スティーブ・ジョブズのダークな性格を再考する
1996年暮れに古巣のAppleに戻ってからのスティーブ・ジョブズは様々な経験を積んだからか、若い時と比較すれば多少は穏やかになったように見えた。彼のダークな部分については以前「スティーブ・ジョブズの陰の部分に光を当てる!」と題した記事をご紹介したが、今回はそのダークな彼の性格を再考してみようと思う...。
スティーブ・ジョブズのダークな部分の具体的なあれこれを再度繰り返すつもりはないが、その後もスティーブ・ジョブズという得意な人物の情報を集めていてあらためて考えせざるを得ない点に気がついた。
そもそもMacintoshを開発していた時期のAppleはいわゆる普通の企業ではなかった…。マネージメントといった類の観念はなく予算も使い放題で個々のスタッフが大きな役割と決定権を持っていた。無論そのトップはスティーブ・ジョブズだった。人も企業もある意味やりたい放題だったのだ。

※得意の絶頂期のスティーブ・ジョブズ (1983年)
さて、そんなAppleにあってウォルター・アイザックソン著の公式伝記はもとよりだが、スティーブ・ジョブズ関連本の多くにはジョブズ独特の我が儘や他人に対する失礼な扱い方などが多く登場する。それらはもし自分に向かって発せられた言動であったなら、平常心でいられないものばかりに違いない。
しかし多くの情報を積み重ねると面白いといってはなんだが、彼の罵倒ひとつにしてもそれで決定的な溝が出来、彼との接触を嫌悪する人たちもいた反面、彼の言動を意に介さずまるで楽しんでいるかのような社員たちもいることに気がついた。
楽しんでいる…といえば言い過ぎかも知れないが、スティーブ・ジョブズの態度や悪たれにめげない人たちも多くいるし、驚いたことにジョブズに感謝の意を表す人たちもこれまた多く存在するのも事実である。
後にジョブズがNeXT社を立ち上げようとしたとき、好んで彼に従ったスーザン・ケア、スーザン・バーンズ、ジョージ・クロウ、リッチ・ペイジ、バッド・トリブルそしてダニエル・ルーインらは皆Appleの社員でありスティーブ・ジョブズという人物の長所短所を知り尽くしていた。
特にジョージ・クロウはMacintoshのアナログ関連技術者だったし、リッチ・ペイジはLisaの主任設計者からMacintosh事業部技師を勤めた人物で、スティーブ・ジョブズの人となりをよく知っていたはずだ。それなのに古巣のAppleを辞めてまでジョブズが新たに起業するという…海のものとも山のものとも分からない会社に参画した事実を考えると、スティーブ・ジョブズは単に我が儘で鼻持ちならないだけの人物だったのではない…ひとつの証しになるのではないだろうか。
とはいえ「スティーブ・ジョブズ〜ラストメッセージ、天才が遺したもの」というDVDではジャーナリストのデービッド・シェフいわく「映画やオペラも見に行ったし本当に最高の友人だった」と言い、続けて「僕が悩んでいる時は電話に付き合い、食事に誘ってくれた」と大変好意的な思い出を語る一方でピクサー社の共同創設者アルビー・レイ・スミスは「彼は向き直って私にヒドイ罵声を浴びせた。あんなことは二度とご免だ」と語りそれがきっかけで「会社を辞めた」という...。

※DVD「スティーブ・ジョブズ〜ラストメッセージ、天才が遺したもの」パッケージ
そもそもAppleはジョブズに関する虚実諸々のストーリーを都合のよいように作り上げ、企業イメージと共に製品の販売促進に効果的に使ってきたことも忘れてはならない。ジョブズ自身も良い点だけでなく自身のダークなイメージを嫌うどころか、それこそ人心掌握のテクニックに使っていたふしもある。
「Think Simple」で著者のケン・シーガルは書いている…。

※ケン・シーガル著「Think Simple」表紙
ジョブズとゲイツの関係を描いた映画「バトル・オブ・シリコンバレー (原題: Pirates of Silicon Valley)」が制作されジョブズの役をノア・ワイリーが演じることを知るとジョブズはまるでティーンエイジャーのように喜んだという。

