ラテ飼育格闘日記(82)

先日いつものようにラテと散歩中、すれ違った親子連れの子供がラテを指さしながら「あっ、犬だ!噛まれちゃうよ」と母親にしがみついた。その前日だったか、土佐犬が飼い主をかみ殺したというニュースがあったばかりだからその影響なのだろう..。 


一般的なワンコ、すなわち家犬が人をかみ殺すケースはこれまでにもなくはないがそんなに多いものではない。とはいえ今回のニュースも現実に飼い主が亡くなっており、他にも重軽傷者が出ているわけだから物言いは慎重にしなければならないが、こうしたニュースが犬嫌いや不当な制約に繋がらないようにしたいものだ。 
土佐犬は正確にいうなら”土佐闘犬”であり、文字通り闘犬として作られた犬種である。四国犬などにマスティフ、ブルドッグ、ブルテリアそしてグレートデンといった犬種を掛け合わせ戦うために作られた犬種なのだ。 
雄は体高は60cm以上、体重は90kgほどになり、力が強いから女性が飼うのは難しく、飼育初心者には向かないと言われている。闘犬だからして闘争本能は強く異常なまでに攻撃的になる場合もあるが、普段は主人に従順で大人しいともいう。ただし、イギリスをはじめいくつかの国では土佐闘犬などの闘犬を「危険犬種」としてペット飼育の規制対象に指定している。 

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※梅雨時でも雨の切れ目は緑が美しい


さて、ワンコが人を噛むということは十分あり得ることだ。先日は飼っているトイ・プードルに手を噛まれた飼い主さんが包帯を巻いていた。どうやら自宅で糞を片付けようとしてそれを嫌がった愛犬に噛まれたという。詳しい事情は分からないが可愛らしいトイ・プードルでも本気になったらそれはそれで大変なことになる。 
しかし一般的にこうしたケースは噛み砕こうとするのではなく、上の牙が皮膚に刺さり、人間側が噛まれるのを避けようと手を引くことで傷が大きくなることが多い。ワンコも本気で噛もうというのではなく、あくまで威嚇のために歯を当てただけ...というのが一般的なのだ。しかし手に少しでも傷がつくと我々は「噛まれた」と思ってしまうが、健全なワンコの場合ならあくまで噛むつもりではなく歯を当てるだけなのだ。 
申し上げるまでもなくワンコ達は我々のように両手を思うように使えない。親犬が子犬を運ぶにも咥えて運ぶし、叱る場合も軽く噛んだり口元を押しつけたりする。我々が手を使うほとんどの動作をワンコは口で行うわけで、歯を当てたり甘噛みすることは特別のことではない。 

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※ラテ慢心の笑顔。最近歯が白くて綺麗だと褒められた


ムツゴロウこと畑正憲氏はその著書「犬はどこから...そしてここへ」でワンコの噛むという行動は大きく3つに分けられると言っている。まずソーシャルアグレッションという社会的攻撃で前記したように歯をかみ合わせず開いたまま押しつけるものだ。次が外敵に対するエミネーアグレッションで本当の攻撃行動。最後が捕食のための攻撃であるプレデターアグレッションであるという。 
ワンコと生活する中で一番飼い主が悩むのが最初のソーシャルアグレッションという社会的攻撃だ。家族がいたとすれば最初に子供が噛まれ次に女性が噛まれることが多いという。無論飼い犬たちが人間に対して捕食のための攻撃であるプレデターアグレッションを意識することはまずないはずだ。しかしソーシャルアグレッションはかなり頻繁に毎日どこかで起きていることだろう。 
日本では届けられた咬傷例だけで年間2万とか3万件あり(前記「犬はどこから...そしてここへ」より)、届けられていないものまで含めばその何倍もあるかも知れない。 

