Mac発表記念日にスティーブ・ジョブズの休職を憂う
先頃AppleのCEOであるスティーブ・ジョブズ氏が病気療養を理由に再び休職を発表したが本日1月24日はMacintosh発表の記念すべき日だ。彼の健康回復を祈ると共にこのタイミングで彼の生み出したMacintoshというパーソナルコンピュータに再び光を当てるのも無駄ではないと考える。
日米の時差はともかく、Macintoshは1984年1月24日に正式発表された。無論その発表は27年前のスティーブ・ジョブズその人が行った。そして我々はYouTubeなどでその記念すべき映像を見ることが出来る。
※1984年1月24日、年次株主総会でスティーブ・ジョブズがMacintoshを発表した
長年Appleとスティーブ・ジョブズを追っかけてきた私にはその若かりし頃の自信に満ちた、そして小生意気そうな表情と昨年のWWDCなどにおける痩せこけた顔とがオーバーラップし何ともいえない辛い気持ちになる。
これは単に大病をした、あるいは見るからに老けた彼に対する同情だけではない。なぜならかくいう私も27年前は相応に若く元気であり自分が50歳とか60歳になるなど想像もできなかった(笑)。運命だけでなく歳月もまことに非情である...。

※昨年(2010年)10月、Apple Special Eventで笑顔を見せるスティーブ・ジョブズだがその痩せた姿は痛々しい
Macintoshがなぜ眩しかったか...。それは単に最新のテクノロジーを見せつけてくれただけでなく私にとってアメリカという世界の最先端技術を持っている国、それも自由を象徴するカリフォルニアの風を感じる製品だったし、何よりもこの9インチでモノクロの小さなディスプレイを覗いていると自分の輝かしい未来が見えるような気がしたといったら若い方々はお笑いになるだろうか。

※筆者所有の初代Macintosh
しかし私は現実にMacintoshのリリースから3年後に初めてアメリカの土を踏むことになったし、無論そのきっかけはMacintoshでありコンピュータグラフィックスの存在だった。そしてさらに2年後に思いもかけない機会が訪れ、Macintoshのソフトウェアを開発する会社を作ることになり、良くも悪くも私にとってAppleとの出会い、Macintoshとの出会いは自身の半生を決定づけてしまったといえる。

