ラテ飼育格闘日記(79)
ワンコを飼う上で困ることの第一は吠えることに違いない。時と場所を選ばす吠え続けるなら確かに近所迷惑にもなるが、実は吠えるようなワンコにしたのは人間だという。ワンコの先祖と考えられているオオカミはほとんど吠えないのだ。
飼い犬の困った場面のひとつに「吠える」という事実がある。玄関のチャイムが「ピンポ~ン」と鳴れば吠え出すし、訪問客はもとより郵便職員や宅配便のお兄さん、ピザ配達のお兄さんが来れば猛烈に吠えるというので多くの飼い主が困っているという。特に配達に来た人は用事が済めばすぐに立ち去るわけだが、これがワンコにして「自分が吠えたから去った」と思い込ますことになり吠えることを増長させるらしい。
犬種や性格、そしてこれまでの飼育環境のあれこれで違うだろうが、ワンコは実によく吠えるというイメージが強い。だからワンコの飼い方・躾け方といった類の本には必ず無駄吠えの対処方法などにページが割かれている。そうした中にはワンコが吠えたとき、水で薄めた酢をワンコの頭上にスプレーすると良いとか、吠えると自動的に嫌な臭いが出る器具などが販売されているくらいである。また残念なことに飼い犬の声帯を施術により声がでないようにしてしまうケースもあるそうだが、言うまでもなくそれは行きすぎであり虐待である。
オトーサンが現在の住居に引っ越してくる前は埼玉県に住んでいたが、マンションの隣の部屋にはダックスフンドを飼っている夫婦がいた。実はオトーサンたちが入居したときにはすでにペットを飼うことは管理組合で禁止されていたのだが、それまで飼っていたワンコを処分するわけにもいかずに一代限りということで許可されていたらしい。
このダックスがまあまあよく吠えるのだ。どうやらいつもは室内の玄関付近にいるらしく、ウィークディのほとんどは日中飼い主不在という環境のようだった。だからひとつには寂しいから吠えるし、廊下側に人が通ればその気配で吠えるというありさまだった。
オトーサンはワンコが好きだし、隣とはいえその吠え声も騒音というほどではなかったので正直苦にならなかったが、逆にあれだけ一日中吠えているとワンコ自身の咽がいかれてしまうのではないかと心配になるほどだった。

※散歩で通る道は緑が濃くなり綺麗な季節になった
ではラテはどうなのか...。散歩の途中で怖い、あるいは嫌いなワンコに遭遇すれば吠えるし、日中起きているときには出窓のたたきに寝ころびながら道行く人を観察しつつ吠えるときがある。
出窓の下は6メートル幅ほどの道路があり、その向こう側にはいわゆる遊歩道が平行に走っている。ラテはそこを行き交う人やワンコ、自転車などに向かって吠えるわけだが、ラテとオトーサンの住み処がラテの吠え声で分かったというお仲間の飼い主さんも多々いる(笑)。
また日中、嬉しかったりすると吠え声と態度で感情を示すが、一口に吠えるといっても多様な声を出す。何しろ我々のように言葉を喋れないのだから、声を出すとすれば何らかの吠え声になるわけだ。だから「ウォ~ン」という遠吠から「アン、アン」といった甘え声までパリエーションは豊富であり、最近では何を言いたいのかが大分わかってきたつもりである。

※ラテは出窓の狭いたたきに乗り、道行く人たちを観察するのが楽しみなようだ
しかしオトーサンの感想としてはそもそも普段は無駄吠えはないし夜泣きすることもなく総じてお利口さんだと思っている。それに...“無駄吠え”と言ったが、人間には無駄吠えでもワンコ側には吠える理由があると思われる。人間の子供でも泣きわめき、しまいには自分で何故泣いていたのかを忘れて泣き続ける場面があるが、ワンコにも同様な一面を感じるものの、何の意味も脈絡もなく吠え続けることは本来考えられないと思う。
