「酔いどれ小藤次留書」を楽しみながら居合いの稽古
気張らしで居合い刀を持ち出しては時々自己流ながら居合いの稽古をする一人として刀や剣術の流派あるいは剣豪に関わる話は大好きである。先般NHKオンデマンドで竹中直人演じる「御鑓拝借~酔いどれ小藤次留書」を遅ればせながら見たことから…またまたはまってしまった(笑)。
「酔いどれ小藤次留書」とは無類の酒好きでもある赤目小藤次という風采があがらない下級武士を主人公にしたヒットメーカー、佐伯泰英書き下ろしの時代小説である。
ただしこれまで同氏の小説は1冊も読んだことはなかったが、NHKの正月時代劇「御鑓拝借」ならびに現在毎週金曜日に放映されているBS時代劇「酔いどれ小藤次」を見て無性に原作も読みたくなった…。

※佐伯泰英「酔いどれ小藤次留書」文庫本
ワンパターンと言われようが時代劇の面白さは勧善懲悪のストーリーもさることながら、主人公の魅力とそのめっぽう強い剣さばきではないか。池波正太郎の「鬼平犯科帳」しかり「剣客商売」しかりである。
無論一般的に時代劇とて物語の主人公(剣豪)は若くて良い男…というのが定番に違いない。しかし「酔いどれ小藤次留書」の主人公は当時としてすでに老境に入る年齢の49歳から始まり、風貌も背が低く、髪も薄く、団子っ鼻が目立つその顔も “もくず蟹” を押しつぶしたようだ...といわれるほど風采のあがらない男なのだ。
ちなみにその赤目小籐次の揃え刀だが、先祖が戦国時代に戦場で得たとされる2尺1寸3分の備中国次直および脇差しは1尺6寸7分の長曾根虎徹入道興里だという。また後に芝神明社の宮司から事件解決のお礼として差し出された2尺2寸1分の孫六兼元を受け取り自身で研いでいる。

※筆者愛用?の脇差し(模造刀)
小藤次はもともと伊予水軍に伝わる船戦を想定して工夫された来島水軍流を自在に操る無類の剣客だった。彼は主君が受けた恥辱を晴らすためたった1人その意趣返しに命をかけ成功させた...いわゆる「御鑓拝借騒動」で忠義の士として江戸中のみならずその名は広く知れ渡ることとなる。
奉公を辞した小藤次は食うために父親から仕込まれた刃物を研ぐことを仕事にして長屋住まいを始めるが、「御鑓拝借騒動」を恨む者から多くの刺客が差し向けられる。そんな刺客のひとり須藤平八郎を倒したもののその子供を自分の子供として育てるはめになってしまう。
ともあれ旅の途中で小藤次に命を助けられた大店の紙問屋「久慈屋」主人をはじめ長屋の住人、市井の人々、はては水戸藩をはじめ藩主らに頼られ、はては時の幕府老中までをもその剣の腕と人柄で魅了してしまう…。
さらに旗本水野家の奥女中だった絶世の美貌の持ち主で歌人にして俳人、北村おりょうから慕われるという羨ましさ120%のストーリーにオヤジたちは涎を垂らしながら引き込まれてしまうのだ(笑)。
ただし今回初めて手にした佐伯泰英の小説だが、正直最初は馴染みにくかったものの、次第にその独特な語り口が味となり魅力と感じられるようになった。
また最初テレビの映像から見入ったわけで、文庫本を読んでいるとそこには竹中直人の小藤次、津川雅彦の大手髪問屋「久慈屋」主人、比嘉愛未のおりょう、山田純大のおかっぴき秀次たちの姿が私の頭の中で動き出すのも楽しい…。
そういえば、正月番組の「御鑓拝借」を別にして今回の連続時代劇は13回の放映が予定されている。対してその原作ストーリーは現在20巻にもなるボリュームであり、したがって当然のことながらドラマはかなりコンパクトに展開するが、今のところ脚本がよく練られているのだろう…なかなよい出来だと思う。
それにしてもこのテレビBS時代劇「酔いどれ小藤次留書」は竹中直人のはまり役だと感服したが、難点は竹中直人の殺陣がお粗末だということだ。時代劇だからしてチャンバラは申し上げるまでもなく重要なポイントである。「酔いどれ小藤次留書」は戦いのシーンより人々との交わりが面白いのだが、斬り合いにリアリティがないのは困った点だ。
なにしろ毎回冒頭のシーンで演じられる斬り合いなど、相手が切られるタイミングを見計らっているのがはっきりとわかるのは興ざめだ(笑)。とはいえオヤジの1人としては北村おりょう(比嘉愛未)の美しさが際立つドラマである。
■BS時代劇「酔いどれ小籐次」オフィシャルHP
「酔いどれ小藤次留書」とは無類の酒好きでもある赤目小藤次という風采があがらない下級武士を主人公にしたヒットメーカー、佐伯泰英書き下ろしの時代小説である。
ただしこれまで同氏の小説は1冊も読んだことはなかったが、NHKの正月時代劇「御鑓拝借」ならびに現在毎週金曜日に放映されているBS時代劇「酔いどれ小藤次」を見て無性に原作も読みたくなった…。

