ラテ飼育格闘日記(117)

最近は多少なりともワンコに関する科学的な考察も進んできたようで、一昔前の定説オンリーのような躾やトレーニングは流行らないようだ。しかしワンコの心理的なことや能力に関してはまだまだ研究が至らないのか分からないことも多い。そうしたことが理由でワンコの飼育方法ひとつをとっても様々な説があり、多くの人たちが真反対のことを力説している。

 
ラテが我が家に来て早くも2年3ヶ月になろうとしている。その間オトーサンは悪戦苦闘の中で恥ずかしいほど膨大なトレーニングや飼育あるいは犬とはどのような動物なのか...といった本を読み、インターネットで躾に関する情報を集め、その中から自身で納得できるあれこれを実践してきた。
そのおかげもあってかラテは基本的に良い子に育ったと思うしこれはという問題行動も今のところ現れてこない。ただしオトーサンは今のままで十分だと思っているわけではなく、もっとより良い方法でラテとの信頼関係の絆が太くなるよう努力をしたいと思っているのだ...。

latte117_04.jpg

※オトーサンの腕に前足を回しておやつをねだるラテ。これも絆か...(笑)

 
そうした情報を集めている中で一番の問題はワンコの躾や問題行動を扱うプロという人たちのもの言いが真逆な場合が多々あることだ。ただし多くの本や資料などを比較してみるとプロフェッショナルといっても職業というか立場によっても意見が異なることも分かってきた。
例えば私たち一般の飼い主から見てまず接触しやすいのが動物病院の医師があげられる。最近は動物病院でもワンコの躾に関してサポートするところも多くなってきたし同じ事はワンコの美容室などでもいえることだ。
これらの職業に従事する人たちは日々多くのワンコを扱い、特に獣医はワンコの生体や病理学的なことに対して文字通り専門の知識を持っているはずだがトレーニングに関してどのような勉強をしてきたのだろうか...。

ワンコの専門家は他にも多々存在する。ブリーダー、ペットショップ、動物行動学・心理学研究家、訓練士の方たちはもとより科学者・作家・ジャーナリストもワンコに関する著作を手がけている場合も多い。これらにオトーサンも含めていわゆる飼い主自身が多くの情報を提供しているわけでその内容が一定であるわけはない。
なぜなら例えばドッグトレーナーと動物行動学者とではワンコに対する立場そのものが違う。
動物行動学者は行動の社会的、生理的、神経学的要因を扱う専門家であり遺伝的要因を含めてその進化などを研究する立場だ。対してドッグトレーナーは文字通り、いかにしたらワンコを飼い主の思い通りにコントロールできるかを実際に見せなければならない職業だ。理窟や論理ではなく、いまリードを強く引き飛びついたりして散歩もままならないワンコがいたとすれば、その飼い主にとっての問題行動を実際に無くすのが仕事だ。
結局極端なもの言いをするなら、ワンコに対する向き合い方や目的が違うわけで、ワンコへの理解や接し方もおのずと違ってくるわけだ。
それに、少し前までのワンコの躾やトレーニングに関する本の多くは海外の著作や情報からの受け売りやバリエーションが多く、事の良し悪し以前に情報の信憑性が疑われるようなものもあった。

野村獣医科Vセンター院長の野村潤一郎氏はその著書「Dr.野村の犬に関する100問100答 /Part2」で「全てを否定するわけではないが」と断りながらも「外国の本の孫引きを繰り返して出来上がった多くの飼育本は愛が不足している」とした上で、「原文でないと伝わらない微妙なニュアンスが欠落したり、全くのコピーにならない配慮から無駄な装飾が付け足しされ、さらに多くの誤訳が加わってアホにターボーがかかっていることが多い」とその種の本をこき下ろしている(笑)。
結局ひとつ大きな問題を取り上げるとすれば、「ワンコは飼い主との間で支配性を争うのか否なのか」が焦点になるようだ。
というわけでオトーサンは最近ワンコの行動ならびに躾に関する気になる2つのアイテムを購入した。

ひとつはナツメ社刊「図解雑学/イヌの行動 定説はウソだらけ」(堀明著)という本、2つ目はGoogleのアドセンス広告などでよく見かける「あなたの愛犬が見違えるほどいい子になる 森田流 犬のしつけ法」という5枚組DVDである。

latte117_02.jpg

※ナツメ社刊「図解雑学/イヌの行動 定説はウソだらけ」(堀明著)表紙

 
正直「○○のしつけDVD」といったものはこれまでその内容はともかく、素人がパソコンで自作したようなものを販売しているケースが多く今回もどんなものが送られてくるか気になったが、実際には一般店頭で市販されているのと同様な立派なDVDパッケージと製本されたA4判Bookがついてきたのでまずは安心した。

latte117_01.jpg

※「あなたの愛犬が見違えるほどいい子になる 森田流 犬のしつけ法」5枚組DVDパッケージ

 
さて、幾たびか書いてきたが、オトーサン自身にとってもこれまでのワンコのしつけ方や飼い方に関して疑問と思う点が多々あったので「図解雑学/イヌの行動 定説はウソだらけ」という本はその書名どおりこれまでの考え方はウソ...間違っているという正しく胸が晴れるようなタイトルの一冊である。ただし飼い主にとって本書のような心地よい説が果たして真実なのか...ということになると無論それは分からない。

