ラテ飼育格闘日記(132)

今年の6月1日からペットフードの安全性確保に向けて新しい法律が施行された。それが「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」であり、違反した法人には最高1億円の罰金が科される他、法人代表者らに対して1年以下の懲役や100万円以下の罰金も設けられるという私たちペットの飼い主たちには待ちに待った法律施行なのだ。

 

こうした法律が施行された背景には無論近年のペットブームがある。しかしそれ以前にいわゆる市販のペットフードにより犬や猫が健康を害し最悪の場合は死亡する事故も多々発生していることが引き金になっている。
日本では意外のようだがこれまでペットフードの安全性を目的とする法律は存在しなかった。まあ、我々人間の口に入る食べ物にしてもご承知のように多くのニュースで報じられたとおり酷いケースもあるのだから、ペット向けの食べ物が実際にどんな原料で作られているかなど分かったものではないだろう。

米国でメラミンが混入した中国製原料を使用して製造されたペットフードを原因として発生した大規模な犬猫被害は我々飼い主には記憶に新しい。しかし原料が何であるかを明記しなければならない法律もなく、都合の悪い食品添加物などは記さなくても罰せられなかったのだからメーカーはある意味やりたい放題だったわけである。
とにかく常識で考えれば人間が食するものより高級で安全な原料・材料を使っているとは思えないわけで、いわば人間の食べられない物が大量に使われている可能性が考えられる。

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※オトーサンが投げたボールを咥えて走るラテ。無論オトーサンも走る...走る(笑)


アメリカでは安楽死させられたペットの肉がペットフードに使われているという話や、日本でも動物管理センターなどで殺処分された犬猫が廃肉業者に引き渡されていた実態が報告されているそうだから、それらがペットフードの原料になった可能性は十分考えられるだろう。
その他、ダイオキシン系の化学合成物質でベトナム戦争の際に枯葉剤の原料にもなった酸化防止剤や安定剤として知られたエトキシキンが使われているケースもあるし、発がん性や歩行困難、歩行障害を生じるブチレーテッド・ヒドロキシン・アニソール(BHA)、これまた発がん性が認められているブチレーテッド・ヒドロキシン・トルエン(BHT)といった添加物をはじめ農薬とか抗生物質などが多く残量している材料が使われているケースも考えられるという。

そういえば、野村獣医科Vセンター院長の野村潤一郎著「Dr.ノムラの犬の悩み相談所」(講談社刊)には有名な国産ペットフードとして知られているビタワンの偽物について書かれているページがある。
大変安く売っている店があったのでよく見ると“ビタワン”ではなく“ワンピタ”という中国製のパチモンだったが、野村先生は一袋買って仲間の研究所で成分分析をしてもらったところ、中身はほとんどニワトリの羽だったという。これでは栄養もなにもあったものではなく、そもそも食べ物ではないわけだ。
とにかくこれまでペットフードに法律で決められた安全基準がまったくなかったのだからどんなことがあっても驚いてはいけないのかも知れない。繰り返すが原材料や添加物の表示義務もなかったから、知られるとまずい材料は隠すことが簡単だった。

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※ラテが毎日食しているドッグフードはユーカヌバの体重管理用(ライト)だ


近所のスーパーにあるペットコーナーに行くと数多くのペットフードが並んでいるが、昨年こうした法律の施行を目前にしたからか、内容表示に問題があったとかで回収扱いになった製品があったことをオトーサンも実際目にした。
どうやら大阪に本部のあるペットフード製造会社が原材料に使用していないのにもかかわらず「ササミ」とか「ビーフ」といった不当表示をしていたらしい。たぶんオトーサンもラテのために何度かは購入した可能性がある製品だったが、一体何の肉だったのだろうか?
事実ペットフードも値の張る物から安い物まで多々あるが、一般消費者がその多くの中から安全なものを選ぶのはまず無理だろう。
意識的にできることといえば、極端に安いものは買わないこと。同じ程度のサイズの包装なのにかなり軽い製品は避けること。中国産あるいは原料が中国のものは避ける。添加物の表記を(一応)確認する。そして信頼できそうなメーカー品を選ぶといった程度でしかない。しかしそれも製品に明記されている表示が産地偽造であったならどうしようもないし、前記したように人間の世界だって高級料亭が一度客に出して残った物を使い回して大騒ぎになる時代に「たかがペット用だから」と考えるメーカーや製造者がいてもそれは不思議ではない。