※佐伯泰英「酔いどれ小藤次留書」文庫本
ワンパターンと言われようが時代劇の面白さは勧善懲悪のストーリーもさることながら、主人公の魅力とそのめっぽう強い剣さばきではないか。池波正太郎の「鬼平犯科帳」しかり「剣客商売」しかりである。
無論一般的に時代劇とて物語の主人公(剣豪)は若くて良い男…というのが定番に違いない。しかし「酔いどれ小藤次留書」の主人公は当時としてすでに老境に入る年齢の49歳から始まり、風貌も背が低く、髪も薄く、団子っ鼻が目立つその顔も “もくず蟹” を押しつぶしたようだ...といわれるほど風采のあがらない男なのだ。
ちなみにその赤目小籐次の揃え刀だが、先祖が戦国時代に戦場で得たとされる2尺1寸3分の備中国次直および脇差しは1尺6寸7分の長曾根虎徹入道興里だという。また後に芝神明社の宮司から事件解決のお礼として差し出された2尺2寸1分の孫六兼元を受け取り自身で研いでいる。

※筆者愛用?の脇差し(模造刀)
小藤次はもともと伊予水軍に伝わる船戦を想定して工夫された来島水軍流を自在に操る無類の剣客だった。彼は主君が受けた恥辱を晴らすためたった1人その意趣返しに命をかけ成功させた...いわゆる「御鑓拝借騒動」で忠義の士として江戸中のみならずその名は広く知れ渡ることとなる。
奉公を辞した小藤次は食うために父親から仕込まれた刃物を研ぐことを仕事にして長屋住まいを始めるが、「御鑓拝借騒動」を恨む者から多くの刺客が差し向けられる。そんな刺客のひとり須藤平八郎を倒したもののその子供を自分の子供として育てるはめになってしまう。
ともあれ旅の途中で小藤次に命を助けられた大店の紙問屋「久慈屋」主人をはじめ長屋の住人、市井の人々、はては水戸藩をはじめ藩主らに頼られ、はては時の幕府老中までをもその剣の腕と人柄で魅了してしまう…。
さらに旗本水野家の奥女中だった絶世の美貌の持ち主で歌人にして俳人、北村おりょうから慕われるという羨ましさ120%のストーリーにオヤジたちは涎を垂らしながら引き込まれてしまうのだ(笑)。
ただし今回初めて手にした佐伯泰英の小説だが、正直最初は馴染みにくかったものの、次第にその独特な語り口が味となり魅力と感じられるようになった。
また最初テレビの映像から見入ったわけで、文庫本を読んでいるとそこには竹中直人の小藤次、津川雅彦の大手髪問屋「久慈屋」主人、比嘉愛未のおりょう、山田純大のおかっぴき秀次たちの姿が私の頭の中で動き出すのも楽しい…。
そういえば、正月番組の「御鑓拝借」を別にして今回の連続時代劇は13回の放映が予定されている。対してその原作ストーリーは現在20巻にもなるボリュームであり、したがって当然のことながらドラマはかなりコンパクトに展開するが、今のところ脚本がよく練られているのだろう…なかなよい出来だと思う。
それにしてもこのテレビBS時代劇「酔いどれ小藤次留書」は竹中直人のはまり役だと感服したが、難点は竹中直人の殺陣がお粗末だということだ。時代劇だからしてチャンバラは申し上げるまでもなく重要なポイントである。「酔いどれ小藤次留書」は戦いのシーンより人々との交わりが面白いのだが、斬り合いにリアリティがないのは困った点だ。
なにしろ毎回冒頭のシーンで演じられる斬り合いなど、相手が切られるタイミングを見計らっているのがはっきりとわかるのは興ざめだ(笑)。とはいえオヤジの1人としては北村おりょう(比嘉愛未)の美しさが際立つドラマである。
■BS時代劇「酔いどれ小籐次」オフィシャルHP
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