スティーブ・ジョブズ29歳の「PLAYBOY」誌インタビューが凄い
iPad向けとしてあのPLAYBOY誌の電子版「iPLAYBOY」が登場した。それは1953年創刊号からすべて閲覧できるというから凄いが、今回GIZMODEのサイトで知ったPLAYBOY誌1985年2月号に掲載されている、若き日のスティーブ・ジョブズへのインタビュー記事を読み不覚にも目頭が熱くなった…。
当サイトを熱心に訪れてくださる方なら、私がスティーブ・ジョブズという人物にどちらかというと辛口であることをご存じのはずだ...。
ともあれ勢いづいているAppleを率いているのは病欠気味だとは言えスティーブ・ジョブズその人であることは間違いないし、瀕死のAppleをここまで成功裏に導いたのも彼である。しかし個人的な見解というかスタンスからいえば、社会的な成功とその人物の良し悪しは本来別次元のことである。
彼の若いときの人を人とも思わない言動は他人事としても、Macworld Expo/Tokyoのために来日した際、日本のデベロッパーが一同に介していたその場に(私もいた)登場したにもかかわらず、来賓としてアップルに招待され集まった我々を完全に無視し、側近と数語言葉を交わしただけで一言の挨拶もなく退席した彼の姿を記憶に留めている私としては決して「好ましい人」とは評価できないのである。
その私が、スティーブ・ジョブズ 29歳のときのインタビューが載ったPLAYBOY誌の記事を読み、目頭が熱くなったのにはそれなりに訳がある。

※PLAYBOY誌 1985年2月号表紙
無論私が主に読んだのは原文ではなくGIZMODEサイトに紹介されたその和訳である。しかし原文の方がよりニュアンスが伝わってくる部分もあるのでつたない英語能力ではあるものの原文にも目を通したが、ある意味この時のスティーブ・ジョブズの物言いは後年スタンフォード大学における名スピーチよりインパクトのある内容とも思えるのだ。
さて「29歳のときのインタビュー」という事から判断すれば1955年2月生まれの彼だから1984年のインタービューだということになるが、事実このインタビューはニューヨークで行われた、とあるセレブリティたちのパーティーの後で行われたような記述が冒頭にある。
ちなみにそのパーティーだが「9歳のバースデー・ボーイのために…」というニュアンスで語られているセンテンスがあるが、この少年はどうやらジョン・レノンの息子、ショーン・レノンらしい…。
ショーンは1975年10月9日生まれだというから9歳の誕生日はまさしく1984年の10月9日ということになる。
そして印象的なのはインタビューアーの時に執拗で意地悪な問いにスティーブ・ジョブズは怒りもせずに真摯にスピーチを続けているだけでなく、その言葉の端端にAppleやMacintoshそのものへの深い情熱と愛情を感じることだ。

※Macintoshを発表した直後のスティーブ・ジョブズ
スティーブ・ジョブズ嫌いの私ではあるが、このインタビュー記事を読んで感動した第一は彼の淀みのない答え方…話し方にある。
本文冒頭にもインタビューアーの質問によどみなく答えるジョブズを評して “His answer seemed unrehearsed to me:” すなわち、彼の答え方はリハーサルされた…あらかじめ用意周到に準備していたような答え方ではない…といった記述がある。
その一連の受け答えを見るとスティーブ・ジョブズは「パーソナルコンピュータとは?」「Macintoshとは?」そして「自分たちが行った革命的な業績が何であるか」について常々深い考察を続けていたことがわかる。
なぜならここに登場する彼の物言い、すなわちコンピュータに関する洞察やコンピュータが我々に及ぼす影響についてこれまでにも多く機会あるごとに同様な意味のことを話してきたことを我々は知っているからである。
コンピュータは本来すごくシンプルなものであること。コンピュータがどう動くかなど知らなくても良いこと。そしてモールス信号(電報)とグラハム・ベルが発明した電話との違いが我々に及ぼす影響などなどの話題はスティーブ・ジョブズが好んで使った話しなのだ。
このインタービューにはスティーブ・ジョブズの名言といってよい話しが数々出てくるがインタビューアーの「あなたはコンピューターが我々個人の生活を変えると信じているようですが、それに対し懐疑的な人や、否定している人をどんなふうに説得しますか?」という問いは私自身、身につまされる…。なぜなら1984年にMacintoshを購入したとき、それがセットで80万円もしたことを知ると当時の友人知人たちはこぞって冷淡な表情になり「そんなゲーム機に80万も出すのか」と嘲ったからだ(笑)。
