強力なスタビライザー機能を持つMovie Toolbox「Elasty」レポート

個人的な趣味趣向ではあるが、デジタルカメラによる写真と比較すると動画データの扱いは私にとってまだまだ面倒という感覚から抜け出せない類のアイテムだからしてその取扱に時間を割くことは多くない。そんな私でもデジカメの動画撮影機能で撮ったデータは膨大になるし、時にそれらの活用をする機会にも恵まれるがどうにもiMovieのインターフェースは好きになれないのだ(笑)。                                                                                                                          

動画の変更加工といっても静止画同様さまざまな目的があるし、目的に合った多様なツールも存在するが昨今のアプリケーションは機能が多く久しぶりに起動してみると戸惑うことになる。
まず動画のフォーマット変換や複数ムービーをひとつに編集する、あるいは不要なフレームを削除する、動画にウォーターマークを入れる…といった作業は「究極動画変換 6」というアプリケーションを愛用している。これは現在当サイトのスポンサーでもあるXilisoft社の製品だが、ゴマすりではなく私は同社が当サイトにバナー広告を出す前に製品を購入してそのレポートをご紹介して以来のユーザーだ。とても安定した作業ができているし様々なフォーマットの動画をあれこれと整理するにはうってつけのアプリケーションだが無論万能ではない。

今回手元の動画に対して主に2つの作業を行いたい事例が発生した。
ひとつは撮影済みの動画が手ぶれで気になる箇所があるので補正したいこと、そして一部人の顔をぼかしたいと考えたことだ。
手ブレ補正機能は現在のデジタルカメラやビデオカメラの多くに搭載されていることもあるが、撮り直しがきかない動画を手にしてため息をつくより、まずは補正できるものならソフトウェア的にやってみようと考えた。無論最新の iMovieにもこの手ブレ補正機能が搭載されていてなかなか強力であることはテスト済みだが前記したようにアップデートを繰り返すうちに私はiMovieのインターフェースが鼻につくようになってしまった(笑)。しかしやらなければならない締切は刻々と迫ってくるわけで、不本意ではあるがiMovieの機能を復習しているとき「Elasty」というソフトウェアを知った。

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※「Elasty」のアプリケーションアイコン


モーショントラッキング技術を基礎にした単独のアプリケーションなのだが、「Stabilization」すなわち手ブレ補正機能を主として「Adjustments」「Motion Tracking」「Special Effects」そして「Retiming」の機能を有している製品である。機能が限定されている分、その操作性やインターフェースも分かりやすいだけでなく確かにその機能も強力である。
ともかくこの「Elasty」のメイン機能の概要をご紹介してみよう。

起動した「Elasty」の画面に目的の動画データをドロップすることから始めるが、ちょうどQuickTime Playerのようなシンプルなウィンドウに動画データが表示される。無論再生やストップあるいは早送りなどはQuickTimeそのままだから難しいことはない。
なおiSight カメラがアクティブであれば、カメラから動画や静止画をキャプチャーすることもできる。

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※「Elasty」を起動するとこのウィンドウが表示する


ここでもしインスペクタが表示されていない場合はコマンドキー+ “I” で表示させる。
そのインスペクタの上部に呼び名は些か違うものの前記した6つの機能に切り替えるアイコンが並んでいるのがおわかりだろう。ちなみに左から「Focus Mode」「Track Mode」「Effects Mode」「Stabilization Mode」そして「Retiming Mode」と名付けられている。早速左から確認してみよう…。

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※「Elasty」に動画をドロップして読み込ませた例。右のインスペクタに注目


「Focus Mode」は映像の回転と反転機能およびメインはクロッピング機能である。動画の不要な部位を外した指定領域を抜き出す機能だがインスペクタの「Crop」にチェックを入れると実画面に左右上下中央に点が付いた矩形が表示され、その範囲外は映像がダークとなる。この4つの点をマウスで移動し任意の範囲を指定するだけだがそのポジションとサイズはインスペクタにリアルタイムに表示される。映像を最後まで送りながらクロップする範囲に間違いがないことを確認し「Export processed movie」ボタンをクリックする。ここで表示するダイアログでファイルの書き込み場所や保存のオプションを選択し「Export」ボタンのクリックでレンダリングが始まる。

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※動画をクロッピング指定し「Export」するための設定ダイアログ


「Track Mode」は動画上の任意の部分、例えば特定の人の顔などを追従させる機能。これは動画上の各フレームにProbe(プローブ)という位置情報検出ポイントを置くことで機能が働くが、これらの機能を使うことで走る車のナンバープレートをぼかしたり、特定の人の顔をぼかして認識できないようにすることもできる。
「Elasty」のサンプルにはアシカの映像に別途用意したボールをその鼻に載せるといった例があるが、動画上の特定部位を追従して矢印マークを付けるといった使い方にも通じる。

