「大塚国際美術館」ひとり旅 (3) 〜環境展示群は圧巻
「大塚国際美術館」は独自の技術で陶板による複製絵画を原寸大で見せてくれる。そしてなによりもユニークなのは単に絵画を再現するだけでなく環境展示と称する…文字通り教会内部や古代の墓および壁画をそのまま再現していることだ。私は今回限られた時間で全てを堪能するのは無理だろうと判断し、この環境展示群を主に見たいと考えた…。
とはいってもB3から地上2階までの展示は広大で勝手に歩き回っては見落としてしまう展示が出てしまう。したがって床にシンプルではあるが示されている矢印に沿って進むのが安全だ。
ただし以降のレポートは好みでない…興味のない作品は無視して先に進むのでご了承願いたい(笑)。
システィーナ・ホールを後にした私は矢印に従って進む…。と正面には小さなスペースながら「フェルメールの部屋」があった。
期待と共に覗くと正面奥には有名な「真珠の耳飾り(青いターバン)の少女」が飾られているではないか。オリジナルなら大勢の人だかりでまともに鑑賞することなどできようもないだろうが、この瞬間部屋には私1人であり彼女を独占である(笑)。
勿論フェルメールの他の作品、例えば「手紙を読む女」など4作品があったが、私は少女の顔に見とれていた…。


※「フェルメールの部屋」では「真珠の耳飾り(青いターバン)の少女」を独占できた(笑)
隣はがらっと雰囲気が変わり「エル・グレコの祭壇衝立復元」というこれまた環境展示のひとつにぶち当たった。高さが1258センチもある見上げる大きさの祭壇だが、19世紀初頭のナポレオン戦争で破壊され四散し現在では幻の祭壇画となっていたものを「大塚国際美術館」が原寸大で推定復元したものだという。しかし個人的な印象…好みも含め、祭壇の金ぴかのフレームが目立ち、肝心の絵画部分が眼に入ってこないのが残念。

※「エル・グレコの祭壇衝立復元」
ところで今回は写真を沢山撮ってみようと考えた。無論自身の眼で鑑賞すること、作品を体感することが第一ではあるが、めったに来られない美術館だし1000点もの作品を限られた時間内で見て回ることを考えるとやはり後で情報を整理するためにも、そして記憶を確かなものにするにも写真は有効である。
ただし多くの絵画作品はそもそもが名画としてセレクトされたものだからして画集などで見たものがほとんどだ。またボストン美術館やメトロポリタン美術館、ニューヨークの近代美術館などでオリジナルに出会った作品もあるが後々作品名と作者をきちんと結びつけるため、展示されている作品の下か脇に解説のプレートが掛かっているが、その解説を写真に撮ってから作品の撮影をすることにした。それなら後々観た順は勿論、作品名や作者が分からなくなるということはないはずだ。
とはいえこれから極一部を順次ご紹介するわけだが、展示は照明を落としているため手持ちのデジタルカメラは優秀でも私の腕ではベストの撮影ができるとは限らないのが残念…。
さて続いて「聖マルタン聖堂」というこれまた環境展示を見ることに…。
これはパリから南に300メートルほどにある、ジョルジュ・サンドの館がある事でも知られているノアン=ヴィック村に建っているロマネスク様式の小さな聖堂だという。397年に没した聖マルティヌスに捧げられたものだというがフランス革命期には穀物小屋として使用され荒廃していたという。
内陣の壁画はキリストの受難物語で飾られ、祭室内はキリスト誕生とその死を主題にしたものが占めている。


※「聖マルタン聖堂」
実際の室温はどうだったのかは不明ながら聖堂内に入るとどこかヒンヤリした感覚を覚え、ここがレプリカであることなどまったく忘れている自分がいる。無論オリジナルの場所に足を踏み入れたことなどないわけだが、リアリティがあり納得させられる。
ここでも他の見学者がいないので写真撮影がやりやすい…。
続いて隣の展示はこれまた環境展示だが「聖ニコラ オルファノス聖堂」だ。
これはギリシアのテサロニキの城壁一郭に建っている聖堂で、1310年から1320年頃の建物だという。どうやら14世紀に創設された同名の修道院に属した聖堂のようだが、聖人像やキリストの生涯などが描かれ、中央の祭室には聖母と大天使ミカエル、ガブリエルをはじめ数多くの聖人像が描かれている。
その壁画の人物像は後期ビザンチン文化を彷彿とさせる独特の雰囲気をもっており、足が止まってしまう。


