ラテ飼育格闘日記(97)

オトーサンはワンコを飼うという経験はラテが初めてである。したがって他のワンコとの比較をしたくても毎日公園などで会う仲間のワンコたちや多くの書籍などで読む事例から推察するしかない。しかし我が家に来て2年近くになるが幸いなことに...彼女の育て方はまずまず成功したのではないかと思っている。 


大型書店にいき、犬の飼い方といった類の本を眺めれば多くの飼い主の方々がその存在を愛しながらも困っていることが多いことに気づく。 
どんなことに悩んでいるかをちょっと列記すれば、強いリードの引き、拾い食い、噛み癖、吠え声、トイレの問題、エサの好み、分離不安、音に対する脅えなどなど枚挙にいとまもないくらい沢山出てくる。 
それはそれだけ悩んでいる人たちが多いことを示す良い証拠ともいえる。 
その上、病気はもとより今後は我々人間と同様に高齢化の問題も無視するわけにはいかない。 

こうした様々な問題を理由に飼育放棄に至るケースは残念なことに大変多いという。そして安易とも思えるペット=ファッションといった感覚でワンコを飼う人たちも多いことがその根底にあるらしい。 
「こんなはずではなかった」ということで一緒に生活していたワンコを保健所に持ち込んだり、捨てたりする飼い主は後を絶たない。まあ、もしかしたらラテもそうした被害者の一匹だったかも知れないのだが...。 
いま、空前のペットブームだと聞くが、単に可愛いからとか縫いぐるみ感覚でワンコを飼うという無責任なことはやるべきではない。それこそワンコにとって生き死にの問題であり、動物の命だからといって決して軽んじてはならない。 
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※朝日の降り注ぐ中をラテと歩くのは素晴らしい体験だ


私自身も今振り返ればほとんど予備知識無しでラテを向かい入れた。無論相手は生き物であり後戻りはできないという覚悟はあったが、正直ワンコとの生活がこれほど楽しくもまた体力的問題や時間を取られることなどは考えていた以上だった。 
だからラテが我が家に来てこの年末で丸2年を迎えるが、当初は「これはえらいことを選択してしまった」と思ったものの現状を冷静に振り返って見てると、その育て方はまずまず成功したのではないかと思っている。 

とにかく相手はロボットや縫いぐるみではないからこちらの思うようにはいかないのである。そして当初は何を考え何を欲しているのかもなかなか分からないから意思疎通の喜びも味わえない...。さらに育て方が間違ったからといって簡単にリセットしたりやり直すことはできないからプレッシャーがかかってくる...。 
本当のところ、ワンコたちは喋れないだけで日々...いや、寝ているとき以外は飼い主の言動を観察して私たちの性格や行動パターンを恐ろしいほどに学習しいることに気づかされるのはしばらく経ってからとなる...。 
それに比べて我々飼い主たちはいかに愛犬のことを知ることができないでいるか...というギャップが前記したいろいろなトラブルの要因になっていくように思われる。 
オトーサンも2年近くもの歳月、大げさでなく彼女の生き様を体現しながら毎日を過ごしていると思い知らされることが本当に多いことに気づく...。 
言い方を変えるなら、この歳になってわんこ一匹上手に飼うことがいかに難しいかを実感させられると共に、ラテの言動はまさしく私の心理状態を映し出す合わせ鏡のように思えて驚きを感じることがある。 

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※お気に入りのボールを狙う嬉しそうな顔のラテ


さて、仕方のないこととはいえ我々は人間の理窟、感性でワンコと対峙してしまいがちだが、ワンコは無論人間ではない。 
ではワンコは人類ではないしその思考回路もまったく違うかというとそんなことはない。そこがワンコが人類に好まれペットの代表格になった理由があるのだろうが、実に人間的な感覚を持っていることに驚かされる。 
なにしろ知能がかなり高いことは明白だし喜怒哀楽はかなりストレートに表現するから、嬉しいときの表情は勿論だが眠そうな顔とつまらなそうな顔などなどは人間と同じように認識できる。しかし言葉を発してくれないから、何を考え何を言おうとしているのかを大体でも理解できるまでには時間がかかるし、かなりの努力を必要とする。それに人間側の理窟のみで勝手な判断をしては本当の意味で意思の疎通は難しくなる...。