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※右の白いワンコの額にプローブを設定(上)とプローブに後述するEffect 機能のハートマークを置いた例。ワンコが動いてもハートは額から大きくずれない(下)


ここでは画面右側の白い犬の顔にプローブを設定してみた。方法は簡単で、インスペクタを「Track Mode」モードにし、動画の任意のフレーム(最初からでも)でマウスをダブルクリックすると四角い大きめの点が表れる。これがプローブだ。このプローブをマウスで犬の頭の位置に置き、スライダーを操作してフレームを送る…。そうすると当然のことながら動画上の犬は移動しプローブが頭から外れているはずだが、そこでプローブを犬の頭の位置に戻す。ということを必要な尺まで繰り返す。そしてインスペクタの「TRACK」ボタンをクリックすればレンダリングされ、プローブの追従機能が動画上に形成される。
問題はどれほど精緻にフレーム上のプローブを指定するかだが、最初は粗めにテストしてみればその効果は理解できるだろう。

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※こちらはより実用的な利用例。プローブ指定位置にBlurでぼかしを指定。映像が動いても対象人物の顔にはぼかしがかかる


無論プローブの指定だけでは何の面白味もないわけで、続いてインスペクタを「Effects Mode」モードにしてプローブ設定した位置に例えばハートマークとかBlurでぼかしの領域を置き、動画をExportすればプローブ指定のフレームは犬が動いてもそれを追従し、ハートマークやぼかしの領域が置かれるはずだ。
なお「Effects Mode」自体は特に珍しいものではないから一例を示して省略する(笑)。

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※「Effects Mode」で動画に加工を加えた例


次に真打ちの機能「Stabilization Mode」だ。スタビライザーとは要するに手ブレで見難い映像を補正してくれる機能である。まずは百聞は一見にしかずだからして、次の動画をご覧いただきたい。
前半は揺れに揺れる画面だが、後半の繰り返し部分からは「Elasty」の「Stabilization Mode」で補正ごの映像だ。同じソースなのにこれだけ違うことがお分かりだろう。
「Stabilization Mode」には「Auto」と「Manual」があるが、ここでオートでテストしてみた。



※「Elasty」のスタビライザー機能テスト例。前半はオリジナルで後半は同じソースを「Stabilization Mode」で補正した例


インスペクタを「Stabilization Mode」にし、その Stabilize をONにする。その下にある左右・上下および回転のアイコンは手ブレの方向を示すが、一般的にはすべてをONにしておけばよい。そしてモードが「Auto」になっていることを確認後「Analyze」ボタンをクリックするとレンダリングが開始される。このモード時は動画の左上にサムネイル画像が表示され、補正過程が確認できる。

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※「Stabilization Mode」画面例(上)とインスペクタの補正機能をマニュアルモードにした例(下)


ただ注意としては動画の揺れと正比例して補正後の映像には左右上下に黒い部位ができる可能性がある。補正後のゴミと考えれば良いが、その部位は全フレームを確認しつつ前記した「Focus Mode」のクロップ機能で残す映像のエリアを指定して作り直せば良い。

最後に「Retiming Mode」だが、動画の全体は勿論、任意のフレーム間の再生スピードを調整する機能だ。ゆっくり見せたいシーンや逆に早送りするシーンなどを「Speed Editor」で視覚的に編集ができる。
まずはインスペクタを「Retiming Mode」し「Enable Retiming」をONにする。そして「Edit Speed」をクリックすると「Speed Editor」が表示する。

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※「Retiming Mode」による「Speed Editor」表示


動画を送りながら任意のフレームで「Speed Editor」の「Add Key」をクリックするとフレームを示す時間軸にキーポイントが置かれる。その速度変化のポイントをマウスドラッグし、上に移動すれば再生スピードが速まり、下に位置させれば再生スピードは遅くなるという理屈だ。そして「Export processed movie」ボタンを押せばレンダリングモードに入る。

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※「Speed Editor」の編集例


こうした「Elasty」の機能の内、私が常用するのはクロッピングは勿論としても「Stabilization Mode」によるブレ補正、そして「Track Mode」によるぼかしの挿入だろうか。
そうそうこの「Elasty」に限らないが、Mac App Storeでダウンロードできるが、メーカーサイトからの直接の方が安価の場合やその逆もあるので購入の歳は確認されることをお勧めしたい。
「Elasty」… 私はお気に入りのアプリケーションとなりそうだ。

Elasty - Creaceed

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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員