※Macintoshの背面も美しい
Macintosh以前からApple IIのユーザーだった私はApple Computer Inc.というメーカー名を無論知っていた。しかし我々の情報の窓口は日本総代理店のイーエステディラボラトリ社に限られていた時代であったし、現在のようにインターネットのインフラが存在しなかったこともあってリアルタイムの情報が豊富に入手できるわけはなく、また情報の多くは製品やそのスペック、OSはもとより魅力的な周辺機器たちの存在だった。だからAppleという会社のCEOが誰でどんな人物であるのかなどほとんど気にならない時代だったのである。
そしてAppleという会社を意識し始めた頃、すでにスティーブ・ジョブズはAppleを追われてある種過去の人物となりつつあった。しかし誰もが我が目、我が耳を疑うような出来事が1997年1月のMacworld Expoで起こった。なぜなら11年の空白をもってスティーブ・ジョブズがその壇上に登場したのである。
ところで私が生のスティーブ・ジョブズを見た最初は1989年7月10日、幕張の東京ベイNKホールにおいてだった。その際のエピソードは「スティーブ・ジョブズのプレゼンテーション秘話」として別途紹介してあるが、プレゼンの前に正装した彼とホテル内ですれ違ったときの緊張した顔と壇上に登ってそのカリスマ性を十分に見せてくれた姿はいまだに脳裏にやきついている。
人は歳をとれば自ずと風貌が変わってくるがジョブズのそれは思い切りの良さといえば良いのだろうか、薄くなった髪を撫でつけるのではなくバッサリと刈り込んで頬には髭を蓄えてしまった。しかしそれがまた似合う...格好いいのだから不思議である(笑)。
ともかく製品は勿論だが、人間および企業も寿命というものから逃れられない。それは早いか遅いかの違いはあっても逃れるすべはない...。
そうして考えるとコンピュータという日進月歩の激しい世界で生き残ってきただけでなく、我々に次々と新しい夢を見させてくれるAppleという企業はやはり特異な存在であり、それを根底で支えてきたのは間違いなくスティーブ・ジョブズその人だったに違いない。
1984年1月24日に晴れ晴れしい姿でMacintoshを紹介するジョブズの理念はいまiPhoneやiPadで開花し、ある意味彼の考えてきたパーソナルコンピュータというものの目標は達成できたものと思われる。
誰でもが余計なことを考えずに使えるクローズドなマシンとしてMacintoshは開発されたが、さすがに当時一般の人たちの日常に影響を与えることはできなかった。何故ならパーソナルコンピュータという物自体がまだ特別のものだったし車の価格と比較できるほどそれらは高価でもあった。
街中で「マッキントッシュ」といっても知る人はまずいなかったし「アップル」といってもそれがコンピュータメーカーの名前であることなど認知する人もいなかった...。そしてMacintosh用のソフトウェアを開発する会社を設立した私でさえ市場を大きくしたいとは考えたが正直現在のように子供たちがアップルロゴを見て「iPhoneの会社だ!」などという現実や、電車の車両を見回せば周りに数人iPhoneユーザがいる風景など想像したことはなかった。
スティーブ・ジョブズはそれをやってのけた...。彼は「宇宙に痕跡を残す仕事、世界を変える製品を作る」ことを目標にしてきたがこの30年ほどの短い時間にそれらの主旨は達成できたのではあるまいか。
だとすればスティーブ・ジョブズよ、貴方はAppleそのものであり、いつまでもAppleに関わりたいと願っていることは痛いほど分かるし私たちユーザーも出来ればそうありたいと心から思っている。しかし貴方はいま病気で苦しんでいる時期だし家族もあるのだ。一日でも長く元気でいられるように今度こそCEOの座を譲り顧問にでもなって本当の意味で肩の荷を下ろすときが来たのではないだろうか。
私は貴方たちが生み出したApple IIやMacintoshで人生を変えさせられた一人だが、幸いなことに後悔はしていない。無論さまざまな出来事もあったがエキサイティングで面白い30年だった。そして貴方の名を我々は決して忘れないし事実歴史に残るだろう。貴方は確かにそれだけの仕事をしたのだ...。
スティーブ・ジョブズよ...。男にとって仕事はかけがえのないものだが人生の存在意義は決して仕事だけではない。
この機会にAppleのスティーブ・ジョブズから普通の父親に戻り健康に留意して穏やかな後半生を過ごしてくれることを願っている。そしてAppleだって心配することはない。確かにスティーブ・ジョブズという一大看板なくしてどうなるのかを試されることになるがすでに貴方の蒔いた多くの種があちこちで新しい花を咲かすに違いないと私は楽観している。
日米の時差はともかく、Macintoshは1984年1月24日に正式発表された。無論その発表は27年前のスティーブ・ジョブズその人が行った。そして我々はYouTubeなどでその記念すべき映像を見ることが出来る。
※1984年1月24日、年次株主総会でスティーブ・ジョブズがMacintoshを発表した
長年Appleとスティーブ・ジョブズを追っかけてきた私にはその若かりし頃の自信に満ちた、そして小生意気そうな表情と昨年のWWDCなどにおける痩せこけた顔とがオーバーラップし何ともいえない辛い気持ちになる。
これは単に大病をした、あるいは見るからに老けた彼に対する同情だけではない。なぜならかくいう私も27年前は相応に若く元気であり自分が50歳とか60歳になるなど想像もできなかった(笑)。運命だけでなく歳月もまことに非情である...。

※昨年(2010年)10月、Apple Special Eventで笑顔を見せるスティーブ・ジョブズだがその痩せた姿は痛々しい
Macintoshがなぜ眩しかったか...。それは単に最新のテクノロジーを見せつけてくれただけでなく私にとってアメリカという世界の最先端技術を持っている国、それも自由を象徴するカリフォルニアの風を感じる製品だったし、何よりもこの9インチでモノクロの小さなディスプレイを覗いていると自分の輝かしい未来が見えるような気がしたといったら若い方々はお笑いになるだろうか。

※筆者所有の初代Macintosh
しかし私は現実にMacintoshのリリースから3年後に初めてアメリカの土を踏むことになったし、無論そのきっかけはMacintoshでありコンピュータグラフィックスの存在だった。そしてさらに2年後に思いもかけない機会が訪れ、Macintoshのソフトウェアを開発する会社を作ることになり、良くも悪くも私にとってAppleとの出会い、Macintoshとの出会いは自身の半生を決定づけてしまったといえる。