※映画「バトル・オブ・シリコンバレー (原題: Pirates of Silicon Valley)」DVDパッケージ
ある日、ジョブズはケン・シーガルたちと自宅でディナーパーティーを開き、友人たちと一緒に映画を見るつもりだと言ったが、問題はこの映画でもスティーブ・ジョブズは性格上問題のある人物として描かれていることだった。
当初シーガルはその内容からしてディナーパーティーは取り止めた方がよいと気遣い、細心の注意を払いながらジョブズに「映画ではネガティブに描かれている」ことを告げた。しかしジョブズは気にせず、脚色にも驚かず「映画とはそういうものだ」と平然と答えたという。
さらに翌週の月曜日、定例の会議でスティーブ・ジョブズと会ったときシーガルは映画の話題を持ち出すべきかを悩んだが会議の本題に入る前、ジョブズ自身が全員に「映画を見た?」と尋ね、何であれ注目を浴びるのはいいことだと上機嫌だったという。シーガルは「本当に彼は 同じ映画を見たのだろうか」と訝しく思うほどジョブズはニコニコ顔だったらしい。
続けてケン・シーガルは、その著書でいう...。
「確かに(ジョブズは)そういう(酷い)態度を見せることもあったが」と断りながらも、「ジョブズはユーモラスにもなれたし、温かくも、魅力的にさえもなれた」と。そして本書にもジョブズの辛辣なやりとりが多々登場するが、ケン・シーガルの筆からは陰惨な印象が消えているのが興味深い。
スティーブ・ジョブズは気分屋だからして、Appleと広告代理店の関係はストレスがたまり衝突ばかりではないか…といった疑問に関してケン・シーガルはストレスはその通りだとしながらも衝突は「ノー」だという。
「Think Simple」は私にとってスティーブ・ジョブズという人物を再評価してみようという気を起こさせた一冊でもあるのだ。
そういえば、ジョブズが口にした罵詈雑言の数々にもかかわらず、なぜか彼を闇討ちして刺そうとしたり、待ち伏せして銃口を向けた人間は皆無だった(笑)。
まあまあ極端なことはともかく、彼がそれほど嫌われていたのなら少なくとも社内の廊下でMacでも振り上げて殴りかかる奴の1人や2人がいても不思議ではないと思うが、そんなこともなかった。
またエレベータにジョブズと乗り合わせ、下がる間に首になった社員がいた…という伝説もどきの話もささやかれたが、実際はスティーブ・ジョブズに逆らい激論や罵倒を浴びせ合った社員らにしてもそれが原因でAppleを辞めた人間はほとんどいなかったという。
現実問題としてジョブズのスタッフらに向けられた無理難題は、悪い結果をもたらすこともあった。スタッフらの中には忙しさのあまり家族を顧みることが出来ず離婚という犠牲を生じた例もあったもののジョブズは命を狙われたり身の危険を感じたことはなかった。
「コンピュータ帝国の興亡」の著者、ロバート・X・クリンジリーはその著書でいう…。
スティーブ・ジョブズとうまくやるには、ちょっとしたコツがあると。それは彼が怒鳴り声を上げたら、同じように怒鳴り返せばいいのだ…と。
もし彼がいい加減なことを言ったら、大勢の下っ端たちのいる目の前ではっきりと「貴方の話はいい加減だ」と言い返せと...。