畑正憲氏に言わせれば、この社会的攻撃を行うワンコは非行少年みたいに精神にひずみがあるからだという。そして咬み犬は人間社会の反映でもあり、飼い主のちょっとした性癖、行動が犬種によっては顕著に出てしまうらしい。 
社会的攻撃をするワンコたちは成長期の大切な時期に飼い主とあるべきコミュニケーションがなされず、信頼関係が構築されなかったことが原因である場合もあるらしいが、そもそも飼い主ののど笛に噛みついて殺傷するということは愛犬家の一人として考えたくないことであるしやはり尋常なことではない。 
闘犬が飼い主をかみ殺したその原因はそれこそワンコに聞かないと分からないが、「闘犬だから」とのひと言では済まされない問題である。確かに土佐闘犬は前記したように気性は荒く攻撃的で闘争心が強い。だから幼犬の時から忍耐と愛情を持って一貫性のある訓練をしなければならないと言われている。 
とはいえ今回の事件を飼い方がまずかったで済ませることはできないし、そんな無責任な物言いはできないが、ワンコ側から見るなら精神的な病気はともかく、何らかの引き金があったのは間違いない。 
特に雄犬にとって雌犬がからんだり、食べ物がからむと一般のワンコでも突如攻撃的になる場合がある。しかし正常な犬は、噛むという目的で見知らぬ人はもとより飼い主に飛びかかるようなことはしない。まずは態度と声で威嚇し攻撃の予告をするのが普通なのだ。問題は”正常”と”異常”はなかなか見分けられないのだが...。 

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※階下でオトーサンの呼びかけに喜ぶラテ


ラテだって何かのことでオトーサンの手などに強く歯を当てることもある。例えば彼女が怪我をしたとき、その肉球を消毒する場合にどうしても傷口を触ることになり当然痛いわけだ。綿棒で消毒液を傷口に当てた瞬間ラテは無言でオトーサンの手に勢いよく歯を当てに来た...。いわば我々が相手の嫌な行動を手で払いのける行為と同じと考えられる。 
ただし飼い始めた頃ならオトーサンも驚いて手を引くかも知れないが、最近はそうした状況もよく分かってきたしラテを信頼しているからいたずらに驚いたり怖がったりはしない。しかし歯を当てられた手はかなり痛く軽い傷が残る場合もある。 
面白いのは歯を当ててしまった後、すぐ「しまった」と思うのだろう、その場を取り繕うとすることだ。 
「ガッ」とやった後、その場所をペロペロ、オトーサンの口元もペロペロとやるのはなかなか愉快である。 

先日公園でラテは4人の男の子(小学生)に囲まれた。「かっこいいなあ」「狼みたいだね」と勝手なことを言い合っているが当のラテは尻尾をブンブンさせながら喜んでいる。ひとりの男の子が「おじさん、この犬って噛むの?」と聞く。オトーサンは「ああ、噛むよ。虐めるとね」と答えた。男の子達は「うへ~」といいながらラテを撫でてくれた。 
よく「うちの子(ワンコ)は絶対に人を噛まないから大丈夫よ」という飼い主さんもいるが、飼い主はワンコ当人ではない。何が引き金で前記したソーシャルアグレッションの行動が起きるかそれは分からない。そしてワンコとしても正当防衛もあるだろうし強度の興奮などで歯を当ててくることがあり得るから注意はしておかなければならない。 

これまた昨日のことだが、散歩中に幼児(女の子)が母親の手をすり抜けてすれ違いざまラテの頭を抱え込んだ。驚いたのは母親よりオトーサンである。いくらなんでもそんな行動は想定外のことだったし防ぎようがなかったがラテは怒りもせず歓迎もせず為すがままだった。ラテは威嚇するでもなくすぐにオトーサンの身体に前足をかけて抱っこを要求した。ラテの方がビックリしたのかも知れない(笑)。
自分の飼い犬をより美化するわけではないが、正常なワンコはこんな感じでいきなり人に対して「ガブッ」とやらないものだ。そして生意気な言い方になるがワンコと正面から向かい合い、愛犬をよりよく知ろうという努力をしている飼い主さんの愛犬は皆よい子である。 

繰り返すが健全なワンコは人に攻撃されるようなことがない限り本気で歯をむいたり、噛んだりしない。今回のような事件があるとワンコすべてが危ない存在であるかのように思われるのは悲しいことである。 
オトーサンがボールを持っているとき、それを欲しいからとラテは指ごと「ガブッ」などとは決してしない。指の置かれていない部分を咥えにかかる...。また親指と人差し指に挟むような小さなオヤツを差し出してもまずは前歯で当たりを付け、指を噛まないようにと注意をしているのがよくわかる。 
飼い主さんによっては自分の飼い犬をときどき怖いと思うときがあるというがオトーサンは一度もそんな思いにかられたことはない。ラテは生後推定6ヶ月目にオトーサンのところにやってきたから、理想的なワンコと飼い主の信頼関係を築くには少々時期が遅かったかも知れないが、オトーサンは好い子に巡り会えたと思っている。 
さて、ラテはどう思っているのだろうか(笑)。

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員