※Macintoshの背面も美しい
Macintosh以前からApple IIのユーザーだった私はApple Computer Inc.というメーカー名を無論知っていた。しかし我々の情報の窓口は日本総代理店のイーエステディラボラトリ社に限られていた時代であったし、現在のようにインターネットのインフラが存在しなかったこともあってリアルタイムの情報が豊富に入手できるわけはなく、また情報の多くは製品やそのスペック、OSはもとより魅力的な周辺機器たちの存在だった。だからAppleという会社のCEOが誰でどんな人物であるのかなどほとんど気にならない時代だったのである。
そしてAppleという会社を意識し始めた頃、すでにスティーブ・ジョブズはAppleを追われてある種過去の人物となりつつあった。しかし誰もが我が目、我が耳を疑うような出来事が1997年1月のMacworld Expoで起こった。なぜなら11年の空白をもってスティーブ・ジョブズがその壇上に登場したのである。
ところで私が生のスティーブ・ジョブズを見た最初は1989年7月10日、幕張の東京ベイNKホールにおいてだった。その際のエピソードは「スティーブ・ジョブズのプレゼンテーション秘話」として別途紹介してあるが、プレゼンの前に正装した彼とホテル内ですれ違ったときの緊張した顔と壇上に登ってそのカリスマ性を十分に見せてくれた姿はいまだに脳裏にやきついている。
人は歳をとれば自ずと風貌が変わってくるがジョブズのそれは思い切りの良さといえば良いのだろうか、薄くなった髪を撫でつけるのではなくバッサリと刈り込んで頬には髭を蓄えてしまった。しかしそれがまた似合う...格好いいのだから不思議である(笑)。
ともかく製品は勿論だが、人間および企業も寿命というものから逃れられない。それは早いか遅いかの違いはあっても逃れるすべはない...。
そうして考えるとコンピュータという日進月歩の激しい世界で生き残ってきただけでなく、我々に次々と新しい夢を見させてくれるAppleという企業はやはり特異な存在であり、それを根底で支えてきたのは間違いなくスティーブ・ジョブズその人だったに違いない。
1984年1月24日に晴れ晴れしい姿でMacintoshを紹介するジョブズの理念はいまiPhoneやiPadで開花し、ある意味彼の考えてきたパーソナルコンピュータというものの目標は達成できたものと思われる。
誰でもが余計なことを考えずに使えるクローズドなマシンとしてMacintoshは開発されたが、さすがに当時一般の人たちの日常に影響を与えることはできなかった。何故ならパーソナルコンピュータという物自体がまだ特別のものだったし車の価格と比較できるほどそれらは高価でもあった。
街中で「マッキントッシュ」といっても知る人はまずいなかったし「アップル」といってもそれがコンピュータメーカーの名前であることなど認知する人もいなかった...。そしてMacintosh用のソフトウェアを開発する会社を設立した私でさえ市場を大きくしたいとは考えたが正直現在のように子供たちがアップルロゴを見て「iPhoneの会社だ!」などという現実や、電車の車両を見回せば周りに数人iPhoneユーザがいる風景など想像したことはなかった。
スティーブ・ジョブズはそれをやってのけた...。彼は「宇宙に痕跡を残す仕事、世界を変える製品を作る」ことを目標にしてきたがこの30年ほどの短い時間にそれらの主旨は達成できたのではあるまいか。
だとすればスティーブ・ジョブズよ、貴方はAppleそのものであり、いつまでもAppleに関わりたいと願っていることは痛いほど分かるし私たちユーザーも出来ればそうありたいと心から思っている。しかし貴方はいま病気で苦しんでいる時期だし家族もあるのだ。一日でも長く元気でいられるように今度こそCEOの座を譲り顧問にでもなって本当の意味で肩の荷を下ろすときが来たのではないだろうか。
私は貴方たちが生み出したApple IIやMacintoshで人生を変えさせられた一人だが、幸いなことに後悔はしていない。無論さまざまな出来事もあったがエキサイティングで面白い30年だった。そして貴方の名を我々は決して忘れないし事実歴史に残るだろう。貴方は確かにそれだけの仕事をしたのだ...。
スティーブ・ジョブズよ...。男にとって仕事はかけがえのないものだが人生の存在意義は決して仕事だけではない。
この機会にAppleのスティーブ・ジョブズから普通の父親に戻り健康に留意して穏やかな後半生を過ごしてくれることを願っている。そしてAppleだって心配することはない。確かにスティーブ・ジョブズという一大看板なくしてどうなるのかを試されることになるがすでに貴方の蒔いた多くの種があちこちで新しい花を咲かすに違いないと私は楽観している。
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