当時はまだパーソナルコンピュータを所有する人は極端に少なく、その存在意味を深く考える人もなく、ただ変わり者のオタクとしてしか見られなかった傾向があったのだ。
またコンピュータが個人や家庭に及ぼす影響について懐疑的な質問をされたとき、ジョブズは「コンピューターは人間をつまらない仕事から解放してくれると同時に、人間がクリエイティブになるのを支援してくれる道具」と評し「教育におけるコンピューターは、批判なしで無限に対話してくれる存在としては書籍以来初めてのものになる」と明言している。
続けてほとんどの消費者がコンピュータを買う理由として「コミュケーションネットワークに繋げられること」と話す。
無論彼もパーソナルコンピュータが起こすであろうブレークスルーが具体的にどのようなものであるかについて「よく分からないが、すごく大きくて凄く良い何かだってこと」と曖昧に話す点もあるが、この発言が1984年であることを忘れてはならない。
少なくともこのインタビューからうかがい知ることができる彼は決してその場限りの逃げ口上や物事を事実以上によく思わせるための戯れ言で誤魔化していはいないことがわかる。そしてなによりも彼の物言いが当時から現在まで基本的にぶれていないことが凄いではないか。
さらに我々はここでスティーブ・ジョブズが話す内容が20数年後の未来、すなわち現在を間違いなく予言していることに驚きを覚える。
うがった見方かも知れないが、彼の言葉から発せられる「コンピュータをもっと持ち運びやすくし」「ネットワーク化でき」「データベース共有ができ」「コミュニケーション能力を高め」そして「電話とパソコンの融合」という発言をつなぎ合わせて考えるなら、現在の我々は間違いなくiPhoneを思い浮かべるのではないだろうか。
無論こうしたイメージはジョブズ以前にもアラン・ケイなどが描いていたビジョンでもあるわけだが、ケイの明言である「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことである」を地でいっている感じがしてくる。
是非まだGIZMODEのサイトをご覧になっていない方は一読をお勧めしたい。無論本家のiPLAYBOYも…。
そして好き嫌いはともかく、やはりスティーブ・ジョブズという人物はただ者ではない。
本インタービューにおける29歳のスティーブ・ジョブズ一連の発言は現在のスティーブ・ジョブズという人物をより良く知る上でも貴重な資料になるだろう。
当サイトを熱心に訪れてくださる方なら、私がスティーブ・ジョブズという人物にどちらかというと辛口であることをご存じのはずだ...。
ともあれ勢いづいているAppleを率いているのは病欠気味だとは言えスティーブ・ジョブズその人であることは間違いないし、瀕死のAppleをここまで成功裏に導いたのも彼である。しかし個人的な見解というかスタンスからいえば、社会的な成功とその人物の良し悪しは本来別次元のことである。
彼の若いときの人を人とも思わない言動は他人事としても、Macworld Expo/Tokyoのために来日した際、日本のデベロッパーが一同に介していたその場に(私もいた)登場したにもかかわらず、来賓としてアップルに招待され集まった我々を完全に無視し、側近と数語言葉を交わしただけで一言の挨拶もなく退席した彼の姿を記憶に留めている私としては決して「好ましい人」とは評価できないのである。
その私が、スティーブ・ジョブズ 29歳のときのインタビューが載ったPLAYBOY誌の記事を読み、目頭が熱くなったのにはそれなりに訳がある。

※PLAYBOY誌 1985年2月号表紙
無論私が主に読んだのは原文ではなくGIZMODEサイトに紹介されたその和訳である。しかし原文の方がよりニュアンスが伝わってくる部分もあるのでつたない英語能力ではあるものの原文にも目を通したが、ある意味この時のスティーブ・ジョブズの物言いは後年スタンフォード大学における名スピーチよりインパクトのある内容とも思えるのだ。
さて「29歳のときのインタビュー」という事から判断すれば1955年2月生まれの彼だから1984年のインタービューだということになるが、事実このインタビューはニューヨークで行われた、とあるセレブリティたちのパーティーの後で行われたような記述が冒頭にある。
ちなみにそのパーティーだが「9歳のバースデー・ボーイのために…」というニュアンスで語られているセンテンスがあるが、この少年はどうやらジョン・レノンの息子、ショーン・レノンらしい…。
ショーンは1975年10月9日生まれだというから9歳の誕生日はまさしく1984年の10月9日ということになる。