例えば「ワンコがリードを強く引く」といった件ひとつでも「支配性を主張している」という立場を取る森田誠氏と単に「早く目的地に行きたいという犬の欲求に過ぎない」という立場の堀明氏はまったく違った見解である。さらに堀明氏は「犬が自分をリーダーだと示したいから」といったこの種の定説を「支配と服従の理論に凝り固まった人たちのいいだした誤解」と切り捨てている。
当然のことながら見解が違えばそれに対処する方法も違ってくるわけで、これでは善良な素人のオトーサンは困ってしまうわけだ(笑)。
もしラテが喋れるのならひと言「お前はどうなんだ?」と聞けば済むことだが、ラテは黙して語らない。

オトーサンの立場はあくまで自分の責任において納得できるものを採用し、かつそれぞれの良いと思う所だけを組み合わせ工夫してラテの躾に応用することを実践してきた。したがってある意味では独自の方法であり、もしかしたら松田流といえるかも知れない(爆)。
プロのドッグトレーナーであり「TVチャンピオン2 ダメ犬しつけ王選手権優勝」という強力な実績をアピールしている森田氏、そして動物学研究家で犬を放し飼いできる牧草地(八ヶ岳)「犬の牧場」で、500日にわたり、群れで生活する127匹の犬たちと寝起きを共にし、2000回を上回る犬同士の接触状況を詳細に観察したという堀氏であるからそれぞれのやり方や考え方はそれぞれが自身の体験から導き出したノウハウには違いない。しかし考えてみればオトーサンだってそうしたもの言いをするなら、「800日も一匹のワンコと寝起きを共にしてその日常のすべてを観察し、日々会う仲間のワンコとの接触や葛藤をつぶさに体験...」といったことには間違いない(笑)。

latte117_03.jpg

※ラテは好奇心旺盛なワンコである。遊歩道柵にデザインとして取り付けてある鳥の彫刻を覗き込んでいるところ

 
ところで森田流のしつけに関して本来ならもう少し踏み込んでその長所短所を紹介したいのだが、残念ながら少々極端とも思える著作権に関する記述があり、損害賠償額まで記してあるので(タレコミした人に報酬を提供することまで書かれている)内容に触れることは念のため避けるしかないのである。
ともかくその内容はさすがにトレーニング専門家であり、大いに見るべく所...参考になる部分が多かったことは事実だが考え方の基本は前記したように従来からの定説であるワンコの支配性うんぬんをベースにしたものだけにオトーサンは一部違和感を覚えるし、いわゆるトレーニングに関わる「飴と鞭」に相当する森田流独特なトレーニング表現・命名もどこかしっくりこない。さらに「鞭」をカバーする目的の「飴」が何故犬の心にプラスに働くかに飛躍があるような気がしてよく理解できない。
どうも抽象的なもの言いになるが、これは著作権者に配慮したからでありご了承いただくしかないが、これでは他人に勧めることもできない(笑)。
とはいえ面白いと思ったのは森田流のしつけDVDを勉強のためと一通り真摯な気持ちを持って観たが、ワンコに対する接し方の妙は当然プロには及ばないものの、ラテに対して接してきたしつけのやり方の根本はオトーサンもいい線いってたようだ。

しかしオトーサンは甘いのだろうが、ラテ...犬の本能を片っ端から取り上げてしまうようなトレーニングにはどうも本気になれないのである。
人と一緒に生活するからにはいわゆる社会性を持ち周りに迷惑をかけないことが前提ではある。それは確かにそうなのだが、私たちはワンコと一緒に生活したいのであり、単に言うことを聞くだけの生きものと一緒にいたいわけではない。それに森田流の「犬たちに自由という権利を与えるため」とはいえ本能の多くを否定されたそんなワンコはワンコ自身幸せなのだろうか?
オトーサン自身もそうだが、昨今はワンコのしつけというものに神経質過ぎるのかも知れない。一昔前の飼い犬なんてほとんど放し飼い同然だったけどあまりトラブルがあった記憶がないのだが...。

まあ「ワンコの祖先はオオカミ説」や「犬は上下関係が厳しい縦社会で生活する生きものだから強い者には従う」という説は米国の有名なドッグトレーナーであるシーザー・ミラン氏などに通じるこれまでの定説なわけで、「図解雑学/イヌの行動 定説はウソだらけ」の著者である堀明氏やムツゴロウ動物王国の石川利昭氏などとは正反対の説なのだ。
したがって相変わらずワンコに関して真っ向から意見の違うしつけを唱える “専門家” に我々愛犬家は戸惑い続けなければならないようだ。

なにが本当で誰が正しいのか...。しつけとか教育は単純にリセットややり直しが難しいだけにこの混乱は洒落にならないのである。

犬のしつけ教室/わんわんスタジオ

イヌの行動 定説はウソだらけ (図解雑学) (図解雑学)

Dr.野村の犬に関する100問100答〈Part2〉

関連記事
広告
ブログ内検索
Macの達人 無料公開
[小説]未来を垣間見た男 - スティーブ・ジョブズ公開
オリジナル時代小説「木挽町お鶴御用控」無料公開
オリジナル時代小説「首巻き春貞」一巻から外伝まで全完無料公開
ラテ飼育格闘日記
最新記事
カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール

mactechlab

Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員