「大塚国際美術館」ひとり旅 (4) 〜ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂は美しい
さて、取り急ぎ今回の目玉であるシスティーナ礼拝堂を堪能し、フェルメールの部屋やいくつかの環境展示を鑑賞した私は続いて同じく楽しみにしていた「ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂」に入った。ジョットが描いた壁画と星空を表しているのだろう…見事なブルーの天井に最初から心を鷲掴みにされる。
北イタリア、パドヴァ市内にある「スクロヴェーニ礼拝堂」は大塚国際美術館発行の”100選ガイド”にある “美術巡礼者にとって聖地のひとつ” というのは大げさな物言いではない。
当時黄金に匹敵するといわれたラピスラズリによるブルーが豊富に使われていることだけを見ても莫大な建設費がかかった礼拝堂である。その上壁面に「西洋絵画の父」とも呼ばれるジョットによるキリストと聖母マリアの生涯が描かれているのだから贅沢この上ない…。


※ラビスラズリブルーに金色のスターが何とも美しい!
ちなみにこの美しいブルーの礼拝堂内部を仰ぎ見た瞬間、連想とは面白いもので大昔(1973年)に購入しシュールレアリズム作品のいくつかを最初めて知った「幻想の画廊から」澁澤龍彦著の本を思い出した。そのカバーを外した装丁がまさしく同じようなラピスラズリブルーだったからだ…。

※澁澤龍彦著「幻想の画廊から」美術出版社刊 (1967年12月20日初版発行)
そもそもこの礼拝堂を建設したエンリコ・スクロヴェーニの父であるレジナルドという人物は高利貸しで財をなしあの神曲「ダンテ」にあさましい姿で登場するほどの人物だったという。そして息子のエンリコ自身も同じく高利貸しだったようだが、父ならびに自身の贖罪を願いこの礼拝堂を建てたといわれている。

※入り口上部にあるジョット描く「最後の審判」
ただしこの大塚国際美術館の「スクロヴェーニ礼拝堂」は祭壇部位が省略されているようだが、オリジナルは写真でしか見たことがないので違和感はない。
そういえば大塚国際美術館のウェブサイトにある「美術館ウェディング」のページにはこの「スクロヴェーニ礼拝堂」内で結婚式を挙げることができると解説されているが、さぞや素敵なビジュアルになるだろうと思われる。
個人的にはこの「スクロヴェーニ礼拝堂」に入った途端にその美しいブルーの天井に目を奪われ、しばらくはジョットのフレスコ壁画を鑑賞する事を忘れていたほどだった。

※ジョットのフレスコ壁画例
ところでジョットについてはヴァザーリ著「画家・彫刻家・建築家列伝」に詳しいが、その伝記によれば「あのような粗野猥雑な時代に、ジョットがよくもあれだけ力を発揮して思い存分に仕事ができたということは実際ほとんど奇跡に近い。当時の人々がまるでかえりみようともしなかったデッサンは、ジョットのおかげで、すばらしい生気を回復したのである」と記している。さらにヴァザーリによればジョットはウィットのある人物としても紹介されている。

※ヴァザーリ著「画家・彫刻家・建築家列伝」よりジョットの肖像
まさしくルネサンス絵画の基礎を築いた画家、ジョットの最高傑作がこの「スクロヴェーニ礼拝堂」の壁画であり、ジョットの代表作として紹介されることの多い「ユダの接吻」もこの「スクロヴェーニ礼拝堂」に描かれているのである。
そういえば、たまたまかも知れないが環境展示の中でここ「スクロヴェーニ礼拝堂」が一番鑑賞者の人数が多かった。やはりその美しさ目当ての来場者は多く、かつ一般受けするビジュアルなのだろうか…。
ともかくジョットの作品に喉元までどっぷりと浸かった幸福感を実感しつつ、限られた時間内で全展示を回りたいと、後ろ髪を引かれる思いで「スクロヴェーニ礼拝堂」を後にした…。
つづく
■大塚国際美術館
北イタリア、パドヴァ市内にある「スクロヴェーニ礼拝堂」は大塚国際美術館発行の”100選ガイド”にある “美術巡礼者にとって聖地のひとつ” というのは大げさな物言いではない。
当時黄金に匹敵するといわれたラピスラズリによるブルーが豊富に使われていることだけを見ても莫大な建設費がかかった礼拝堂である。その上壁面に「西洋絵画の父」とも呼ばれるジョットによるキリストと聖母マリアの生涯が描かれているのだから贅沢この上ない…。


※ラビスラズリブルーに金色のスターが何とも美しい!
ちなみにこの美しいブルーの礼拝堂内部を仰ぎ見た瞬間、連想とは面白いもので大昔(1973年)に購入しシュールレアリズム作品のいくつかを最初めて知った「幻想の画廊から」澁澤龍彦著の本を思い出した。そのカバーを外した装丁がまさしく同じようなラピスラズリブルーだったからだ…。

※澁澤龍彦著「幻想の画廊から」美術出版社刊 (1967年12月20日初版発行)
そもそもこの礼拝堂を建設したエンリコ・スクロヴェーニの父であるレジナルドという人物は高利貸しで財をなしあの神曲「ダンテ」にあさましい姿で登場するほどの人物だったという。そして息子のエンリコ自身も同じく高利貸しだったようだが、父ならびに自身の贖罪を願いこの礼拝堂を建てたといわれている。

※入り口上部にあるジョット描く「最後の審判」
ただしこの大塚国際美術館の「スクロヴェーニ礼拝堂」は祭壇部位が省略されているようだが、オリジナルは写真でしか見たことがないので違和感はない。
そういえば大塚国際美術館のウェブサイトにある「美術館ウェディング」のページにはこの「スクロヴェーニ礼拝堂」内で結婚式を挙げることができると解説されているが、さぞや素敵なビジュアルになるだろうと思われる。
個人的にはこの「スクロヴェーニ礼拝堂」に入った途端にその美しいブルーの天井に目を奪われ、しばらくはジョットのフレスコ壁画を鑑賞する事を忘れていたほどだった。

※ジョットのフレスコ壁画例
ところでジョットについてはヴァザーリ著「画家・彫刻家・建築家列伝」に詳しいが、その伝記によれば「あのような粗野猥雑な時代に、ジョットがよくもあれだけ力を発揮して思い存分に仕事ができたということは実際ほとんど奇跡に近い。当時の人々がまるでかえりみようともしなかったデッサンは、ジョットのおかげで、すばらしい生気を回復したのである」と記している。さらにヴァザーリによればジョットはウィットのある人物としても紹介されている。

※ヴァザーリ著「画家・彫刻家・建築家列伝」よりジョットの肖像
まさしくルネサンス絵画の基礎を築いた画家、ジョットの最高傑作がこの「スクロヴェーニ礼拝堂」の壁画であり、ジョットの代表作として紹介されることの多い「ユダの接吻」もこの「スクロヴェーニ礼拝堂」に描かれているのである。
そういえば、たまたまかも知れないが環境展示の中でここ「スクロヴェーニ礼拝堂」が一番鑑賞者の人数が多かった。やはりその美しさ目当ての来場者は多く、かつ一般受けするビジュアルなのだろうか…。
ともかくジョットの作品に喉元までどっぷりと浸かった幸福感を実感しつつ、限られた時間内で全展示を回りたいと、後ろ髪を引かれる思いで「スクロヴェーニ礼拝堂」を後にした…。
つづく
■大塚国際美術館
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