貴方は「現実歪曲フィールド」を体験したことがあるか?!
先日数人の方とスティーブ・ジョブズ氏の巧みなプレゼンの話題になったとき、「 現実歪曲フィールド」の話になった。古参のMacintoshユーザーは知っているが2,3の若い方は首を傾げた...。今回はこれまでにも数度取り上げた「 現実歪曲フィールド」について掘り下げてみよう。
まずこの言葉は一般の辞書は勿論だがMacintosh関連辞書にも載っていない...と思う。ただし好い加減な言葉ではなく例えば毎日コミュニケーションズ刊「未来をつくった人々」(マイケル・ヒルツィック著/鴨澤眞夫翻訳)にもきちんと登場する...。
どうやら「歪曲フィールド」といった言葉はもともとゲームキャラクタが持っている特殊能力に対して名付けられたもののようで、敵から受けた攻撃ダメージを半減するための能力を意味するようだ。
ともあれスティーブ・ジョブズという生身の...それも実在する人がそのようなパワーを持っているわけはない(笑)。
スティーブ・ジョブズが身につけているという特殊能力は「歪曲フィールド」に「現実」がついた「現実歪曲フィールド」と呼ばれている。
「 現実歪曲フィールド」の命名者はMacintosh開発チームにいたバド・トリブルだというが当のトリブルはスタートレックに由来すると主張しているらしい。
理屈から考えれば「フィールド(field)」とはこの場合、電場・磁場・重力場などの「場」を意味すると考えられよう。そしてその前に「現実歪曲」と付くのだから文字通りその意味は「現実や事実を歪めてしまう場」といったことになる...。
結論めくが「現実歪曲フィールド」は、スティーブ・ジョブズの持つカリスマ性が現実世界に及ぼす影響力を意味することだと理解して間違いはない。
Apple社が創立以来、彼の回りに多々語り続けられている逸話があり、すでにその多くは伝説化している。そしてそれらは主役がスティーブ・ジョブズでなければなし得ない結果を生むような場合に例えば「ジョブズの現実歪曲フィールドが発動するや否や、一瞬で無理が有理に変化した...」などと使われる訳だ。
どんなに実行不可能あるいは不利な状況に見えるときでも、彼の自信に満ち希望に満ち溢た台詞と態度はビジネス相手や聴衆を魅惑して「なるほど..」と思わせ、結果として不可能を可能にしてしまうパワーが「現実歪曲フィールド」なのである。
その原動力はAppleというブランドはもとより、自身が考えるビジョンに対する絶対的な自信から来るものに違いない。ただしジョブズとて人の子であり、その自信を裏付づけるために我々の想像を絶する大いなる努力をしているに違いない。

※「現実歪曲フィールド」パワーを発するスティーブ・ジョブズ氏のイメージ(笑)
さて、異論はあるかも知れないがスティーブ・ジョブズが現実歪曲フィールドを発動する効果を眼前に見られる手近なものはMacworld Expoの基調講演だったろうか。
残念ながらAppleはすでにMacworld Expoへの出展はしないことに決まったから、一般ユーザーとしてはApple社が主宰するプレミアムイベントなどで登壇する彼の姿でしかそれらを体現できなくなったが...。
ともかく...例えばそのステージ上でリリースされた新製品は彼がそれを「クール!」と壇上で得意げに掲げてみれば会場にいる多くの人たちはもとより、ストリーミング放映を見ている人たちにもそれは画期的ですばらしい製品であり、即Apple Storeに予約しなければ...と思わせるあのパワーは正しく「現実歪曲フィールド」なのだ(笑)。
古い話を持ち出すなら、かつて基盤むき出しのApple Iを世界で初めてのコンピュータショップとなったバイトショップに50台売りつけたこと。マイク・マークラ自身に先見の目があったにせよ彼に多額の資金提供させたこの時期はジョブズにとって最初の現実歪曲フィールド効果を十二分に発揮した重要な場面だった。なぜなら創業時のジョブズたちにはまったく金がなかったのだから...。
またジェフ・ラスキンが考え主導してきたMacintoshプロジェクトを奪い、Lisa mini的なマシンに仕立て上げたのもジョブズの現実歪曲フィールド効果だと思う。
Macintoshの開発には様々な困難が存在したにもかかわらず、結果としてビル・アトキンソンをはじめとするプログラマたちを先導し、週90時間労働まで強いりながら現在私たちがよく知っているあのMacintosh 128Kを誕生させたのはジョブズの現実歪曲フィールド効果なくしては考えられないのである。
