「大塚国際美術館」ひとり旅 (8) 〜バロック期から近代に至る馴染みの作品たち
バロックには少々飽きたので近代作品が展示されているコーナーへ足を向けるが、まず絵とはいえその強い視線に足止めされたのがエリザベート=ルイーズという女流画家作の「画家と娘」という作品だった。
「画家と娘」だが愛らしい娘を両手で抱き、幸せそうな表情を見せるのは画家本人の自画像とのことだ。解説によれば後に彼女はその娘を亡くし、孤独な晩年を送ったという。1枚の絵に悲喜劇の物語が封じ込められている…というか、それが絵画というものの本質なのかも知れない...。

※エリザベート=ルイーズ作「画家と娘」
その後「ポンパドゥール夫人の肖像」を眺めつつ魅力的な裸婦像が続く…。
私にとってのピカイチの裸婦像はアングルの「泉」だろうか。美術の教科書などにも多々登場したこの裸婦像はまだまだ女性のヌードを見慣れていなかった少年時代の私に大きな衝撃を与えた(笑)。それは人工的で彫像のような冷たい存在でありつつ、どこかなまめかしさを感じる作品だが、アングル自身にとっても生涯をかけて追求し続けた女性美の極致であるという。

※アングル作「泉」
また同じくアングルの「グランド・オダリスク」や「ヴァルパンソンの浴女」といった女性の背中を強調する作品が続く。そしてドラクロアの「民衆を導く自由の女神」あたりで急激に空腹を感じた。


※アングル作「グランド・オダリスク」(上)とドラクロア作「民衆を導く自由の女神」(下)
そういえばすでに昼時だし今回の旅行には1階にあるレストランの食事が付いていることもあり、混まないうちに昼を済ませてしまおうと鑑賞を中断して「レストランガーデン」に入った。

※レストランガーデン
想像するにランチメニューのうちから一品選べるのだろうと気楽に考えていたが、案内されたテーブルに出されたメニューと係の人の説明によれば「今月のガーデンランチ」というメニュー一品だという…。
大塚国際美術館開館15周年を記念し、15種類の食材のエッセンスを使ったメニューで、若鶏のもも肉を白ワインとニンニクでマリネし、ソースはトマトとタマネギをコトコト煮込んでまろやかなブラウンソースに仕上げてあるという。そして季節野菜で彩りを添えた期間限定のメニューであり、そう…パンとライスとを選ぶことができるがドリンクは付いていないという。

※「今月のガーデンランチ」を食す
好き嫌いの多い私としては意外な展開だったが、これも縁だと決められたメニューにオプションでコーヒーを注文した。
幸いといっては申し訳ないが出された料理は大変美味しかった事を記しておきたい。
なお食事をしながら室外に続く管理された芝生に覆われた庭園を眺めつつ一息入れた私は再び展示フロアーに向かったが、すでに些か足腰にきていることは明らかだった。しかし何とか納得いくまで回ってみたいと重い足取りを意識しつつB1に戻った。

※レストランからも展望できる1階の庭園
B1の近代コーナーでは旧知の作品が目白押しだった。モナリザと同じポーズが印象的なロコーの「真珠の女」、マネ「笛を吹く少年」、ドガ「エトワール」そして「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を始めとするルノワール作品も多々展示されている。



※上からロコー作「真珠の女」、「笛を吹く少年」などが展示されているマネの一郭、そしてドガ作「エトワール」
続いて印象派の作品たち、例えばモネ「ロンドンの国会議事堂」や「日傘の女」、「睡蓮」といった作品。そして点描写で有名なスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」たちを眺めながらミレーの「晩鐘」や「落ち穂拾い」にあらためて心を洗われる思いをする。



※モネ作「ロンドンの国会議事堂」と「日傘の女」(上・中)およびスーラ作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」
ゴッホは「ヒマワリ」や「自画像」などを堪能したが、ギャラリー14のコーナーではダヴィッド作「皇帝ナポレオン一世と皇后ジョセフィーヌ」という621×979 cmという馬鹿でかい作品に圧倒されつつ、クリムト、モローなどを鑑賞した。



※上からゴッホ作「自画像」、クリムト作「接吻」、ギュスターヴ・モロー作「オルフェウス」
ふとこれまでの一連の作品とは印象の違う写実的な絵に惹かれて立ち止まった。作者はヒュー・ゴールドウィンという人物で「エデンの園」と題された1900年の作品だ。何よりも印象的なのは公園の一郭で連れの男性に笑みを浮かべる女性の表情がなんとも素晴らしいのだ。


※ヒュー・ゴールドウィン作「エデンの園」および女性の笑顔の拡大例
この絵の作品名がなぜエデンの園なのかは解説にもあったが、2人は現代のアダムとイヴなのだという。それにしてもこの大塚国際美術館にはそれこそ多くの女性の姿…顔かたちが描かれた作品があるものの、これほど晴れ晴れしくも美しい笑顔は他に見たことがないほど印象的なものだった。
ふと男性が傘を持っていることに気がついた。雨が上がったばかりの公園、そしてまだ日が射している...と意識した瞬間、私の耳には "ちあきなおみ" の歌う「黄昏のビギン」が流れてきたのだった。
その余韻を楽しみながら最後にムンクの「叫び」などを眺めつつ現代作品のある1階へと向かった。