寂しいとか、かまって欲しい、お腹が空いた、あるいは怖いなどなどの理由があるはずだ。第一現在のワンコたちは我々と同様にストレスに囲まれている。一昔前みたいに野良犬同然に駆けずり回ることができず、外出時にはリードで束縛されるし、自分の行きたいところに行けない。その上散歩中にゆっくりクンクンしようとしても飼い主に引っ張られる...。
食事だってお腹が空いたとしても食べたいときに食べれるわけではないし、好きなオモチャも飼い主が出してくれなければ遊ぶことができない。その飼い主が夜遅くにならないと帰宅しないという家もあるだろうしワンコも色々と大変なのだ。だから声ぐらい出してみようという気になるに違いない(笑)。
こうして考えるとワンコたちは日々かなりのストレスにさらされているわけで、その上「吠えちゃダメ!」などと叱られ続けるのではたまったものではないだろう。吠えたら叱るとか薄めた酢を霧吹きで撒くといったいわゆる対処療法ではなく、本来ならなぜ鳴くのか...吠えるのかという原因を知り、なるべくその原因を取り除いてやることが必要なのではないだろうか。だからオトーサンとしては、夜とか早朝といった時間に吠え続けるのは困るが、吠えるのもワンコの務めと考え、叱るのではなく正面から向かい合ってあげたいと常々考えてきた。
だから当初は苦手なワンコに遭遇して吠えたときには「ダメ!」と叱って止めさせようとしたが、いまではその場からラテを離すことを考えるようになった。

※ワンコの群れから離れて木陰で一休みするラテ
ただしラテは本格的に吠えると身体も大きくなったしマズルも長い犬種だから見事なほど大きなそしてよく通る吠え声を上げる。毎日通っている近隣の広い公園でもラテが一端吠えはじめると、その吠え声は恥ずかしいほどよく通る。そしてラテが前方にいる鳩やカラスを狙って忍び寄る姿や天を仰ぐように声を上げる遠吠えなどを見ていると「なるほど、オオカミの血を引いているな」という気がしてくる。
しかし、実のところオオカミは我々が考えるほど、身近のワンコほどは吠えないという。それはちょっと考えれば当然で声を出すことは狙っている獲物や天敵の人間たちに居場所を知らせることになる。第一もともとオオカミは「ワンワン」とは吠えないらしい。このワンコらしい吠え声はどうやら人間と生活する中で会得されたもののようだ。
しかし現実のワンコたちは一般的によく吠えるのも確かだ。ワンコの先祖と考えられているオオカミがあまり吠えないのにワンコたちは何故こんなにもよく吠えるのか?それは吠えるワンコを人間が欲した故である。
これまでにも何回か人間とワンコが歴史上どのように遭遇したのか、そしてワンコはなぜ家畜化の道を選択したのか...といったことに関してお話をしてきたが、我々の祖先がワンコに期待した最初のことはいわゆる警戒ならびに警報係りだった。ワンコの寝床と食事を人が保証する替わりにワンコは外敵(他の部族や猛獣たち)の侵入をいち早く知らせ、場合によっては飼い主と一緒に戦ったわけだ。大げさでなく人類は火を手に入れたことと同じ、いやそれ以上に犬と契約を結んだことで生き延び進化ができたと考える学者もいるほどなのだ。
したがって吠えないワンコは意味がなかったわけで、吠えるワンコ同士が意図的に掛け合わされてより吠えるワンコが増えていったと考えられる。だからワンコが吠えるのは我々の祖先の意図的な選択であり、ワンコの知ったことではないのである(笑)。
それから吠えることは威嚇ととらえられる場合が多いがそんな単純なものではない。例えばいつも可愛がってくれる人が近づいていると挨拶のためか、遊んで欲しいという要求なのか「ウォウウォウ...ワンワン」といった吠え声を発するがそのとき尻尾はブンブンと振り回している。