あるいはまたペプシ・コーラUSAの社長であり、すでにビジネスマンとして成功していたジョン・スカリーを口説き落としてAppleの社長に迎えたこともジョブズの現実歪曲フィールド効果だと考えられるし、その後のNeXT社においてキヤノンやロス・ペローから莫大な資金支援を取り付けたのも現実歪曲フィールド効果なくしては無理だったと思うのだ。
ある年のMacworld Expo/Tokyo開催時、私はアップルから招待されて幕張のホテル・ニューオータニの一室に向かったがそこはデベロッパーや販売店などのVIPたちが集うパーティー会場だった。
しばらくの後にスティーブ・ジョブズが突然あの基調講演の姿のままで会場に入ってきたが私には現実歪曲フィールドはともかく、彼の周り数十センチには人を近づけないバリアーが張り巡らされているのを感じた。いや...膨張ではない。
我々にしてみれば一般的にはジョブズと話し、あるいは握手をし、名刺交換でもできる願ってもないチャンスであるにもかかわらず10数分その場にいたと思うがAppleの同行者以外、そこに100人もいたであろう誰ひとり彼に声をかけるものがいなかったのは凄いと思った。
私もギル・アメリオ CEOやビル・アトキンソンに声をかけてサインをもらったし、エレン・ハンコックやドン・ノーマンとも話す機会や会食のチャンスを得た。そしてあのガイ・カワサキとは一緒に写真を撮ってもらったりとそうしたチャンス時にはかなり図々しいのだが(笑)、いや...ジョブズの場合は圧倒的な緊張感を感じて気軽に挨拶できる雰囲気ではなかったのである。
というわけで、確かにスティーブ・ジョブズは現実歪曲フィールドだけでなく人を寄せ付けないバリアーを発動する能力を持っているに違いない。しかし残念なことにその発動効果がいつも芳しいわけでもなさそうなのは彼のこれまでの人生が証明していることでもある。
ともあれスティーブ・ジョブズの現実歪曲フィールドに見舞われることを他人事と思っていては間違いである。
あのApple Storeの店内に入れば必ずや気分が向上し、いま必要のないものまで買うはめになり、その上にニコニコ顔でショップを後にしている自分に気付くに違いない。それこそ貴方がスティーブ・ジョブズの発した現実歪曲フィールド真っ只中に取り込まれている証拠でもあるのだ (爆)。
まずこの言葉は一般の辞書は勿論だがMacintosh関連辞書にも載っていない...と思う。ただし好い加減な言葉ではなく例えば毎日コミュニケーションズ刊「未来をつくった人々」(マイケル・ヒルツィック著/鴨澤眞夫翻訳)にもきちんと登場する...。
どうやら「歪曲フィールド」といった言葉はもともとゲームキャラクタが持っている特殊能力に対して名付けられたもののようで、敵から受けた攻撃ダメージを半減するための能力を意味するようだ。
ともあれスティーブ・ジョブズという生身の...それも実在する人がそのようなパワーを持っているわけはない(笑)。
スティーブ・ジョブズが身につけているという特殊能力は「歪曲フィールド」に「現実」がついた「現実歪曲フィールド」と呼ばれている。
「 現実歪曲フィールド」の命名者はMacintosh開発チームにいたバド・トリブルだというが当のトリブルはスタートレックに由来すると主張しているらしい。
理屈から考えれば「フィールド(field)」とはこの場合、電場・磁場・重力場などの「場」を意味すると考えられよう。そしてその前に「現実歪曲」と付くのだから文字通りその意味は「現実や事実を歪めてしまう場」といったことになる...。
結論めくが「現実歪曲フィールド」は、スティーブ・ジョブズの持つカリスマ性が現実世界に及ぼす影響力を意味することだと理解して間違いはない。
Apple社が創立以来、彼の回りに多々語り続けられている逸話があり、すでにその多くは伝説化している。そしてそれらは主役がスティーブ・ジョブズでなければなし得ない結果を生むような場合に例えば「ジョブズの現実歪曲フィールドが発動するや否や、一瞬で無理が有理に変化した...」などと使われる訳だ。
どんなに実行不可能あるいは不利な状況に見えるときでも、彼の自信に満ち希望に満ち溢た台詞と態度はビジネス相手や聴衆を魅惑して「なるほど..」と思わせ、結果として不可能を可能にしてしまうパワーが「現実歪曲フィールド」なのである。