※ロバート・X・クリンジリー著「コンピュータ帝国の興亡」表紙
クリンジリーは続ける。なぜならこの手の反撃が成功するのは彼の不安心理を突いているからなのだ。
ジョブズは、我々には自身過剰丸出しのような男のように見えるが、その実は内心「自分は間違っているのではないか」と常に不安に思っているからだという…。
この考察は非常に面白い。
よくスティーブ・ジョブズは最高の技術者たちに囲まれていることを確認したがったし、最高でないものには我慢ができなかった。それは彼自身が優れた人間の1人だと自負していたからかも知れないが、実はジョブズ自身は我々と同様に、ときには自身の言動に確信が持てず、不安で疑心暗鬼だったことも多かったと考える方が自然だ。だからこそ自分の周りにクリエイティブで最高の頭脳を持つ人たちを配し囲まれていることで、ジョブズ自身は心の安定が図れていたのではないか。
要はジョブズにとって必要な人間とそうでない人間は明確に分けられていたのであり、当然のことながら相手により態度はまったく違った形になる…。
スティーブ・ジョブズに限らず、どのような人間もその評価はポイント・ポイントで変わるし、評価する相手によりまったく違ってくるものだ。勿論スティーブ・ジョブズの暴言や暴挙はフィクションばかりでなく多くは事実だったのだろうが、時と場所そして相手により受け取られ方はこれまた千差万別だったに違いない。またその場のニュアンスは文字にするとなかなか伝わらないことも周知のことである。
スティーブ・ジョブズは確かに多くの過ちも犯したし欠点だらけで批難されるべき言動も多かった。彼も我々と同じ生身の1人の人間だったのだから...。しかし世界を変え、私たちの生活を一変させ、Appleを世界一の会社にしたことはまぎれもない事実である。
最終的にジョブズをどのように評価するかは人それぞれで勝手だが、ひとつ間違いないことは彼が未来のテクノロジーを、パーソナルコンピュータの未来を、時代の最前列で常に考え見つめていたことだ。
そして私自身の思いだが、彼を崇めるとか尊敬するという感情はさておいてもスティーブ・ジョブズという人物がいなくなったこの世界がどれほど "単調でつまらないものなのか" を…私たちはボディブローが効いてくるようにじわじわと感じざるを得ないと確信していることだ。
いみじくもCNET Japanの記事によれば、スティーブ・ジョブズの友人だったOracleの最高経営責任者(CEO)のラリー・エリソンは「CBS This Morning」のインタビューに次のように答えている。
「われわれは、スティーブ・ジョブズが存在したApple、スティーブ・ジョブズが不在のApple、そしてスティーブ・ジョブズが戻ってきたAppleを目にしてきた」と。そしてジョブズのいないAppleがどういうものかという実験はすでに済んでいるのだ」と…。
無い物ねだりをしたところで何にもならないのは承知だが、ここのところAppleから発表されるはずの新製品が少ないというひとつの事実だけでも、やはりスティーブ・ジョブズの存在がいかに大きかったかを物語っているに違いない。
【主な関連資料】
・ロバート・X・クリンジリー著「コンピュータ帝国の興亡」アスキー出版局
・DVD「スティーブ・ジョブズ~ラストメッセージ、天才が遺したもの」合同会社是空
・ケン・シーガル著「Think Simple」NHK出版
スティーブ・ジョブズのダークな部分の具体的なあれこれを再度繰り返すつもりはないが、その後もスティーブ・ジョブズという得意な人物の情報を集めていてあらためて考えせざるを得ない点に気がついた。
そもそもMacintoshを開発していた時期のAppleはいわゆる普通の企業ではなかった…。マネージメントといった類の観念はなく予算も使い放題で個々のスタッフが大きな役割と決定権を持っていた。無論そのトップはスティーブ・ジョブズだった。人も企業もある意味やりたい放題だったのだ。

※得意の絶頂期のスティーブ・ジョブズ (1983年)
さて、そんなAppleにあってウォルター・アイザックソン著の公式伝記はもとよりだが、スティーブ・ジョブズ関連本の多くにはジョブズ独特の我が儘や他人に対する失礼な扱い方などが多く登場する。それらはもし自分に向かって発せられた言動であったなら、平常心でいられないものばかりに違いない。
しかし多くの情報を積み重ねると面白いといってはなんだが、彼の罵倒ひとつにしてもそれで決定的な溝が出来、彼との接触を嫌悪する人たちもいた反面、彼の言動を意に介さずまるで楽しんでいるかのような社員たちもいることに気がついた。
楽しんでいる…といえば言い過ぎかも知れないが、スティーブ・ジョブズの態度や悪たれにめげない人たちも多くいるし、驚いたことにジョブズに感謝の意を表す人たちもこれまた多く存在するのも事実である。
後にジョブズがNeXT社を立ち上げようとしたとき、好んで彼に従ったスーザン・ケア、スーザン・バーンズ、ジョージ・クロウ、リッチ・ペイジ、バッド・トリブルそしてダニエル・ルーインらは皆Appleの社員でありスティーブ・ジョブズという人物の長所短所を知り尽くしていた。
特にジョージ・クロウはMacintoshのアナログ関連技術者だったし、リッチ・ペイジはLisaの主任設計者からMacintosh事業部技師を勤めた人物で、スティーブ・ジョブズの人となりをよく知っていたはずだ。それなのに古巣のAppleを辞めてまでジョブズが新たに起業するという…海のものとも山のものとも分からない会社に参画した事実を考えると、スティーブ・ジョブズは単に我が儘で鼻持ちならないだけの人物だったのではない…ひとつの証しになるのではないだろうか。
とはいえ「スティーブ・ジョブズ〜ラストメッセージ、天才が遺したもの」というDVDではジャーナリストのデービッド・シェフいわく「映画やオペラも見に行ったし本当に最高の友人だった」と言い、続けて「僕が悩んでいる時は電話に付き合い、食事に誘ってくれた」と大変好意的な思い出を語る一方でピクサー社の共同創設者アルビー・レイ・スミスは「彼は向き直って私にヒドイ罵声を浴びせた。あんなことは二度とご免だ」と語りそれがきっかけで「会社を辞めた」という...。