例えば吠え方にもいろいろあるが、それだけでラテが何を言おうとしているのかを理解するのは正直難しいかも知れない。しかしその吠えている場所とワンコのボディランゲージ、すなわち顔の向ける方向や動作・態度で何を訴えているかは分かるようになってくるものだ。 
具体的にオトーサンはオシッコをしたことを知らせる、飲み水が無くなった、ボール遊びがしたい、オヤツが欲しい、散歩に行きたい、遊んで欲しい、抱っこして欲しいなどなどのメッセージはほぼ理解できるようになったと思っている。 
それらを知りながら無視を続けるとラテは吠えるだけではなく実力行使に入るのだから面白い。 
一例を挙げると、オトーサンがマッサージチェアに座ってタオルケットをかけ、仮眠しているとする。オトーサンにかまって欲しくなったラテは吠えはじめるがオトーサンは寝たふりを続ける...。 
しばらく吠え続けたラテはこのままだとらちがあかないと判断したのかタオルケットを引っ張って剥いでしまうのだ。 
それでもオトーサンが知らん顔して寝たふりをしていると今度は靴下を脱がしにかかるのだ(笑)。いやはや、その上手なこと...。 
靴下はルーズに履いているわけではないが、ラテはオトーサンの指先を噛まないように注意をしながら前歯で少しずつ靴下の先端を引っ張って延ばし、しっかりと咥えられるようになるとそのまま勢いよく引っ張るのである。 
その力はかなり強いとはいえ引っ張る角度によっては靴下が踵にひっかかってなかなか脱げない場合があり、それを続けると靴下は確実に破れる...。したがってオトーサンはラテの満足度を高め、靴下を守るために少し足の角度を変え、脱ぎやすくしてやるとラテはしてやったりとオトーサンの靴下でしばし遊び唾液でびしょびしょにしてしまう。 
ここまでされるとさすがに知らんぷりを続けることができなくなる。 
オトーサンはラテに向かい靴下を指さしながら「ラテ、それ頂戴!」と声をかけるとラテは嬉しそうに靴下を咥えて持ってくる。ラテにとっては有意義な遊びの一種なのだろう。 
2歳を過ぎてかなり落ち着いたこともあり、夜間に無駄吠えするでもなく、トイレもすでに場所を失敗することもない。そして当初あれほど苦労した拾い食いや噛み癖もほとんど心配しなくてよいまでになった。 
夕飯時も我々がキッチンで食事をしているとき、リビングにいるラテはオトーサンが呼ぶまでこちらに入ってこない。いつそんなことを教えたのか記憶もないのだが、事ほど左様に良い子に育った。 

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※朝の公園でボーダーコリーとオトーサンに挟まれ、逃げ腰のラテ


しかし全体的にラテは「寂しがり屋のひとり好き」といった性格を持っているようだ。これは考えようによっては飼い犬として理想的な性格なのかも知れない...。 
なぜなら飼い主を信頼しつつ遊びたいときには一緒にはしゃぐが、日常の多くは頻繁にあれこれとかまわれることはあまり好きではない...といった感じ。 
ということは放っておけばよいのだから...楽に違いない(笑)。無論「放っておく」は冗談だが、飼い主の後をベタベタと追いかけ回し、その姿が見えないからと吠え続けるといった分離不安に繋がるような心配はラテにはない。 

「ワンコの“ラテ”飼育格闘日記(88)」にコンラート・ローレンツの言葉として紹介したことがあるが、それによればワンコにはオオカミ系とジャッカル系があるとし、特にオオカミ系の血の濃いワンコは飼い主に対するその並外れた忠実さと愛着の深さにも関わらず、100%従順ではないと説明している。 
オオカミ系の血の濃いワンコは死ぬまで主人の友であるが決して奴隷にはならない。彼女・彼は主人なくして生きていけないが、確固たる自分なりの生活態度とポリシーを持っているということらしい。 
まさしくラテはこうしたワンコの類に入るように思え、基本的にはあまり手のかからないワンコといってよいのかも...。 
このことはすでにラテは精神的に自立していると見て良いのかも知れない。 
相変わらず外面はよく、散歩に出かけた公園などで他の飼い主さんたちに愛想を振りまきお腹を出したりチューをしたりするが、オトーサンに同様な甘え方をすることはほとんどないのだ。このことは少々寂しい気もするが、よくよく考えればこれがワンコとの理想的生活の姿なのかも知れない。 

ともかくオトーサンが漠然と頭に描いていたワンコの姿そのままに育ったという気がして嬉しい...。 
冒頭に「...おおむね彼女の育て方は成功した」と偉そうに記したがなんということはない。ラテの生まれ持った性格が良い形で出てきたわけで、決してオトーサンの飼育がどうのこうのという問題ではないのかも知れない。 
さあ、そろそろ夕方の散歩の時間だ。足腰は痛いが、ラテと一緒の時間を楽しんでこよう!

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員