その原動力はAppleというブランドはもとより、自身が考えるビジョンに対する絶対的な自信から来るものに違いない。ただしジョブズとて人の子であり、その自信を裏付づけるために我々の想像を絶する大いなる努力をしているに違いない。

※「現実歪曲フィールド」パワーを発するスティーブ・ジョブズ氏のイメージ(笑)
さて、異論はあるかも知れないがスティーブ・ジョブズが現実歪曲フィールドを発動する効果を眼前に見られる手近なものはMacworld Expoの基調講演だったろうか。
残念ながらAppleはすでにMacworld Expoへの出展はしないことに決まったから、一般ユーザーとしてはApple社が主宰するプレミアムイベントなどで登壇する彼の姿でしかそれらを体現できなくなったが...。
ともかく...例えばそのステージ上でリリースされた新製品は彼がそれを「クール!」と壇上で得意げに掲げてみれば会場にいる多くの人たちはもとより、ストリーミング放映を見ている人たちにもそれは画期的ですばらしい製品であり、即Apple Storeに予約しなければ...と思わせるあのパワーは正しく「現実歪曲フィールド」なのだ(笑)。
古い話を持ち出すなら、かつて基盤むき出しのApple Iを世界で初めてのコンピュータショップとなったバイトショップに50台売りつけたこと。マイク・マークラ自身に先見の目があったにせよ彼に多額の資金提供させたこの時期はジョブズにとって最初の現実歪曲フィールド効果を十二分に発揮した重要な場面だった。なぜなら創業時のジョブズたちにはまったく金がなかったのだから...。
またジェフ・ラスキンが考え主導してきたMacintoshプロジェクトを奪い、Lisa mini的なマシンに仕立て上げたのもジョブズの現実歪曲フィールド効果だと思う。
Macintoshの開発には様々な困難が存在したにもかかわらず、結果としてビル・アトキンソンをはじめとするプログラマたちを先導し、週90時間労働まで強いりながら現在私たちがよく知っているあのMacintosh 128Kを誕生させたのはジョブズの現実歪曲フィールド効果なくしては考えられないのである。
あるいはまたペプシ・コーラUSAの社長であり、すでにビジネスマンとして成功していたジョン・スカリーを口説き落としてAppleの社長に迎えたこともジョブズの現実歪曲フィールド効果だと考えられるし、その後のNeXT社においてキヤノンやロス・ペローから莫大な資金支援を取り付けたのも現実歪曲フィールド効果なくしては無理だったと思うのだ。
ある年のMacworld Expo/Tokyo開催時、私はアップルから招待されて幕張のホテル・ニューオータニの一室に向かったがそこはデベロッパーや販売店などのVIPたちが集うパーティー会場だった。
しばらくの後にスティーブ・ジョブズが突然あの基調講演の姿のままで会場に入ってきたが私には現実歪曲フィールドはともかく、彼の周り数十センチには人を近づけないバリアーが張り巡らされているのを感じた。いや...膨張ではない。
我々にしてみれば一般的にはジョブズと話し、あるいは握手をし、名刺交換でもできる願ってもないチャンスであるにもかかわらず10数分その場にいたと思うがAppleの同行者以外、そこに100人もいたであろう誰ひとり彼に声をかけるものがいなかったのは凄いと思った。
私もギル・アメリオ CEOやビル・アトキンソンに声をかけてサインをもらったし、エレン・ハンコックやドン・ノーマンとも話す機会や会食のチャンスを得た。そしてあのガイ・カワサキとは一緒に写真を撮ってもらったりとそうしたチャンス時にはかなり図々しいのだが(笑)、いや...ジョブズの場合は圧倒的な緊張感を感じて気軽に挨拶できる雰囲気ではなかったのである。
というわけで、確かにスティーブ・ジョブズは現実歪曲フィールドだけでなく人を寄せ付けないバリアーを発動する能力を持っているに違いない。しかし残念なことにその発動効果がいつも芳しいわけでもなさそうなのは彼のこれまでの人生が証明していることでもある。
ともあれスティーブ・ジョブズの現実歪曲フィールドに見舞われることを他人事と思っていては間違いである。
あのApple Storeの店内に入れば必ずや気分が向上し、いま必要のないものまで買うはめになり、その上にニコニコ顔でショップを後にしている自分に気付くに違いない。それこそ貴方がスティーブ・ジョブズの発した現実歪曲フィールド真っ只中に取り込まれている証拠でもあるのだ (爆)。
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