ラテ飼育格闘日記(69)

一般的にワンコとその知性のイメージを作り上げたのは「名犬ラッシー」だと思われる。ラッシーはただの犬ではなく人間の友であり、主人たちを守る正義の味方だった。しかし私はそれ以前にラジオドラマ「ペスよ尾を振れ」で人間とワンコのあり方を学んだように思う。 


いまワンコを飼っている人たちの間で映画「犬と私の10の約束」が話題になっている。涙腺が緩くなっているオトーサンはアップルのサイトにある予告編を見ただけで...嗚呼...ダメなのでまずは本編など見られるはずもない(笑)。 
最近はペットブームもあってこうした動物をテーマにした映画やテレビ番組も目立つが、オトーサンにとって最初のワンコドラマといえば、それはラジオドラマだった...。 
子供の頃、外で遊び回った後に帰宅すると夕飯前にラジオの前に座ることが日課の時代があった。「赤胴鈴之助」とか「まぼろし探偵」などといった多くの子供向けラジオドラマがあったが、その中でも印象深かったドラマが「ペスよ尾を振れ」だった。 
その主題歌「ペスよ尾を振れワンワン吼えろ 嵐が来たって恐れずに...」は今でも口ずさむことができる(笑)。ペスというのがワンコの名でスピッツブームを巻き起こしたほどの人気ドラマだったが主人公の少女を演じたのが松島トモコだった。 
当時は知らなかったがこの「ペスよ尾を振れ」は昭和30年代前半、少女マンガ雑誌「なかよし」に連載された「ペスよおをふれ」(山田えいじ著)というマンガが原作だったようだ。そしてラジオドラマもその直後、すなわち昭和30年代に全国放送された。 

ストーリーはいわゆるお涙頂戴もので(笑)、船舶事故で母と姉を亡くし、そのショックで父は入院してしまった主人公の少女ユリが、叔母さんを訪ねて飼い犬のペス(スピッツ)と一緒に旅をするというお話しである。 
少女ユリとベスは旅の途中で離別と再会を繰り返しながら全国を放浪する...。子供心にワンコってなんて素晴らしい動物なんだろうと思いながらお腹の空くのも忘れて聞き入ったものである。 
ラジオドラマの中のペスは飼い主思いのお利口さんワンコだったが、ラジオドラマであっても子供だった私の心にはドラマに登場する街並みや、ペスがユリに向かって走ってくる情景はその場にいるように”見えた”ものだ。しかしオトーサンの小学生時代はワンコを飼いたくても飼える環境ではなかったから、これまた夕刻になるとアパートの玄関に餌をもらいに来る野良犬のブラッキーの頭を撫でる程度しかワンコとの接触はなかった。 

page5_blog_entry208_1.jpg

※こんな可愛い表情をされるとオトーサンはつい抱きしめてしまう(笑)


こうして文章に書くと大変大げさに思えるが、オトーサンにとってワンコを飼うことは子供の時から段々と大きくなってきた夢だったのである。ただし振り返ってみると結果論だが、この歳になってからワンコと生活することは悪くない選択だったと思う。よく子供の情操教育としても、また命の大切さを教えるために子供にペットを与えるというケースも見聞きしたが、私見では親がきちんとしたポリシーを持って接していないと子供にとっては勿論、ワンコにとって幸せな結果とならない場合が多いと思う。 
なぜなら子供にとっての毎日はそれこそ世界はすべて自分を中心に回っている感覚だし、楽しいことや知りたいこと、欲しい物ばかりが気になって正直ワンコどころではない。事実ワンコをかまっているより楽しいことが山ほどあるはずだ。そしてまたワンコにとってはオモチャと勘違いされた扱いをされることはストレスの原因にもなる。 

page5_blog_entry208_2.jpg

※散歩の途中にある桜並木の多くはすでに満開だ


ストレスといえば、昨今のワンコは人間同様ストレスの真っ只中にいるという。前記した私の子供時代に飼われていたワンコのほとんどはいわゆる外飼いであり、四六時中家の中で人と生活していたワンコはほとんどいなかった。餌だってペットフードなどなかったから、今なら塩分がどうの...といって敬遠するような味噌汁を余ったご飯にぶっかけた程度のものだった。 
そうした時代と比べるといまの飼い犬たちは幸せのように思えるが、逆に”かまい過ぎ”でワンコはストレスを増しているという。 
先日その書名が気になったので「犬がどんどん飼い主を好きになる本」という一冊を買ってみた。それによると飼い主がよかれと思ってやっていることの8割が、実はワンコにとってストレスだという...。本著の著者は1万頭と接してきたというカリスマ訓練士であり、そういえば私もラテを飼った直後に同じ著者の「愛犬の困った!をカンタンに解決する裏ワザ77」という本を買ったことがある。 

page5_blog_entry208_3.jpg

※「犬がどんどん飼い主を好きになる本」表紙(青春出版社刊)


