ラテ飼育格闘日記(78)

ワンコと飼い主との関係は特別なものだ。飼い主の顔や雰囲気まで愛犬が似てくるとよく言われる。だから初対面のワンコと遭遇するときに重要なのはワンコそのものよりそのリードを引いている飼い主さんを観察することにある。 


我々も初対面の人と対峙するときには多少緊張し襟を正すが、同時に第一印象やらその肩書き、そして数分会話をすることで正直好き嫌いといったことまで分かってしまうことがある。とはいえ私たちは例え意見が合わなくても、また虫が好かなくてもそうした感情をストレートに表に出さないし、ましてやすぐに殴り合いを始めることはない。 
しかしワンコとなると初対面同士はいささか注意をしなければならない。勿論ワンコの性格やらで大きく違うから「うちのワンコは初対面のどんなワンコでもガウガウすることはない」という飼い主さんもいるかも知れない。しかし交通事故同様にこちらが注意をしていても相手がどんなワンコなのかが分からないし、もしかしたらいきなり飛びかかってくる可能性だってあり得るわけだ。 

お互いにワンコ同士のことだとはいえ、諍いで怪我をしたりさせたりは避けたいものだが、この見極めがなかなか難しいのである。 
ラテも最近とみにワンコに対しての好き嫌いがはっきりしてきたように思う。したがってラテが公園デビューした当時は仲良くしていただいたワンコに対してどういうわけか歯をむき出したりすることがあるし、反対にラテが友好的なのに威嚇される場合もある。その良し悪しや原因はともかく、すでにラテが嫌いなワンコ、あるいは怖いと思っているワンコはほぼ分かっているから無理に近づかせたりはしないし、注意をすることができるがそれが初対面やそれ同然のワンコとの遭遇はなかなか気を使うものである。 
初対面のワンコと出会うとき、そのパターンは約3通りある。ひとつはまったく相手を無視して視線も合わさず通り過ぎる場合だ。二つ目は近づき合って鼻と鼻をツンツンしたりお尻の臭いを嗅ぎ合う場合だが、ここまでくればまず大げんかをすることはない...。しかし3番目は最初から喧嘩腰で近づいて吠え合い、お互い飛びかかろうとする場合もあり得る。だから向こうからワンコがくると相手を見極めるまで安心できないのだ。 
危険はワンコ同士だけではない。例えばワンコが好きだからと近づいてきたワンコに「いい犬ですねぇ」などと手を出した途端にガブッとやられる可能性だってゼロではない。 

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※公園の芝生も緑が濃くなってきた。しかしこの時期の朝の散歩は草木の露に濡れて意外にラテは汚れるのだ


問題はこちらにとって危険なワンコをどのように見極めるかだが、野村獣医科病院長の野村潤一郎氏はその著書「犬に関する100問100答」のなかでそれは簡単なことだと書いている。なぜなら「正常な飼い主が連れているワンコは正常だと思っていい」とのこと。 
無論人間は外観と中身が同じというような単純明快な生き物でないから、それこそ飼い主を見極めることは簡単ではないように思う。それでも野村先生のいうことはその通りだと思う。 
ラテにとってなぜ嫌いなワンコと好きなワンコがいるのか...。こればかりはラテが教えてくれない限り分からないのだが、総じてオトーサンが親しみを持っている飼い主さんのワンコとはトラブルが少ないことは確かなのだ。いや、もしかするとオトーサンの好き嫌いがラテに敏感に伝わっているという部分もあるかも知れないがそれでもそんなことばかりで見極めがつくほど単純ではないように思えるのだが...。 
しかし性別や年齢はともかく、ラテが気を許しているワンコたちの飼い主さんは皆さんバランス感覚に優れ、如在のない方たちである。性格や考え方は当然それぞれ違うわけだが、他人を尊重し、自身の飼い犬だけでなく他のワンコをも愛するという気持ちのゆとりをお持ちの方たちだと感じる。僭越ながらそうした生活態度が飼い犬たちにも当然伝わっていくように思える。 

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※この笑顔の先には何があるのでしょうか(笑)


