ラテ飼育格闘日記(72)

犬のイメージとはどのようなものか...。一般的には「噛む」とか「不潔」というイメージではないだろうか。そして中には人畜共通感染症といったことを心配している人たちも多いという。しかしそのほとんどは過剰な心配なのではないか。 


確かに昨今「除菌」「殺菌」グッズが好まれている世間から見ればワンコはバッチイ存在に映るに違いない。裸足で歩き、糞尿の臭いを嗅ぐばかりか食べたり舐めたりする場合もあるし、路上に落ちているゴミ類やミミズなどに興味を持って咥えたりする。だからというわけではないがワンコの口の中はバイ菌で一杯であり狂犬病といった特異な病気は別にしてもその鋭利な歯で傷つけられたら即医者にいくべし...と考える人たちも多い。そして飼い犬を心底愛している飼い主さんたちの中にも口移しで食べ物をやり取りするのだけはやらないという人もいるらしい。また日常飼い主は愛犬の糞尿の始末をしなければならないし、常に雑菌と無縁ではない。 
第一ワンコの体毛も始末が悪い。掃除機をかけているその向こうでラテが後ろ足で身体を掻き毛を落としている。毎日散歩の後に身体を拭いているとはいえ、その軽い毛は家中に舞い上がりラテを入れない部屋にも我々の衣服などに付いた毛が丸まって落ちている。そればかりでなく、どんなに気をつけても例えば風呂のお湯の中にも自分で入れた紅茶の中にもラテの毛が舞い込むことがある。先日など違和感があるからと鏡をのぞいたが、オトーサンの口にラテの毛が入っている...といった具合だ。だからアレルギーの人はもとよりだが、神経質な人はワンコは飼えないかも知れない(笑)。 

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※桜はほとんど散ったが数本葉桜で残っている木々がある


ましてや昨今は人畜共通感染症とか人獣共通感染症といった、人と動物の間で相互に感染する病気が危惧されているらしい。これらに関して正式には1975年にWHO(世界保険機関)で「脊椎動物と人間の間で通常の状態で伝播しうる疾病」と定義されている。 
そもそも鳥類そして家畜にいたるまでさまざまな生き物を対象にするなら、鳥インフルエンザとか狂牛病を考えてもその怖さは理解できる。しかし話をワンコに限るなら、ムツゴロウ動物王国の石川利昭氏はその著書「2000匹が教えてくれた犬の真実~飼育マニュアルに吠えろ!」で、「現在の日本における犬の飼い方であれば...ワクチンと駆虫を行っていれば、必要以上に神経質にならなくていい」と言っている。そしてアメリカでは産婦人科の医者が「赤ちゃんを産もうと思ったら、その前に犬を飼いなさい」と勧める時代になったという。何故なら犬を飼うことで心と体の免疫力が高くなるからだ。 

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※オトーサンが写真を撮っているなど歩みが遅いとき、ラテは立ち止まって待っていてくれる


またすでに古典の類に入るのかも知れないがエーベルハルト・トルムラー著「犬の行動学」(中央文庫)には「(人間の生活にとって)不潔さは絶対に必要である」と書かれている。そして著者は7人の子供を80匹の犬たちとの生活の中で育てたが、誰一人生まれてこの方病気になった者はいないという。続いて「新に到着した赤子の顔を、犬が嘗めるのを当然のこととして我慢できないような人は、犬も、そして子供も持つべきではないという助言を守るべきです」と書いている。 
「無菌」とか「除菌」といったことに気を使う方々にとってこうした物言いは理解できないかも知れないが、オトーサンらの子供の頃は現在とは比較にならない不潔さの中で生活していたともいえる。トイレはくみ取り式だったし、子供の遊びといえば野良猫や野良犬は勿論のことだが、虫をいじくり回し、土の付いた手でおやつを食べたものだ。それでもこの歳になって持病はあるものの、寝込むこともなく元気で生きている(笑)。 
第一日常も程度問題はともかく小さな傷は絶えない。ラテをはじめとして公園で会う幾多の愛らしい友達たちに飛びつかれたり、おやつを差し出したときに歯が当たったりとオトーサンの手足はそうした小さな傷が多々あるものの消毒さえ忘れてしまうことが普通だ。そして自宅に戻って傷を思い出して見ていると目敏いラテが寄ってきて嘗めてくれるから...それで終わりだ。 
またラテは気が乗ればよくオトーサンたちの顔や手を嘗めるし、時には口元を嘗めるついでに舌まで入れる濃厚なディープキスをしてくれる。問題はその直前にお尻でも嘗めているかも知れないわけだが、そんなことを考えていてはワンコと人生を楽しむことはできない。だから逆にオトーサンはアイスクリームを食べていると欲しがって寄ってくるラテに唇を突き出す始末だ(笑)。 
ただし散歩から戻り、ラテの身体をきれいにした後は手洗いとうがいを欠かさないが、オトーサンが気遣っているのはその程度である。 

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※この顔を見ると何でも許してしまいそうになる(笑)


さて、今年も狂犬病予防注射の季節がやってきた。それを機会にラテの健康診断もやりたいし、6月から半年間はフィラリア予防のため薬を飲まさなければならない。そして秋には混合ワクチン接種だが、こうした医者の指導に従い予防と検査をきちんと続けていれば現実問題としてラテとの接触は危険なものとはならないと考えている。 
今日もラテとオトーサンは久しぶりの青空の下、大きな水たまりがあるとラテが抱っこを要求するのに目尻を下げ(過保護犬だ)、微風で舞う桜の花びらを追いかけ、小学校の校門付近で馴染みの女の子たちと遊び、カフェで一休みして氷のひとかけらをラテに与え、行き交う新入社員やその研修生たちを追い抜き、公園ではコーギー犬のアポロちゃんと格闘ならびに追いかけゴッコをし、あちこちの飼い主さんにオヤツをいただきながら夕方の散歩を楽しんだ。 
戻ってみれば、ラテは四つ足を中心にして泥だらけだしオトーサンの両手もリードを引いたり、ワンコたちに飛びかかれたりして同じように汚れている。その汚れは後回しにしてまずはラテの身体をきれいに拭きブラッシングするが、その合間にもラテはペロペロとオトーサンの顔を嘗め上げる。 
ラテを解放してからウンチ袋の始末をし、最後に散歩で汚れた衣服を着替えて手を洗ったり顔を洗ったりする頃になりやっとオトーサンの息づかいも普通に戻ってくる。 
咽も渇いたし小腹も空いたから「コーヒーでも淹れようか...」と独り言をつぶやくと、隣でラテが「ウォン!」と吠えた。 

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員