして全体の話を総合的に判断するなら私の手紙はスティーブ・ジョブズ氏本人の目に触れることはなかったと思われる。
しかし私は「日本のデベロッパにも五月蠅いのがいる...」。また機会があればいつでも直訴するぞ...という認識が少しでも伝われば一矢報いたことになるのではないかと考えたものだ。ともかくやるべきことはやったのだ。
申し上げたいことは時代は違うもののデベロッパーからの手紙すらジョブズ氏の目に届かないとすれば一人のユーザーの手紙など通常届くことはあり得ないだろう。企業としてその内容はともかく返事を出したそれ自体はAppleのリーガルポリシーに沿った自動返信的なメールと考えるべきであり、企業としての機能がきちんと働いているというべきなのかも知れない。
しかしこれがIBMとかSONYだったらこんなにニュース報道されるとは思わない。そこがAppleの凄さであり弱みでもある。ただし誤解があっては困るが今回の対応を当然のことだと申し上げているのではない。Appleだからこそニュースになってしまうという難しさを含んでいると思うだけだ。
Appleでは今回の反省に立って子供達からの問い合わせに対応する際のコーポレートポリシーを修正する方法を話し合ったとされるが正直これは大変難しい問題だ...。
もし子供の手紙(メール)のケースに限り真摯に対応してくれると言うのなら、私は子供のスタイルでもう一度スティーブ・ジョブズ氏に手紙を書いてみたい。
いや...これは皮肉ではない。ある意味、ビジネスパートナーともいうべきデベロッパーからの手紙を横へ置き、子供からのメールだけ特別扱いするというのは片手落ちというより単なる売名行為としか思えない(笑)。やはりAppleという...ある意味特殊な企業イメージを存続させるためには困難だとしても予算と人をきちんと用意し、全世界からのメッセージを正面から受け止めるAppleらしい見直しを考えて欲しい。
それらの中には必ずやApple自身をよりよくする為のヒントが多々含まれているはずだからでもある。
Appleならずとも企業には毎日多くの郵便物が届く。無論電子メールも...。そしてその多くは正直いって企業にとってはあまり意味のない、まともに対峙するのは単に時間の浪費としか考えられないものも多いのである。
私の経営していたマイクロ企業でもそうなのだからAppleおよびその最高責任者であるスティーブ・ジョブズ氏個人に当てた手紙やメールが膨大なものであることは想像できるしその処理が大変なことは理解できる。ましてやそのひとつひとつにジョブズ氏が目を通しているとは思えないし物理的に不可能だろう。
今回のニュースは手紙を出した相手が9歳の女の子であったことをAppleが認識できなかったことから生じた不幸な一例だ。無論Appleのやり口は相手が子供でなくても気を悪くする受け答えであり企業イメージを失いかけない失態だが、コーポレートポリシーとしては一種の自動返信的な定型句の反応をしただけと思われる。
問題はこうだ...。
ある人から新機能などの提案があったとする。その事実を認識しつつ別の選択肢からであってもその機能を新製品に実装した場合、提案者側が特許申請をしているかどうかはともかくアイデアの盗用と訴えられる場合があり得る。だから企業側としては慎重にならざるを得ない。
とはいえ、今回の提案者がもし私だったら当然のこととしてニュースにもならないだろう(笑)。
実は数年前、私もスティーブ・ジョブズ氏に直接手紙を出したことがあるのだ!