※「聖ニコラ オルファノス聖堂」
名残惜しさを殺して「聖ニコラ オルファノス聖堂」を出、通路向かいの「秘儀の間」に入る。ここも環境展示だが、ポンペイで発掘されたもので紀元前70~50年頃のものと推定される豪邸の中の秘儀荘というべき一室である。

※ポンペイ赤の壁画に圧倒される「秘儀の間」
室内に入るとまずはポンペイ赤とよばれる壁画一面の赤色に心を奪われる。解説によれば壁画の説明としては様々な説があるものの、ここではディオニソス秘儀の入信式という説をとっている。とはいえ独特の雰囲気を味わうことはできても十分楽しむためには予備知識の必要性を強く感じた。
「秘儀の間」を出て次は同じく環境展示だが「鳥占い師の墓」に入る。イタリア、モンテロッツイ墓地にあるものだそうだが、紀元前6世紀後半頃、ローマに先行したエトルリア文化に影響を受けたという独特の壁画に目を奪われる。


※「鳥占い師の墓」内部
その後センターホール内に展示されている古代の壁画を主とする作品達を鑑賞する。ほとんど未知の展示だったがアレクサンダー・モザイクなど数点は記憶の底にある作品だった。

※古代ギリシャの壺絵、ポンペイの壁画などが陳列されている「ギャラリーA」の一郭
ここの展示は照明が明るくて見やすいし写真撮影も楽だが、ふとどれほどの時間を費やしたのか心配になり時計を確認するもシスティーナ・ホールを後にしてから40分程度しか経過していないので安心する。


※上から古代「ギャラリーA」に展示の「アレクサンダー・モザイク」と「パン屋の夫婦」
そしてセンターホールを出てイタリアのサン・ヴィターレ聖堂にあるという大きく魅力的なモザイク画を眺めながら今回システィーナ礼拝堂と双璧をなす展示と期待していた「ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂」に足を向けた。

※横幅が4メートルもある「皇妃テオドラと侍女たち」のモザイク
つづく
■大塚国際美術館
とはいってもB3から地上2階までの展示は広大で勝手に歩き回っては見落としてしまう展示が出てしまう。したがって床にシンプルではあるが示されている矢印に沿って進むのが安全だ。
ただし以降のレポートは好みでない…興味のない作品は無視して先に進むのでご了承願いたい(笑)。
システィーナ・ホールを後にした私は矢印に従って進む…。と正面には小さなスペースながら「フェルメールの部屋」があった。
期待と共に覗くと正面奥には有名な「真珠の耳飾り(青いターバン)の少女」が飾られているではないか。オリジナルなら大勢の人だかりでまともに鑑賞することなどできようもないだろうが、この瞬間部屋には私1人であり彼女を独占である(笑)。
勿論フェルメールの他の作品、例えば「手紙を読む女」など4作品があったが、私は少女の顔に見とれていた…。


※「フェルメールの部屋」では「真珠の耳飾り(青いターバン)の少女」を独占できた(笑)
隣はがらっと雰囲気が変わり「エル・グレコの祭壇衝立復元」というこれまた環境展示のひとつにぶち当たった。高さが1258センチもある見上げる大きさの祭壇だが、19世紀初頭のナポレオン戦争で破壊され四散し現在では幻の祭壇画となっていたものを「大塚国際美術館」が原寸大で推定復元したものだという。しかし個人的な印象…好みも含め、祭壇の金ぴかのフレームが目立ち、肝心の絵画部分が眼に入ってこないのが残念。