ドッグフードは本来栄養価が高く、それと衛生的な水だけを与えれば愛犬はバランスの取れた健康な体を維持でき成長するものと考えられてきた。しかしそれは原材料の厳選はもとより、食の安全をきちんと守って製造されたものでなければ意味がない。
したがってオトーサンは「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」だけでは十分ではないと思っている。
要は犬猫の法的地位が低すぎるところに問題はあると思うのだ。なぜならワンコは法的に愛護の対象であり生き物と認知されてはいるものの、例えば傷つけられたり殺されたりしても動物虐待は当然だが器物損壊の対象でしかない。これでは罪が軽過ぎると思わざるを得ない。
いやいや...世の中には罪を重くしても犯罪抑止にはならないというもっともらしい意見を主張する人たちもいるが、それでは被害者側の心情は無視されていることにほかならないではないか。

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※ちょっとバテたので...一休みするオトーサンとラテ


話は少々横道に逸れるが...世の中はまさしく「小説より奇なり」で許せない悪人が山ほどいる。
例えば近隣にあった動物病院の医師が、連れてこられたワンコが健康体にもかかわらず検査入院を勧め、結果愛犬は胸から腹にかけて切り開かれた...。そして飼い主が駆けつけたときにはすでに死んでいたという。
不審に思った飼い主が別の病院で検査解剖してもらったところ、なんと気管の奥にビニールの固まりがきつく押し込まれているのが発見された...。無論それは人為的でしかあり得ないことで死因は窒息死である。
他の被害者と共に飼い主が民事訴訟を起こし昨年(2008年)やっと有罪の判決が下り、その結果農林水産省も重い腰を上げて当該医師に医師免許3年の停止処分をくだした。詳しくはGoogleで検索すればすぐに詳細はご覧いただけるはずだ。
まあ、動物病院の医師でありながらこんな人間もいるのだ。

飼い主の愛情を利用しそして医師の立場を悪用しあらゆる理屈を付けてペットを預かり、治療目的で法外な金銭を要求するだけでなくその目的のためにはペットの命さえ奪い続けたのである。なにしろ分かっているだけでも100人以上の被害者がいたらしい...。また別のケースでは飼い主をクレーマー扱いし暴力を振るったこともあったという。
オトーサンが毎日通う公園でもその医師の噂は多々囁かれていたし「あの病院にだけはいかないように」という飼い主さんたちも多かった。
問題は医師免許剥奪ではなく停止という判断だ。これだけのことをやって前例がない処罰とはいえたった3年の停止とは...オトーサンは納得いかない。なぜなら3年が過ぎたらこの輩はまた動物病院をどこかで開業するかも知れないのだ...いやするに違いない。

少々感情的になってきたから頭を冷やして話を元にもどそう...。
こうした極端な犯罪は勿論だが、健康を害するようなペットフードを作る製造業者は確信犯である。過失ならまだしも意図的な犯罪はその対象がペットであっても関係機関はもっと迅速にそして厳正に対処し厳罰を処すべきだと思うのだ。それが被害を拡大させない策でもあると思うのだ。
そもそも犬猫に限らずペットの命を軽く見る人間に人の命の尊さも分かるわけはないと考えるオトーサンである。

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※オトーサンに微笑みを返すラテ


理想にはまだまだ遠く十分とはいえない「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」施行だが、とにかくやっとあるべき第一歩は踏み出したのだから、看板だけに終わらず、メーカーや関連の業者に対してきちんとした監視監督と指導を怠らないようにして欲しい。
無論我々飼い主もマナーとルールを守らなければならない。しかしその飼い主の中にも糞の始末さえしない者がいる。こうした問題が大きくなれば「この遊歩道は犬の散歩禁止」とか「この公園は犬の散歩禁止」といったことになりかねない。
まったく...人間とはなんて厄介な生き物なのだろうか...。

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員