僭越ながら長い間のAppleユーザーとしてだけでなくアップルのデベロッパーとして活動していたその中で多くの矛盾点に行き当たった。約束事もあっという間に人が代わり後任者にはまったく引き継ぎがなかったり、米国本社から来る責任者たちにしても皆日本市場を大変重要だとリップサービスばかり繰り返すだけで実際の仕組みを作れないことに大きなフラストレーションを感じていた。
無論それまでにも当時のアップルには機会があるごとに多くの提言もしてきたし苦情も申し上げたが一向に具体的な成果として見える形にはならなかった。
ある時ある人に言われた。「外資系企業は本社に直訴しないとダメだよ」と...。
それならダメもとで最高責任者であるスティーブ・ジョブズ氏に直訴してみようと決心したのである(^_^;)。無論現役のデベロッパーの社長としては勇気のいることだ。誰も好んで嫌われるようなことは言いたくないが、また何か行動を起こさなければ何も変わらない。ただただ愚痴を言っているだけでは進歩もない...。
ともかく文面を考えるのに一週間もかかったが、日本の市場性やデベロッパーの実情、そして問題点や提案ならびに苦情を簡素に表現するのは簡単ではなかったからだ。そしてその和文を顧問弁護士事務所に持ち込み、きちんと英訳していただいた。
ただし郵送に際して途中で紛失などもあり得るし、確実な方法をと考えて郵便物の経過を確認できる配達証明付きとした。したがってAppleには間違いなくこの郵便物は届くはずだ...。
無論ジョブズ氏から直接返事が来るなどと言うことは期待していなかった私はあらかじめ以下3つの展開を予測していた(笑)。
1.なしのつぶて
2.内容はともかく何らかの返事が届く
3.アップルコンピュータに内容が回る
数日後に郵便物の追跡をやって苦笑した。インターネット上で確認ができるわけだがどうした理由か、その封書はAppleに受理されずに配達場所に持ち帰られたとある...。
ちょっと心配になったが翌日再度確認してみると今度は間違いなくApple Computer社に配送済みという結果になった。ともかく届いたのだ。
さてその後、どれほどの日数が経過したのか記憶にないが前記した3つの展開のうち、やはりというべきか...私の予測が当たった...。なぜならアップルのデベロッパーリレーションズから電話が入ったのである(笑)。「本社に手紙を出された件でお話しをしたい」と。 私は苦笑いしながら東京オペラシティタワーにあったアップルジャパンを訪ねた…。
その可能性が高いことを予知していたからこそ、本来はもう少し日本市場を牛耳るアップルコンピュータ社に対して厳しい指摘をすべき点も少々言い方に工夫したつもりなのだ(笑)。
当時は社長が原田さんでそのワールドワイドデベロッパー直属の部長がHさんであった時代だが口には出さないもののアップルにとっては大変迷惑なことだったに違いない。たぶん本社側から「日本市場に関しての苦情はおまえ達で処理しろ」あるいは「こんな苦情を本社にまで出させるな」といったクレームがあったに違いないと私は睨んでいる...(笑)。
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※東京オペラシティタワーにあったアップルジャパンのオフィス
結局その部長と2時間以上も話し合いをしたが、そもそも彼らの裁量で結論が出る問題ではない。「お互い頑張りましょう」で終わらざるを得ないではないか...。
そして全体の話を総合的に判断するなら私の手紙はスティーブ・ジョブズ氏本人の目に触れることはなかったと思われる。
しかし私は「日本のデベロッパにも五月蠅いのがいる...」。また機会があればいつでも直訴するぞ...という認識が少しでも伝われば一矢報いたことになるのではないかと考えたものだ。ともかくやるべきことはやったのだ。
申し上げたいことは時代は違うもののデベロッパーからの手紙すらジョブズ氏の目に届かないとすれば一人のユーザーの手紙など通常届くことはあり得ないだろう。企業としてその内容はともかく返事を出したそれ自体はAppleのリーガルポリシーに沿った自動返信的なメールと考えるべきであり、企業としての機能がきちんと働いているというべきなのかも知れない。
しかしこれがIBMとかSONYだったらこんなにニュース報道されるとは思わない。そこがAppleの凄さであり弱みでもある。ただし誤解があっては困るが今回の対応を当然のことだと申し上げているのではない。Appleだからこそニュースになってしまうという難しさを含んでいると思うだけだ。
Appleでは今回の反省に立って子供達からの問い合わせに対応する際のコーポレートポリシーを修正する方法を話し合ったとされるが正直これは大変難しい問題だ...。
もし子供の手紙(メール)のケースに限り真摯に対応してくれると言うのなら、私は子供のスタイルでもう一度スティーブ・ジョブズ氏に手紙を書いてみたい。
いや...これは皮肉ではない。ある意味、ビジネスパートナーともいうべきデベロッパーからの手紙を横へ置き、子供からのメールだけ特別扱いするというのは片手落ちというより単なる売名行為としか思えない(笑)。やはりAppleという...ある意味特殊な企業イメージを存続させるためには困難だとしても予算と人をきちんと用意し、全世界からのメッセージを正面から受け止めるAppleらしい見直しを考えて欲しい。
それらの中には必ずやApple自身をよりよくする為のヒントが多々含まれているはずだからでもある。
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