※「エル・グレコの祭壇衝立復元」
ところで今回は写真を沢山撮ってみようと考えた。無論自身の眼で鑑賞すること、作品を体感することが第一ではあるが、めったに来られない美術館だし1000点もの作品を限られた時間内で見て回ることを考えるとやはり後で情報を整理するためにも、そして記憶を確かなものにするにも写真は有効である。
ただし多くの絵画作品はそもそもが名画としてセレクトされたものだからして画集などで見たものがほとんどだ。またボストン美術館やメトロポリタン美術館、ニューヨークの近代美術館などでオリジナルに出会った作品もあるが後々作品名と作者をきちんと結びつけるため、展示されている作品の下か脇に解説のプレートが掛かっているが、その解説を写真に撮ってから作品の撮影をすることにした。それなら後々観た順は勿論、作品名や作者が分からなくなるということはないはずだ。
とはいえこれから極一部を順次ご紹介するわけだが、展示は照明を落としているため手持ちのデジタルカメラは優秀でも私の腕ではベストの撮影ができるとは限らないのが残念…。
さて続いて「聖マルタン聖堂」というこれまた環境展示を見ることに…。
これはパリから南に300メートルほどにある、ジョルジュ・サンドの館がある事でも知られているノアン=ヴィック村に建っているロマネスク様式の小さな聖堂だという。397年に没した聖マルティヌスに捧げられたものだというがフランス革命期には穀物小屋として使用され荒廃していたという。
内陣の壁画はキリストの受難物語で飾られ、祭室内はキリスト誕生とその死を主題にしたものが占めている。


※「聖マルタン聖堂」
実際の室温はどうだったのかは不明ながら聖堂内に入るとどこかヒンヤリした感覚を覚え、ここがレプリカであることなどまったく忘れている自分がいる。無論オリジナルの場所に足を踏み入れたことなどないわけだが、リアリティがあり納得させられる。
ここでも他の見学者がいないので写真撮影がやりやすい…。
続いて隣の展示はこれまた環境展示だが「聖ニコラ オルファノス聖堂」だ。
これはギリシアのテサロニキの城壁一郭に建っている聖堂で、1310年から1320年頃の建物だという。どうやら14世紀に創設された同名の修道院に属した聖堂のようだが、聖人像やキリストの生涯などが描かれ、中央の祭室には聖母と大天使ミカエル、ガブリエルをはじめ数多くの聖人像が描かれている。
その壁画の人物像は後期ビザンチン文化を彷彿とさせる独特の雰囲気をもっており、足が止まってしまう。


※「聖ニコラ オルファノス聖堂」
名残惜しさを殺して「聖ニコラ オルファノス聖堂」を出、通路向かいの「秘儀の間」に入る。ここも環境展示だが、ポンペイで発掘されたもので紀元前70~50年頃のものと推定される豪邸の中の秘儀荘というべき一室である。

※ポンペイ赤の壁画に圧倒される「秘儀の間」
室内に入るとまずはポンペイ赤とよばれる壁画一面の赤色に心を奪われる。解説によれば壁画の説明としては様々な説があるものの、ここではディオニソス秘儀の入信式という説をとっている。とはいえ独特の雰囲気を味わうことはできても十分楽しむためには予備知識の必要性を強く感じた。
「秘儀の間」を出て次は同じく環境展示だが「鳥占い師の墓」に入る。イタリア、モンテロッツイ墓地にあるものだそうだが、紀元前6世紀後半頃、ローマに先行したエトルリア文化に影響を受けたという独特の壁画に目を奪われる。


※「鳥占い師の墓」内部
その後センターホール内に展示されている古代の壁画を主とする作品達を鑑賞する。ほとんど未知の展示だったがアレクサンダー・モザイクなど数点は記憶の底にある作品だった。

※古代ギリシャの壺絵、ポンペイの壁画などが陳列されている「ギャラリーA」の一郭
ここの展示は照明が明るくて見やすいし写真撮影も楽だが、ふとどれほどの時間を費やしたのか心配になり時計を確認するもシスティーナ・ホールを後にしてから40分程度しか経過していないので安心する。


※上から古代「ギャラリーA」に展示の「アレクサンダー・モザイク」と「パン屋の夫婦」
そしてセンターホールを出てイタリアのサン・ヴィターレ聖堂にあるという大きく魅力的なモザイク画を眺めながら今回システィーナ礼拝堂と双璧をなす展示と期待していた「ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂」に足を向けた。

※横幅が4メートルもある「皇妃テオドラと侍女たち」のモザイク
つづく
■大塚国際美術館
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