※DVD「スティーブ・ジョブズ〜ラストメッセージ、天才が遺したもの」パッケージ
そもそもAppleはジョブズに関する虚実諸々のストーリーを都合のよいように作り上げ、企業イメージと共に製品の販売促進に効果的に使ってきたことも忘れてはならない。ジョブズ自身も良い点だけでなく自身のダークなイメージを嫌うどころか、それこそ人心掌握のテクニックに使っていたふしもある。
「Think Simple」で著者のケン・シーガルは書いている…。

※ケン・シーガル著「Think Simple」表紙
ジョブズとゲイツの関係を描いた映画「バトル・オブ・シリコンバレー (原題: Pirates of Silicon Valley)」が制作されジョブズの役をノア・ワイリーが演じることを知るとジョブズはまるでティーンエイジャーのように喜んだという。

※映画「バトル・オブ・シリコンバレー (原題: Pirates of Silicon Valley)」DVDパッケージ
ある日、ジョブズはケン・シーガルたちと自宅でディナーパーティーを開き、友人たちと一緒に映画を見るつもりだと言ったが、問題はこの映画でもスティーブ・ジョブズは性格上問題のある人物として描かれていることだった。
当初シーガルはその内容からしてディナーパーティーは取り止めた方がよいと気遣い、細心の注意を払いながらジョブズに「映画ではネガティブに描かれている」ことを告げた。しかしジョブズは気にせず、脚色にも驚かず「映画とはそういうものだ」と平然と答えたという。
さらに翌週の月曜日、定例の会議でスティーブ・ジョブズと会ったときシーガルは映画の話題を持ち出すべきかを悩んだが会議の本題に入る前、ジョブズ自身が全員に「映画を見た?」と尋ね、何であれ注目を浴びるのはいいことだと上機嫌だったという。シーガルは「本当に彼は 同じ映画を見たのだろうか」と訝しく思うほどジョブズはニコニコ顔だったらしい。
続けてケン・シーガルは、その著書でいう...。
「確かに(ジョブズは)そういう(酷い)態度を見せることもあったが」と断りながらも、「ジョブズはユーモラスにもなれたし、温かくも、魅力的にさえもなれた」と。そして本書にもジョブズの辛辣なやりとりが多々登場するが、ケン・シーガルの筆からは陰惨な印象が消えているのが興味深い。
スティーブ・ジョブズは気分屋だからして、Appleと広告代理店の関係はストレスがたまり衝突ばかりではないか…といった疑問に関してケン・シーガルはストレスはその通りだとしながらも衝突は「ノー」だという。
「Think Simple」は私にとってスティーブ・ジョブズという人物を再評価してみようという気を起こさせた一冊でもあるのだ。
そういえば、ジョブズが口にした罵詈雑言の数々にもかかわらず、なぜか彼を闇討ちして刺そうとしたり、待ち伏せして銃口を向けた人間は皆無だった(笑)。
まあまあ極端なことはともかく、彼がそれほど嫌われていたのなら少なくとも社内の廊下でMacでも振り上げて殴りかかる奴の1人や2人がいても不思議ではないと思うが、そんなこともなかった。
またエレベータにジョブズと乗り合わせ、下がる間に首になった社員がいた…という伝説もどきの話もささやかれたが、実際はスティーブ・ジョブズに逆らい激論や罵倒を浴びせ合った社員らにしてもそれが原因でAppleを辞めた人間はほとんどいなかったという。
現実問題としてジョブズのスタッフらに向けられた無理難題は、悪い結果をもたらすこともあった。スタッフらの中には忙しさのあまり家族を顧みることが出来ず離婚という犠牲を生じた例もあったもののジョブズは命を狙われたり身の危険を感じたことはなかった。
「コンピュータ帝国の興亡」の著者、ロバート・X・クリンジリーはその著書でいう…。
スティーブ・ジョブズとうまくやるには、ちょっとしたコツがあると。それは彼が怒鳴り声を上げたら、同じように怒鳴り返せばいいのだ…と。
もし彼がいい加減なことを言ったら、大勢の下っ端たちのいる目の前ではっきりと「貴方の話はいい加減だ」と言い返せと...。