例えば悪気はないのだろうが、気になる人にも巡り会う...。挨拶をしても挨拶を交わさない人もいるし、ワンコ同士の交流を面倒だと思うのか、挨拶以前に知らないふりをする人もいる...。 
そう...特殊な例だがたまたますれ違うワンコ連れの男性は最近挨拶もできない状況にある。何故ならここのところ10回ほどすれ違ったがそのすべて、彼は携帯電話を耳に当てているのだ。 
オトーサンの見るところ、どうやらそれは本当に電話で会話をしているのではなく、すれ違う人とのやりとりがうっとうしいからと...挨拶を避けるための演出だと見ているのだが(笑)。 
思ってもみていただきたい。日にちも曜日もそして時間帯も違うその日その時に8回も10回もすれ違ったのにその全てが電話中だなんて事は確率的にもあり得ないではないか。あるいは音楽でも聴いているのかと思ったが、話をしている素振りなのである。 

また困った飼い主もいる。これはオトーサン自身が会ったのではなく別の飼い主さんから聞いたことだが、初めて会ったワンコがとても綺麗なわんこなので褒め言葉のつもりで「綺麗なワンコですねぇ」と声をかけたそうだ。しかしワンコの飼い主から帰ってきた言葉は「この子はワンコではありません!ちゃんと名前がついているのよ」と言ったらしい。そんなの初対面で知るわけがないではないか...。 
初対面のそれも褒めてくれた相手に対しての返事とは到底思えないし礼を失した物言いである。ともかくワンコを連れていることはまともな人間である証明にはならない...(笑)。 

ただし救われることは、もしこれがビジネスの世界なら好き嫌いも言ってはいられないが、お互いがワンコ連れで行き会うという共通項があるだけであり、もし嫌ならひと言も言葉を交わさなくても別に何の影響も及ぼさないことだ。第一お互いに名前や人柄を知っているわけでもないわけで、例えばラテが怖がったり嫌ったりするワンコに無理やり近づけて仲良くさせるような努力は可哀想だし益もないだろう。したがって付き合いが悪いからとお互い文句をいう筋合いではないわけだ。 
とはいえこちらはすでにいい歳のオヤジであり、すれ違う相手が誰であってもワンコ連れなら「おはようございます」とか「こんばんは」といった挨拶が自然に口から出てしまう...。やはりできることなら挨拶ぐらいはお互い気持ちよくしたいものだ...。 
いつもの公園に出向き、そこに馴染みの飼い主さんたちが散歩をしているとオトーサンも嬉しくなるしラテの表情も生き生きとしてくる。ワンコ共々今日も皆さん元気なんだというひとつの確認にもなる。2,3日馴染みの方をお見かけしないと「あれ...具合でも悪いのかな...」といらぬ心配をしてしまう(笑)。 
これから梅雨時の季節であり、雨の日は皆さん散歩を取りやめたり時間帯をずらしたりとお仲間と会えなくなることが多い。ラテにとって1年で一番嫌な時期に違いない。 

さて、それはともかくオトーサン自身も初対面の方から見れば、少々妖しい人物かも知れない。手を保護する目的とはいえ両手に革製のグローブをつけ、紫外線禁物の眼のためにサングラスをかけ、キャップをかぶっているオヤジというのもなかなか近寄りがたい存在なのかも知れない(笑)。そして「お前は正常な飼い主なのか?」と問われれば「勿論!」と答えるが、そもそもおかしな人間は自分のことを正常と思っているものだというから...怪しいかも知れない(笑)。 
だから...飼い主からワンコの性格を知ることもできるだろうが、自分のことは棚に上げての話しになるものの、逆にワンコの行動から飼い主の性格や生活を想像するのも面白いと思っている昨今である。 
あのシャーロック・ホームズも「這う男(人)」の中でいみじくもこう言っている。「犬というものはその家族の生活の鏡だ。陰気な家に陽気な犬なんかいないし、幸福な家に悲しそうな犬なんかいやしまい。どなりちらしている人間のところには吼えたてる犬が、危険な連中のところには危険な犬、というわけだ」。

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員