ただしオトーサンにとってはこれらの著書の内容の多くがラテに引き合わせて考えた場合にどうも納得いかないのである(笑)。確かに一般的概念のワンコを対象とするなら筆者のいうとおりなのかも知れないが、ワンコにも個性があり、そもそもワンコという動物のあれこれに関して現在も様々な学説があるわけで一刀両断にいわれても...なんだかなあと思う。 
飼い主としては著名な訓練士の指導を自分の飼っているワンコに照らし合わせると上手く行かず、かえって迷ってしまう部分があるようにも思える。またワンコの問題行動の多くをストレスと結びつける考え方は、何でもかんでも性衝動と結びつけるあのフロイトを思い出す。ワンコはもとより人間もそんな単純な生き物ではないと思うのだが...。 

一般的に信じられている「犬は狼の子孫である」とか「人と犬との関係は主従関係」といった考え方はワンコに関して勉強すればするほど、上手く言えないものの...どこかピントこないものを感じるのだ。 
あのノーベル賞受賞の動物行動学者コンラート・ローレンツの多くの著作をはじめ、エーベルハルト・トルムラーの「犬の行動学」あるいはスタンレー・コレン一連の著作、スティーブン・ブディアンスキー「犬の科学」、シーザー・ミラン「あなたの犬は幸せですか」などをはじめ日本の多くのワンコやその行動学、あるいは育て方の本を読み日々ラテの行動と照らし合わせて考えている。しかし特にワンコの訓練という立場から書かれた本に違和感を覚えるようになった。それらの論点につき理窟では理解できるものの、目の前にいるラテと対峙するとその多くの”やりかた”は単なる方法論の一例に過ぎず、不確定要素の多い天気予報でも見ているようにしか思えなくなる(笑)。 

page5_blog_entry208_4.jpg

※新調のレインコートを着て少し緊張しているラテ


「犬がどんどん飼い主を好きになる本」の中にも指摘があるようにとても犬は順応性が高い。したがってそれだけ順応性が高いのなら、ワンコが生存を続け生き延びていく上に必要な人間という生き物に対し進化論的に考えても狼とは相容れないほど変化していったはずだ。そして最近の研究では事実狼とはその習性も大きく違うことも知られるようになった。 
ワンコにとって人間とは本来神聖にして冒すべからざる存在であり、飼い主は単なる群れの中のリーダーといったポジションでないように思えるのだが...。ともかく昨今のこうしたノウハウ本の多くは技術指向過ぎると思うのだ。 

例えば多くのワンコ向け育児書に載っていることだが、飼い主が帰るとワンコが飛びついてくるのは止めさせなければいけないらしい。 
勢いよく飛びつかれることで怪我する場合もあるし服も汚れるから...とあるが、他人に対してはリードで制御するのは当然だとしても飼い主に喜んで飛びついてきたら上手に受け止めて力一杯抱きしめてやればいいではないか。育児書には飛びつかれたら「無視しましょう」とか「くるっと背中を向ければ飛び付きを止められる」といった”ノウハウ”が紹介されているが知能の高いワンコにしてみれば裏切られた気がするのではないか。そしてかえって飼い主への不信感に結びつくのではないだろうか。 
ワンコは人の感情を読み取る術にも優れている。飼い主が機嫌が良いのか悪いのかも敏感に察知するほどだ。犬の感受性を低く評価してはそれこそワンコとの絆にヒビが入るだろう。 
ワンコと飼い主との間は単に餌をもらえて散歩に連れ出してくれる関係だけでは意味もないように思える。 

反面あのムツゴロウこと畑正憲は「犬はどこから...そしてここへ」(学研刊)で「私は技術的な調教を否定します。技術がなんですか!子育てに技術がいりますか?魂と魂でぶつかっていかなきゃ」と書いている。正直これまでオトーサンは畑正憲という人物を何かきれい事ばかり言っているように思えて好きではなかったが、自分がラテを飼い始めて日々その生き様を受け止めているとムツゴロウのいうことの方が生理的に受け止めやすいことに気がついたのである。 

page5_blog_entry208_5.jpg

※「犬はどこから...そしてここへ」表紙(学研刊)


繰り返すが、一般的に飼い主はワンコが群れで生活する中でのボスでありリーダーでならなければならない...という。それは飼い主が馬鹿にされたりすればワンコは自分がボスになろうとし、それが飼い主...特に子供を噛むといった問題行動にまで繋がるといわれる。だからオトーサンも強いリーダーになろうと努力をしてきたが、ラテを見ているとそうした考え方がどこか違うように思うのだ。 
もし前記したように「隙あらば自分がボスになりたい」と常に機会を狙っているのがワンコの本能だとすれば、オトーサンが居眠りしているときに襲って息の根を止める...といった行動をとるのが普通のように思える。勿論一般的にワンコは...ラテはそんな気配は微塵も見せない。居眠りしているオトーサンの口元や顔中をペロペロと舐めて起こしにかかる姿はリーダーに対する態度というよりやはり親子の関係に近いものが芽生えているのではないかと直感しているのだが...。まあ、文字通り親ばかの所以である(笑)。

関連記事
広告
ブログ内検索
Macの達人 無料公開
[小説]未来を垣間見た男 - スティーブ・ジョブズ公開
オリジナル時代小説「木挽町お鶴御用控」無料公開
オリジナル時代小説「首巻き春貞」一巻から外伝まで全完無料公開
ラテ飼育格闘日記
最新記事
カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール

mactechlab

Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員