※ロバート・X・クリンジリー著「コンピュータ帝国の興亡」表紙
クリンジリーは続ける。なぜならこの手の反撃が成功するのは彼の不安心理を突いているからなのだ。
ジョブズは、我々には自身過剰丸出しのような男のように見えるが、その実は内心「自分は間違っているのではないか」と常に不安に思っているからだという…。
この考察は非常に面白い。
よくスティーブ・ジョブズは最高の技術者たちに囲まれていることを確認したがったし、最高でないものには我慢ができなかった。それは彼自身が優れた人間の1人だと自負していたからかも知れないが、実はジョブズ自身は我々と同様に、ときには自身の言動に確信が持てず、不安で疑心暗鬼だったことも多かったと考える方が自然だ。だからこそ自分の周りにクリエイティブで最高の頭脳を持つ人たちを配し囲まれていることで、ジョブズ自身は心の安定が図れていたのではないか。
要はジョブズにとって必要な人間とそうでない人間は明確に分けられていたのであり、当然のことながら相手により態度はまったく違った形になる…。
スティーブ・ジョブズに限らず、どのような人間もその評価はポイント・ポイントで変わるし、評価する相手によりまったく違ってくるものだ。勿論スティーブ・ジョブズの暴言や暴挙はフィクションばかりでなく多くは事実だったのだろうが、時と場所そして相手により受け取られ方はこれまた千差万別だったに違いない。またその場のニュアンスは文字にするとなかなか伝わらないことも周知のことである。
スティーブ・ジョブズは確かに多くの過ちも犯したし欠点だらけで批難されるべき言動も多かった。彼も我々と同じ生身の1人の人間だったのだから...。しかし世界を変え、私たちの生活を一変させ、Appleを世界一の会社にしたことはまぎれもない事実である。
最終的にジョブズをどのように評価するかは人それぞれで勝手だが、ひとつ間違いないことは彼が未来のテクノロジーを、パーソナルコンピュータの未来を、時代の最前列で常に考え見つめていたことだ。
そして私自身の思いだが、彼を崇めるとか尊敬するという感情はさておいてもスティーブ・ジョブズという人物がいなくなったこの世界がどれほど "単調でつまらないものなのか" を…私たちはボディブローが効いてくるようにじわじわと感じざるを得ないと確信していることだ。
いみじくもCNET Japanの記事によれば、スティーブ・ジョブズの友人だったOracleの最高経営責任者(CEO)のラリー・エリソンは「CBS This Morning」のインタビューに次のように答えている。
「われわれは、スティーブ・ジョブズが存在したApple、スティーブ・ジョブズが不在のApple、そしてスティーブ・ジョブズが戻ってきたAppleを目にしてきた」と。そしてジョブズのいないAppleがどういうものかという実験はすでに済んでいるのだ」と…。
無い物ねだりをしたところで何にもならないのは承知だが、ここのところAppleから発表されるはずの新製品が少ないというひとつの事実だけでも、やはりスティーブ・ジョブズの存在がいかに大きかったかを物語っているに違いない。
【主な関連資料】
・ロバート・X・クリンジリー著「コンピュータ帝国の興亡」アスキー出版局
・DVD「スティーブ・ジョブズ~ラストメッセージ、天才が遺したもの」合同会社是空
・ケン・シーガル著「Think Simple」NHK出版
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