そして印象的なのはインタビューアーの時に執拗で意地悪な問いにスティーブ・ジョブズは怒りもせずに真摯にスピーチを続けているだけでなく、その言葉の端端にAppleやMacintoshそのものへの深い情熱と愛情を感じることだ。

※Macintoshを発表した直後のスティーブ・ジョブズ
スティーブ・ジョブズ嫌いの私ではあるが、このインタビュー記事を読んで感動した第一は彼の淀みのない答え方…話し方にある。
本文冒頭にもインタビューアーの質問によどみなく答えるジョブズを評して “His answer seemed unrehearsed to me:” すなわち、彼の答え方はリハーサルされた…あらかじめ用意周到に準備していたような答え方ではない…といった記述がある。
その一連の受け答えを見るとスティーブ・ジョブズは「パーソナルコンピュータとは?」「Macintoshとは?」そして「自分たちが行った革命的な業績が何であるか」について常々深い考察を続けていたことがわかる。
なぜならここに登場する彼の物言い、すなわちコンピュータに関する洞察やコンピュータが我々に及ぼす影響についてこれまでにも多く機会あるごとに同様な意味のことを話してきたことを我々は知っているからである。
コンピュータは本来すごくシンプルなものであること。コンピュータがどう動くかなど知らなくても良いこと。そしてモールス信号(電報)とグラハム・ベルが発明した電話との違いが我々に及ぼす影響などなどの話題はスティーブ・ジョブズが好んで使った話しなのだ。
このインタービューにはスティーブ・ジョブズの名言といってよい話しが数々出てくるがインタビューアーの「あなたはコンピューターが我々個人の生活を変えると信じているようですが、それに対し懐疑的な人や、否定している人をどんなふうに説得しますか?」という問いは私自身、身につまされる…。なぜなら1984年にMacintoshを購入したとき、それがセットで80万円もしたことを知ると当時の友人知人たちはこぞって冷淡な表情になり「そんなゲーム機に80万も出すのか」と嘲ったからだ(笑)。
当時はまだパーソナルコンピュータを所有する人は極端に少なく、その存在意味を深く考える人もなく、ただ変わり者のオタクとしてしか見られなかった傾向があったのだ。
またコンピュータが個人や家庭に及ぼす影響について懐疑的な質問をされたとき、ジョブズは「コンピューターは人間をつまらない仕事から解放してくれると同時に、人間がクリエイティブになるのを支援してくれる道具」と評し「教育におけるコンピューターは、批判なしで無限に対話してくれる存在としては書籍以来初めてのものになる」と明言している。
続けてほとんどの消費者がコンピュータを買う理由として「コミュケーションネットワークに繋げられること」と話す。
無論彼もパーソナルコンピュータが起こすであろうブレークスルーが具体的にどのようなものであるかについて「よく分からないが、すごく大きくて凄く良い何かだってこと」と曖昧に話す点もあるが、この発言が1984年であることを忘れてはならない。
少なくともこのインタビューからうかがい知ることができる彼は決してその場限りの逃げ口上や物事を事実以上によく思わせるための戯れ言で誤魔化していはいないことがわかる。そしてなによりも彼の物言いが当時から現在まで基本的にぶれていないことが凄いではないか。
さらに我々はここでスティーブ・ジョブズが話す内容が20数年後の未来、すなわち現在を間違いなく予言していることに驚きを覚える。
うがった見方かも知れないが、彼の言葉から発せられる「コンピュータをもっと持ち運びやすくし」「ネットワーク化でき」「データベース共有ができ」「コミュニケーション能力を高め」そして「電話とパソコンの融合」という発言をつなぎ合わせて考えるなら、現在の我々は間違いなくiPhoneを思い浮かべるのではないだろうか。
無論こうしたイメージはジョブズ以前にもアラン・ケイなどが描いていたビジョンでもあるわけだが、ケイの明言である「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことである」を地でいっている感じがしてくる。
是非まだGIZMODEのサイトをご覧になっていない方は一読をお勧めしたい。無論本家のiPLAYBOYも…。
そして好き嫌いはともかく、やはりスティーブ・ジョブズという人物はただ者ではない。
本インタービューにおける29歳のスティーブ・ジョブズ一連の発言は現在のスティーブ・ジョブズという人物をより良く知る上でも貴重な資料になるだろう。
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