※ムンク作「叫び」
つづく
■大塚国際美術館
「画家と娘」だが愛らしい娘を両手で抱き、幸せそうな表情を見せるのは画家本人の自画像とのことだ。解説によれば後に彼女はその娘を亡くし、孤独な晩年を送ったという。1枚の絵に悲喜劇の物語が封じ込められている…というか、それが絵画というものの本質なのかも知れない...。

※エリザベート=ルイーズ作「画家と娘」
その後「ポンパドゥール夫人の肖像」を眺めつつ魅力的な裸婦像が続く…。
私にとってのピカイチの裸婦像はアングルの「泉」だろうか。美術の教科書などにも多々登場したこの裸婦像はまだまだ女性のヌードを見慣れていなかった少年時代の私に大きな衝撃を与えた(笑)。それは人工的で彫像のような冷たい存在でありつつ、どこかなまめかしさを感じる作品だが、アングル自身にとっても生涯をかけて追求し続けた女性美の極致であるという。

※アングル作「泉」
また同じくアングルの「グランド・オダリスク」や「ヴァルパンソンの浴女」といった女性の背中を強調する作品が続く。そしてドラクロアの「民衆を導く自由の女神」あたりで急激に空腹を感じた。


※アングル作「グランド・オダリスク」(上)とドラクロア作「民衆を導く自由の女神」(下)
そういえばすでに昼時だし今回の旅行には1階にあるレストランの食事が付いていることもあり、混まないうちに昼を済ませてしまおうと鑑賞を中断して「レストランガーデン」に入った。

※レストランガーデン
想像するにランチメニューのうちから一品選べるのだろうと気楽に考えていたが、案内されたテーブルに出されたメニューと係の人の説明によれば「今月のガーデンランチ」というメニュー一品だという…。
大塚国際美術館開館15周年を記念し、15種類の食材のエッセンスを使ったメニューで、若鶏のもも肉を白ワインとニンニクでマリネし、ソースはトマトとタマネギをコトコト煮込んでまろやかなブラウンソースに仕上げてあるという。そして季節野菜で彩りを添えた期間限定のメニューであり、そう…パンとライスとを選ぶことができるがドリンクは付いていないという。

※「今月のガーデンランチ」を食す
好き嫌いの多い私としては意外な展開だったが、これも縁だと決められたメニューにオプションでコーヒーを注文した。
幸いといっては申し訳ないが出された料理は大変美味しかった事を記しておきたい。
なお食事をしながら室外に続く管理された芝生に覆われた庭園を眺めつつ一息入れた私は再び展示フロアーに向かったが、すでに些か足腰にきていることは明らかだった。しかし何とか納得いくまで回ってみたいと重い足取りを意識しつつB1に戻った。

※レストランからも展望できる1階の庭園
B1の近代コーナーでは旧知の作品が目白押しだった。モナリザと同じポーズが印象的なロコーの「真珠の女」、マネ「笛を吹く少年」、ドガ「エトワール」そして「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を始めとするルノワール作品も多々展示されている。



※上からロコー作「真珠の女」、「笛を吹く少年」などが展示されているマネの一郭、そしてドガ作「エトワール」
続いて印象派の作品たち、例えばモネ「ロンドンの国会議事堂」や「日傘の女」、「睡蓮」といった作品。そして点描写で有名なスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」たちを眺めながらミレーの「晩鐘」や「落ち穂拾い」にあらためて心を洗われる思いをする。



※モネ作「ロンドンの国会議事堂」と「日傘の女」(上・中)およびスーラ作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」
ゴッホは「ヒマワリ」や「自画像」などを堪能したが、ギャラリー14のコーナーではダヴィッド作「皇帝ナポレオン一世と皇后ジョセフィーヌ」という621×979 cmという馬鹿でかい作品に圧倒されつつ、クリムト、モローなどを鑑賞した。



※上からゴッホ作「自画像」、クリムト作「接吻」、ギュスターヴ・モロー作「オルフェウス」
ふとこれまでの一連の作品とは印象の違う写実的な絵に惹かれて立ち止まった。作者はヒュー・ゴールドウィンという人物で「エデンの園」と題された1900年の作品だ。何よりも印象的なのは公園の一郭で連れの男性に笑みを浮かべる女性の表情がなんとも素晴らしいのだ。


※ヒュー・ゴールドウィン作「エデンの園」および女性の笑顔の拡大例
この絵の作品名がなぜエデンの園なのかは解説にもあったが、2人は現代のアダムとイヴなのだという。それにしてもこの大塚国際美術館にはそれこそ多くの女性の姿…顔かたちが描かれた作品があるものの、これほど晴れ晴れしくも美しい笑顔は他に見たことがないほど印象的なものだった。
ふと男性が傘を持っていることに気がついた。雨が上がったばかりの公園、そしてまだ日が射している...と意識した瞬間、私の耳には "ちあきなおみ" の歌う「黄昏のビギン」が流れてきたのだった。
その余韻を楽しみながら最後にムンクの「叫び」などを眺めつつ現代作品のある1階へと向かった。

※ムンク作「叫び」
つづく
■大塚国際美術館
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