ラテは今も出窓のたたきに寝そべって道行く人たちの姿を追っているが、その表情は好奇心に満ちており、まるで自分も道行く人やワンコたちと一緒に歩いているようなつもりになっているようだ。
飼い犬の困った場面のひとつに「吠える」という事実がある。玄関のチャイムが「ピンポ~ン」と鳴れば吠え出すし、訪問客はもとより郵便職員や宅配便のお兄さん、ピザ配達のお兄さんが来れば猛烈に吠えるというので多くの飼い主が困っているという。特に配達に来た人は用事が済めばすぐに立ち去るわけだが、これがワンコにして「自分が吠えたから去った」と思い込ますことになり吠えることを増長させるらしい。
犬種や性格、そしてこれまでの飼育環境のあれこれで違うだろうが、ワンコは実によく吠えるというイメージが強い。だからワンコの飼い方・躾け方といった類の本には必ず無駄吠えの対処方法などにページが割かれている。そうした中にはワンコが吠えたとき、水で薄めた酢をワンコの頭上にスプレーすると良いとか、吠えると自動的に嫌な臭いが出る器具などが販売されているくらいである。また残念なことに飼い犬の声帯を施術により声がでないようにしてしまうケースもあるそうだが、言うまでもなくそれは行きすぎであり虐待である。
オトーサンが現在の住居に引っ越してくる前は埼玉県に住んでいたが、マンションの隣の部屋にはダックスフンドを飼っている夫婦がいた。実はオトーサンたちが入居したときにはすでにペットを飼うことは管理組合で禁止されていたのだが、それまで飼っていたワンコを処分するわけにもいかずに一代限りということで許可されていたらしい。
このダックスがまあまあよく吠えるのだ。どうやらいつもは室内の玄関付近にいるらしく、ウィークディのほとんどは日中飼い主不在という環境のようだった。だからひとつには寂しいから吠えるし、廊下側に人が通ればその気配で吠えるというありさまだった。
オトーサンはワンコが好きだし、隣とはいえその吠え声も騒音というほどではなかったので正直苦にならなかったが、逆にあれだけ一日中吠えているとワンコ自身の咽がいかれてしまうのではないかと心配になるほどだった。

※散歩で通る道は緑が濃くなり綺麗な季節になった
ではラテはどうなのか...。散歩の途中で怖い、あるいは嫌いなワンコに遭遇すれば吠えるし、日中起きているときには出窓のたたきに寝ころびながら道行く人を観察しつつ吠えるときがある。
出窓の下は6メートル幅ほどの道路があり、その向こう側にはいわゆる遊歩道が平行に走っている。ラテはそこを行き交う人やワンコ、自転車などに向かって吠えるわけだが、ラテとオトーサンの住み処がラテの吠え声で分かったというお仲間の飼い主さんも多々いる(笑)。
また日中、嬉しかったりすると吠え声と態度で感情を示すが、一口に吠えるといっても多様な声を出す。何しろ我々のように言葉を喋れないのだから、声を出すとすれば何らかの吠え声になるわけだ。だから「ウォ~ン」という遠吠から「アン、アン」といった甘え声までパリエーションは豊富であり、最近では何を言いたいのかが大分わかってきたつもりである。

※ラテは出窓の狭いたたきに乗り、道行く人たちを観察するのが楽しみなようだ
しかしオトーサンの感想としてはそもそも普段は無駄吠えはないし夜泣きすることもなく総じてお利口さんだと思っている。それに...“無駄吠え”と言ったが、人間には無駄吠えでもワンコ側には吠える理由があると思われる。人間の子供でも泣きわめき、しまいには自分で何故泣いていたのかを忘れて泣き続ける場面があるが、ワンコにも同様な一面を感じるものの、何の意味も脈絡もなく吠え続けることは本来考えられないと思う。
寂しいとか、かまって欲しい、お腹が空いた、あるいは怖いなどなどの理由があるはずだ。第一現在のワンコたちは我々と同様にストレスに囲まれている。一昔前みたいに野良犬同然に駆けずり回ることができず、外出時にはリードで束縛されるし、自分の行きたいところに行けない。その上散歩中にゆっくりクンクンしようとしても飼い主に引っ張られる...。
食事だってお腹が空いたとしても食べたいときに食べれるわけではないし、好きなオモチャも飼い主が出してくれなければ遊ぶことができない。その飼い主が夜遅くにならないと帰宅しないという家もあるだろうしワンコも色々と大変なのだ。だから声ぐらい出してみようという気になるに違いない(笑)。
こうして考えるとワンコたちは日々かなりのストレスにさらされているわけで、その上「吠えちゃダメ!」などと叱られ続けるのではたまったものではないだろう。吠えたら叱るとか薄めた酢を霧吹きで撒くといったいわゆる対処療法ではなく、本来ならなぜ鳴くのか...吠えるのかという原因を知り、なるべくその原因を取り除いてやることが必要なのではないだろうか。だからオトーサンとしては、夜とか早朝といった時間に吠え続けるのは困るが、吠えるのもワンコの務めと考え、叱るのではなく正面から向かい合ってあげたいと常々考えてきた。
だから当初は苦手なワンコに遭遇して吠えたときには「ダメ!」と叱って止めさせようとしたが、いまではその場からラテを離すことを考えるようになった。

※ワンコの群れから離れて木陰で一休みするラテ
ただしラテは本格的に吠えると身体も大きくなったしマズルも長い犬種だから見事なほど大きなそしてよく通る吠え声を上げる。毎日通っている近隣の広い公園でもラテが一端吠えはじめると、その吠え声は恥ずかしいほどよく通る。そしてラテが前方にいる鳩やカラスを狙って忍び寄る姿や天を仰ぐように声を上げる遠吠えなどを見ていると「なるほど、オオカミの血を引いているな」という気がしてくる。
しかし、実のところオオカミは我々が考えるほど、身近のワンコほどは吠えないという。それはちょっと考えれば当然で声を出すことは狙っている獲物や天敵の人間たちに居場所を知らせることになる。第一もともとオオカミは「ワンワン」とは吠えないらしい。このワンコらしい吠え声はどうやら人間と生活する中で会得されたもののようだ。
しかし現実のワンコたちは一般的によく吠えるのも確かだ。ワンコの先祖と考えられているオオカミがあまり吠えないのにワンコたちは何故こんなにもよく吠えるのか?それは吠えるワンコを人間が欲した故である。
これまでにも何回か人間とワンコが歴史上どのように遭遇したのか、そしてワンコはなぜ家畜化の道を選択したのか...といったことに関してお話をしてきたが、我々の祖先がワンコに期待した最初のことはいわゆる警戒ならびに警報係りだった。ワンコの寝床と食事を人が保証する替わりにワンコは外敵(他の部族や猛獣たち)の侵入をいち早く知らせ、場合によっては飼い主と一緒に戦ったわけだ。大げさでなく人類は火を手に入れたことと同じ、いやそれ以上に犬と契約を結んだことで生き延び進化ができたと考える学者もいるほどなのだ。
したがって吠えないワンコは意味がなかったわけで、吠えるワンコ同士が意図的に掛け合わされてより吠えるワンコが増えていったと考えられる。だからワンコが吠えるのは我々の祖先の意図的な選択であり、ワンコの知ったことではないのである(笑)。
それから吠えることは威嚇ととらえられる場合が多いがそんな単純なものではない。例えばいつも可愛がってくれる人が近づいていると挨拶のためか、遊んで欲しいという要求なのか「ウォウウォウ...ワンワン」といった吠え声を発するがそのとき尻尾はブンブンと振り回している。
ラテは今も出窓のたたきに寝そべって道行く人たちの姿を追っているが、その表情は好奇心に満ちており、まるで自分も道行く人やワンコたちと一緒に歩いているようなつもりになっているようだ。